2022年11月08日
百花(ひゃっか) 川村元気
百花(ひゃっか) 川村元気 文春文庫
菅田将暉さん(すだまさきさん)がテレビで、この本が原作映画の宣伝をしていました。とりあえず本を読んでみます。
認知症の母親と、その息子の話ということが、前知識としてあります。
葛西泉(かさい・いずみ):読み始めは、女性だと思い込んで読んでいました。男性でした。名前で性別がわかりにくいのには理由があります。本に書いてあります。
葛西泉は、東京都心のマンションに住んでいます。ハヤシライスが好き。卵焼きも好き。妻が香織さんです。
年末に泉さんだけが、母親がいる実家に帰っています。夫婦仲が悪いわけじゃありません。たまたまです。読んでいて、泉さんは37歳ぐらいだろうかと想像しました。
泉さんは、実家を出てから15年が経過しています。音楽関連会社勤務。妻とは社内結婚。ふたりともレコーディングディレクター職のようです。葛西泉には、父親がいない。母親である葛西百合子は未婚の母です。
葛西香織:葛西泉の妻。妊娠している。8月にこどもが産まれる。だれかが生まれれば、だれかが亡くなるのがこの世の常です。香織さんは、音楽会社の優秀なディレクター職。夫の泉より優秀らしい。
葛西百合子:葛西泉の未婚の母。68歳。年金収入とこども対象のピアノ講師として生活している。
お話は、シューマンの曲「トロイメライ」から始まります。本人は、音大卒の美人ピアニストとして生活してきた。今は、ひとり暮らしをしている。ご本人の誕生日は元旦だそうです。
先日『モヤモヤさまぁ~ず』で、広島県尾道市が紹介されて、大林宣彦監督(おおばやしのぶひこ監督)映画作品『転校生』の紹介がありました。その映画のバックグランドミュージックもトロイメライだったことを思い出しました。こちらの作品にトロイメライが出てくるのも著者が同作品の影響を受けているのかもしれません。(ふと思い出しました。まだ、とても若かったころ、映画館でまだ結婚する前の妻と『転校生』を観ました。妻とは長い付き合いになりました。『転校生』は名作です)
KOE:女性。ユーチューバーのような人か。歌手。KOEには、父親がいない。本人は、アーティスト。音楽会社にとってお金になる人。でもわがままな人。インターネットで歌声が有名になった。音楽の才能あり。
KOEには、離婚歴ありのカメラマンをしている彼氏がいたが、彼氏が韓国人ダンサーと浮気をして、KOEとの関係は破局したそうです。
谷尻:葛西泉の会社の同僚。新人アーティスト育成担当。
オンガク:音楽アーティスト。男性歌手。ドラマや映画の主題歌を歌う。担当は田名部(女性)さん。
田名部(女性):音楽マネージャー。大澤部長と付き合っている。社内不倫をしている。
大澤部長:会社の部長職。田辺と不倫関係にある。
長谷川美久(はせがわ・みく):葛西百合子のピアノの生徒。こどもで8歳。葛西泉の同級生の娘。
出だしは、認知症の状態にある女性の妄想を抱きながらの(いだきながらの)徘徊(はいかい)気味なシーンから始まります。
葛西泉が母宅を訪れてもそこに母親が居ません。(ふと、読んでいて、幸せって何だろうと思いました)
母親の頭の中には、思い出の中で暮らす自分があります。思い出の中で過ごす老後です。
そして、この日は大みそか、12月31日です。泉が公園で母親を発見しました。母親のお財布にはレシートがいっぱいです。(そういう人っています)大みそかだからふたりはテレビで紅白歌合戦を見ています。翌日元旦は母親の誕生日です。
JR総武線:自分もときおり利用します。たまに用事があって千葉方面へ行きます。
(うーむ。物語は、説明文が続きます。今は、41ページ付近にいます)
地に足が付いていない人たちの暮らしぶりがあります。
その場の雰囲気の恋愛、男女関係を楽しむ人たちです。
