2012年02月14日

偉大なる、しゅららぼん 万城目学

偉大なる、しゅららぼん 万城目学(まきめまなぶ) 集英社

 548ページあるうちの212ページまできました。感想を書き始めてみます。
 タイトルにある「しゅららぼん」は、超能力を発揮するときに発生する音を指すのでしょう。
 舞台は琵琶湖の湖岸です。竹生島(ちくぶしま)が登場します。歴史は1000年ほどさかのぼります。その頃から対立していた一族として、日出家(ひのでけ)と棗家(なつめけ)があります。そこに城主の家系である速瀬家(はやせけ)がからんできます。三角関係のような恋愛模様もある現代の高校生たちの物語です。漫画的でもあります。あんぱんまんに出てくるパタ子さんのような女性が超能力を教える師範代です。
 脱線しますが、超能力を使えたとしてそれが社会生活にとって有益なものでなければ重視されないという現実があります。念力でスプーン曲げができたとして、それが何になると思ったことがあります。本当の超能力は別物なのです。(後記つづくのあと中盤でグレート清子が同趣旨の発言をします。)
 主人公は日出涼介高校入学したてです。彼のいとこが同じクラスの淡十郎でふたりとも城郭が住まいです。かれらは、心を操作できます。対するライバルが棗広海(なつめひろみ・男です。)かれは相手の肉体を操作できます。両者の能力はどんぐりの背比べで優劣はつきません。両すくみの状態です。そこに城をお金で日出家に売らざるをえなかった速瀬家のうらみがからみます。
 ここまでのところ、物語に大きな起伏はみられません。身近な地元を舞台にした奇妙な物語です。他に、グレート清子と呼ばれる淡十郎の姉とか、韓国びいきの淡十郎の母親幸恵、涼介の兄である手品師の浩介などがいますが今のところ動きはありません。
(つづく)
 最後まで読み終えました。後半100ページの固まりは濃厚です。日本書紀とか古事記を読んでいるようでした。登場人物の心情もよく伝わってきました。しみじみしました。1本の映画を観終えた感慨が湧きます。推理小説形式がとりこまれていて興味をそそられます。どんでんがえしも予想外でした。長編なので読むのにエネルギーが必要ですがこういう世界もあるのかという発見があります。先はどうなるのかわからないという場面が次々と出てきます。一歩一歩核心に近づいてゆきます。
 グレート清子の個性設定は常人のあこがれです。彼女のように気持が太い人間になりたい。人の心が読めてしまうのは「サトラレ」の逆パターンですがそのほうが自然で受け入れやすい。
 美術部、吹奏楽部の話は、絵画、音楽の魅力を引き出します。人間の心を癒し慰めてくれるものです。時間を止める。感情の動きを止める。どこかで水が流れる音が聴こえてきます。
 小さな伏線として灰皿話は日常生活のなにげないやりとりと瑣末(さまつ)であるけれどそれらに幸福が宿っている点を指しています。自分は何者でもない。他者も何者でもない。上下関係はない。湖の水は平坦です。しゅららぽんという音は「協力すること」の音です。とんびは「きゅういぴよろう」と空で和を描きながらなくのです。感覚を楽しむ物語でもありました。


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