2023年04月04日

リバー 奥田英朗(おくだひでお)

リバー 奥田英朗(おくだひでお) 集英社

 本の帯の記述にひかれました。
 『十年前、渡良瀬川(わたらせがわ)河川敷で相次いで発見された若い女性の死体……』とあります。
 自分は小学生のときに数年間渡良瀬川の上流にある町で生活を送ったことがあります。
 渡良瀬川は、栃木県の山奥から群馬県に向けて流れています。最後は利根川と合流しています。読んでみたいという意欲が湧きました。

 これまでに何本か読んだ奥田英朗作品では『向田理髪店 奥田英朗(おくだ・ひでお) 光文社』が良かった。最後は感涙(かんるい。思わず涙。感動して涙)でした。
 失敗しても再起のチャンスを与えるという許容の極地に至るまでの気持ちの高まりを表現してありました。

 こちらのお話は、とても長い物語です。648ページあります。
 さあ、スタートです。

 登場人物として、元刑事、殺害された娘、殺害された娘の父親、若手新聞記者女性、犯罪心理学者、新たな容疑者がいるそうです。(本の帯からの情報として)

 5月8日午後3時45分ころ、群馬県にある桐生実業高校河川敷グラウンド付近の渡良瀬川中洲(わたらせがわなかす)にある藪の中(やぶのなか)で若い女性の死体が発見されました。
 定年退職して67歳の年金生活者である藤原達夫が、愛犬柴犬タローと散歩中に、タローが遺体を見つけました。(藤原達夫の妻は民生委員。おふたりには、大卒の長男と次男がおられるそうです)
 さて、どうなる。
 物語の構成は、序章から始まって、終章まで、10の章になっています。
 自分は、発見現場の群馬県桐生市(きりゅうし)には、電車の乗り換えですが、立ち寄ったことが何度かあります。

 群馬枝県警警察本部(県庁所在地の前橋市内にある)の9階が『指令センター』、4階が『刑事部屋』です。
 事件の担当は、桐生南警察署、近隣所轄署、機動捜査隊、鑑識課、捜査一課です。
 

『群馬県側のメンバー』 死体発見は5月8日

 群馬県警 斉藤一馬(さいとう・かずま。ニックネームが「イチウマ」群馬県警のゆるキャラは馬):34歳。既婚。5歳の息子と3歳の娘がいる。

 伊藤:群馬県警桐生南署刑事一家の若い巡査部長。この春、太田東署の地域課から異動してきた。愛称「Kポップ」

 内田警部:群馬県警捜査一課三係長。ベテラン刑事。ニックネーム「ヌシ(主)」

 久保:群馬県警捜査一課三係長補佐。内田警部の片腕

 牟田群馬県警本部長:刑事畑を歩いてきた官僚。議員に負けない姿勢がある。以前、大阪府警で、刑事部長を務めていた。着任して1年半。警察庁のキャリア官僚。長くても2年で去っていく。警視監という身分。警察庁の捜査一課長よりも身分が上。

 堀部群馬県警捜査一課長:剣道五段。目つき厳しい。人相悪い。頭は切れる。今回は、副本部長。娘ふたり。長女は既婚

 群馬県警桐生南署 木田署長:副本部長

 群馬県警管理官 西村:捜査一課のナンバー2。高校生の息子と娘がいる。

 群馬県警 武田刑事部長:今回の件の捜査本部長となる。

 群馬県警 星野広報官:男性(ずーっと、この人は女性だと思って読んでいました。433ページで「ぼくが」と出たので、男性だとわかりました。びっくりしました)群馬県警広報課の担当者。中学生の娘と小学6年生の息子がいる。
 
 群馬県警 藤川:ベテラン刑事。後記する吉田明菜の店スナック「リオ」の客

 帳場(ちょうば):捜査本部。群馬県桐生南署内に置く。

 千野今日子(ちの・きょうこ):群馬県警本部記者クラブに所属する(全国紙の)中央新聞社の記者。中学生まで東京都八王子市育ち。最近まで文化部所属だったが人事異動があった。
 今回の両県をまたがった連続殺人事件で、中央新聞社の群馬県前橋支局と、栃木県宇都宮支局が合同で取材をすることになります。各支局とも取材体制は10人以上。
 4人家族。父は会社員、母は専業主婦、弟は公務員

