2022年05月06日

つくしちゃんとおねえちゃん いとうみく

つくしちゃんとおねえちゃん いとうみく・作 丹地陽子・絵 福音館書店

 おはなしが5つあります。
 全体をざーっとめくりました。
 絵本のようです。絵がいっぱいかいてあります。
 植物の『つくし』は最近みかけなくなりました。成長すると『スギナ』になると思っていましたがどうも違うようです。同じ植物で、最初につくしが出て、つくしが枯れると、スギナが顔を出すそうです。
 つくしは、朝の散歩道でさがせばあるのでしょうが、なかなか目につきません。老眼で、手元にあっても見えないことが多くなりました。記憶力とか認知力の低下があって、目の前に探しているものがあっても認識できない時があって、自分で自分にがっかりします。
 この絵本の「つくし」というのは、女の子のお名前で、たぶん、小さいお子さんなのでしょう。

 さて、読み始めます。

「いばりんぼう」
 文章と絵に、こどもの世界があります。
 自分がこどもだったときの世界が、本の中にあります。
 あまやどりのお話です。
 自分が小学校一年生のときに、母親が弟を連れて、傘をもって、小学校まで来てくれたことを思い出しました。
 登場するのは、おねえちゃん(4年生。10歳ぐらい)、お話をしてくれるのは、2年生(8歳ぐらい)の女の子です。
 おねえちゃんは、頭が良くて、本読みができて、ピアノの演奏ができるそうです。たいしたものです。おねえちゃんは、おこりっぽくて、いばりんぼうだから、プライドが高いのでしょう。(自尊心(じそんしん)。自分を大切にする心もち。人からばかにされたくないという気持ちが強い)
 おねちゃんは、右足に障害があるようです。少し右足をひきずって歩きます。早歩きや走ることはできないそうです。
 おねえちゃんのお名前が『かえで』であることがわかります。
 ほかに、いとこで6年生の『まーくん』とか、同じクラスで、つくしの隣の席に座っている『みつき』の名前が出てきます。主人公の名前は『つくし』です。

 つくしは、おねえちゃんのかえでに『ちび』といわれることがきらいです。
 家によって兄弟姉妹の関係をどう扱うかという違いがあります。上下関係か、同等かです。
 兄弟姉妹とかがいると、上をおにいさんとか、おねえさんと呼ばせる親と、ふたつの人格を同等とか公平にとらえて、お互いに名前とか愛称で呼ばせる親がいます。
 上下関係があるパターンとないパターンがあります。
 体格差があるので、小さいうちは、なにかと上のほうが有利ですが、やがて、同じになるか、体格で、下が上をぬくこともあります。
 究極をいうと、(きゅうきょく。とどのつまり、最終的には)、兄弟姉妹というものは、昔からライバル(敵)でもあります。成長するにつれてだんだん差が生まれてきます。なかなかむずかしい関係が生じたりもします。
 
「あと五分(ごふん)」
 朝の小学校への登校です。
 つくし姉妹は、いっしょに小学校へ行くようですが、右足が悪くてゆっくり歩く姉のほうが、先に家を出ます。
 つくしは、朝起きるの遅いので、家を出発する時刻も姉より遅くなってしまうのです。
 あわてておねえちゃんを追いかけるつくしです。
 読んでいて思ったことです。
 通学路には危険があるから、ゆっくりでいいよ。
 けがをしないように、交通事故にあわないように、小学生で一番大事なことは、生きていることです。死んだらだめです。ちこくしてもいいから、ぶじに学校まできてください。
 トラブル発生です。登校途中で、けしごむを落として見失ったつくしです。
 めげなくていい。けしごむぐらい、おじいさんが、また買ってあげるよ。

 兄弟姉妹の上の世代は、先駆者(せんくしゃ。知らない世界を切り開いていく人)です。
 下の子は、上の子の体験を知って、自分が上と同じことをするときには楽ができます。

 つくしは、おこられることをとても心配していますが、心配しなくていいんだよ。
 人から怒られたってかまわない。
 親も教師も、こどもが生きていてくれればいいと思っています。
 
