2022年08月09日

テスカトリポカ 佐藤究(さとう・きわむ)

テスカトリポカ 佐藤究(さとう・きわむ) 角川書店

 まず、最初に思うのは「ぶ厚い本だ」
 全体で553ページあります。
 読み終わるまでにどれだけかかるだろか。かなり日にちがかかりそうです。

 次に思うのは「テスカトリポカ」とはなんじゃいな。
 数ページ読んで、メキシコあたりにある地名だろうか。スペイン語だろうか。
 
 18ページまで読んで、案外読みやすい文章で、これなら、いっきに読めそう。
 おもしろい。
 貧しきメキシコ人の若い女性が、日本に来そうです。(ペルー経由で、ハポン(日本)へ。日本人男性と結婚して幸せになる)日本は、太平洋の端にある。(アル・ボルテ・デル・パシフィコ)

(つづく)

 メキシコ合衆国の北、アメリカ合衆国との国境付近(3000kmもあります。日本の長さ並み)だと思いますが『エルドラド黄金郷』というのがある。そういえば、アメリカ合衆国の西海岸地域の一部は、昔はメキシコ領だったと別の小説で読んだことがあります。

 17歳のメキシコ人少女「ルシア・セプルベタ」が主人公らしい。インディオとスペイン人の血を引くメスティーソというそうです。
 シナロア州の州都クリアカンに住んでいる。
 1996年(平成8年)の話です。
 ルシアの兄フリオ19歳が、麻薬密売がらみで殺されてしまいました。
 『死の笛(シルバト・デ・ラ・ムエルテ)』麻薬密売人が吹く笛です。人が死にます。
 悲惨な出だしです。頼れるのは神さましかいない。

 ルシアは、貧困生活から逃れるために、北のアメリカ合衆国へは行かず(アメリカにもメキシコギャングにも捕まるから)南にあるアカプルコを目指します。

(つづく)

 あっという間に、主人公のルシア・セプルベタが観光ビザで、成田空港に到着しました。(1998年7月3日金曜日。本人19歳)
 東京の六本木にあるラブホテルで働いたあと、大阪へ行き、雀荘で働いたあと、川崎のクラブへ移り、日本人男性と結婚して、男児を出産して(本人23歳)、自身は麻薬中毒になってしまいました。

 夫は暴力団幹部土方興三(ひじかた・こうぞう)
 長男は、土方コシモ(2002年3月2日生まれ)本の中では、小学4年生から登校拒否。その後11歳で、身長170cm超えです。仲間外れにされる小学校になじめず、日本語の読み書きはにがてです。国籍は日本です。
 この小説は、この少年の物語かもしれません。


 メキシコの独立記念日は、9月15日。

 暴力シーンを淡々と文章で書いてあるところがすごい。冷徹です。(れいてつ:感情がない。冷静)

 土方コシモ(ひじかた・こしも)少年に年寄り男性との出会いがあります。
 こどもは、年寄りから学ぶことが多い。

 コシモの母親は麻薬中毒です。
 以前、何かの洋画で同じような設定を見たことがありますが、タイトルを思い出せません。(その後:思い出しました。アメリカ映画『ムーンライト』ちょっとグロかった記憶があります。グロテスク異様な雰囲気。ムーンライトですから「月光」です)

(つづく)

 56ページまで読みました。
 ここでタイトルの意味を調べました。
 テスカトリポカ:闇を支配する神。あれこれいわれ(由来、理由)があるそうです。アステカ文明が関係あり。アステカ文明:メキシコ中部にあった文明。1428年ころから1521年の95年間ぐらい。スペイン人に破壊された。日本では関ケ原の合戦が1600年ですからその前です。どこも戦国時代ですなあ。

 主人公の土方コシモ(ひじかた・こしも)は孤独です。
 12歳で学校には行かず、盗みなんかをやっています。身長が180cmあるそうで、バスケットボールに興味をもっていますが、ルールは知りません。漫画アニメ「スラムダンク」のような雰囲気があります。
 公園の木の枝を拾って、木の枝に彫刻刀で細かい細工をすることが好きです。鳥の絵や幾何学模様です。彫刻をしている時間帯は、つらさを忘れることができるそうです。
 彫刻が入った枝は、伏線になっていくような気がします。

 溝口緑地:川崎市高津区にある。

 悲惨です。
 無感情な文章が、この作家さんの特徴です。
 現実にはありえない展開があります。
 ゆえに、これぞ『小説』です。
 まだ、ページはずいぶん残っていますが、力作でしょう。
 13歳の殺人者が生まれました。
 しかも、ふたりも殺してしまいました。
 これから先、どんなふうに話をつないでいくのだろうか。
 今、自分は、56ページにいます。
 土方コシモ13歳で身長188センチもあります。怪物です。『ゴーレム』というあだ名を地元の川崎市内のこどもたちから付けられています。

