2021年12月10日
一九八四年 ジョージ・オーウェル
一九八四年 ジョージ・オーウェル 高橋和久・訳 ハヤカワ文庫
有名な小説ですが、読むのは初めてです。
以前は同作者の「動物農場」を読みました。もうなくなりましたが、内容は、ソビエト連邦共和国のことでした。作者は社会主義を否定しているのではなく、正しい社会主義を目指していると受け取りました。
独裁者の国、全体主義の国、いまでも世界各地に存在する国家統治の手法です。最近は、国民に対して強権的な国家が、力を付けてきている印象があります。
「動物農場」同様、この本も同じような内容なのでしょう。
言論統制があります。
表現の自由は認められていません。
(第一部)
場所は『オセアニア』というところです。(オセアニアは通常オーストラリアやニュージーランド周辺をさしますがこの本の場合は同地域以外にも広がりがあります。ほかに、ユーラシアとか、ロンドンの地名が出てきます。ユーラシアはユーラシア大陸を思い浮かべます。旧ロンドン地域にはロケット弾が撃ち込まれている。主人公は、オセアニアに含まれる旧イギリス国のロンドンに住んでいる)
『ビッグ・ブラザー』の党がオセアニア地域を支配しています。
1950年代に起きた第三次世界大戦が終わったあとで、地球は核兵器でかなり破壊されている状態のようです。現実とは一致しませんが、1984年の設定です。地域同士の兵器を使った争いは続いています。
四月の寒い日、十三時から始まります。
主人公が、ウィンストン・スミス39歳、離婚できない妻がいる。国家真理省記録局職員です。ミニストリー・オブ・トゥルー。党員です。小柄できゃしゃな体つきをしている。歴史記録の改ざん処理(悪用するための書き直し)が仕事です。デリケートな偽造作業だそうです。ヴィクトリーマンションに住んでいる。
テレスクリーン:人々の言動をあらゆるところで監視する機械製品。今でいうところの監視カメラとか防犯カメラみたいなものなのでしょう。
本作は、1949年の作品です。昭和24年です。1989年は、35年後です。
ジュリア:自分の思うままにふるまう美女。虚構局勤務。26歳。小説執筆機の操作と修理。スパイを職としていた経歴あり。彼女の祖父は蒸発させられた。
エマニュエル・ゴールドスタイン:ビックブラザーと並ぶ地位にあったが追放された。人民の敵とされている。
オブライエン:党中枢の一員。大柄でたくましい体格。ウィンストン・スミスの味方のようで、実は敵。
憎悪週間:エマニュエル・ゴールドスタインを憎悪する週間らしい。
思考警察:回線に接続して情報を調べる。
ニュースピーク:オセアニアでの公用語。本書では、<二重思考>という単語が紹介される。
真理省:報道、娯楽、教育、芸術を管理している。
平和省:戦争を担当している。
愛情省:法と秩序の維持を担当している。建物にはいっさい窓がない。
潤沢省:経済を担当している。
なにかしら、むかし問題を起こした宗教団体のようでもあります。
ウェストン・スミスが日記を書くらしい。一九八四年四月四日から始まります。昨夜、映画を見に行ったとあります。
彼の記述した内容は、数年前の現実社会において、シリア難民が乗る船が地中海で遭難して、幼いこどもさんが海にほおりだされて亡くなった事実を思い出させてくれます。
プロール席:プロールとは人間に付けられた階級。貧しい階級をさす。支配されている労働者階級。プロールは人間じゃないという評価あり。(主役のウェストン・スミスは、プロールではない)
ときおり出てくる標語が、
『戦争は平和なり 自由は隷従なり 無知は力なり』です。
この地オセアニアは、いつも戦争状態にある。奴隷のような境遇が自由であることである。無知がいいことである。めちゃくちゃな理論です。
ミセル・パーソンズ:主人公のウェストン・スミスと同じマンションの同じ階に暮らす隣人の妻。30歳ぐらい。夫がいて、9歳男児と7歳女児がいる。こどもたちの遊びが『お前は裏切りものだ!」「強制労働に送ってやる!」「ぼくたちは、絞首刑を見に行きたい!」と言い合うぶっそうなやりとりです。
彼女の夫が、トム・パーソンズ。
『お前はすでに死んでいる』どこかで聞いた言葉です。
『今日あるのは恐怖であり、憎悪であり、苦痛だった』
なんとひどい世界でしょう。
