2011年12月29日

2011年 今年読んでよかった本

2011年 今年読んでよかった本

永遠の0(ゼロ) 百田尚樹(ひゃくたなおき) 講談社文庫
有益な書物です。575ページあります。淡々と読み続けて、2日半で最後のページにたどりつきました。太平洋戦争末期、特攻という攻撃がありました。日本軍航空機によるアメリカ軍艦船への自爆攻撃です。冒頭から後半近くまでは、NHKこども向け教育番組のような構成です。祖父が特攻で亡くなった姉と弟による関係者へのインタビューとなっています。内容はリポートです。ところが、530ページまでの長文を経て、その後、物語の展開は、すさまじい変貌を遂げて、本作品は光り輝くがっちりとした1本の小説となります。

母に捧げるバラード 武田鉄矢 集英社文庫
30年前に発行された本になります。この本を読んだあと映画「黄色いハンカチ」を見ると感慨が湧きます。作者の原点と言うか、源泉が母親であることがわかります。ちょっとマザコンぽくもある。されど、心に残る1冊でした。読みながら何度か涙ぐみました。151ページ、人は1冊の本に出会うことで人生が変わります。作者の場合は坂本竜馬でした。そして220ページにある太宰治作品でした。

BOX! ボックス 百田尚樹(ひやくたなおき) 太田出版
「ボックス」=ファイトの意味です。「ボクシングをする」からボックス(たたかえ!)という言葉になっています。高校生のアマチュアボクシングが素材で、舞台は大阪です。うさぎとかめの物語でもあります。うさぎは、鏑矢(かぶらや)という高校1年生の天才ボクサーです。彼は才能に溺れており、しっかりとした練習をしません。かめは、彼の幼馴なじみ木樽優樹(きたる)でです。彼は鏑矢にあこがれてボクシング部に入部し、愚直にパンチの練習を始めます。

愛しの座敷わらし(いとしの)上・下 荻原浩 朝日文庫
感服しました。文章運びがうまい。2012年のゴールデンウィークに映画が上映されます。きっとヒットするでしょう。高橋晃一、47歳食品会社勤務課長職は、水谷豊さんが演じるとあります。適役です。家族の再生物語です。でも、家庭内暴力とか、こどもが非行とか、両親に離婚話があるとか、そういったことはいっさいありません。どこにでもある平凡な家族です。しかし、お互いの気持は、崩壊寸前の家庭です。

我家の問題 奥田英朗 集英社
現在(いま)のわたしの置かれた状況、あるいは過去にあった環境にぴったりくる設定の短編が6編収められています。しみじみしました。短編の内容に共感します。今年読んでよかった1冊です。

ヤマトシジミの食卓 吉田道子 くもん出版
 タイトルからシジミのお味噌汁を想像する人が多いのではないでしょうか。わたしも味噌汁だと思って読み始めました。老夫婦が、食事をしながら苦労した昔をふりかえるという内容を予想しました。本の数ページをめくりおえて、はたと気づきました。本のカバーには、ちいさなチョウチョが描かれています。こどもの頃、身近に飛んでいたベニシジミという蝶がいたことを思い出しました。シジミは貝ではなく、蝶だと気づいたのです。

記憶喪失になったぼくが見た世界 坪倉優介 朝日文庫
 衝撃的な内容です。つっぱりだった18才の著者は、雨の中、原付バイクを運転中に駐車中のトラックに衝突する。10日間意識不明となったあと息を吹き返す。大声で叫んで暴れて、病室のベッドにくくりつけられたあと数日して、急におとなしくなる。意識が戻った彼は、自分がだれなのかわからない。家族に会っても相手が何者かわからない。18年間の記憶が消えている。字は読めない。物の名称も覚えていない。現象の意味を理解できない。実話です。最後まで、記憶はほとんどもどりません。

わたしのワンピース にしまきかやこ こぐま社
創意工夫(やりかたを考えて発想すること)することをさりげなく教えてくれる本です。空から飛んできた1枚の布が次々と変化してゆきます。白い布は生命の誕生(赤ちゃん)を表しています。1個の個体が個性をもっていくのです。今年読んでよかった1冊になりました。

ミンティたちの森のかくれ家 キャロル・ライリー・ブリンク 谷口由美子訳
 ママが死んだ3人家族(パパ、長女、次女)と両親を亡くした少年は、いずれもホームレスです。時代背景は1930年代、大恐慌(不況)で職がありません。彼らはアメリカウィスコンシン州にある空き家、他人の家に住みつきます。長女の名はミンティで、その家をかくれ家と称します。
 幸せになるために必要なものは誠実な心と、この物語は教えてくれます。具体的には、あたりまえのことをあたりまえにすることです。書中に表現がある「親切というお金」が幸せづくりを補助してくれます。

マルカの長い旅 ミリヤム・プレスラー 徳間書店
 ユダヤ人医師であるハンナ・マイ、その娘ミンナ16歳、そして同じく娘のマルカ7歳の3人によるドイツ軍からの逃避行です。捕まれば強制収容所へ送られて最悪の場合、死を迎えることになります。3人は逃げ遅れました。母ハンナは、病気になった7歳の娘マルカを途中のピリピーツという町で他人である支援者宅に置き去りにしました。マルカは、支援者宅から追い出されたあと、悲惨な体験を味わうことになります。

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