(つづく)
 
 小説の舞台は日本を離れてメキシコに移りました。
 その後、109ページまで読みました。
 メキシコでのギャング同士、麻薬の縄張り争いの暴力は凄惨です。(せいさん。かなりひどい)麻薬戦争です。直径8mもある無人ドローンが爆撃をします。
 宗教がからんでいることもあって、読者が本から離れていきそうな気配もあります。

 メキシコ北東部。
 <ロス・カサソラス>という組織。4人兄弟がとりしきっている。麻薬を流通させて多額の利益を得る組織です。
 ピラミッド(愛称):長男 ベルナルド・カサソラ
 ジャガー:2男 ジョバニ・カサソラ
 粉:3男 バルミロ・カサソラ 46歳
 指:4男 ドゥイリオ・カサソラ


 3男以外は殺されます。
 生き残った3男バルミロ・カサソラは、たぶん、日本へ逃げるに違いない。彼が信仰するのがアステカの神テスカトリポカです。(煙を吐く鏡が神だそうです。闇を支配する神。(悪事をする者たちを守ってくれる神という印象が読み手にあります。神は化身ができるそうです)

 そして、このあとたぶん、最初の部分の主人公少年土方コシモと出会うのでしょう。
 最強の暴力集団が誕生しそうです。

 メキシコというのは、そんなに治安が悪いところなのだろうか。
 調べました。
 やっぱり治安は悪いようです。
 暴力で支配されている国なのだろうか。うーむ。微妙な気分です。たしか、名古屋市の姉妹都市のひとつがメキシコシティーです。(メキシコシティーはかつてのアステカ王国の首都「テノチティトラン」だそうです)

 アメリカ合衆国サンアントニオの地名が懐かしい。
 高校生だったころ、その土地の人と文通をしていたことがあります。
 もう大昔のことになってしまいました。

 小説なので事実かどうかはわかりませんが、麻薬社会は暴力社会でかなりひどい。
 法令がコントロールする秩序が機能していないようです。
 それに比べて日本は平和なほうです。
 日本に生まれることは幸運だし、日本の大都市部周辺に生まれることは、経済的にも運に恵まれていると自分は思います。
 
 世界には暴力で国民を支配する国があります。
 国家(政府・政治家)もギャングもグル(仲間)です。

 76ページで『テスカトリポカ』という文字が出てきます。『テスカトリポカ:煙を吐く神。アステカの神』
 どちらかといえば、悪魔の神に思えます。
 テスカトリポカには、人間の生け贄を(いけにえを)捧げます。(ささげます)生け贄を神にささげる部分の記述はグロテスクです。怪奇な行為です。
 宗教としては、アステカ教。
 復讐するための神なのか。
 麻薬戦争があり、宗教戦争があります。
 
 こういう設定は、日本人読者向けには受けるだろうか。
 ちょっと、むずかしいものがあります。

 リオ・ブラボー:リオ・グランデ川。メキシコ側で、「リオ・ブラボー」と呼ばれる。メキシコ湾(キューバ側の海)へそそぐ川の名称です。昔映画で同名の洋画があったような。ジョンウェインの西部劇だそうです。

 87ページ。日本人の薬学者が覚せい剤の合成に関わりをもっていたとは知りませんでした。「ヒロポン」だそうです。戦時中の言葉として昔聞いたことがあります。1930年代以降(昭和5年以降)。

 マヤ文明:メキシコ南部にあった文明。ユカタン半島。
 オリン:ナワトル語(アステカ語族の言葉のひとつ)で「地震」

 アステカの一か月は20日で、一年は13か月。

 カサソラ一族の歴史が、生き残り3男バルミロ・カサソラの祖母リベルタを中心にして語られます。
 先祖は、テスカトリポカにつかえた神官だった。

 悪魔のような神に、人を殺してその肉をささげながら、災難を人民に与えないでくれと祈っています。
 地獄のさたも(選択判断)金次第(しだい)という言葉が頭に浮かびました。

 トラルテクートリ:アステカの神。大地の怪物。クジラより大きい。テスカトリポカと戦った。
 なにやら、日本の「古事記」を読むようでもあります。

 うむ。迷信(事実ではない。合理的な根拠がないうそ。実害あり)だと思うと、読書のページをめくる手が止まってしまいます。ちょっと信じるような気分で読んでみます。されど洗脳されてはいけない。(心を支配されてコントロールされてはいけない)

