2022年05月31日

海を見た日 M・G・ヘネシー

海を見た日 M・G・ヘネシー/作 杉田七重(すぎた・ななえ)/訳 すずき出版

 本のカバーにある文を読むと、孤児を扱った内容のようです。
 ずいぶん、日常生活から離れた話題だなという第一印象でした。
 非常に少ないケースについてのお話を読書感想文の課題図書にすることの是非(ぜひ。適切なのかそうでないのか)について、しばし思いにふけました。今回このパターンの選択で選ばれた本が多い。

 ちょっと手間がかかる本に見えます。
 自分は、物心(ものごころ)がついたこどものころから本読みが好きですが、読解力(どっかいりょく。本の内容を正しく把握して理解する)はたいしたことはありません。勘違いもけっこう多い。
 力不足なので、メモをしたり、読み返したりして、ていねいに読むことを心がけています。
 この本は読みこめるだろうか。ちょっと心配になってきました。

 読書感想文を書くということは、とてもむずかしいことです。
 だれもがすいすいと書けるわけではありません。むしろ、きちんと文章をかける人(こどもさんはとくに)のほうが少ない。
 されど、本を読むことで、心が救われるということはあります。心の支えとなってくれる本との出会いもあります。そんなチャンスを失わないように、本のガイドブックとなるような文章をこどもたちに提供したいと思っています。

 登場人物たちが、ひとりずつ、かわるがわる、一人称で自分語りをしながら、物語が進行していくシステムです。(まず、全体を1ページずつゆっくりめくりながら、最後のページまで到達してみました)。
 ひとり語りのリレーパターンです。
 アメリカ合衆国内の話です。
 孤児たちが里親に預けられています。(作者あとがきに、ロサンゼルスの福祉制度で3万人ぐらいのこどもたちが里親制度を利用しているとありました)
 役所もからんでいます。(ケースワーカー:ひとつひとつの事例のアドバイザー(助言者。支援者。良き方向へコントロールしてくれる人)のようなもの)
 以下、ひとりのアメリカ合衆国への移民であるロシア人女性里親に預けられている孤児たちなどです。
 
 クエンティン:男の子。もうすぐ11歳(237ページ)アスペルガー症候群がある。人と話すことがむずかしい。どう行動すればいいのか本人がわからなくなることがある。機械仕掛けの人形みたいな動きをする。ロボットのよう。
 『ベビー・バック・リブ、ベビー・バック・リブ、ベビー・バック・リブ』としゃべる。ベビー・バックは、CM(シーエム。コマーシャル)に出てくるロースの骨付き肉のこと。あとは『ママ』と言う。『ママに会いたい』学校では、特別支援の先生が必要となる。『うち』『幌馬車隊』ともつぶやく。(ママの名前は227ページに『エマ・ノックス』とあります)
 同じく里子(さとご)である同部屋のヴィクから『Q』と呼ばれる。
 クエンティンは、服を着たまま、靴をはいたまま、二段ベッドの下で夜寝る二段ベッドの上には、ヴィクが寝ているが、ヴィクはいつもなにかぶつぶつしゃべっている。自分はスパイだ。活動中だという架空の空想物語を語り続けている。
 クエンティンの家は『トーランス(カリフォルニア州ロサンゼルスにある都市。ロスアンジェルス群で一番安全な町らしい)メープル通り619番地』にある。母親が病気で、こどもの養育ができないらしい。(母親は、人を閉じ込めておく施設のようなところにいるらしい(トーランス・メモリアルという名称の病院でした))

 ヴィク(ヴィクトリオ・キンテロ):11歳。小学5年生。里親のところにヴィクを迎えに来るかもしれない親の存在あり。
 ヴィクは、自分は、アメリカ合衆国政府のもとで、8歳以下のスパイグループ(DEEC。デルタ・エリート・イーグル・コープス)に属してスパイとして(秘密情報を自分の組織に流す)働いていると思い込んでいる。上司の名前が、バクスター司令官。
 父親は南米エルサルバドル出身で、現在は同国の刑務所で収監されている。(しゅうかん。入れられている)という設定で、ヴィクの頭の中で父親の存在がある。
 エルサルバドルの公用語はスペイン語。
 ヴィクは、ローガン通り小学校に通っている。(理由はわかりませんが、小学校には、中学二年生までが在学しているそうです)
 薬を服用している。(ADHD:注意欠陥・多動性障害)
 クエンティンをクエンティンのママに会わせるという強い意思をもつ。