庶民とか凡人とは、暮らし方が違う世界のことが書いてあります。
葛西泉は、未婚の母の子で、母方祖父母とも交流がなかったそうです。
じっさい、そういう人っているのでしょう。
どんな世界で人生を送っているのだろうか。
さびしくないのだろうか。
本を読んでいる自分が嘆いてもしかたがないことなのでしょうが。
重苦しい時間帯が流れます。
葛西泉の妻である葛西香織の両親は、夫婦とはいえないような関係だったそうです。離婚はしなかったが似たようなものだった。少なくともこどもを育てる親の役割を果たせる人たちではなかった。香織は、バレエ教室の先生にお世話になったそうです。
親に恵まれなかったことが共通動機としての泉と香織、ふたりの結婚があります。
なんというか、自分自身が親になった時に思ったのは、子育てというものは、自分が育てられたようにしか自分のこどもを育てられないということでした。
葛西泉と香織、このふたりの間に生まれるこどもさんは、だいじょうぶだろうか。
父親を知らない人が父親になるのは、けっこうプレッシャーがあります。
ふたりは、結婚して2年で、今、香織さんが妊娠しています。2か月前に妊娠が判明して、出産予定は5か月後だそうです。8月です。
こどもだったころの葛西泉宅のさみしい母子家庭の母親と息子の姿を思い浮かべてしまいます。
葛西泉の母親百合子のようすがおかしい。午前1時半に息子に電話です。
さかのぼって、息子の結婚話のことが出ます。
結婚したことがない母親に結婚することを伝える息子ですが、母親はきっと、自分はどうしたらいいのかわからないでしょう。
葛西泉の母親は、自分自身が結婚式とか婚姻届けを出したことがないから、冠婚葬祭のイロハがわからない人だと思います。
その点で、母親はおとなじゃありません。
むずかしい母子関係が、この本を読んでいる読者の目の前にあります。
(つづく)
三浦:小学一年生のときに通学が葛西泉といっしょだった。かぎっ子同士だった。
三好(女性)→結婚して、長谷川。葛西百合子がピアノを教えている生徒の母親で葛西泉の同級生。夫は銀行員。三好は、中学3年生の時、中学校の佐古田先生とお互いに恋愛関係になっていた。(中学3年生の女生徒に手をつける男性教師がいるのだろうか。そんなことがあるとは思えませんが、あったらひどい。教育者失格です)
なんだか、ふつーの世界じゃありません。
以前映画で観た村上春樹作品『ドライブ・マイ・カー』のような世界です。
嘘(うそ)をつくなときれいごとをこども(葛西泉)に教える母親像と(おそらく不倫であろう)未婚の母親の実態が、母親の人物像として一致しません。(あなたに説教されたくない。あなたには説教する資格がない)
プラシーボ効果:効き目がある成分が入っていない薬でも、本人が、薬の効き目があると思い込むことで症状が良くなる効果があること。
葛西泉の母親は認知症が始まっています。
病院に連れて行って検査が必要です。(あとでわかることですが、すでに本人が自分で受診していました)
記憶が消える記憶障害があるようです。
本人無意識のうちの万引き行為もありです。
葛西泉の仕事場で、ダブルブッキングが発生しますが、意味がよくわかりません。
連続ドラマと別の映画の主題歌が重複したとあります。
最初は同一歌曲が重複したと思ったのですが『オンガク』という歌手がそれぞれ違う曲名で重複したというふうに読めます。
社内不倫はまわりに迷惑です。
周囲から嫌悪感をもたれるじゃれあいです。
葛西泉の母親も不倫で、泉は不倫でできたこどものような気がしてきました。
(現実社会では、認知(父親が認知しなければ裁判で認知)とか相続問題が発生します。この物語ではその点に触れるのだろうか(ふれませんでした))
98ページに長谷川式という認知症のテストがあります。
へんな話ですが、数年前に自分もマジでそのテストを受けたことがあります。