(つづく)

 お金があるところへ人は集まる。
 お金のためなら道徳はないものとする。(道徳:人が生きる道。善悪をきちんと判断して、正しい行動をする。人が守らねばならないこと)
 貧困が人間の魂(たましい)を奪います。人間のもつ『悪』をあぶりだす小説です。
 悪魔の教えがあります。対抗する者や組織を死に追いやるのです。アステカ人を侵略して滅ぼしたスペイン人に対する復讐心が感じられます。
 されど、アステカ人の子孫たちがふだん使う言葉はスペイン語です。ときおりアステカの言葉(ナワトル語)が出てきます。本人たちの複雑な気持ちがあります。
 アステカの文化と宗教について細かな説明があります。
 
 麻薬取引で繁栄していくカサソラ一族の歴史が語られます。
 自分はよく知らないのですが、洋画『ゴッドファーザー』というのもこういうパターンなのだろうか。

 『札束が空から降ってきて、地面からも湧いてくるように思えた。』⇒コカインを扱う商売です。

 組織は、外部からの力ではなく、内部からの力で壊れていきます。悪人たちの仲間割れです。

 精神世界です。もう死んでいるのに、もう一度殺すのです。儀式です。

 「オカリナ」という笛は、かわいらしい楽器だと思っていました。違います。<死の笛>なのです。アステカ人がスペイン人を攻撃するときの合図です。これから、スペイン人が殺されるのです。

 『アウィクパ・チック・ウィカ』(意味:自分が何をしているのか知らず、生きる意味を知らず、ただ遊び歩いているばか者ということ)

 お金を、ひとり占めするとうらまれる。
 麻薬取引の世界では、殺される。
 富(とみ。お金)をみんなで分けないと殺し合いが始まります。

 殺人の理由は『復讐(ふくしゅう)』
 復讐は、繰り返される。
 終わりがない。
 やったり、やられたりが続く。
 忠臣蔵(ちゅうしんぐら)を思い出しました。
 主君のあだうちをするのです。
 あだうちをしたあと、あだうちをした人間は、責任をとって死ぬのです。よく考えると無意味な行為です。
 人間とは、不思議な生き物です。
 憎しみをもつ人は、洗脳(せんのう。暗示をかけられている)されています。
 とことん相手を殺すという決意の固まりです。話し合いの余地はありません。
 あなたと話すことはありません。
 あなたには、憎しみしかありません。
 父親を殺された3男バルミロ・カサソラの心理です。

 ホラー(恐怖)です。
 昭和50年代ころ洋画がありました。『悪魔のいけにえ』『13日の金曜日』
 自分は、『エクソシスト』を映画館に見に行きました。高校生の観客がいっぱいいました。いや、中学だったっけ。もう思い出せません。

 三菱パジェロが出てきました。

 書き忘れたことがありました。
 <ロス・カサソラス カサソラ兄弟>と対立する麻薬組織が<ドゴ・カルテル>アルゼンチン生まれの移民集団が、ロス・カサソラスの縄張りを侵略します。闘犬というニックネームだったかのドゴ・アルヘンティーノというボスがいたと思います。(ページを通過してしまったので、どこだったかわからなくなりました)

 バルミロ・カサソラは、船のコンテナに隠れながら地球をダイナミックに移動します。
 相手の組織に殺されるので逃避行です。
 アステカ信仰の力は強い。過酷な状況を耐え抜きます。

 バルミロ・カサソラは、インドネシアへ移ります。

(つづく)

 舞台は、インドネシア(人口2億6000万人)の西ジャカルタ市に移ります。
 時は、2015年(平成27年)です。

 タナカ(偽名。本名は末永充嗣(すえなが・みちつぐ))臓器売買のコーディネーター。40歳過ぎ。ツーブロックのヘアースタイル。黒ぶち眼鏡。身長165cmぐらい。元医師。2013年4月29日に交通事故の加害者になって自転車に乗った少年をひき逃げ死亡させて逃避している。

 山垣康 39歳。右側の腎臓を提供するために(売却する)インドネシアに来た。

 野村健二 川崎市を拠点にする内臓の売人。末永充嗣の知人。

 戴圭明(ダイ・グィミン):ジャカルタ在住32歳の中国人。919(ジゥ・イー・ジゥ。中国黒社会の組織)の構成員。

 グントゥル・イスラミ:イスラムの雷鳴という意味。犯罪組織でしょう。

 説明的な文章が続きます。

 バルミロ・カサソラ:自称ペルー共和国出身(実際はメキシコ出身)、偽名をふたつ使用しています。本では『ゴンサロ・ガルシア』ニックネームが『調理師』です。
 2016年6月6日にバルミロ・カサソラは、日本人のタナカ(偽名)と遭遇します。