 小坂(男性):千野今日子の上司。デスク(責任者)警察担当キャップ(グループのリーダー)。
今回の事件に関して、群馬県前橋支局担当キャップを務める。

 中西:元刑事。元捜査一課係長。

 松岡芳邦:62歳。自営で写真館の経営をしている。パニック障害あり。10年前の連続殺人事件の犯人を追う。追って復讐する。十年前の犠牲者が自分の娘だった。松岡美樹。二十歳の専門学校生だった。松岡芳邦は過去をひきずる人です。娘のことをあきらめきれない。粘着質です。
 最近目の調子が良くない。なにか病気が始まっているようす。本人は気づいていない。(読み進めていて、自分と同じ目の病気だったので、びっくりしました。『加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)』といいます。自分はもう15年以上検査のため数か月おきに検査のため通院しています。発病したころに、病気である右の目玉に月1回ペースで3回注射してもらい病気の進行が止まっています。症状は、松岡芳邦さんほど悪くはありません。松岡さんは左目が病気になっていて、視界の中心部が黒くなっているそうです。わたしは、右目の中心部だけがゆがんでみえます。なんというか、この物語を読んでいて、ほかのことも含めて、作者とわたしは、似通った部分があるのではないかと考えてしまいました)松岡芳邦は、自分自身で、眼科だけではなくて、自分は精神科を受診したほうがいいかもと思っています。(気持ちはわかります。なにせ、娘を殺された父親ですから。警察が十年前に犯人をつかまえることができなかったことへの怒り(いかり)の気持ちはわかります)

 松岡和子:松岡芳邦の妻。

 松岡拓哉:32歳。松岡芳邦の長男。松岡写真館の後継ぎ。

 橋田:写真館の協同組合の監事

 安藤麻衣子:今回の被害者。23歳。無職。5月3日午後5時桐生駅近くのコインパーキングに自分の軽自動車を駐車後、午後5時10分、迎えに来た男のミニバンに乗車した。婚活マッチングアプリを使って援助交際をしていたもよう。以降行方不明となり8日に河川敷で全裸の遺体が発見された。

 警察庁刑事局捜査一課河瀬一課長:捜査支援分析センターであるSSBCサイバーから犯罪捜査官の係官を手配した人物。清潔な服装。テキパキと指示を出す。

 篠田准教授:40歳。犯罪心理学者。(この人の推理部分はすばらしい。背筋が冷たくなります)妻と女子高生の娘あり。妻子ふたりとも変わっている。妻は大学の准教授でミドリムシの研究をしている。娘は歴史好きで、戦国時代に存在していた聞いたこともない人物のことを調べている。

 スバル・レヴォーグ:自分が知らない車です。スポーツカータイプの車。堀部捜査一課長が乗っています。

 吉田明菜:32歳。桐生市の南、栃木県足利市の西にある群馬県太田市太田駅南口スナック「リオ」で雇われママをしている。ホステス10人、5人ごとのローテーション。
 離婚母子家庭で育つ。母親は現在単身で生活保護を受給中。61歳の母親は娘に金をせびってばかりいる。母親は、パチンコと怪しげな宗教の手伝いをしている。

 以下は「リオ」のホステス:キャサリン、マリア(ペルー人。そそっかしい)、絵里香(20歳。売春行為あり)

 刈谷文彦:32歳男性。大柄。183cm、80kgぐらい。中学・高校は柔道部員。長野県松本市出身。1986年11月20日生まれ。
 期間工(35か月の雇用期間。2年11月。3年雇うと正式雇用の義務が発生するので企業は3年雇用を避ける)期間工は、3年ぐらい働いて500万円ぐらいの貯蓄ができる。
 刈谷文彦は、3月31日から運転手として採用されている。
 両親はこどものころ離婚。母子家庭で育つ。母親刈谷郁子現在59歳は覚せい剤使用者で前科五犯、覚せい剤のために闇金に借金をつくった。母は、覚せい剤取締法違反で服役経験あり。刈谷文彦は、母親を強く嫌っている。両者の交流なし。2歳年下の妹美香30歳には障害がある。生まれた時から脳性麻痺。運動機能障害あり。介護施設に入っている。
 刈谷文彦の言葉として『おれは(金をもらって)だれとでも寝る女は嫌いだ』
 (刈谷文彦の部分の記述を読んでいると邦画『砂の器(すなのうつわ)』を思い出すようなイメージがあります。