自分の脳内に血がたまって、たまった血液が脳みそを圧迫して、思考ができなくなり、認知症のような状態になってしまいました。トホホでした。頭蓋骨(ずがいこつ)に電気ドリルで穴をふたつあけてもらって、頭の中にたまっていた血を抜いてもらいました。しばらく入院して社会復帰しました。ゆえに、この部分を読んでいて実感が湧きます。
長谷川式のテスト中、うっすらと覚えているのですが、どうしてこんなに簡単な引き算が(自分は)できないんだ。必ず答を出すから待ってくれ!と医師に訴えました。最後は、医師の両足が変な棒に見えて「これは何だ?」と言い、自分の上半身を前かがみにして、椅子に座っていた医師の両足を自分の両手でつかんで持ち上げてしまいました。その数時間後、真夜中の深夜でしたが、脳外科手術を受けました。麻酔が切れてからが頭の皮が痛かった。幻視もたくさん見ました。
区役所が出てきて、介護の話が出てきます。
音楽事務所の雰囲気と介護の世界の雰囲気がうまく一致しません。水と油です。
たろちゃん:アニメオタク
真希:たろちゃんと夫婦。帰国子女。英語ペラペラ。洋楽担当。葛西香織と同期社員。葛西香織と同様に妊娠している。
なぎさホーム:認知症グループホームでしょう。所長が観月(みづき)小柄な童顔中年女性。
(つづく)
葛西泉の母親百合子の脳みその中が壊れている。(妄想記述があります)
二階堂:葛西百合子宅を訪問するヘルパー。
若いころ、リーダーシップを発揮してきびきびしていた人が、年老いて、半分認知症みたいになって、家にこもってあまり外に出てこなくなったということはありそうなお話です。
ダンガリーシャツ:横糸に色がついている。色合いが薄い。
ジーナ式:イギリス人作家ジーナ氏の提唱する育児方式。スケージュール化で、赤ちゃんの生活リズムを習慣化する。
物語のつくりとして『出産』と『認知症』を並べながら話を進めていく手法は、町田そのこ作品『星を掬う(すくう)』中央公論新社とかぶります。出生と認知症と何か関連があるのだろうか。
ちゃんとした家庭や家族関係をもてなかった自分を責める母親がいて、そのことが、認知症の症状になっています。
ボーカロイド:コンピューターによる歌声。
新人社員永井:永井の祖母が認知症だった。
葛西泉と葛西百合子は『近いのか遠いのかよくわからない(親子)』
自分にも遠方で暮らす90歳近い実母がいるのですが、最近会って話をすることが楽しみになりました。ちなみに頭はしっかりしています。
不思議なもので、何十年もたって、昔の話をすると、今だから話せることがあるのです。今だからわかることもあります。誤解が解けるのです。意外だったりもします。兄弟姉妹や叔父叔母、祖父母などの力関係(ちからかんけい)とか対立関係についても、そんなことがあったのかと、はっとさせられることもあります。
『明日の記憶』という名作文学がありました。この本を読みながら思い出しました。サラリーマンが少しずつ記憶をなくしていくのです。サラリーマンは、一生懸命メモをするのです。『明日の記憶 荻原浩 光文社文庫』。
1994年(平成6年)と1995年(平成7年)のことが書いてあります。1995年に葛西泉は中学2年生でした。1995年は、おおぜいの人が亡くなった阪神淡路大震災があった年です。東京では、オウム真理教の地下鉄サリン事件でも人が亡くなったという年でした。
浅葉:葛西百合子が好きだった男。ただし、葛西泉の父親ではありません。
妻子ある男性との不倫の場合、結婚しているほうに責任があるのではなかろうかと自分は思います。
トロイメライが流れる雰囲気があります。
中学2年生の葛西泉が、母親に捨てられてしまいました。
『母』ではなく『女』の道を選んだ葛西百合子でした。