 インドネシアは麻薬犯罪に対してきわめて思い刑罰が科されるそうです。

 以降、麻薬密売の話が続きます。
 ミュージシャンと麻薬の距離は近い。
 
 読んでいての凡人の感想です。
 麻薬と臓器売買のお話はところどころグロテスク(猟奇的りょうきてき、奇怪(奇怪)で、気持ちが悪くなる)で、読んでいて、もう精読するのはいいかなあという気分になっています。

(つづく)

 268ページまで読みました。
 日本の保育園が出てきて、雰囲気がずいぶん変わりました。
 おもしろい。
 今年読んで良かった一冊になるかもしれません。
 こどもさんの保育の話ですが、中味は闇の話です。戸籍がないこどもさんとか、虐待をうけているこどもさんとか。コカインの薬物依存とか。いずれも『闇の世界』なのですが『救い』があるような環境に見えます。
 読んでいるわたしが思うに、それは『救い』ではないのです。救ったように見せかけて、この先、人身売買とか、臓器売買の怖いお話しになっていきそうです。
 作品『わたしを離さないで カズオ・イシグロ 土屋政雄訳 早川書房』を思い出します。映画だと『約束のネバーランド 邦画』です。
 テスカトリポカ(煙を吐く闇の神)は、土方コシモ少年(ひじかた・こしも 土方小霜 2002年生まれ両親殺しで少年院にいる)なのでしょう。

 新南龍(シンナンロン):インドネシア生まれの若い中国人たちの悪の組織。2011年結成。幹部のひとりが、郝景亮(ハオ・ジンリャン)28歳。

 2015年2月元木大地(もとき・だいち)と戴圭明(ダイ・グィミン)は知り合い。

 本を読んでいると、自分が凶暴な気分になってきます。(これはまずい。速読します。216ページ付近。医療行為というよりも殺人です)

 らいときっず小山台(こやまだい):品川区にある保育園
 宇野矢鈴(うの・やすず):らいときっずの保育士。24歳。
 まじめな人ほど、コカインに手を染めやすいのか……
 仕事にストレスがあります。
 スニッフィング:においをかぐ。
 合法の病院じゃない病院。闇の診察室があります。

 野村健二:闇の医師。川崎市を拠点にする内臓の売人。末永充嗣の知人。

 プラシーボ:偽薬効果。
 NPO法人「かがやくこども」2009年設立・認可(暴力団に狙われた。代表理事川崎市甲林会千賀組幹部増山礼一)

 なんとかビジネス。うーむ。思い出せない。「貧困ビジネス」でしょう。ホームレスほかを商品扱いする商売です。怖い。臓器を売られる。殺される。
 増山礼一氏が「闇の天使」に見えます。
 虐待や家庭内暴力にあっている人間を増山礼一一味(いちみ)が救うのでしょう。(ただし、商品として)社会的地位がある暴力の加害者に対しては、厳しい脅迫・恐喝を繰り返して銭をしぼりとるのでしょう。一石二鳥に違いない。

 「無戸籍児童」というのは、たとえば、婚姻中の妻が不倫をして、戸籍上の夫以外のこどもを妊娠・出産すると、戸籍上の夫のこどもとしてしか戸籍に記載できないので、出生届が出しにくくなるのでしょう。
 たしか、婚姻して200日以内に生まれたあかちゃんとか、離婚後300日以内に生まれたこどもは、婚姻中の夫のこどもになると聞いたことがあります。
 法律は本来人の生活を守るためにあります。行為が法律の設定から逸脱すると、法律は人を守れなくなるのでしょう。

 臓器売買のための商品は、3歳から10歳。恐ろしい。

 MDMA:合成麻薬。
 
 夏(シャ):悪党一味(新南龍しんなんろん。インドネシア生まれの分かり中国人たちの組織)の女。甲林会千賀組幹部増山礼一が、元保育士の矢鈴に紹介した。夏は、ふちなしの丸めがねをかけている。あとでわかりますが、夏は、香港警察特殊部隊の元職員です。

 251ページにきて、久しぶりに土方コシモ(ひじかた・こしも)の文字を目にしました。
 少年院暮らしですが、彫刻上手(じょうず)です。アーティストです。芸術家。されど、両親殺しの殺人者です。
 15歳で身長が199cmもあります。体重は98kgです。暴れると複数人で取り押さえます。
 この個性を作者はこのあとどう扱っていくのだろう(自分の興味の中心です)。