イギリスのコルチェスターという土地に原子爆弾が落とされたそうです。
オセアニア対ユーラシアの戦争があります。オセアニアとイースタシアという地域は同盟関係にあるそうです。
イングソック:意味はまだわかりません。(58ページあたりを読んでいます)オールドスピーク(標準英語という言語で、イングソックは、イギリス社会主義というらしい)
イングソックは、全体主義という意味かもしれません。個人の自由を認めない。国家が政治と思想を統治する。国家の利益を最優先とする。
全体主義の社会では、プロールと呼ばれる奴隷扱いの階級以外は、全員が公務員のようです。
記憶穴:なにか書かれたいらない紙を処分する穴。
チョコレートがどうこう。チョコレートになんらかの意味があります。
サイム:ウェストン・スミスの同僚。友人。同志。洗脳されている。ウェストン・スミスによれば、サイムはすでに死んでいる。存在が抹消された<非在人間>
オールドスピークからニュースピークに言語が変化することについてのこだわりあり。
ウェストン・スミスが書いている日記は事実なのか虚構なのか。本人は、自分の記憶が確かなものなのかどうか自信がありません。不確かな過去の時代の記憶です。自分に妻がいたのかどうかも自分で疑っています。妻の名前はキャサリンです。思うに、書かれたことは事実なのでしょう。
男女の作業である「赤ちゃんづくり」は、「党に対する義務」です。こどもは労働力です。
オセアニアの人口の85%がプロール(最下級の奴隷扱いの人類)です。女子は炭坑で働いているそうです。残りの15%が資本家です。資本家の頭が(かしらが)国王です。
ウェストン・スミスによる資本家に対する力強い分析と批評が続きます。ウェストン・スミスの精神は、労働者の側の立場にいます。
ウェストン・スミスが書く日記のなかの登場人物として、三人の男がいます。
三人は1965年に逮捕された経歴があります。スパイ容疑、公金横領の罪ほかです。
ジョーンズ
エアロンソン
ラザフォード
三人は再罪を犯し処刑されています。
『その方法はわかる。その理由がわからない』
『自由とは二足す二が四であると言える自由である』
本当のことを公に発言できないのが、全体主義の社会のようです。
(第二部)
第二部は『あなたが好きです。』から始まります。どうやってあの娘(ジュリア)と接触すればいいのか。精神的な結びつきよりも肉体的な結びつきが先にきます。男女の行為は政治的行為だと、のちに記述されます。異常です。
なにやら男女関係、恋愛小説のような、肉体小説のような記述と文脈に変化してきました。
村上春樹作品を読むようです。
第二部にどんな意味があるのだろう。
ウィルシャー:カブトムシに似たのっぺりとした顔に小さな目が付いている。小柄で身のこなしが素早い。金髪。
アンプルフォース:髪を耳まで垂らした(たらした)男性詩人。
ミスター・チャリントンの店:レストラン風です。第三次世界大戦以前の歴史資料を見ることができる場所となっている。
自己欺瞞:じこぎまん。自分の本心に反した自分の言動を、自分で無理に正当化すること。
第三次世界大戦後、くだものの「オレンジ」も「レモン」も地球上からなくなった。
だんだん内容の意味がわからなくなってきた228ページ付近です。
革命:急激な変化。国家権力の質的転換。政治、経済、社会体制の変化。
ウェストン・スミスの過去の正確な記憶がよみがえってきます。ユダヤ人のこと、母親のこと、自分が自分勝手な性格をもっていたこと。
伏線のチョコレートの話が出てきます。ウェストン・スミスは、配給されたチョコレートを独り占めしようとするのです。
ストレスを解消するために人種差別をする。ユダヤ人大虐殺のイメージがあります。
『プロールたちは人間なんだ』
ウェストン・スミスたちの政党グループは、ナチス・ドイツに属する人間を意味しているのか。
マーティン:小柄で黄色い顔をした召使い。オブライエンいわく、われわれの仲間である。
『寡頭制集産主義の理論と実践(かとうせいしゅうさんしゅぎ)』エマニュエル・ゴールドスタイン
この世界には、三種類の人々が存在してきた。「上層」「中間層」「下層」である。
このパターンは常に現れる。必ずもとに戻るジャイロスコープのようだ。(角度を検出する計測器)
ロシアがヨーロッパを併合した。(イギリスを除く)→ユーラシア