 ナヴェイア(ミス・パーカー(名字みょうじ)):のっぽの黒人の女の子。13歳。中学2年生。ヤングケアラーみたいに、自分の年下の孤児たち(血縁関係はない)のめんどうをみている。自分も孤児。ヴィクとマーラのめんどうをジェイダとみている。11年間で7軒引越した。(里親が変わった)
 大学に行きたい希望が強い。大学に行くために、今はいろいろと我慢している。
 将来の希望として、大学に入るまで里親ミセス・Kの家に居たい。奨学金をもらって、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)に入学したい。医師になりたい(お金で苦労する生活とはさよならしたいからという理由もある)
 高校は、ベルモント・ハイスクールに通うつもりである。
 将来は自分の家を持つ。猫を飼う。
 2歳で母が死去。父は不明。自分のことは自分でやるしかないと思っている。
 去年の10月に今の里親ミセス・Kのところに来た。

 代数(だいすう):数学の一分野(いちぶんや)。数の代わりに文字を使う。a、b、c、dとか、xとか、yとか。

 パルクール:スポーツの種目? 走る、跳ぶ、登る。

 ジェイダ:女子。弟あり。ナヴェイアの相棒。

 マーラ:里子の小さな女の子。8歳(112ページに記事あり)ラテンアメリカ系の人種。目が大きい。黒い巻き毛がもじゃもじゃ。髪の毛が伸びている。ヴィクとは違う学校に通っている。静かな女の子。あまりしゃべらない。しゃべるときはスペイン語でしゃべる。
 ブエノ?(スペイン語で、元気?)
 以下、スペイン語です。
 ドンデ・バイス?(どこへ行くの?)
 マーラは、去年の9月に今の里親ミセス・Kのところに来た。
 アズール(青色) アマリージョ(黄色) ロッホ(赤色)
 数の1、2、3が、ウノ、ドス、トレス。
 ドーラ:ドーラと一緒に大冒険の映画に出てくるおかっぱ頭(マッシュルームカット)の女の子。
 ラ・エクスプロラドラ:冒険者
 メ・グスタ・ドーラ・タンビエン:わたしもドーラが好き。
 ノルテ:北
 ラ・プラヤ:ビーチ(海の砂浜)
 ポニス:子馬のポニー。マーラは、ポニーに乗りたい。
 ポル・ファボール:お願い!
 ピングイノス:ペンギン
 ガ・ファス・デ・ソル:サングラス
 ケ・パサ?:どうしたの?
 テ・キエロ・ミ・ヴィクトリオ:愛してるわ、わたしのヴィクトリオ。
 ミ・ファミリア:オレの家族

 ミセス・K:ロシアからの移民。こどもたちの里親女性でロシア人。養母。正式な名は、ミセス・クズネツオフだが、言いにくいので、ミセス・Kとこどもたちには呼ばれている。けっこう歳をとっている。
 クエンティンが言うには「への字口(くち)の女の人」
 ロサンゼルス滞在歴20年。雇われ仕事をしている。勤務時間が不規則で長そう。
 夫は亡くなった。夫の好物がミートローフだった。
 こどもがほしかったが、夫との間に、こどもができなかった。こどもが好きだから里親になることを申し込んだ。

 アリーヤー:孤児ではない。両親あり。美人。人気者。豪邸に住んでいる。家に巨大スクリーンのテレビがある。ケースワーカーのミズ・ジュディと仲良し。

 ミズ・ジュディ:ケースワーカーになったばかり。クエンティンが言うには「くちピンクの人」

 数ページ読んで、ふと思う。
 親がいても、ひどい親のときがあって、そんな親ならいないほうがましというときもある。

 ミセス・コルボーン:学校の用務員

 マリオ:以前、里子としていた少年。14歳だった。ヴィックと同室だった。
 レッドバインズ:赤いキャンディ。

 ミスター・ペプルス:クエンティンが飼っていたペット、たぶん犬の名前。

(つづく)

 タイトル『海を見た日』は、生まれて初めて海を見た日のことをいうのだろうか。(読み終えた時にわかったのですが、284ページに訳者のあとがきがあり、そこで原題の説明がなされています)
 カバーにある英文タイトルらしきもの『The Echo Park Castaways』は、読み始めたいまのところ意味をとれません。エコーパークというのは場所の固有名詞「エコー公園」だろうか。Castawaysは、「捨て子」という意味にとりました。(18ページに、「このあたりエコーパーク」という文章が出てきました)エコーパークという地域に住む里親に預けられているこどもたちというのが、原題書名の意味なのでしょう。エコーパークは、ロサンゼルスの貧困地帯に属するそうです。(あとでわかりますが、夜はぶっそうです。酒とケンカ、カーレースで車がスピンしているそうです)
 カバーには、浜辺を歩く4人の少年少女の姿があります。
 後ろから二番目を歩いている背の低い髪の毛もじゃもじゃの女の子が、マーラでしょう。
 一番後ろを歩く女の子が、のっぽの黒人の女の子であるナヴェイアでしょう。
 さらにその前を歩く男子ふたりが、クエンティンとヴィクでしょう。どちらがだれということはわかりません。