 ドゥニア・ビル:インドネシア語で「青い世界」世界最大級のクルーズ船。(新型コロナが始まったころ横浜港に停泊したダイヤモンド・プリンセス号を思い出します)
 全長410m。全幅83m。最大乗客定員7515人。巨大です。
 ハリアント・セシオリア:クルーズ船運航会社の最高経営責任者(CEO)29歳。
 作戦として、インドネシアで建造中のこの船を日本の関東地区の港に寄港させて、「商売」に活用する。川崎港が目標地。

 グラフト:つなぎ役を意味する言葉。(悪事の)コーディネーター。本来は、心臓バイパス手術に使用する血管のこと。

(つづく)

 2017年(平成29年)6月23日(金)バルミロ・カサソラがインドネシアから羽田空港に到着。偽造パスポートで入国した。偽名が『ラウル・アルサモラ』ただし、仲間内では隠語(ニックネーム)で呼び合う。バルミロは『調理師(スペイン語でエル・コシネーロ)』(なんというか、調理師が、人間の体を切り裂いて部品を売るというイメージにつながって不気味です。実際に切って商品に状態にするのは元医師なのですが……)

 末永も韓国経由で入国した。
 末永充嗣(すえなが・みちつぐ):蜘蛛(くも。スペイン語でラバ・ラバ)臓器売買のコーディネーター。40歳過ぎ。ツーブロックのヘアースタイル。黒ぶち眼鏡。身長165cmぐらい。元医師。2013年4月29日に交通事故の加害者になって自転車に乗った少年をひき逃げ死亡させて逃避している。

 野村健二:奇人(スペイン語で、エル・ロコ)闇の医師。川崎市を拠点にする内臓の売人。末永充嗣の知人。

 崔岩寺の住職:ニックネームは十字架(スペイン語でラ・クルス。お寺が秘密の施設になっている)

 多摩川は、メキシコを流れる「リオ・ブラボー」という川に似ているそうです。

 胸にぐっとくる文節として『競争はなく、あるのは独占だけだ(麻薬の密売に関して)』

 オーバードーズ:麻薬の過剰摂取。死ぬときもある。

 サイコパス:反社会的人格の持ち主

 まあ、なんでもありですな。
 人間は悪魔です。
 金のためなら人間を虫けらのように扱います。

 清勇・パブロ・ロブレド・座波(きよたけ・ぱぶろ・ろぶれど・ざは):川崎市内のアクセサリー工房で働く職人。沖縄県那覇市出身。父はペルー人、母は日本人。両親死亡。弟と妹は行方知れず。ナイフを作成する仕事ができる。妻と娘あり。(あとで悪の仲間になると愛称が『陶器(ラ・セラミカ)』になる。

 フォールディングナイフ:折り畳み式ナイフ。料理、登山などのときに使用する。
 ナイフメイカー:ナイフの製造業者だと思いますが、この小説では、ナイフ職人と読み取れます。

 ブライアン・トレド・パブロ:座波の知り合い。元米国海兵隊員。沖縄在住のナイフをつくる職人。日本人妻あり。
 
 読んでいると、外国人が自営でやっている料理店を敬遠したい気分になります。麻薬とのつながりがあるのではなかろうかという、いらぬ誤解をしそうになります。

 ラウル・アルサモラ:バルミロ・カサソラの偽名。『おれのことは、調理師と呼べ』

 ときおり出てくる誓いの言葉のようなものが『おれたちは家族だ』
 ゴッドファーザーのようでもあります。
 日本ヤクザの疑似家族のようでもあります。
 物語の世界では、親に捨てられたり、親に縁がなかったりしたこどもたちは、似た者同士で義理の家族をつくって助け合いながら生活していきます。

 伊川徹(いがわ・とおる):愛称『スクラップ(ラ・チャータラ)』31歳。178cm。154kg。肥満体。腕力がすごい。2006年(平成18年)5月22日20歳の誕生日に人を殺して服役した。懲役19年を2017年に11年の服役で仮釈放された。2018年(平成30年)の冬に『調理師(バルミロ・カサソラ)』と出会う。

 通訳が、『蜘蛛(くも。ラバ・ラバ)』(末永充嗣(すえなが・みちつぐ):蜘蛛(くも。スペイン語でラバ・ラバ)臓器売買のコーディネーター。40歳過ぎ。ツーブロックのヘアースタイル。黒ぶち眼鏡。身長165cmぐらい。元医師)です。

