2022年05月23日
ねにもつタイプ 岸本佐知子
ねにもつタイプ 岸本佐知子 ちくま文庫
翻訳家、エッセイストの方です。
書評の評判がいいので、読んでみることにした一冊です。
ねにもつタイプ:いつまでもうらみます。忘れません。
今年2月、ロシア侵攻の被害にあったウクライナ人女性のインタビュー時の言葉を思い出しました。『(今回のことは)絶対に忘れません。(今回のことは)絶対に許しません』
単行本は、2007年(平成19年)に発行されています。
52本のエッセイです。(自由に気ままに書いてある)
ただ、読み始めてしばらくして感じたことですが、エッセイというよりも物語として仕上げてある作品群です。
内容は、うらみつらみというよりも、細かい観察です。(つらみは、「つらい」の意味)
独特です。
最初の作品では、幼稚園児だったころの自分の思考について書いてあります。
凡人とはかけ離れて超越した世界観をおもちです。文章もうまい。
芸術家に分類される脳みそをおもちです。
一般的な会社員OLさんには向かない性格・人格・能力者でしょう。
事務職仕事や接客業は、にがてそうです。
フリース:ポリエステルでつくられた柔らかい起毛仕上げの繊維素材。
ゴブラン織り:こどものころの昔のミシンに関する記述で出てきた言葉です。つづれ織り。花、絵画調の柄など。
ミシンに関する文章による状況の描写は細かい。
まるで、ミシンが宇宙に飛び出していくような発想です。
ここまで読んで感じたことです。
人生という、始まりから終わりまでの間に『時間』という空間がある。
時間という空間の中に、千差万別で無数の人間の個性がある。
個性にはどれひとつまったく同じものはない。
てんでばらばらなのに「個性」は、仲間を求めて、あるいは、仲間を意識して、同じであろうとする。
(同じグループに属しようとする)
それが人間。
絵本作品ひろたあきら『むれ』角川書店が、自分の考察の下地にあります。
みんな違うのに、同じでいたいとする、現実社会でのお互いの誤解とか錯覚があります。
『気がつかない星人』は『気がきかない星人』でもあると記述があります。
発達障害の人をいっているようです。
レトリック:たくみな言い回し。じっさいは違うのにその場をやりすごすための社交辞令のようなものか。
自分は相手を友だちだと思っていても、相手は自分を友だちだと思ってくれていないということはよくあります。恋愛も同じでしょう。愛していても愛されていない。みせかけだけのお付き合いがあります。
横浜マリンタワーがらみの記述があります。
自分も妻と妻の父と三人でいっしょに、横浜マリンタワーの展望室から、午後9時過ぎの夜景を見たことがあります。
港周辺の灯りが、きれいでした。
昨年秋に90歳の義父を見送りました。
読みながら、そんなことを思い出しました。
因業(いんごう):いこじ。がんこもの。
(つづく)
42ページに「五十円切手を二十枚ください」とあります。
消費税が導入されたこともあって、2022年の今は、はがきにはる切手は、63円になりました。
(記事は2006年以前に書かれています)
思い出話が多い。
幼稚園のとき。小学生のとき。高校、社会人になったばかりの頃など。
思い出がたくさんあるのでしょう。
つま:刺身や吸い物のつけあわせ。
自分がしでかしたミスを認めたくなく、自分の都合のいいように、自分の責任ではないという理屈をつくる作業があります。
外国人が犯罪行為で捕まったときに「悪魔がそうさせた」と主張するのに似ています。悪魔が悪いと悪魔のせいにします。
夜中、眠っているときにみる夢のような空想記述が続きます。
著者の不思議な個性が見えます。
なんでも文章にできる器用さがあります。
国会近くに所在する国会図書館を一般人も利用できることは知りませんでした。
そこの食堂のカレーが『一口食べると、そのまずさが病み付き(やみつき)になって……』と書いてあります。そんなこと書いていいのだろうか。出版されているからいいのでしょう。
お侍(サムライ)の「ちょんまげ」は、なぜあんなヘアスタイルになったのかという疑問が提示されています。答は明示されていません。NHKテレビ番組『チコちゃんに𠮟られる』で、問題として出題することができます。
109ページまで読んできて、内容が新鮮です。
これまでに、このような独創的な内容のエッセイを読んだことがありません。
好き嫌いが分かれるかもしれませんが、自分は好みです。
今年読んで良かった一冊になりました。