葛西百合子39歳、不倫相手の男性が、浅葉33歳で結婚している。葛西百合子は浅葉といるために神戸へ行ってしまいました。そして1995年に、神戸は大きな地震災害に襲われます。
自分も阪神淡路大震災発災の翌月に現地へ行き、数日間働いたので、書いてある文章を読んでいて実感が湧きました。
葛西百合子には、不倫体質があるのか。
自分で自分の気持ちをコントロールできません。
218ページに出てくる作品は『モモ ミヒャエル・エンデ作品 岩波少年文庫』でしょう。時間どろぼうが出てきます。
ペリエ:ミネラルウォーターのブランド。
花火大会で締めるのは作品『その日のまえに』を思い出します。『その日のまえに 重松清 文藝春秋』映像作家さんだと、花火のシーンで映像を締めたくなるのでしょう。
本のタイトル『百花』イコール『花火』なのでしょう。
読んでいて、なんだか、さみしい話ではあります。
不倫する母親をけがらわしいものを見るような目で見ている高校二年生の息子がいます。
母親は認知症になっており、息子が徘徊(はいかい。さまよい。うろつき)でいなくなった母親をさがしに行って見つけたのに、母親からは、逆に、あなたが(息子が)迷子になったから、わたしはあなたを探していたんだと言われてしまいます。もう母親は別人格の人間です。
そして母親が息子に言うのには『あなたは誰?』
人として、強くなる。
母親は繊細な人でした。(せんさい。神経が細くて弱い)
天に召されました。
妊娠と認知症。始まりがあれば、終わりがあります。
(解説 中島京子)
解説部分を読んで、自分の読後感とは異なる違和感がありました。なにか違う。
やはり、読み手の人生体験で、読書の感想は各自が違ってきます。
本では、葛西泉の父親がだれで、父親がその後どうなったのか、葛西百合子の二度目の不倫相手がどうなったのかは書いてなかったと思います。書く必要もなかったのですが、書いてあっても良かったのではないか。広がりがひとつふさがっていたのではないか。
菅田将暉さん(すだまさきさん)がテレビで、この本が原作映画の宣伝をしていました。とりあえず本を読んでみます。
認知症の母親と、その息子の話ということが、前知識としてあります。
葛西泉(かさい・いずみ):読み始めは、女性だと思い込んで読んでいました。男性でした。名前で性別がわかりにくいのには理由があります。本に書いてあります。
葛西泉は、東京都心のマンションに住んでいます。ハヤシライスが好き。卵焼きも好き。妻が香織さんです。
年末に泉さんだけが、母親がいる実家に帰っています。夫婦仲が悪いわけじゃありません。たまたまです。読んでいて、泉さんは37歳ぐらいだろうかと想像しました。
泉さんは、実家を出てから15年が経過しています。音楽関連会社勤務。妻とは社内結婚。ふたりともレコーディングディレクター職のようです。葛西泉には、父親がいない。母親である葛西百合子は未婚の母です。
葛西香織:葛西泉の妻。妊娠している。8月にこどもが産まれる。だれかが生まれれば、だれかが亡くなるのがこの世の常です。香織さんは、音楽会社の優秀なディレクター職。夫の泉より優秀らしい。
葛西百合子:葛西泉の未婚の母。68歳。年金収入とこども対象のピアノ講師として生活している。
お話は、シューマンの曲「トロイメライ」から始まります。本人は、音大卒の美人ピアニストとして生活してきた。今は、ひとり暮らしをしている。ご本人の誕生日は元旦だそうです。
先日『モヤモヤさまぁ~ず』で、広島県尾道市が紹介されて、大林宣彦監督(おおばやしのぶひこ監督)映画作品『転校生』の紹介がありました。その映画のバックグランドミュージックもトロイメライだったことを思い出しました。こちらの作品にトロイメライが出てくるのも著者が同作品の影響を受けているのかもしれません。(ふと思い出しました。まだ、とても若かったころ、映画館でまだ結婚する前の妻と『転校生』を観ました。妻とは長い付き合いになりました。『転校生』は名作です)