 伊川徹は、このあと『殺し屋』として育成されます。迫力がある展開です。読んでいて『殺し屋』というよりも『暗殺者』の雰囲気があります。自分を信頼している相手を裏切る。あるいは、自分を信用させて裏切る。非情です。

 宮田正克(みやた・まさかつ):高知県生まれ。横浜にある大学卒業後、消防士になった。薬物依存があったがばれなかった。退職して、自動車修理工場を自営している。伊川徹を雇った。

 読んでいて思うのは、それぞれが、わけありのひどい過去をもっているのですが、家族に恵まれなかったからといって、全員が悪の道に走るわけではありません。大部分の人は、一生懸命がんばって、自分なりに自分が望む家庭を築こうとします。ゆえに、こどものころの家庭環境が悪いと悪い人間ができあがるというような考えはもたないでほしい。

 小説だからできることがたくさん書いてあります。
 小説だと思って読んでいないと、頭がおかしくなりそうです。
 感化されてはいけない。(暴力や脅迫・恐喝を肯定することに共感をもってはいけない)
 読み手と書き手との戦いがあります。

 圧倒的な暴力があります。
 三菱のアウトランダー(車です)には、仕事で用事があって試乗したことがあるので、雰囲気がわかります。どうも書き手さんは三菱車に興味があるようです。このあと、三菱ランサーエボリューションという単語が出てきました。

 登場人物が増えてきて、人間関係が広がってきたので、状況を把握するためにメモが続きます。

 327ページで文章の固まりと固まりの間を4行開けてあります。この間(ま)がいい。不気味です。

 雰囲気や流れとして同様、類似に感じるのが、村上龍作品『半島を出よ 上・下 村上龍 幻灯舎』が思い浮かびます。
 半島というのは、朝鮮半島であり、敵国は北朝鮮です。まず登場人物の多さに圧倒されます。近未来の日米北朝鮮関係でしょうか。北朝鮮が日本を軍事攻撃する内容となっています。

(つづく)

 神奈川県相模原市にある更生保護施設にいる土方コシモをNPO法人職員矢鈴が引き取ります。土方コシモは17歳になっていますが、両親殺しの過去があるので、引き取り手がいなかったですが、悪の手先が彼を利用するために上手に施設から引き出しました。土方コシモの身長は2m2cm、体重は104kgです。でかい。(土方コシモは「殺し屋候補その1」です)

 宇野矢鈴(うの・やすず):ニックネームは『マリナル(マリナルショチトルが最初の名前。メキシコにあったアステカ帝国のナワトル語。マリナルはマリナリで「草」のこと。ショチトルは「花」のこと。戦争の神の妹を意味するそうです)』彼女は洗脳されています。自分は社会奉仕のために働いていると思い込んでいます。実際は保護した子どもの内臓を売買することに加担するのでしょう。

 自分は読解力がないので、ていねいにメモしながら、メモを見返しながら、だれがどんな人なのかを確認しながら読まないと内容を理解できないタイプです。

 ブライアン・トレド:パブロ・座波の知り合い。元米国海兵隊員。沖縄在住のナイフをつくる職人。日本人妻あり。

 川崎港に巨大な船『ドアビル』が寄港しました。インドネシアの港から着いたのです。世界最大のクルーズ船です。

 バラクーダ―:この本の場合は、ショットガンのことです。
 川崎市内の自動車解体場で、射撃訓練が実施されます。
 記述を読んでいると、先日元首相を銃で撃った犯人の山中での射撃練習光景と同じような雰囲気が伝わってきて不気味です。
 その後のページには『カルト宗教の信者のように洗脳されているのか……』という文章が出てきます。
 
 電気ドリル(エル・タラドロ):自動車解体場の従業員。19歳。日系ブラジル人四世。フラビオ・カワバタ。14歳までブラジルで暮らした。身長168cm。

 伊川徹(いがわ・とおる):愛称『スクラップ(ラ・チャータラ)』31歳。178cm。154kg。腕力がすごい。2006年(平成18年)5月22日20歳の誕生日に人を殺して服役した。懲役19年を2017年に11年の服役で仮釈放された。

 マンモス(殺し屋候補その2):仲居大吾(なかい・だいご)。29歳。191cm。(この物語に登場する人物は、背高のっぽ(せいたかのっぽ)ばかりです。最後は、みんなでバスケットボールチームをつくるというところで終わるのだろうか。今、348ページ付近にいます)。高校時代にボクシングで2回国体に出場した。元消防士。自動車解体場社長宮田の後輩(互いに面識はない)