奥付(おくづけ):本の末尾の掲載。著者、編集者、発行者、発行年月日等
お財布に買い物をしたあとのレシートを大量に、まるで札束のごとく入れている人を複数知っています。
自分は、家計簿におおまかに記録したあと、レシートはごみ箱に入れています。
むだとも思えるレシートをお財布に入れていることが疑問で理由をたずねたことがありますが、明確な返答はありませんでした。入れておきたいから入れておくのです。心の病(やまい)かと思いました。
このエッセイの128ページに、著者が同様にレシートをためる人だということが書いてあります。いろいろその理由が書いてあります。空想が列挙されています。
著者は翻訳家です。以前読んだ本を思い出しました。不安定な職業です。『出版翻訳家なんてなるんじゃなかった日記 こうして私は職業的な「死」を迎えた 宮崎伸治 三五館シンシャ フォレスト出版』でした。
一般的な会社員や公務員などの仕事をしていると、その仕事でしか見ることができない世界を見ることができたり、体験したり、知ることができたりします。いわゆる役得(やくとく)のようなものです。
著者は、一般的な仕事も体験しておいたほうが、翻訳の仕事をするうえで役に立つとアドバイスを送られています。
『退職すること』は、いろんなことを放棄することにつながります。仕事で先日うちに来た業者の若い人に、最近の人はすぐ(仕事を)辞めるからやめちゃだめだよと少しアドバイスしておきました。
本の中で書いてあった記憶に残った文節として『会社員時代、やってもやっても残業が終わらない時に……』
エッセイの内容は、想像力、あわせて、創造力の固まりです。凡人のなせることではありません。
うーむとうなる表現がたくさん出てきます。『黒紐だと(くろひもだと)思ったらアリの行列だった』というような文章があります。
べぼや:はかなくきえたるあとかた
名作『アルプスの少女ハイジ』の内容を知らなかったというコメントには驚きました。
著者の思考が支離滅裂で驚かされますが、虚構なので『安全』です。
まずい食べ物を、おいしそうにたべることが好き。
百ポンドの赤ん坊:1ポンドは、約453グラム。45.3キログラムのベイビーか。今、翻訳している本に登場してくるそうです。
翻訳家、エッセイストの方です。
書評の評判がいいので、読んでみることにした一冊です。
ねにもつタイプ:いつまでもうらみます。忘れません。
今年2月、ロシア侵攻の被害にあったウクライナ人女性のインタビュー時の言葉を思い出しました。『(今回のことは)絶対に忘れません。(今回のことは)絶対に許しません』
単行本は、2007年(平成19年)に発行されています。
52本のエッセイです。(自由に気ままに書いてある)
ただ、読み始めてしばらくして感じたことですが、エッセイというよりも物語として仕上げてある作品群です。
内容は、うらみつらみというよりも、細かい観察です。(つらみは、「つらい」の意味)
独特です。
最初の作品では、幼稚園児だったころの自分の思考について書いてあります。
凡人とはかけ離れて超越した世界観をおもちです。文章もうまい。
芸術家に分類される脳みそをおもちです。
一般的な会社員OLさんには向かない性格・人格・能力者でしょう。
事務職仕事や接客業は、にがてそうです。
フリース:ポリエステルでつくられた柔らかい起毛仕上げの繊維素材。
ゴブラン織り:こどものころの昔のミシンに関する記述で出てきた言葉です。つづれ織り。花、絵画調の柄など。
ミシンに関する文章による状況の描写は細かい。
まるで、ミシンが宇宙に飛び出していくような発想です。
ここまで読んで感じたことです。
人生という、始まりから終わりまでの間に『時間』という空間がある。
時間という空間の中に、千差万別で無数の人間の個性がある。
個性にはどれひとつまったく同じものはない。
てんでばらばらなのに「個性」は、仲間を求めて、あるいは、仲間を意識して、同じであろうとする。
(同じグループに属しようとする)
それが人間。
絵本作品ひろたあきら『むれ』角川書店が、自分の考察の下地にあります。
みんな違うのに、同じでいたいとする、現実社会でのお互いの誤解とか錯覚があります。
『気がつかない星人』は『気がきかない星人』でもあると記述があります。
発達障害の人をいっているようです。
レトリック:たくみな言い回し。じっさいは違うのにその場をやりすごすための社交辞令のようなものか。