 ロサンゼルスのフォスターケア制度:里親制度。虐待する親からの分離。親が養育できないこどもの受け入れ。一時的な預かり。

 五月のメモリアルデーまでは、白い服とか白いズボンは着てはいけないそうです。なんのこっちゃいな。(クエンティンの語りです)
 五月のメモリアルデーとは何?:5月31日アメリカ合衆国戦没者追悼記念日。5月の最終月曜日が祝日になる。
 (上を書いてからその後付け足した記事として:たまたまきょうがメモリアルデーであることを知りました。日本時間は5月31日火曜日朝です。アメリカ合衆国は、時差があるので、日本の5月30日夜から31日朝にかけてが、5月30日の昼間です。「米国株式市場は、本日はメモリアルデーなので休場です」という記事をたまたま目にしました)

 セフォラ:フランスの化粧品・香水店

 ヨーダ:映画「スター・ウォーズ」に登場する人物。

 44ページ『裕福な家に生まれれば、安楽な人生が送れる』→裕福な家が永久に裕福であるという保障はありません。ぼーっとしていたら、財産はなくなってしまいます。

 里親の分析・批評があります。
 里親になるのは、①宗教にのめりこんでいる人 ②金目当ての人(役所から養育費が支給されるようです。だから、こどもを複数預かる。今だと、ひとり13万円ぐらい支給される) ③こどもが好きな人

 ミュージカル「アニー」の原作:小さな孤児アニー

 ウェルカムセンター:ちょっとよくわかりませんが、日本で言うところの「児童相談所」だろうかと想像しました。(279ページの作者あとがきに説明があります。ロサンゼルスにあった施設の名称だそうです。問題があって、2016年に閉鎖されたそうです。こどもを長期間とめおいたことがいけなかったそうです)
 児童家庭サービス:これも役所の組織っぽい。
 児童家庭センター:これも役所か。

 49ページ付近を読んでいます。
 悲しい思いをしているこどもたちの独り言(ひとりごと)が聞こえてきます。
 だれかに聞いて欲しいのだろう。
 読者に向けて、ぶつぶつつぶやいています。

 ミス・マネーペニー:スパイ映画『007シリーズ』に登場する女性。

 この物語をよりよく理解するためには、洋画『スター・ウォーズ』を観たことがある体験が必要です。

 75ページ付近を読んでいます。
 なかなか悲惨な状況が続きます。

 オレゴン・トレイル:シュミレーション・ゲーム(仮想体験ゲーム)。アメリカ合衆国の西部開拓時代を素材にしたコンピューターゲーム。

 2012年に映画館で観た洋画『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』を思い出します。脳に障害がある少年の物語でした。オスカー・シェル10歳が主人公という自分の鑑賞記録が残っています。

 スロッピージョー:料理の名前。ひき肉にトマトソースとスパイスに味付けがしてある。

 CIA(シーアイエー):アメリカ合衆国中央情報局。アメリカ合衆国の安全保障のために情報を収集・処理・分析する組織。

 ドゥカティ:イタリアのオートバイメーカー

 クエンティン、ヴィク、マーラ、ナヴェイアの4人は、クエンティンの母親が入院している病院をめざすことになりました。
 路線バス、そして、地下鉄に乗ります。

 グリンチ:アメリカ合衆国の児童向け絵本のキャラクター。緑色の体と顔をしている。

 ドーラといっしょに大冒険:アメリカ合衆国の冒険映画。

 ヒル・アンド・ファースト:地名。

 ピットブル:犬。闘犬みたいで怖そうな犬(物語の中ではホームレスといっしょにいる犬。犬の名前が「ガス」)
 (読みながらですが、知らない言葉が次々と出てきます。読づらくて、意味を調べることが大変なのですが、意味がわかるとお話の内容が見えてきて楽しい気分になります)
 
 イングルウッド:ロサンゼルス南西部にある都市。

 ホームレス:住居の無い人

 マリポサ/ナッシュ駅:ロサンゼルスメトロの駅。ナッシュストリートとマリポサアベニューにある。

(つづく)