アメリカ合衆国が大英帝国を併合した。→オセアニア
日本列島、満州、中国、チベット、モンゴルあたり→イースタシア
三国は、永遠に戦争状態にある(ようにみせかけられている)
「生産」と「消費」は、国ごとに自己完結できるようになった。自己充足的な経済が確立した。
だとすると、なぜ、「戦争状態」をつくりだしているのか。
戦争の第一の目的→生活水準を上げずに、機械による製造品を消費しつくすこと。
権力は少数の特権階級が握っている
国民全員が、学習して知恵がつけば、特権階級は権力を失う。
階級社会は、貧困と無知を基盤にしない限り成立しない。
支配者が、国民に偽(にせ)の情報を与えて、民衆の心をコントロールする社会です。
『現在の戦争は単なる詐欺行為に過ぎない』『そもそも国同士が戦いを交えていない』『真の恒久平和とは永遠の戦争状態と同じ→ゆえに、「戦争は平和なり」となる』
次に、『無知は力なり』についての考察
さきほどと同じく、人間の分類として「上層」「中間層」「下層」から始まります。
「上層」の目的は、現状維持。「中間層」は、上層と入れ替わること。「下層」は目的をもっていない。単調な労働で、しいたげられている。下層にいる人間は、自分の日常生活のことしか意識していない。
オセアニアのイングソック、ユーラシアのネオ・ポルシェヴィズム、イースタシアでの死の崇拝と呼ばれる教義(いずれも全体主義を表していると思われます。後述で、ロシア共産党とかナチス・ドイツが出てきます)
いずれも「非自由」と「不平等」を永続させるという狙いがあった。
印刷技術の発達と映画やラジオによって、「世論の操作」が容易になった。
寡頭政治(かとうせいじ):少人数の支配者による政治
私有財産の廃止(財産は国家のもの)によって、少数の人間に富が集中した。
グループが権力を失うとき。
①外部の力に征服される。
②無能な統治で大衆が反乱を起こす。
③中間層にくつがえされる。
④自らが自身と意欲を失う。
だれも「ビッグ・ブラザー」を見たことがない。
国民の教育水準が下降し続けている。
大衆が、社会や政治に関心をもたない。
法律は存在しない。
黒を白と信じ込むことができる能力をもつことは、忠誠心を意味する。
『二重思考』という思考方法をもつ。
過去は変わりやすい。意図的に過去を変える。歴史の出来事を支配者の都合のいいように変える。
読んでいると、何が本当なのかわからなくなってきます。そして、第三部は、『自分がどこにいるのか分からなかった』から始まります。
(第三部)
ウェストン・スミスは、捕まって、収容所らしきところに入れられて、拷問を受けて、電気機械らしきもので脳に電気ショックを与えられて、薬物も注射されて、全体主義の思想を植え付けられて、思考が洗脳されていきます。自分の思考とか意思をゆがめられてしまいます。助かりません。かなりむごい。
彼だけではなくてほかにも犠牲者がいます。政治犯扱いです。
『過去をコントロールするものは未来をコントロールし、現在をコントロールするものは過去をコントロールする』
『現実は外部に存在しているのではなくて、現実は人間の精神のなかに存在している』
犯罪取り調べにおける冤罪(えんざい。無実の罪)のつくり方を見ているようです。
『彼らは人間の抜け殻になっていた』
カリスマなる人物をトップにおいて崇拝するという錯覚状態をつくって、人心をコントロールして、組織の維持をしていく手法です。
ウェストン・スミスの人格を修復するためには、「学習→理解→受容」の経過が必要とされますが、それは、「洗脳(権力者にとって都合のいい思想を植えつける)」の経過を意味します。
プロレタリアート:賃金労働者階級。労働力を売ることでしか収入の道がない。対する言葉が「ブルジョアジー」で資本家階級。
『われわれは権力の司祭だ』神と人間の仲介者。神は権力と考える。
ウェストン・スミスの予知として、(全体主義は)失敗する。
対する相手の言葉として『君は朽ちかけている(くちかけている)』
ウェストン・スミスの意識が『受容』のために変容していきます。(変化する)
『自由は隷従なり(れいじゅう。支配されて言いなりになる)』
『二足す二は五である』
『過去は改変可能である』
ウェストン・スミスは、権力者との共存のために意識が変容していきます。
謬見(びゅうけん):間違った考えや見解