自分は相手を友だちだと思っていても、相手は自分を友だちだと思ってくれていないということはよくあります。恋愛も同じでしょう。愛していても愛されていない。みせかけだけのお付き合いがあります。
横浜マリンタワーがらみの記述があります。
自分も妻と妻の父と三人でいっしょに、横浜マリンタワーの展望室から、午後9時過ぎの夜景を見たことがあります。
港周辺の灯りが、きれいでした。
昨年秋に90歳の義父を見送りました。
読みながら、そんなことを思い出しました。
因業(いんごう):いこじ。がんこもの。
(つづく)
42ページに「五十円切手を二十枚ください」とあります。
消費税が導入されたこともあって、2022年の今は、はがきにはる切手は、63円になりました。
(記事は2006年以前に書かれています)
思い出話が多い。
幼稚園のとき。小学生のとき。高校、社会人になったばかりの頃など。
思い出がたくさんあるのでしょう。
つま:刺身や吸い物のつけあわせ。
自分がしでかしたミスを認めたくなく、自分の都合のいいように、自分の責任ではないという理屈をつくる作業があります。
外国人が犯罪行為で捕まったときに「悪魔がそうさせた」と主張するのに似ています。悪魔が悪いと悪魔のせいにします。
夜中、眠っているときにみる夢のような空想記述が続きます。
著者の不思議な個性が見えます。
なんでも文章にできる器用さがあります。
国会近くに所在する国会図書館を一般人も利用できることは知りませんでした。
そこの食堂のカレーが『一口食べると、そのまずさが病み付き(やみつき)になって……』と書いてあります。そんなこと書いていいのだろうか。出版されているからいいのでしょう。
お侍(サムライ)の「ちょんまげ」は、なぜあんなヘアスタイルになったのかという疑問が提示されています。答は明示されていません。NHKテレビ番組『チコちゃんに𠮟られる』で、問題として出題することができます。
109ページまで読んできて、内容が新鮮です。
これまでに、このような独創的な内容のエッセイを読んだことがありません。
好き嫌いが分かれるかもしれませんが、自分は好みです。
今年読んで良かった一冊になりました。
奥付(おくづけ):本の末尾の掲載。著者、編集者、発行者、発行年月日等
お財布に買い物をしたあとのレシートを大量に、まるで札束のごとく入れている人を複数知っています。
自分は、家計簿におおまかに記録したあと、レシートはごみ箱に入れています。
むだとも思えるレシートをお財布に入れていることが疑問で理由をたずねたことがありますが、明確な返答はありませんでした。入れておきたいから入れておくのです。心の病(やまい)かと思いました。
このエッセイの128ページに、著者が同様にレシートをためる人だということが書いてあります。いろいろその理由が書いてあります。空想が列挙されています。
著者は翻訳家です。以前読んだ本を思い出しました。不安定な職業です。『出版翻訳家なんてなるんじゃなかった日記 こうして私は職業的な「死」を迎えた 宮崎伸治 三五館シンシャ フォレスト出版』でした。
一般的な会社員や公務員などの仕事をしていると、その仕事でしか見ることができない世界を見ることができたり、体験したり、知ることができたりします。いわゆる役得(やくとく)のようなものです。
著者は、一般的な仕事も体験しておいたほうが、翻訳の仕事をするうえで役に立つとアドバイスを送られています。
『退職すること』は、いろんなことを放棄することにつながります。仕事で先日うちに来た業者の若い人に、最近の人はすぐ(仕事を)辞めるからやめちゃだめだよと少しアドバイスしておきました。
本の中で書いてあった記憶に残った文節として『会社員時代、やってもやっても残業が終わらない時に……』
エッセイの内容は、想像力、あわせて、創造力の固まりです。凡人のなせることではありません。
うーむとうなる表現がたくさん出てきます。『黒紐だと(くろひもだと)思ったらアリの行列だった』というような文章があります。
べぼや:はかなくきえたるあとかた
名作『アルプスの少女ハイジ』の内容を知らなかったというコメントには驚きました。
著者の思考が支離滅裂で驚かされますが、虚構なので『安全』です。
まずい食べ物を、おいしそうにたべることが好き。
百ポンドの赤ん坊:1ポンドは、約453グラム。45.3キログラムのベイビーか。今、翻訳している本に登場してくるそうです。
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