2022年03月10日

なんらかの事情 岸本佐知子

なんらかの事情 岸本佐知子 ちくま文庫

 著者が翻訳した「十二月の十日(じゅうにがつのとおか)」という本を読んだことが縁で、このエッセイ集を読むことにしました。書評の評判がいいです。もう一冊のエッセイ集が「ねにもつタイプ」だそうです。

 10年前の本です。(2012年単行本)
 自分は、運が悪い人というような書きだしです。
 レジの列について書いてありますが、今どきは、セルフレジで、電子マネーによる支払いが増えました。社会のありようが変わってしまいました。

 自分はリタイアして、価値観が変化しました。
 「速いこと、早いこと(はやいこと)」はいいことなのか。
 年寄りにとっては、はやいことはいいことではありません。
 遅くても安全なほうがいい。
 安心してゆっくりやれたほうがいい。

 3ページほどの短いエッセイが続きます。
 怒られるかもしれませんが、さし絵はなくてもいいような気がします。
 読んでいる途中で絵が出てくると、読みの連続性が絶たれます。
 ページ数をかせぐために必要だったとしか思えない、さし絵の存在です。

 女性向けのエッセイです。(心のままに書いた短い文章。随筆)

 自分が読んで良かったエッセイを記録しておきます。
 『物いう物』トイレの便器がしゃべります。各種機器の自動音声のことです。記述内容がいろいろとおもしろい。
 『(場所)海ほたる』自分が好きなところです。東京湾に浮かぶパーキングエリアです。コロナ禍になってから、もうずーっと行けていません。
 エッセイでは、友人が車を運転しながら、カーナビに指示されても指示通りにしないとあります。そういうことって自分にもあります。そして、迷子になります。エッセイのほうは、おもしろい。いいなあという気分の読後感でした。

 視点がいい。
 娘のために女装して大学受験を受けた父親の話が出ます。もちろん替え玉受験の不正行為です。(お父さんのほうが、娘よりも勉強ができたのだろうか。すごい)

 カルミック:トイレに設置されてある器具らしいのですが、自分にはどんなものなのかわかりません。
 うりずん、デラシネ、ヘルダーリン:文章に書いてある単語なのですが、自分には、なんのことかわかりませんでした。
 エリツィン、プーチン:ロシアがウクライナに侵攻している今、この本の中の文章で、この名前に出会うとは思っていませんでした。
 この本を読んでいる今、自分が思うのは、ロシアという国は、これから悪い方向へと引っ張られていって、ロシア国民も大統領がしでかしたことの、被害者となるであろうということです。
 ウクライナの人たちは、これから先、世代が入れ替わる100年間ぐらいは、ロシア人を強く、かつ深く憎しみ続けることでしょう。
 ロシアは、ウクライナを元の姿に戻すための賠償を、これからさき、100年間ぐらいかけて、支払い続けなければならなくなるでしょう。

 ベルガモット:香水。柑橘系。

 著者は、細かいことをさらに細かく考える人です。
 
 73ページにこの本のタイトルになっているエッセイがありますが、どういうわけか『何らかの事情』と漢字になっています。(本のタイトルは『なんらかの事情』)

(つづく)

 読み終えました。

 エッセイ『不必要書類』で、「役に立たないものが好き」とあります。うーむ。なかなかない発想です。それとも案外、表に出ないだけで、役に立たないものを大事にする人は多いのだろうか。買い物をしたあとにレジでもらったレシートを捨てられないそうです。自分は、家計簿に金額等を搭載したのちに、レシートは処分しています。
 
 マドロス:水夫。船乗り。著者は、波止場にある鉤型(かぎがた)の丸い物体をマドロスだとずっと思っていたそうです。違います。船員さんのことです。

 東京オリンピックの競技場で、マラソンのアベベ選手のゴールを見たことがあるそうです。
 オリンピックは嫌いだそうです。(これまた変わっているような)
 
 中学、高校と、つながった女子高だったそうです。
 文章を読んでいて、女子高=(イコール)楽園でも花園でもないことがわかりました。
 「顎の筋肉が攣って死にそうになった(あごのきんにくがつってしにそうになった。つっての感じを読めませんでした。」
 
 怪獣ブースカ:なつかしい。偶然ですが、我が家のテレビ台の中にブースカの人形があります。もう三十代になったこどもたちが小さい頃に買ったものです。
 ブースカ、ブースカブー、なんとかかんとかというような歌がありました。

 モンティ・パイソン:イギリスのコメディグループ
 
 現在の話から、やがて、思い出話へと内容が変化していきます。
 エッセイのネタが苦しかったのかも。
 過去に体験したことのある小学生時代のお話は、ちびまるこちゃんのお話とも似ている。
 
 カバディ:インドの国技。スポーツ。

 本の記述は、2012年の文章ですが、コロナ禍を予想したような文章に当たりました。『人類は大急ぎでワクチンを作ったが、もう間に合わなんだ。何しろ種類が多すぎたし、すさまじく感染力が強くてな。』
 そういえば、2009年ごろに新型インフルエンザウィルスの流行があったような。そこからきているのかもしれません。

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