ウェストン・スミスの意識の最後に残っていたのは、恋愛の相手である異性に対する強い愛情と依存でした。
ウェストン・スミスは、いつの日か射殺されることになるとありますが、その前に狂い死にしそうです。
最終地が『101号室』
101号室は地下深くにある。
飢えた巨大なネズミが人を食おうと待っている。
ホラー映画のようになってきました。
恐怖があります。
古代の中国で行われていた懲罰だと書かれています。
ただ事実かどうかは、自分は知りません。
ウェストン・スミスは、戦争について考えるのをやめました。
ようやく読み終えました。
ぼうだいな文字の量です。なかば流し読みの読書でした。
哀しいお話でした。
ディストピア小説です。(ユートピア小説の反対)
暗黒世界へと導かれます。
ウェストン・スミスは死にません。
違う人間に変化するのです。
てんびん座生まれの特性をもつ自分としては、全体主義者にも言い分があると思いたい。いつの時代にあっても、平行感覚は失いたくない。
人は生まれて自分のまわりにある環境に順応して生きていこうとします。標準化の波にうまくのれないと苦しみを味わうことになります。
それぞれの国には、長い歴史を経ての事情や特殊性があります。
お互いの立場が違うということを理解し、認め合って、それはそれ、これはこれで、区別してやっていかないと戦争が始まってしまいます。
『共存』をめざさないと共倒れになって、地球は荒廃し、人間の世界は滅びてしまいます。
有名な小説ですが、読むのは初めてです。
以前は同作者の「動物農場」を読みました。もうなくなりましたが、内容は、ソビエト連邦共和国のことでした。作者は社会主義を否定しているのではなく、正しい社会主義を目指していると受け取りました。
独裁者の国、全体主義の国、いまでも世界各地に存在する国家統治の手法です。最近は、国民に対して強権的な国家が、力を付けてきている印象があります。
「動物農場」同様、この本も同じような内容なのでしょう。
言論統制があります。
表現の自由は認められていません。
(第一部)
場所は『オセアニア』というところです。(オセアニアは通常オーストラリアやニュージーランド周辺をさしますがこの本の場合は同地域以外にも広がりがあります。ほかに、ユーラシアとか、ロンドンの地名が出てきます。ユーラシアはユーラシア大陸を思い浮かべます。旧ロンドン地域にはロケット弾が撃ち込まれている。主人公は、オセアニアに含まれる旧イギリス国のロンドンに住んでいる)
『ビッグ・ブラザー』の党がオセアニア地域を支配しています。
1950年代に起きた第三次世界大戦が終わったあとで、地球は核兵器でかなり破壊されている状態のようです。現実とは一致しませんが、1984年の設定です。地域同士の兵器を使った争いは続いています。
四月の寒い日、十三時から始まります。
主人公が、ウィンストン・スミス39歳、離婚できない妻がいる。国家真理省記録局職員です。ミニストリー・オブ・トゥルー。党員です。小柄できゃしゃな体つきをしている。歴史記録の改ざん処理(悪用するための書き直し)が仕事です。デリケートな偽造作業だそうです。ヴィクトリーマンションに住んでいる。
テレスクリーン:人々の言動をあらゆるところで監視する機械製品。今でいうところの監視カメラとか防犯カメラみたいなものなのでしょう。
本作は、1949年の作品です。昭和24年です。1989年は、35年後です。
ジュリア:自分の思うままにふるまう美女。虚構局勤務。26歳。小説執筆機の操作と修理。スパイを職としていた経歴あり。彼女の祖父は蒸発させられた。
エマニュエル・ゴールドスタイン:ビックブラザーと並ぶ地位にあったが追放された。人民の敵とされている。
オブライエン:党中枢の一員。大柄でたくましい体格。ウィンストン・スミスの味方のようで、実は敵。
憎悪週間:エマニュエル・ゴールドスタインを憎悪する週間らしい。
思考警察:回線に接続して情報を調べる。
ニュースピーク:オセアニアでの公用語。本書では、<二重思考>という単語が紹介される。
真理省:報道、娯楽、教育、芸術を管理している。
平和省:戦争を担当している。
愛情省:法と秩序の維持を担当している。建物にはいっさい窓がない。
潤沢省:経済を担当している。
なにかしら、むかし問題を起こした宗教団体のようでもあります。