KOE:女性。ユーチューバーのような人か。歌手。KOEには、父親がいない。本人は、アーティスト。音楽会社にとってお金になる人。でもわがままな人。インターネットで歌声が有名になった。音楽の才能あり。
KOEには、離婚歴ありのカメラマンをしている彼氏がいたが、彼氏が韓国人ダンサーと浮気をして、KOEとの関係は破局したそうです。
谷尻:葛西泉の会社の同僚。新人アーティスト育成担当。
オンガク:音楽アーティスト。男性歌手。ドラマや映画の主題歌を歌う。担当は田名部(女性)さん。
田名部(女性):音楽マネージャー。大澤部長と付き合っている。社内不倫をしている。
大澤部長:会社の部長職。田辺と不倫関係にある。
長谷川美久(はせがわ・みく):葛西百合子のピアノの生徒。こどもで8歳。葛西泉の同級生の娘。
出だしは、認知症の状態にある女性の妄想を抱きながらの(いだきながらの)徘徊(はいかい)気味なシーンから始まります。
葛西泉が母宅を訪れてもそこに母親が居ません。(ふと、読んでいて、幸せって何だろうと思いました)
母親の頭の中には、思い出の中で暮らす自分があります。思い出の中で過ごす老後です。
そして、この日は大みそか、12月31日です。泉が公園で母親を発見しました。母親のお財布にはレシートがいっぱいです。(そういう人っています)大みそかだからふたりはテレビで紅白歌合戦を見ています。翌日元旦は母親の誕生日です。
JR総武線:自分もときおり利用します。たまに用事があって千葉方面へ行きます。
(うーむ。物語は、説明文が続きます。今は、41ページ付近にいます)
地に足が付いていない人たちの暮らしぶりがあります。
その場の雰囲気の恋愛、男女関係を楽しむ人たちです。
庶民とか凡人とは、暮らし方が違う世界のことが書いてあります。
葛西泉は、未婚の母の子で、母方祖父母とも交流がなかったそうです。
じっさい、そういう人っているのでしょう。
どんな世界で人生を送っているのだろうか。
さびしくないのだろうか。
本を読んでいる自分が嘆いてもしかたがないことなのでしょうが。
重苦しい時間帯が流れます。
葛西泉の妻である葛西香織の両親は、夫婦とはいえないような関係だったそうです。離婚はしなかったが似たようなものだった。少なくともこどもを育てる親の役割を果たせる人たちではなかった。香織は、バレエ教室の先生にお世話になったそうです。
親に恵まれなかったことが共通動機としての泉と香織、ふたりの結婚があります。
なんというか、自分自身が親になった時に思ったのは、子育てというものは、自分が育てられたようにしか自分のこどもを育てられないということでした。
葛西泉と香織、このふたりの間に生まれるこどもさんは、だいじょうぶだろうか。
父親を知らない人が父親になるのは、けっこうプレッシャーがあります。
ふたりは、結婚して2年で、今、香織さんが妊娠しています。2か月前に妊娠が判明して、出産予定は5か月後だそうです。8月です。
こどもだったころの葛西泉宅のさみしい母子家庭の母親と息子の姿を思い浮かべてしまいます。
葛西泉の母親百合子のようすがおかしい。午前1時半に息子に電話です。
さかのぼって、息子の結婚話のことが出ます。
結婚したことがない母親に結婚することを伝える息子ですが、母親はきっと、自分はどうしたらいいのかわからないでしょう。
葛西泉の母親は、自分自身が結婚式とか婚姻届けを出したことがないから、冠婚葬祭のイロハがわからない人だと思います。
その点で、母親はおとなじゃありません。
むずかしい母子関係が、この本を読んでいる読者の目の前にあります。
(つづく)
三浦:小学一年生のときに通学が葛西泉といっしょだった。かぎっ子同士だった。
