2012年03月25日

震える牛 相場英雄

震える牛 相場英雄 小学館

 企業経済を巡る殺人事件の発生です。震える牛は当初携帯電話が震える記事が出てくるので、「牛」と名付けられた携帯電話から枝分かれしてゆく物語展開かと深読みしましたが、中盤で「狂牛病」という単語を久方ぶりに思い出しました。
 食肉業界を巡る不正の内部告発があって、殺人事件を捜査する警察ルートと不正の告発をする記者ルートの話がやがて合体していきます。専門用語が頻出しており、企業や組織で働く人間以外にとってはわかりにくい世界です。
 警察ルートは田川真一47才が引っ張ります。特徴は蛇腹式手帳(じゃばら)を利用していること。肥後守(ひごのかみ、小刀こがたな)で鉛筆を削ること。不正告発ルートを引っ張る記者は鶴田真澄、若い女性です。2年前に会員制の居酒屋で刺殺されたのが、赤間祐也31才獣医師と西野守45才産業廃棄物処理業者です。ふたりは知り合いではありません。通り魔事件にみせかけた口封じのための計画的な殺人犯行となっています。事件を解決に導くキーワードは、「(ナイフの)逆手持ち」、「モツ煮」、「豪勢な宿」、あとになって「M105」と「M108」があります。メルセデス・ベンツ・Eクラスクーペもからみます。
 記者たちが責め続ける相手は、オックスマートであり、ミートステーションであり、警察上層部、そのほか政治家もあります。セリフの列挙が物語を進行させてゆくのは脚本のようです。車の車種名が次々と登場するのはベンツを浮き上がらせるためでしょう。全体的に作者はわかっているだろうけれど読み手はわからずにとまどう記述となっています。「鑑取り(かがみどり)」という単語が何度も出てきます。事件関係者のつながりを明らかにするということでしょうがピンときません。
 「企業犯罪小説」というジャンルは関係者が読んでこそ価値を理解できるのでしょう。印象に残った記述は、38年前、先代(祖父の代)は軽三輪にペンキを塗っていた。若き二代目は店に肉を運んでいたという情景を思い出す最初に採用された社員の思い出再現思考でした。お金のためならそして会社を維持してゆくためなら見ず知らずの消費者の健康被害には目をつぶるという悪行に染まってはいけないという警告書でした。


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