ウェストン・スミスが日記を書くらしい。一九八四年四月四日から始まります。昨夜、映画を見に行ったとあります。
彼の記述した内容は、数年前の現実社会において、シリア難民が乗る船が地中海で遭難して、幼いこどもさんが海にほおりだされて亡くなった事実を思い出させてくれます。
プロール席:プロールとは人間に付けられた階級。貧しい階級をさす。支配されている労働者階級。プロールは人間じゃないという評価あり。(主役のウェストン・スミスは、プロールではない)
ときおり出てくる標語が、
『戦争は平和なり 自由は隷従なり 無知は力なり』です。
この地オセアニアは、いつも戦争状態にある。奴隷のような境遇が自由であることである。無知がいいことである。めちゃくちゃな理論です。
ミセル・パーソンズ:主人公のウェストン・スミスと同じマンションの同じ階に暮らす隣人の妻。30歳ぐらい。夫がいて、9歳男児と7歳女児がいる。こどもたちの遊びが『お前は裏切りものだ!」「強制労働に送ってやる!」「ぼくたちは、絞首刑を見に行きたい!」と言い合うぶっそうなやりとりです。
彼女の夫が、トム・パーソンズ。
『お前はすでに死んでいる』どこかで聞いた言葉です。
『今日あるのは恐怖であり、憎悪であり、苦痛だった』
なんとひどい世界でしょう。
イギリスのコルチェスターという土地に原子爆弾が落とされたそうです。
オセアニア対ユーラシアの戦争があります。オセアニアとイースタシアという地域は同盟関係にあるそうです。
イングソック:意味はまだわかりません。(58ページあたりを読んでいます)オールドスピーク(標準英語という言語で、イングソックは、イギリス社会主義というらしい)
イングソックは、全体主義という意味かもしれません。個人の自由を認めない。国家が政治と思想を統治する。国家の利益を最優先とする。
全体主義の社会では、プロールと呼ばれる奴隷扱いの階級以外は、全員が公務員のようです。
記憶穴:なにか書かれたいらない紙を処分する穴。
チョコレートがどうこう。チョコレートになんらかの意味があります。
サイム:ウェストン・スミスの同僚。友人。同志。洗脳されている。ウェストン・スミスによれば、サイムはすでに死んでいる。存在が抹消された<非在人間>
オールドスピークからニュースピークに言語が変化することについてのこだわりあり。
ウェストン・スミスが書いている日記は事実なのか虚構なのか。本人は、自分の記憶が確かなものなのかどうか自信がありません。不確かな過去の時代の記憶です。自分に妻がいたのかどうかも自分で疑っています。妻の名前はキャサリンです。思うに、書かれたことは事実なのでしょう。
男女の作業である「赤ちゃんづくり」は、「党に対する義務」です。こどもは労働力です。
オセアニアの人口の85%がプロール(最下級の奴隷扱いの人類)です。女子は炭坑で働いているそうです。残りの15%が資本家です。資本家の頭が(かしらが)国王です。
ウェストン・スミスによる資本家に対する力強い分析と批評が続きます。ウェストン・スミスの精神は、労働者の側の立場にいます。
ウェストン・スミスが書く日記のなかの登場人物として、三人の男がいます。
三人は1965年に逮捕された経歴があります。スパイ容疑、公金横領の罪ほかです。
ジョーンズ
エアロンソン
ラザフォード
三人は再罪を犯し処刑されています。
『その方法はわかる。その理由がわからない』
『自由とは二足す二が四であると言える自由である』
本当のことを公に発言できないのが、全体主義の社会のようです。
(第二部)
第二部は『あなたが好きです。』から始まります。どうやってあの娘(ジュリア)と接触すればいいのか。精神的な結びつきよりも肉体的な結びつきが先にきます。男女の行為は政治的行為だと、のちに記述されます。異常です。
なにやら男女関係、恋愛小説のような、肉体小説のような記述と文脈に変化してきました。
村上春樹作品を読むようです。
第二部にどんな意味があるのだろう。
ウィルシャー:カブトムシに似たのっぺりとした顔に小さな目が付いている。小柄で身のこなしが素早い。金髪。
アンプルフォース:髪を耳まで垂らした(たらした)男性詩人。
ミスター・チャリントンの店:レストラン風です。第三次世界大戦以前の歴史資料を見ることができる場所となっている。