八木:長野県松本市内居住者。刈谷文彦の高校の同級生。ラーメン屋経営

 平塚健太郎:31歳。県会議員の息子。実家は昔からの大地主。兄と妹あり。本人は、大卒後銀行に就職したが2年で退職して昼間は引きこもり。夜間、高級外車で徘徊という日常を送っている。ネットカフェ、マンガ喫茶を利用している。165センチ。小柄。きゃしゃな手のひら。腕は細く女子中学生のよう。人格がおかしい。

 平塚耕一:59歳。平塚健太郎の父親。群馬県議会議員

 太田市にある会社として、外国人期間工が多い。スバル、パナソニック、ゼネラル重機(この会社は架空でしょう。太田市と桐生市と栃木県の足利市に工場があるそうです)。



『栃木県側のメンバー』 5月13日に足利市内渡良瀬運動公園付近の河川敷で若い女性の死体が発見される。(被害者:渡辺沙也加(父:幸一)21歳。衣料品量販店アルバイト)

 野島昌弘巡査部長:30歳。栃木県警足利北警察署(あしかがきたけいさつしょ)刑事第一課(強盗・窃盗担当。除く経済犯と組織犯)。新婚さん。

 栃木県警 土井刑事第一課長

 栃木県警 山下主任:ベテラン刑事

 栃木県警 宮田管理官

 栃木県警 中村刑事部長

 栃木県警 広川捜査一課長

 池田清:45歳。無職。生活保護受給者。障害者。10年前の殺人事件の容疑者(渡良瀬川連続殺人事件)だった。平成21年5月の出来事だった。確実な証拠がなく起訴できなかった。
 覚せい剤で服役した。反社会性が強い人間。最初の連続殺人事件が平成21年(2009年)、今回の事件が令和元年(2019年)
 サイコパス(反社会的人格の持ち主。人を殺してみたい。殺す経過に快楽を感じる。冷酷。無慈悲。尊大。良心欠如。罪悪感薄い。治療法はない)市営住宅に住んでいる。自己愛が異様に強い。無視されることが我慢できない。優秀な生徒が集まる進学校を中退している。書物のコレクター。頭はいい。だれかを殺しているらしいが事件として判明していない。

 大山明美:52歳。池田清の彼女。スナック「アケミ」のママ。

 瀧本誠司:63歳。10年前に池田清を取り調べた栃木県警の元刑事。定年退職して、タクシー会社で総務の仕事をしている。二十年間刑事をしていた。栃木県宇都宮市居住。偏屈でがんこな刑事だった。家庭では浮いている。妻より先に死ぬことが妻への孝行と考えている。こどもは複数いる。すでに独立している。人物像として「保身に走らず、情に厚く、何事も筋を通す。責任から逃げない。

 栃木県警 平野主任:瀧本誠司のかつての部下。弟子の立場。

 栃木県警 島田:瀧本誠司の元同僚。鑑識担当。現在は警察学校で再任用の教官をしている。(たまたまですが、先日見た「相棒14」の最終話で、鑑識役だった六角精児さんが警察学校で教官をされていました。この本のこの部分と重なりました。こういうことがあるとちょっぴり嬉しい)

 渡辺沙也加:犠牲者。21歳。168cm、55kg。衣料品量販店でアルバイト。5月12日日曜日午後6時、自分の軽自動車で足利駅近くの有料駐車場に車を停めたあと、男が運転するセダンに乗り換えた。男は、足利市在住の岡本哲也33歳会社員。岡本は既婚者。マッチングアプリを利用した援助交際。岡本はシロ。ふたりは、駅前で別れたのち、被害者は行方不明になった。