三好(女性)→結婚して、長谷川。葛西百合子がピアノを教えている生徒の母親で葛西泉の同級生。夫は銀行員。三好は、中学3年生の時、中学校の佐古田先生とお互いに恋愛関係になっていた。(中学3年生の女生徒に手をつける男性教師がいるのだろうか。そんなことがあるとは思えませんが、あったらひどい。教育者失格です)
なんだか、ふつーの世界じゃありません。
以前映画で観た村上春樹作品『ドライブ・マイ・カー』のような世界です。
嘘(うそ)をつくなときれいごとをこども(葛西泉)に教える母親像と(おそらく不倫であろう)未婚の母親の実態が、母親の人物像として一致しません。(あなたに説教されたくない。あなたには説教する資格がない)
プラシーボ効果:効き目がある成分が入っていない薬でも、本人が、薬の効き目があると思い込むことで症状が良くなる効果があること。
葛西泉の母親は認知症が始まっています。
病院に連れて行って検査が必要です。(あとでわかることですが、すでに本人が自分で受診していました)
記憶が消える記憶障害があるようです。
本人無意識のうちの万引き行為もありです。
葛西泉の仕事場で、ダブルブッキングが発生しますが、意味がよくわかりません。
連続ドラマと別の映画の主題歌が重複したとあります。
最初は同一歌曲が重複したと思ったのですが『オンガク』という歌手がそれぞれ違う曲名で重複したというふうに読めます。
社内不倫はまわりに迷惑です。
周囲から嫌悪感をもたれるじゃれあいです。
葛西泉の母親も不倫で、泉は不倫でできたこどものような気がしてきました。
(現実社会では、認知(父親が認知しなければ裁判で認知)とか相続問題が発生します。この物語ではその点に触れるのだろうか(ふれませんでした))
98ページに長谷川式という認知症のテストがあります。
へんな話ですが、数年前に自分もマジでそのテストを受けたことがあります。
自分の脳内に血がたまって、たまった血液が脳みそを圧迫して、思考ができなくなり、認知症のような状態になってしまいました。トホホでした。頭蓋骨(ずがいこつ)に電気ドリルで穴をふたつあけてもらって、頭の中にたまっていた血を抜いてもらいました。しばらく入院して社会復帰しました。ゆえに、この部分を読んでいて実感が湧きます。
長谷川式のテスト中、うっすらと覚えているのですが、どうしてこんなに簡単な引き算が(自分は)できないんだ。必ず答を出すから待ってくれ!と医師に訴えました。最後は、医師の両足が変な棒に見えて「これは何だ?」と言い、自分の上半身を前かがみにして、椅子に座っていた医師の両足を自分の両手でつかんで持ち上げてしまいました。その数時間後、真夜中の深夜でしたが、脳外科手術を受けました。麻酔が切れてからが頭の皮が痛かった。幻視もたくさん見ました。
区役所が出てきて、介護の話が出てきます。
音楽事務所の雰囲気と介護の世界の雰囲気がうまく一致しません。水と油です。
たろちゃん:アニメオタク
真希:たろちゃんと夫婦。帰国子女。英語ペラペラ。洋楽担当。葛西香織と同期社員。葛西香織と同様に妊娠している。
なぎさホーム:認知症グループホームでしょう。所長が観月(みづき)小柄な童顔中年女性。
(つづく)
葛西泉の母親百合子の脳みその中が壊れている。(妄想記述があります)
二階堂:葛西百合子宅を訪問するヘルパー。
若いころ、リーダーシップを発揮してきびきびしていた人が、年老いて、半分認知症みたいになって、家にこもってあまり外に出てこなくなったということはありそうなお話です。
ダンガリーシャツ:横糸に色がついている。色合いが薄い。
ジーナ式:イギリス人作家ジーナ氏の提唱する育児方式。スケージュール化で、赤ちゃんの生活リズムを習慣化する。
物語のつくりとして『出産』と『認知症』を並べながら話を進めていく手法は、町田そのこ作品『星を掬う(すくう)』中央公論新社とかぶります。出生と認知症と何か関連があるのだろうか。
