2022年04月29日

111本の木 リナ・シン

111本の木 リナ・シン文 マリアンヌ・フェラー絵 こだまともこ訳 光村教育図書(みつむらきょういくとしょ)

 インド人作家の方の絵本です。
 思うに、インド人のほうが、日本人よりも脳みそのつくりが(知能が)高いのではないか。
 とくに数学の分野では、日本人はかなわないような気がします。
 コンピューター技術能力が高そうです。計算能力が高い。
 あわせて、人柄が良さそうです。心が優しい。
 旅番組で、インド人の方が経営されているカレー店などへの飛び込み取材を見ると(出川哲朗さんの充電バイクとか、太川陽介さんの路線バスの旅とか)インド人オーナーはみなさんとても優しい。日本人のようなぎすぎすした緊迫感と銭儲け最優先(ぜにもうけさいゆうせん)の雰囲気がありません。

 さて、読み始めます。
 原題は『111 Tree: How One Village Celebrates Birth of Every Girl』
 日本語だと『111本の木:どのようにしてその村は、すべての女の子たちの誕生を祝福したか』でいいと思います。

 インドで本当にあったことを絵本にしてあるそうです。
 女の子が生まれると、111本の木を地域に植えるそうです。ピンときません(なぜ植えるの? なぜ、111本なの? ずいぶんたくさんの数を植えるのですね。1本でいいのじゃないの?)

 インドといえば、ヒンドゥー教におけるカーストと呼ばれる身分制度が思い浮かびます。
 日本における江戸幕府の「士農工商」のようなものです。
 絵本を読むと、女性差別もあるようです。男尊女卑です。(だんそんじょひ。男子は偉くて、女子は偉くない)

 以前、江戸時代に日本を訪れた外国人の日記とか業務日誌などを読んだことがあります。
 日本には、「士農工商」という身分制度があるけれど、末端の住民たちは、江戸幕府が決めた身分制度にはこだわらずに、身分を気にせずに、お互いによくしゃべり、仲良く暮らしていると書いてあった記憶です。日本人の庶民的な気質が表れていて、とてもうれしい。
 「きまり」は、つくっても、守る人がいなければ、ないのといっしょだと、自分は思っています。

 絵本では、お母さんとぼくちゃんが、遠くの井戸まで水をくみに行きます。
 日本も昔は井戸で水をくんだり、山で湧き出る水をくみに行っりしていました。清水(しみず)をくみに山へ行ってくると言っていました。
 自分も小学校低学年のころには、山に水をくみにいっていました。
 自宅の台所に水をためておくコンクリートの入れ物がありました。
 今の日本でも、いなかへいけば、井戸水を使っていたり、山の沢からパイプで水を家まで引っ張っていたりする家はあると思います。

 ぼくちゃんは、料理に使う『たきぎ』を集めます。
 たきぎだから、エネルギーの話が出てくるのだろうか。
 自分も中学生のころは、日曜日になると、家で、祖父母に頼まれて、薪割りを(まきわり)をしていました。

 ぼくちゃんの家族は11人もいるそうです。
 戦時中の日本のようです。
 日本では、戦争社会に貢献してくれる若い人たちを育成するために、子だくさんの政策を進めました。
 『産めよ増やせよ』の国による人口政策がありました。
 ひとりの女子が、5人以上の子どもを産むように国から指示がありました。
 今では考えられません。

 絵本では、主人公のぼくちゃんのお母さんが、びんぼうな暮らしの中で、毒ヘビにかまれて亡くなってしまいました。
 日本だと、マムシとか、沖縄にいるハブにかまれて亡くなるようなものです。

 この絵本は、母親と息子の愛情物語だろうか。
 主人公のぼくちゃんのお名前は『シャム・スンダル・パリワル』で、以降、スンダルさんと表記されます。
 スンダルさんは、おとなになって結婚して、娘がふたり、息子がひとり生まれます。(その後、上の娘さんは亡くなってしまいます)
 スンダルさんは、現在と未来のために、こどもたちに自然を大切にすることを教えます。

 スンダルさんが住む村には、大理石工場があります。
 大理石の掘削は、緑の自然を壊します。
 スンダルさんは、掘削後の荒れ地に木を植えることを会社に提案しましたが、受け入れてもらえなかったので、工場を辞めてしまいました。

 お金もうけを優先するのは、人間の欲望が生み出す人間の性(さが。生まれつきの性質、本質、特質、本能)です。
 欲望のかたまりにならないように、自分やまわりをコントロールするために必要になるのが『教育』です。自分で自分の心を管理します。
 スンダルさんの希望は、自然を大切にして、みんなが経済的にも心理的にも豊かに暮らせるようになることです。
 スンダルさんは、選挙で当選して『村長』になりました。