 福田栄一:「古道会」。元暴力団組長。産業廃棄物処理業者福田興産社長

 金村:福田栄一の元舎弟。解体業者。

 10年前と同一犯か。あるいは、あらたな犯人か。

 ふたつの県にまたがっていて、組織がふたつあって、全国を管轄する警察庁がとりまとめをやって、うまくいくのか。混乱しそうです。

 スマホのマッチングアプリの行為は、犯罪に近づく行為と思える。不特定多数から金銭を得ることもできる『援助交際』です。出会い系サイトは、犯罪と距離が近い。

 2009年5月(平成21年)に栃木県足利市(あしかがし)の渡良瀬川河川敷で女性の全裸死体が発見された。半月後、群馬県桐生市(きりゅし)の渡良瀬川河川敷で、同様の事件が起きた。容疑者として浮かんだ人物がいたが有力な証拠がなく未解決事件となっている。今回起きた群馬県内の事件発生地は同じ場所です。昔の犯人からの警察に対する挑戦状なのか。

 (なんというか。騒ぎ過ぎではなかろうか。もうご遺体になってしまっている)
 死後五日間の絞殺。遺体は全裸。

 昔観た映画、織田裕二さんが出ていた『踊る大走査線』の雰囲気があります。とくに、警察署の動きが庶民的なこと。
 警察の捜査はおもに人海戦術です。(じんかいせんじゅつ。おおぜいで事に当たる)

 飛ばし記事:新聞記事で、根拠が明確ではない。誤報になるときがある。

 渡良瀬川の中流から下流のことの内容です。
 読む前に期待していた上流の話は出てこないようです。

 群像劇なので、登場人物が多数です。
(群像劇:主人公をひとりにしない。集団が引き起こすドラマ)
 群馬県と栃木県の捜査について:10年前は合同捜査本部で失敗した(両者がそろってひとつの会議を開催するやり方)。今回は、共同捜査本部(それぞれの県警で会議を開催する。両県警がそれぞれ操作指揮権をもつ。毎日双方の管理官以上が出席して実施する。調整役は、両県警の一課長補佐(キャリア:国家公務員総合職試験に合格した警察官。所属は警察庁)

 シノギ:暴力団の経済活動。収入を得る手段。

 今、86ページ付近にいます。
 ここまで、登場人物を把握するのにせいいっぱいです。
 このページあたりから、物語が流れ始めました。まるで、川の流れのようです。

 まるでゲームのようです。
 作者の事前調査が徹底しています。
 緻密な調査で物語の下地ができていることがわかります。

 同一犯であれば、10年間のブランクが疑問。10年間、別の土地へ行っていたと考えられる。
 容疑者の拘束時間は、48時間、うまくいけば23日間。
 ナンバープレートの番号『群馬100 あ 215×』 コンテナ型トラック。荷台に着脱装置付きのコンテナがある。大量の荷物を運搬できる。「あ行(ぎょう)」と「か行」は、事業者用。定期的な駐車場所は、工場、事務所、店舗。

 パーソナリティ障害:物の考え方、行動が、一般の人と著しく異なる。
 シナをつくる:色気で誘う。

 195ページまで読みました。
 おもしろい。
 あと453ページあります。

(つづく)

 ページ数が多く、登場人物も多く、地理不案内の人が読むと混乱してくるのでしょうが、ていねいに読んでいくと、かなり、おもしろい。大きな紙、数枚に登場人物や出来事をメモしながら読み進めています。
 この作品、映画になるといいのになあと思いながら読んでいます。ヒットすると思います。

 内偵(ないてい):相手に知られないように秘密の捜査
 常套句(じょうとうく):決まり文句
コンテナ式荷台の中型トラック:4トントラックぐらいか。
 奇譚のない(きたんのない):遠慮のない。率直な。

 代貸(だいがし):暴力団の組のナンバー2。組長の代理。

 7月16日、群馬県警と栃木県警の合同捜査本部が設置された。事件発生は5月だった。
 犯人を見つけることができなかった10年前のことも含めて、連続殺人事件の容疑者は両県内に、複数名浮かんでいる。
 
 登山用のハイソックスからは、長野県松本市を思い浮かべます。北アルプス登山のイメージからです。

 いいなと思った文章として『……妻が最近元気なのは、(捜査で)きっと自分が家にいないからだ。そう思うと、罪滅ぼしをしている気にもなる(妻は女友だちたちと旅行に行って楽しんでいる)』