ちゃんとした家庭や家族関係をもてなかった自分を責める母親がいて、そのことが、認知症の症状になっています。
ボーカロイド:コンピューターによる歌声。
新人社員永井:永井の祖母が認知症だった。
葛西泉と葛西百合子は『近いのか遠いのかよくわからない(親子)』
自分にも遠方で暮らす90歳近い実母がいるのですが、最近会って話をすることが楽しみになりました。ちなみに頭はしっかりしています。
不思議なもので、何十年もたって、昔の話をすると、今だから話せることがあるのです。今だからわかることもあります。誤解が解けるのです。意外だったりもします。兄弟姉妹や叔父叔母、祖父母などの力関係(ちからかんけい)とか対立関係についても、そんなことがあったのかと、はっとさせられることもあります。
『明日の記憶』という名作文学がありました。この本を読みながら思い出しました。サラリーマンが少しずつ記憶をなくしていくのです。サラリーマンは、一生懸命メモをするのです。『明日の記憶 荻原浩 光文社文庫』。
1994年(平成6年)と1995年(平成7年)のことが書いてあります。1995年に葛西泉は中学2年生でした。1995年は、おおぜいの人が亡くなった阪神淡路大震災があった年です。東京では、オウム真理教の地下鉄サリン事件でも人が亡くなったという年でした。
浅葉:葛西百合子が好きだった男。ただし、葛西泉の父親ではありません。
妻子ある男性との不倫の場合、結婚しているほうに責任があるのではなかろうかと自分は思います。
トロイメライが流れる雰囲気があります。
中学2年生の葛西泉が、母親に捨てられてしまいました。
『母』ではなく『女』の道を選んだ葛西百合子でした。
葛西百合子39歳、不倫相手の男性が、浅葉33歳で結婚している。葛西百合子は浅葉といるために神戸へ行ってしまいました。そして1995年に、神戸は大きな地震災害に襲われます。
自分も阪神淡路大震災発災の翌月に現地へ行き、数日間働いたので、書いてある文章を読んでいて実感が湧きました。
葛西百合子には、不倫体質があるのか。
自分で自分の気持ちをコントロールできません。
218ページに出てくる作品は『モモ ミヒャエル・エンデ作品 岩波少年文庫』でしょう。時間どろぼうが出てきます。
ペリエ:ミネラルウォーターのブランド。
花火大会で締めるのは作品『その日のまえに』を思い出します。『その日のまえに 重松清 文藝春秋』映像作家さんだと、花火のシーンで映像を締めたくなるのでしょう。
本のタイトル『百花』イコール『花火』なのでしょう。
読んでいて、なんだか、さみしい話ではあります。
不倫する母親をけがらわしいものを見るような目で見ている高校二年生の息子がいます。
母親は認知症になっており、息子が徘徊(はいかい。さまよい。うろつき)でいなくなった母親をさがしに行って見つけたのに、母親からは、逆に、あなたが(息子が)迷子になったから、わたしはあなたを探していたんだと言われてしまいます。もう母親は別人格の人間です。
そして母親が息子に言うのには『あなたは誰?』
人として、強くなる。
母親は繊細な人でした。(せんさい。神経が細くて弱い)
天に召されました。
妊娠と認知症。始まりがあれば、終わりがあります。
(解説 中島京子)
解説部分を読んで、自分の読後感とは異なる違和感がありました。なにか違う。
やはり、読み手の人生体験で、読書の感想は各自が違ってきます。
本では、葛西泉の父親がだれで、父親がその後どうなったのか、葛西百合子の二度目の不倫相手がどうなったのかは書いてなかったと思います。書く必要もなかったのですが、書いてあっても良かったのではないか。広がりがひとつふさがっていたのではないか。
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