2023年02月25日

こすずめのぼうけん 福音館書店

こすずめのぼうけん ルース・エインズワース・作 石井桃子・訳 堀内誠一・画 福音館書店

 表紙の絵にあるこどものすずめの絵がかわいい。

 ふつうに読めば、すずめの子の成長を見守るような絵本ですが、偏屈者(へんくつもの。性格がふつうとちょっと違う。ものごとの裏側を見ようとする。表面に出ていることを信用しない)のわたしが読むと、まるっきり異なる状態を感じる絵本です。

 すずめの子の誕生から始まります。
 絵本では、木の上にすずめの巣があって、すずめの親がいますが、わたしの体験だと、すずめは家の軒下に巣をつくります。
 こどものころ、社宅である長屋の屋根の取り換え工事があって、たくさんのすずめの巣が屋根のひさし奥から地面に落とされていました。たしか、巣の中にすずめのひなが居た記憶です。それがどうなったかは記憶がありません。

 人間のこどもをすずめのこどもにたとえる擬人法(ぎじんほう)がもちいられていると思います。
 すずめの子は、やがて巣立ちをするために、空中を飛ぶ練習を始めました。
 すずめの子は、塀を越えて、川を越えて、どんどん巣から遠ざかっていきます。
 小さな体だけれど、動きはダイナミックです。(力強く生き生きと躍動(やくどう)している)
 ずーっと飛び続けることは無理なので、ときどき休憩をとります。

 おもしろいやりとりが始まりました。
 物語のベース(下地(したじ))は、温かい(あたたかい)心とか気持ちです。
 
 仲間とか分類の話が出てきます。
 出会いの第一は『からす』です。
 すずめとからすは鳴き声が違うから仲間じゃない。

 第二の出会いが『やまばと』です。
 鳴き声で分類するので、すずめとやまばとは仲間ではありません。
 自分が毎朝のように散歩で訪れる森にいるカラスたちの鳴き声を思い出しました。キジバトもいます。カラスもキジバトもいつも食べ物をさがしています。

 こすずめは、だれかをさがしています。

 出会いの第三は『ふくろう』です。
 お話のパターン(決まったやり方)は、同じようなことのくり返しで、ちょっとあきてきました。
 すずめとほかの鳥と、明確な分類があります。

 第四の出会いが『かも』です。
 こすずめは、ほかの鳥たちから拒否されてばかりです。
 『血統主義(子は親と同じ国籍を取得する)』を感じる外国絵本です。
 ふーむ。これでいいのだろうか。
 民族主義。
 同一民族で国家を築く。
 他の民族を排除し、同じ民族での結束を重視する。この本は、ちょっと変わった絵本に感じます。

 こすずめを母親の背中に乗せて飛ぶ姿がおもしろい。発想がユニークです。(ふつうじゃない。ほかに例がない。めずらしい)

 作者も翻訳者も画家も三人とも亡くなっています。
 ルース・エインズワース:1984年(昭和59年)70歳ぐらいで没。女性。
 石井桃子:2008年(平成20年)没。101歳没。作品として『ノンちゃん雲に乗る』があります。
 堀内誠一:1987年(昭和62年)54歳没
 この絵本は、1977年(昭和52年)第一刷です。

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