 殺人犯人を捕まえるためには手段を選ばないという執念はどこから生まれてくるのだろう。昔読んだ本『勇気ってなんだろう 江川紹子 岩波ジュニア文庫』現実の出来事として、勇気をふりしぼった人は、孤立とか孤独という厳しい環境を体験されています。
 ことがらはどんどん進行していきます。
 かなりおもしろい。

 猟奇殺人(りょうきさつじん):異常な言動を伴う殺人手法で殺人をおかす。この物語に出てくる複数の容疑者たちは、それぞれ異常で奇妙です。
 エクソシスト:ホラー洋画。高校生の頃、映画館で観ました。館内は若い男女で満席でした。そうか、この本を読んですんなり理解できたことがあります。あの少女は多重人格になっていた。悪魔祓い(あくまばらい)が闘っていたのはあの少女ではなくて、あの少女の中に棲む(すむ)別人格者だったのか。もう半世紀ぐらい前に観た映画のことが今になってわかりました。

 お金があっても、つらいことがある家があります。
 お金がなくてつらい家もあります。
 お金ってなんだろう。
 お金は使うもので、お金に振り回されるようになってはいけない。
 お金があってもなくても「志(こころざし。お金をコントロールしていく)」をもつことが大事。
 学力や知力があってもつらい家があります。
 人間とはなんだろう。
 救いを求めるために文学があります。
 読んでいて、犯罪心理学者の篠田准教授の言葉がけっこう響きます。
 親がこどもによる犯罪拡大防止のために自分のこどもを殺す。実際にそういうことがありました。あるいは、こどもといっしょに心中する。(しんじゅう。殺して自分は自殺する。複数で死ぬ。みちづれ)
 篠田教授の言葉に、学びがあります。

 352ページ付近にいます。あと300ページぐらいです。

(つづく)

 嫌疑性(けんぎせい):疑いがあるが十分ではない。
 エクスタシー:うっとりとした状態
 オミット:却下する。省く。除外する。
 証左(しょうさ):事実を明らかにする証拠となるもの。
 忠臣は二君に仕えず(ちゅうしんはにくんにつかえず):一度主君を決めたら、二度と主君を変えないのが忠臣(主君に誠実に従う家来)である。
 
 読んでいて感じるのは、男社会です。警察組織は、女性の社会ではありません。
 そして制服社会です。命令で動く組織です。
 それから担当区域の区域に関するこだわりがあります。

 人間の多面性について考えました。
 正面から見るとシロだけれど、側面から見ると黒や灰色にも見える。

 母親が壊れると、こどもも壊れるのか。

 佐藤:警友会(けいゆうかい。警察官友の会。OBの会(退職者。オールドボーイ))の理事
 ラティーノ:ラテンアメリカ人の世界

 リレー方式で、語り手が変わっていく群像ドラマです。
 長野県の松本市内には昨年観光で行ったので、土地勘があり、そのときの景色をイメージしながら物語を読んでいます。

 文章を読みながら、最近のテレビ番組のバス旅では、イオンに向かってのバス往復路線がよく映像に出てくるなあと思っていました。地方のバス路線は、駅からイオンショッピングセンターにつながる路線が多い。
 398ページに『……今の日本の地方都市はイオンの一人勝ちってことでしょう……』というセリフが出てきました。同感です。

 いい文章が出てきました。
 『犯罪は、周囲の人間を根こそぎ地獄に突き落とす。』
 本当にそうです。当事者ではない者まで被害を受けます。

 疵:きず。
 
 頭がおかしい人、頭がおかしくなっている人がいる。
 自分の思いをとげるためには、違法行為もやる。
 善良な一般市民をだますこともいとわない。
 異常な世界が始まって、混乱が起きる。

 目的を達成するための取引が多くなってきました。
 
 合同捜査本部:地取り班(近隣住民への聞き込み)、鑑取り班(かんどりはん。交友関係を洗う)、証拠班、特命班(証拠の裏付け)、科学資料班の編成

 昔観た高倉健さんの邦画『駅 STATION』を思い出しました。
 根津甚八さんが連続殺人鬼の兄で、彼の妹が烏丸せつこさんでした。(からすま・せつこさん)
 