 277ページあるうちの243ページまで読みました。
 なかなかいい。
 クライマックスは盛り上がります。(ここに内容は書きません)
 外国作品です。映画化されるといいなと思いました。
 まだ読み終えていませんが、今年読んで良かった一冊です。
 結末はこれから読みます。

 レドンドビーチ:ロサンゼルスにあるビーチ(砂浜海岸)
 パブリック・リレーションズ:企業、団体、個人が、世論の支持を得られるように行う活動。
 リヴィエラ・ヴィレッジ露天市:ビーチにある市場
 チュロス:揚げ菓子。スペイン、ポルトガル、モロッコ、キューバなど、ラテンアメリカ各国で食べられている。
 マカロニチーズ:ゆでたマカロニをチーズソースでからめたもの。
 ジオード(晶洞石しょうどうせき):水晶にある空洞。

 心に響いた言葉として、
(ナヴェイア)『わたしたちは、ひとりでやっていかないといけないの。だれもわたしたちのことはいらない……』
(ナヴェイアがヴィクに向かって)『それに、少なくともあんたの父親は生きている。わたしのお母さんは死んでいて、お父さんはだれかもわからない……』
(ナヴェイアがヴィクに言ってはいけなかった言葉として)『ねぇ、ヴィク、妄想(もうそう)の世界でずっと生きていくことはできないんだよ』
(クエンティンの笑いながら叫んだ言葉)『オナカスッキリ! ナヤミスッキリ!』
(ナヴェイア)『これが海。わたしの生きる世界に、こんなにも、こんなにも美しいものがあった……』
(ナヴェイア)『わたしたちのあいだをへだててた壁に、大きな突破口があいたような。』
(ヴィク)『かあちゃんはオレが赤ん坊のときに死んだ……(死んだ原因は出産時の難産にあるらしい)』そのあとの、亡き母を思うヴィクの語りにしんみりきます。(心にしみる)そして、6歳すぎの頃、父親も姿を消します。(ヴィクはそれから、仮想の世界で生きることにしたのです)
(ナヴィア)本当の親子じゃないから、里親の名前のスペル(アルファベットのつづり)を知らない。ほかに3人いる里子の誕生日も知らないというショックと嘆き。
(ナヴィア)『考え方を変えたの』
(ヴィク)『だれかに体を乗っ取られたような気がしたから……』
(ヴィク)『(里親の)ミセス・Kもすごくさみしいにちがいない。友だちや親戚もいない……』
(ヴィク)『“もっといいところ”なんてない。みんなここがいいんだ』

 スター・ウォーズのタトゥイーンの宇宙港モス・アイズリーの酒場:そういうシーンがありました。

 クエンティンが背負うリュックの隠しポケットの中から、病院で入院しているママが入れてくれた<緊急事態のときにつかう5ドル>が出てきました。
 邦画『ALWAYS 三丁目の夕日』に似たようなシーンがありました。思い出すと泣けます。薬師丸ひろ子さんが演じるおかあさんが、小学生の息子である一平のセーターのひじつぎあてに、お守りを忍ばせてくれたシーンがありました。お守りの中には、いざというときに使うお金が入っていました。一平はそのお金でピンチを克服しました。

 ヴィクは生まれてから一度も海を観たことがありません。(ゆえに、海を見た時に感動します)

 集団の動きをコントロールしてきたナヴェイアの気持ちに変化が生まれます。『抑制、抑圧、否定』から『許容、許可、だめをやめる』です。
 これはこうしなければならないというしばりをときます。
 心にゆとりが生まれます。ふだんは、追われているような気分で生活をしていました。
 気分がおだやかでリラックスしています。
 海を見て、心が広くなりました。
 ナヴェイアも海を見るのは生まれて初めてです。『これが、海』という頭の中での考えがあります。
 (旅先で、美しい景色を見ると、今までがんばって生きてきて良かったと思うことがあります)

 R2-D2:スター・ウォーズに出てくるロボットキャラクター。さまざまな機能を兼ね備えた優秀なロボット。キャタピラー付きの三本足で移動する。親友が人型ロボットのC-3PO(シースリーピーオー)
 レイア姫:スター・ウォーズに出てくる女性キャラクター。
 
 里子だったシルヴィアとアーニャは、ハイスクール入学と同時に里子の契約が切れた。
 ナヴェイアはそのことを知らなかった。ナヴェイアの精神状態は不安定になります。

 215ページからのヴィクの語りは、胸に深く刺さる内容です。
 6歳の時、父親と一緒にガレージ(車庫)で暮らしていたから始まります。人間扱いされていない父子の生活がありました。血縁関係がある親族からも冷たくされます。

