2022年03月21日

大きな木のような人 いせひでこ

大きな木のような人 いせひでこ 講談社

 場所はフランスで、登場するのは、日本人少女『(名前は)さえら』とフランス人男性研究員(植物)です。
 最初に1回読んで、わかりにくい印象があったのですが、繰り返しながら読んでいたら味わいが出てきました。絵本です。2009年(平成21年)初版です。2022年(令和4年)12刷まで増刷が至っています。
 読みようによっては、日本人少女が『妖精』のようにも感じられます。

 樹木が好きな作者さんです。
 同作者の絵本をこれまでに何冊か読みました。
 
 なつかしき過去の風景を見るようです。
 植物園のなかでの出会いと別れが思い出されるのです。
 絵は、映画のシーンの連続のようです。
 名文句として『人はみな心の中に、一本の木をもっている。』
 
 植物スケッチをすることが好きな日本人少女です。
 小学3年生ぐらいに見えます。
 植物の写生をしています。
 自分が中学生のときに美術部に入っていたことを思い出しました。
 画板を首からぶらさげて、毎日のように、ふるさとの町を歩き回りながらスケッチをしていました。

 ひこばえ:切り株や木の根元から出る若い芽

 絵本では、ひまわりの花や種の話が出ます。
 先月見たテレビの報道番組で、ウクライナの女性が、軍事侵攻してきたロシア兵にくってかかっていました。『ひまわりの種をあげるよ!』ひまわりは、ウクライナの国花だそうです。おまえなんか、ひまわりに埋もれてしまえ! という意味だそうです。
 昔、ヴィットリオ・デ・シーカ監督イタリア・フランス・ソ連・アメリカ合衆国合作映画で『ひまわり』を何度か観ました。舞台はウクライナでした。女優さんは、ソフィア・ローレンでした。第二次世界大戦がからんだ男女のせつない愛情の物語で名作です。戦争で男女の仲が引き裂かれてしまうのです。現在のありようとも重なる部分があります。
 あと、もうひとつの洋画、オーストリアの国花を讃えたエーデルワイスが歌われる『サウンド・オブ・ミュージック』ジュリーアンドリュース出演作品が思い出されます。こちらも戦争がからんでいます。戦争で物事を解決することには反対です。

 小学生のころに借家だった自宅の庭にひまわりの種を植えたことを思い出しました。
 自分にとっては、ものすごく高く伸びて(2mぐらい)、びっくりしました。土が良かったのでしょう。

 大木は、人間の寿命よりもはるかに長い年数を生きます。
 絵本にあるプラタナスは、250年ぐらい経って(たって)いるそうです。
 何度も季節をくぐりぬけてきたのです。
 
 『秋は春のはじまりなんだ。』とあります。
 ひまわりは枯れても、ひまわりの種は残ります。
 そして、種からは新しい命が生まれてくるのです。
 この絵本では、長い歳月をかけて、世代をつなぎながら受け継がれていく意思というものがあるということが表現されていると受け取りました。

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