「ドッジボール」
 絵がいっぱいあるので、絵本を読むような気分で読み続けています。
 物語には、つくしさんに、心のやさしい人になりなさいよというメッセージがふくまれています。
 おねえちゃんのように、がんばっている人を応援してくださいというメッセージもあります。
 右足が悪い人でもパラリンピックをめざすという道もあります。
 運動をできないとか、運動をしてはいけないとか、そういうことはありません。
 
 子育ての極意(ごくい。大事なこと。いい秘訣(ひけつ)、コツ、良きやり方)は『ほめる』ことです。
 ほめられると、うれしくなって、さらに努力します。
 けなすと、元気がなくなって、やる気も失ってしまいます。
 少しでもいいなと思うところがあったら、ほめましょう。

 れんしゅうしてもうまくなれないこともあります。
 がっかりします。
 自分には、これは向いていないなとわりきって、また別のことをやってみましょう。

「なみだ」
 フェルト:布(ぬの)、ヒツジやラクダなどの動物の毛が材料。化学繊維(かがくせんい)もあり。

 おねえちゃんのかえでは、ともだちの誕生日のプレゼントとして、手芸をしています。ネコのマスコットをつくっています。
 でも誕生日会から帰ってきたかえでは泣いています。自分がつくったプレゼントとみんなが持ちよったプレゼントを比較して、自分がつくったネコのマスコットは貧そう(ひんそう)だったようです。(ひんそう。びんぼうくさくて、みすぼらしい。みっともない)
 かえでは、とっても負けずぎらいで、プライドが高い。みじめな思いはしたくない。自分がハンデキャップを背負っていることで同情されたくない。ハンデキャップ:不利な条件。

 『比較』はむずかしい。喜ぶ人と悲しむ人が同時に現れる現象です。勝負に勝って喜ぶ人がいれば、勝負に負けて泣く人がいます。勝ったり負けたりが『勝負』です。同じ人でも勝つときもあれば負ける時もあります。全戦全勝とはいきません。

「ごめんなさい」
 町内のおまつりがあるそうです。
 かえでは、友だちと行くので、つくしをおいてきぼりにします。
 まあ、小学二年生なら、ひとりでおまつりにいけないこともないような気がします。
 お母さんも非協力的です。
 思えば、かんじんなときに、こどものそばにいてくれない親っています。
 親をあてにしないほうがいい。
 自分のことは自分でやったほうがいい。
 自分の力でやれると、自信がつきます。

 それでも最後は、かえでがつくしを助けてくれました。
 なにか、この物語の下地になる体験話があるのでしょう。

 最後の見開き2ページがおもしろかった。
 『おねえちゃんのばか』です。
 兄弟姉妹はぶつかったり離れたりしながらおとなになって、おとなになったら、たまにしか会わなくなったりもします。
 新しい相方(あいかた。恋人とか、夫婦とか)を見つけるのです。


(追記)
 昨夜見ていたテレビ番組『モニタリング』に、三組の兄弟姉妹が出ていました。
 弟や妹たちが、兄や姉をだますわけです。
 何も言わずにお金を貸してくれとか(かなりの大金です)、妹の誕生日のお願いとして、姉が嫌いなヘビをペットとして飼いたいとか、今、変な異性につきまとわれて困っているとか。
 ふつうなら、兄も姉も怒って、お金はなかなか貸さないし、イヤなことはイヤだと断わります。
 しかし、三組の兄も姉も、弟、妹思いの人たちで、びっくりしました。
 お金がある人たちだから、心に余裕があるのだろうとも思いました。
 あとは、プロスポーツ界、芸能界で働くということは、理屈ではなく、気持ちで働くということなのだろうと考察しました。
 兄、姉の覚悟と度胸はたいしたものでした。
 他人の友人・知人よりも血を分けた肉親との関係を重視したいということもあるのでしょう。信頼関係です。生まれてから長年、いっしょにがんばってきたのです。実績がある関係なのです。

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