 宮田正克(みやた・まさかつ):高知県生まれ。横浜にある大学卒業後、消防士になった。薬物依存があったがばれなかった。退職して、自動車修理工場を自営している。伊川徹を雇った。

 ヘルメット(殺し屋候補その3):大畑圭(おおはた・あきら)。26歳。177cm。79kg。暴走族元リーダー。板金工。傷害致死の前科あり。

 殺し屋練習生の練習台はホームレスです。恐ろしい話です。おいしい話を聞いて連れてこられたのでしょう。テスカトリポカ(口から煙を吐く鏡。闇の神。化身ができる)が支配する世界です。

 ボウイナイフ:大型の鞘付きナイフ。鞘(さや):刀身の部分をおさめる筒。
 シースナイフ:鞘におさめるナイフ。キャンプに使用する。ボウイナイフより小さい。
 
 野村健二:奇人(スペイン語で、エル・ロコ)闇の医師。川崎市を拠点にする内臓の売人。末永充嗣の知人。

 ニコルソンのヤスリ:米国ニコルソン社。

 シトロエン・ベルランゴ:フランスの自動車メーカーシトロエン社の車。ミニバン。

 Cボーン:この物語の場合は、人骨で、頭蓋骨(ずかいこつ)のことでしょう。(違っていました。あとでわかりましたが、死んだこどもの大腿骨だそうです。売り物になるそうです)

 367ページ付近を読んでいます。
 登場人物の彼らは、これから何をするのだろう。
 あと187ページです。

(つづく)

 ニックネームで読む登場人物がたくさんです。老化著しい脳みそなので、記憶が追いつきません。人物名とニックネーム、人物像を赤色で書くことにしました。なんども見返します。誤った理解が発生するかもしれません。

 尾津利孝警部補(おず・としたか。悪人の味方。悪人からお金をもらっている)
 後藤和政巡査(尾津の悪事を何も知らない)

 A&Wルートビア:アメリカ合衆国の清涼飲料水

 『ひろいかぜ』『じかんがふろにはいっている』
 「コシモにとって時間は、主体や事物の容れ物(いれもの)ではなく、生命そのものだった……」とあります。その部分を読みながら、ミヒャエル・エンデ作品『モモ』が思い浮かびました。時間どろぼうが登場します。
 歳をとってきて考えることのひとつに『時間』があります。自分は自分の寿命がつきるまでに、あと、何時間生きていられるだろうかということです。そして、その時間をだれのために使おうかということです。自分以外のだれかのために時間を使いたいと思うのです。

 山のように背の高い男をブラジルでは「モンターニャ」と呼ぶ。

 ドゴ・アルヘンティーノ:アルゼンチン産大型狩猟犬。闘犬。

 読んでいてのことです。なんだろうこの違和感は。
 スーパーマンばかりです。
 小説は、スーパーマンを描く舞台なのだろうか。
 むしろ、そうでない人を書く場所ではないのだろうか……
 だって、人間は悩むのです。
 こちらの人間たちは、いっさい悩まずに殺戮行為を(さつりくこういを。むごたらしく人や動物を殺す)なさるのです。
 土方コシモ(ひじかた・こしも)には、悩みがありません。
 力(ちから)の世界です。

 『断頭台(エル・パティブロ)』自分はギロチンと認識しました。土方コシモのニックネームです。

 メキシコ人ルチャドール:メキシコ流プロレスラー。覆面(ふくめん)選手。

 毒(エル・ベネノ):悪役のルチャドール

 トヨタ・ヴェルファイア。作者は車好きのようです。いろんな車種が出てきます。

 まあ、いけにえの儀式があります。
 こういうのが好きな人向けの小説です。
 自分はにがてです。
 『人身供犠(サクリフィシオ。じんしんくぎ)』
 
 409ページ付近。こどもたちの名前とメッセージがあります。
 ゆうじ、けいすけ、えみり……
 児童虐待に対する作者の強い抗議のメッセージを感じます。

(つづく)
 
 こども心臓が約6億4000万円です。一発で支払うことができる外国人の富豪がいます。富豪のこどもが心臓の病気で死にそうなのです。戸籍はないけれど元気な日本人のこどもの心臓が外国人のこどもに移植されます。ひどい。この物語の根底に流れる生け贄(いけにえ)ともイメージが重なります。
 『チョクロ』という方法だそうです。

 おそろしいことがいっぱい書いてある418ページ付近です。

 土方コシモは、まだ18歳です。2m6cm、118kg。うーむ。相撲部屋に入れたい。
 土方コシモのニックネームは『断頭台(エル・バティブロ)』です。ただし、調理師(バルミロ・カサソラ)から『坊や』と呼ばれているそうです。仮想の父子関係があります。