 自分の読書歴を振り返ってみると、貧しきアメリカ合衆国の人たちはみな、カリフォルニア州を目指して移動します。
 カリフォルニア州の豊かさを求めるのです。
 『怒りの葡萄』スタインベック作品がありました。
 
 シピティオ:トラブルメーカー(トラブルをつくる人)

 スパニエル犬(けん):鳥猟犬(とりをとる猟犬りょうけん)の種類

 ブラックパンサー:アメリカ合衆国の映画

 読んでいて、クエンティンのママは自殺なのかと思いました。(違いました。本を読んでください)

 親も里子(さとご)だった。
 貧困の連鎖があります。
 虐待された親は、自分の子を虐待する。
 ふつう、親になると、自分が育てられたように子を育てます。
 親のやり方がわからないという親は多い。

 『ニューファミリー』をつくる。
 自分が恵まれないこども時代を送るこどもは、自分がおとなになって、ちゃんとした自分の家族をつくろうと思い努力する。
 ちゃんとやってくれない親に期待しても報われない。(むくわれない。いい結果にはつながらない)
 親に捨てられた子は、親をすてるぐらいの気持ちでやっていけばいい。
 そこまで思わせてくれる説得力があります。
 (映画化されるといいな。邦画でもいい。日本人に置き換えてもいい)

 『物語』が必要なこどもたちがいます。
 恵まれない環境を一時的にでも忘れるために架空の世界へ逃げ込むための『物語』が必要なのです。
 
 みんなは、みんなで、課題を克服しました。
 仲良く暮らす。
 協力して生活する。
 血がつながっていなくても『家族』になる。

 こどもには『未来』がある。
 やりかたしだいで『未来』は明るくも暗くもなる。

 作者からは、強いメッセージが発信されています。
 血がつながっていなくても『家族になろうよ』です。

 読み終えて、達成感と爽快感(そうかいかん)がありました。

 中学生が本の内容を理解するには人生体験不足でしょう。

<役者あとがきから心に響いた文節として>
 「house(ハウス)」と区別して「home(ホーム)」
 ホームは、家族とともに安心して暮らし、くつろぎを与えてくれる場。

 もうすぐ11歳になる男子であるクエンティンは、自閉症とされています。
 同じく自閉症の青年の本を読んだことを思い出しました。

 『跳びはねる思考 東田直樹 イースト・プレス』『自閉症の僕が跳びはねる理由 東田直樹 エスコアール』この二冊を思い出しました。
 見た目は障害者なのですが、脳の中身は普通なのです。
 読んだ時の自分のコメントが残っています。

 <常識の枠を破って、世界観が広がる本です。会話ができない自閉症である著者が自らは意識をもっていることを証明しています。その知能レベルは高い。22歳同年齢の健常者以上です。奇跡を感じます。驚きました。
 彼が使用しているのは、1枚のペーパーのような文字盤でした。アルファベットを指でさして意思表示をするのです。シンプルです。文字による会話の最後に必ず「おわり」が入ります。読書の途中からその「おわり」の部分は意識して読まないようにしました。そのほうが読みやすい。
 こどもの頃は、つらくて苦しいことばかりだったとあります。挨拶は苦手でできない。
 行動を自分でコントロールできない。フラッシュバック(突然過去の嫌だったことが脳によみがえる)で、体が勝手に跳びはねる。
 ストレス解消法は乗り物に乗ること。時間と空間の感覚の旅ができるそうです。悲しいとか、つらいとかいう感情から解放されるそうです。
 家族からの声かけは、光そのものだった。自身は、別の世界から現実の出来事を見ているような感覚がある。
 カラオケが好き。会話はできなくてもカラオケはできる自閉症患者さんはいるそうです。彼は、音楽と文学の重要性を説きます。
 心に残ったフレーズとして、「明日に希望を求めるのではなく、今日のやり直しを明日行う。」それから、「僕が流した涙と同じくらい、家族も泣いてくれた。」心優しい人です。類似集団にレッテルを張るのではなく、ひとりの個人としてみる。>

 以前施設入所中の障害者多数を殺傷する事件がありましたが、東田直樹さんの本を読むと本当のことがわかるのです。(障害者の心の中にある風景と気持ち)
 <原稿は、筆談、パソコンで作成されています。障害者が何を考えながら生活を送っているのかがわかる本です。病気で、意識、認識なく生きているという見方は間違っていることがわかります。書中にある言葉、見かけだけで判断しないでくださいが、胸に突き刺さります。何のために人としてこの世に生まれたのだろうという言葉も重い。感情がないのではなく、感情はある。知能が低いのではなく、知能はある。>

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