 そういえば、日本で、女性が選挙のときに投票ができるようになったのは、第二次世界大戦が終わってからです。それまで女性は、選挙が行われても、立候補することも投票することもできませんでした。
 ようやく、女性が全国的に立候補も投票もできるようになったのは、昭和21年4月10日(1946年)の衆議院選挙からでした。
 第二次世界大戦で日本が敗戦して、アメリカ合衆国の政治に対する関与が始まってからです。
 それからまだ100年たっていません。まだ、このあいだのことなのです。超高齢者の方々は戦争体験者です。

 人は、花に願いを託すことがあります。(たくす。願かけ(がんかけ))
 人が生きていくことで、祈ることは大切な行為です。
 人は、樹木に神の存在を感じることがあります。大木信仰。
 スンダルさんは、自分の長女を病気で亡くして、その悲しみを忘れるために、1本の木を土に埋めました。木が、亡くなった娘さんの代わりなのです。

 なぜ、111本の木を埋めるのか。
 なぜ、1本ではだめなのか。

 男が生まれたらお祝いをして、女が生まれたら悲しむという変なインドの風習に立ち向かうことを決心したスンダルさんでした。
 この絵本は、インドの歴史物語です。
 男女が平等に扱われる。
 水と電気がある生活を送る。
 女性は、18歳までに結婚させるという決め事があったそうです。
 女性は『商品』か『物』扱いです。
 スンダルさんは、インドの風習や慣例に大反対します。
 111本の木がスンダルさんの希望を実現してくれます。
 女児の誕生をきっかけにして、木をたくさん植えて、村に豊かな自然を導いて、木がお金を産む。林業です。水を確保する。シロアリ退治のためにアロエベラという植物を育てる。
 
 時間はかかったようですが、村の生活に変化がありました。
 木のおかげで、生活が楽になりました。
 『採取』よりも『養殖』という考え方があります。
 取りつくしたらなくなってしまいます。
 なくなったら、生活していけなくなります。
 いろいろな木を植えました。
 マンゴー、パパイヤ、シッソノキ(インド原産の落葉高木)、アミアの木。
 アロエベラは、白アリ退治の商品として売れたそうです。
 
 中村哲さん(なかむらてつさん)を思い出しました。
 アフガニスタンの貧しい人たちのために働いた人です。
 銃撃されてお亡くなりになりました。
 残念です。

 絵本は31ページまでで終わります。
 32ページから、説明文と写真が出てきます。
 村長のスンダルさんご本人登場の写真もあります。おひげをはやしたおじさんです。
 ピプラントリ村があるというラジャスタン州をグーグルマップで見てみました。
 インドとパキスタンの境界付近にありました。インドの北西に位置する州です。

 『111』の意味です。最初の「1」が娘さんたち。次の「1」が水、最後の「1」が木を意味するそうです。インドと日本で国が違うので、人間として感じる感覚が違います。
 日本人のわたしにはピンとくるものがありません。
 スンダルさんにとっては、「1」が縦棒「|」に見えるそうです。そして、三本の縦棒がさきほどの意味にとれるそうです。
 
 ジェンダー:男女の差。社会的、文化的に長い歴史のうちにつくられた差別。不平等。この本の場合の事例として、女子は教育を受けることができない。女子は、18歳になるまでに結婚しなければならない。女子は結婚するときに多額の持参金を男子の家に提供しなければならない。負担するのは女子の親でしょう。
 胎児が女子だとわかると中絶(ちゅうぜつ。あかちゃんの命を産まれる前に奪ってしまう)することもあるそうです。こわい。悲しい。
 男子の誕生は、農業の働き手の誕生だからお祝いをするけれど、女子の誕生は不幸なこととされるそうです。そうだろうか。男性よりも女性のほうが働き者のような気がします。
 スンダルさんは、女子の将来のために、寄付金(村人から約3万円。女子の両親から約1万5000円)を預かり、満期20年の定期預金に入れる。そのお金は、将来、その女子の教育資金・結婚資金に使うというシステムをつくりました。
 村に産業を誘致する。アロエベラを使って商売をする。アロエベラは、保湿剤や健康食品になるそうです。
 
 エコフェミニスト:人間と自然の共存、男性と女性の協調をめざして、社会的、経済的な活動をする人と受け止めました。

 あなたは、エコフェミニストですか? という問いが最後にあります。
 自分ではよくわかりませんが、最近、朝の散歩道で、花や樹木の季節ごとの移り変わりが目に入るようになりました。
 現役をリタイヤして、利潤や成果を追いかけるような生活から離れて、気持ちに余裕ができたのでしょう。歳をとったからわかる自然の風景があります。

この記事へのトラックバックURL

http://kumataro.mediacat-blog.jp/t147519
※このエントリーではブログ管理者の設定により、ブログ管理者に承認されるまでコメントは反映されません
上の画像に書かれている文字を入力して下さい