 知悉(ちしつ):ことごとく細かい点まで知っている。

 犠牲者は、援助交際をしていた若い女性に限られている。

 記者は経験(が大事。必要)
 マスコミというのは、なんのために犯人を追いかけているのだろう。
 新聞を売るためなのか。(収入を増やすためか……)
 捜査のじゃまをして、関係者家族に不快な思いをさせて、ときに、人の道を踏み外すような行為や言動をしてはいないか。

 捜査陣は、この膠着状態をどう打開するのだろう。(こうちゃくじょうたい。ずっと同じままで変化がない)

 スマホの機能として:位置情報をオフにしても、次に、情報追跡機能を無効にしないとグーグルでは、位置情報が追跡・保存されているそうです。(そういうことがあるのか)
 
 ブルートゥース:デジタル機器の近距離無線通信

 十年前の連続殺人事件と今回の連続殺人事件は、なにか関連があるような気がします。
 快楽殺人事件です。人を殺すことを楽しんでいる。

 赤い繊維片(せんいへん):鍵を握る証拠です。わたしは、登山靴をはくときにはく厚手の靴下の繊維片だと思いながら物語を読んでいます。繊維片について、十年前は、一件目と二件目で、種類が異なっていたそうです。

 障害をもつこどもさんは、一家の精神的な支えになる。

 まず、小動物を殺し、次に人間を殺すようになる。

 容疑者は取り調べ中黙っています。黙っているということは、犯行をしているということなのか。犯行をしていないのなら、必死にやっていないと抗議するはずです。

 長野県から群馬県に来て、(よそ者のくせに)群馬県民を殺したのはけしからん。
 警察はあせっています。
 善光寺や松本城の話も出ます。(昨年、自分は善光寺参りをしたあと、松本城見学もしたので、身近に感じます。景色がリアルに脳裏に浮かびます)
 
 ゴム引きの軍手(軍手のてのひら部分にゴムの部分がある。すべり止め)、厚手のハイソックス。

 519ページ。すごいことになってきました。警察は追い込まれました。

(つづく)

 殺人の目的が理解できません。
 人を殺す経過が楽しいらしい。狂気です。
 加害者は頭が悪いわけではありません。むしろ殺人行為についてばれない策略を巡らす頭脳です。
 たいへんなことになりました。
 大きな出来事が起きました。
 なぜ、全裸にするのだろう。
 身元はすみやかにわかってしまうのに。
 
 新聞記者の真意を、読み手である自分はつかめません。
 『……何としても全貌を明らかにしよう。それが新聞の使命だ』

 シリアルキラー:異常な心理の欲求で、殺人を繰り返す者
 美学(びがく):美に関する独特な考え方、趣味
 懺悔(ざんげ):神に対して罪を告白して許しを乞う(こう。頼む)。
 澱(おり):液体のそこにたまったよどみ。かす。
 アップルウォッチ:アイフォンとの連携機能をもつ。この物語では位置情報が活用されている。
 檀家(だんか):警察言葉として、地域の有力者、協力者のこと。
 
 警察や検事や裁判官らの意識が、犯人がだれであってもかまわない。自分が、毎月決まった日に、決まった額の給料をもらえたらそれでいいと思うようになったら、この世は終わりです。

 事実の現象と、これまでのことのつじつまが合わない。

 そうか……(いつも善人は、泣く思いをする。こんな洗脳のされかたがあったのか。被害者なのに被害者意識がない。逆に、被害者が、加害者をかばおうとする)

 加害者は、人格がおかしくなっている。生まれつきそうなのか。生まれてからそうなったのかはわかりませんが、壊れている。

 読み応え(よみごたえ)がありました。
 事件が解決して、だれかが幸せになったのだろうか……

 緊張がピークまで達して、ことが済んで、いまは、抜け殻です。(ぬけがら)

 いつまでも済んでしまったことをひきずる夫と、過去のことをあきらめて未来に希望を見出そうとする妻がいます。

 自己承認欲求:自分で自分を認めたい。
 
 この物語を、加害者の立場から書くと、また、おもしろいものができあがるのでしょう。

 そして、話は最初に戻る。
 物語づくりの基本のひとつなのでしょう。
 
 なかなか良かった。

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