2012年03月05日

気がつけばカラス きむらゆういち

気がつけばカラス きむらゆういち 佼成出版社

 ふざけたようなタイトルに気持が惹かれました。どうしてカラスなのか。白鳥や鶴、鷲(わし)や鷹(たか)ではないのか。カラスの響きから「カラスの勝手でしょ!」ドリフターズを思い出します。コミカルな内容を期待しました。
 ごみ捨て当番から始まります。こどもさん向けのこの物語では、じゅんぺいくんがごみ袋をかかえて家から出てきます。偉い! ごみ捨てはサラリーマン父の業務と定められています。さだまさし詞・曲「関白失脚」では、お父さんが右手に定期券、左手に生ごみをもって玄関を飛び出してゆくのです。
 カラスは悪党とみなされています。カラスが男性のかつらをくわえて飛んでゆく部分には笑いました。この物語はヒットかもしれないとさらに期待は高まりました。しかし、冒頭のユーモアはやがてカラス撲滅の住民運動になり、カラスに変身したじゅんぺいはカラスの裁判にかけられるという流れで、理屈っぽくなってしまいました。出だしがよかっただけに惜しい。
 教育目的の小学校低学年向け図書です。知恵を使おうというくるみ割り手法研究があります。鳥瞰図(ちょうかんず)による広い視野をもとうという呼びかけもあります。弱い者を救おうという道徳があります。縄張りに関する注意喚起があります。テーマは共生です。人間が苦手なことが助け合いです。

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