 『けむりをはくかがみ』が『テスカトリポカ』です。
 重々しい文章です。
 『そして、すべての神々は人間の血と心臓を食べて生きている……』いけにえを神にささげないと、太陽も月も輝くことをやめるのです。だから、おおぜいの人間が生き残るために犠牲が必要なのです。(考え方として、そういう考え方はあります。目的を達成するために最小限の犠牲はしかたがないとういう考え方です。戦争における戦死者もそうなのでしょう

 431ページまできました。ゴールは、553ページです。
 このあたりから、この集団は『滅び』へと向かっていくのでしょう。(自分の予想として)

 こどもが気づきます。
 『みんな ころされる』
 
 『ジャガーと鏡』どちらも神。
 『トシュカトル』は、祝祭。 
 テスカトリポカの分身となる少年がいる。分身として一年を過ごす。一年を過ごしたあと『夜と風』へと帰る。夜は暗く、風には体が無い。目には見えない。触れることもできない。神はもともと見えないし、触れることもできない。(読みながら、そう理解しました。むずかしい宗教的世界があります)
 
(つづく)

 ようやく読み終えました。
 力作でした。
 最後に近づくにつれて、物足りなさが生まれました。
 暴力シーンがあるものの、ストーリー展開があまりありません。
 『テスカポリカ』というアステカ文明における闇の神「煙を吐く鏡」の解説本です。
 
 マクアウィトル:武器。アステカの戦士が使用した。大きな刀(かたな)のような形状。最強の戦士たちが持つ。殺すだけの武器ではない。殺さずに生け贄(いけにえ)にするために使用することもある。
 
 増山礼一:仙賀組の事務局長。
 仙賀忠明:仙賀組長
 谷村勝(まさる):若頭(わかがしら)
 
 ゼブブス:川崎拠点の犯罪組織。半グレ。ベトナム系日本人とベトナム人の集団。リーダーは、タム・ホア。構成員として、森本中秋(もりもと・なかあき)

 殺し屋集団の能力はすごいのですが、いくら腕力が強くても、銃弾を受けたら命は落ちると思いながら続きを読みました。

 順太という9歳男児の日記にある言葉として『みんな ころされる。』
 読んでいて“みんな”というのは、こどもではなく、悪党たちを指す「みんな」ではないかとピンとくる。

 聖書の言葉がキーワードになります。
 マタイによる福音書。九章とあります。
 『わたしが求めるのは憐れみ(あわれみ)であって、いけにえではない……』
 
 父と息子の関係があります。
 「巨人の星」の星一徹(ほし・いってつ)と星飛雄馬(ほし・ひゅうま)のようです。
 ふたりは、夜空に輝く巨人の星(たぶん一番輝きが強い金星)を見上げながら話をするのですが、こちらの物語でも星の話が出ます。
 こちらの物語では、太陽と月の状態について話が出ます。
 2017年8月21日に皆既日食があった。

 2021年8月14日土曜日。禿鷲の十三日間

 昔自分が教わったことです。
 組織は、外部からの力で壊れるのではなく、内部からの力によって壊れる。

 髑髏:どくろ。頭蓋骨(ずがいこつ)。これもまた商品になるそうです。白骨化した人の頭部。

 ハッカー:コンピューターやインターネットに侵入して悪事を働く人。もとの意味は、善悪は関係なかったそうです。

 そうか、ベース(下地)は『忠臣蔵(ちゅうしんぐら。仇討(あだうち)』なのか。やったらやりかえされる。復讐劇なのです。

 2021年8月26日木曜日午後9時すぎ。事件は起きた。
 この世に『無敵』はありません。一時的な無敵はあっても継続はしません。完全勝利者はいないのです。
 『テスカポリカ』が場をしきるのです。(その場をコントロールする)
 もう、人間同士の戦いではなくっています。
 化け物同士、いや、神さま同士が戦っている情景が見えます。
 圧巻の迫力に満ちたラストシーン近くでした。
 
 ページ数は多いけれど、凝縮した一点(いってん)への集中がすさまじい。みなぎるエネルギーを爆発的に発散させる作品でした。


 ずいぶん長い感想メモになってしまいました。
 読みごたえのある作品でした。(読むことによって得られる充実感がありました)
 自分が創作活動をするとき、企画の栄養にするための読書記録メモです。
 自分以外の人にとっては、教科書ガイドのように、読書の手助けになれば幸いです。

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