自己欺瞞:じこぎまん。自分の本心に反した自分の言動を、自分で無理に正当化すること。
第三次世界大戦後、くだものの「オレンジ」も「レモン」も地球上からなくなった。
だんだん内容の意味がわからなくなってきた228ページ付近です。
革命:急激な変化。国家権力の質的転換。政治、経済、社会体制の変化。
ウェストン・スミスの過去の正確な記憶がよみがえってきます。ユダヤ人のこと、母親のこと、自分が自分勝手な性格をもっていたこと。
伏線のチョコレートの話が出てきます。ウェストン・スミスは、配給されたチョコレートを独り占めしようとするのです。
ストレスを解消するために人種差別をする。ユダヤ人大虐殺のイメージがあります。
『プロールたちは人間なんだ』
ウェストン・スミスたちの政党グループは、ナチス・ドイツに属する人間を意味しているのか。
マーティン:小柄で黄色い顔をした召使い。オブライエンいわく、われわれの仲間である。
『寡頭制集産主義の理論と実践(かとうせいしゅうさんしゅぎ)』エマニュエル・ゴールドスタイン
この世界には、三種類の人々が存在してきた。「上層」「中間層」「下層」である。
このパターンは常に現れる。必ずもとに戻るジャイロスコープのようだ。(角度を検出する計測器)
ロシアがヨーロッパを併合した。(イギリスを除く)→ユーラシア
アメリカ合衆国が大英帝国を併合した。→オセアニア
日本列島、満州、中国、チベット、モンゴルあたり→イースタシア
三国は、永遠に戦争状態にある(ようにみせかけられている)
「生産」と「消費」は、国ごとに自己完結できるようになった。自己充足的な経済が確立した。
だとすると、なぜ、「戦争状態」をつくりだしているのか。
戦争の第一の目的→生活水準を上げずに、機械による製造品を消費しつくすこと。
権力は少数の特権階級が握っている
国民全員が、学習して知恵がつけば、特権階級は権力を失う。
階級社会は、貧困と無知を基盤にしない限り成立しない。
支配者が、国民に偽(にせ)の情報を与えて、民衆の心をコントロールする社会です。
『現在の戦争は単なる詐欺行為に過ぎない』『そもそも国同士が戦いを交えていない』『真の恒久平和とは永遠の戦争状態と同じ→ゆえに、「戦争は平和なり」となる』
次に、『無知は力なり』についての考察
さきほどと同じく、人間の分類として「上層」「中間層」「下層」から始まります。
「上層」の目的は、現状維持。「中間層」は、上層と入れ替わること。「下層」は目的をもっていない。単調な労働で、しいたげられている。下層にいる人間は、自分の日常生活のことしか意識していない。
オセアニアのイングソック、ユーラシアのネオ・ポルシェヴィズム、イースタシアでの死の崇拝と呼ばれる教義(いずれも全体主義を表していると思われます。後述で、ロシア共産党とかナチス・ドイツが出てきます)
いずれも「非自由」と「不平等」を永続させるという狙いがあった。
印刷技術の発達と映画やラジオによって、「世論の操作」が容易になった。
寡頭政治(かとうせいじ):少人数の支配者による政治
私有財産の廃止(財産は国家のもの)によって、少数の人間に富が集中した。
グループが権力を失うとき。
①外部の力に征服される。
②無能な統治で大衆が反乱を起こす。
③中間層にくつがえされる。
④自らが自身と意欲を失う。
だれも「ビッグ・ブラザー」を見たことがない。
国民の教育水準が下降し続けている。
大衆が、社会や政治に関心をもたない。
法律は存在しない。
黒を白と信じ込むことができる能力をもつことは、忠誠心を意味する。
『二重思考』という思考方法をもつ。
過去は変わりやすい。意図的に過去を変える。歴史の出来事を支配者の都合のいいように変える。
読んでいると、何が本当なのかわからなくなってきます。そして、第三部は、『自分がどこにいるのか分からなかった』から始まります。
(第三部)
ウェストン・スミスは、捕まって、収容所らしきところに入れられて、拷問を受けて、電気機械らしきもので脳に電気ショックを与えられて、薬物も注射されて、全体主義の思想を植え付けられて、思考が洗脳されていきます。自分の思考とか意思をゆがめられてしまいます。助かりません。かなりむごい。
彼だけではなくてほかにも犠牲者がいます。政治犯扱いです。
『過去をコントロールするものは未来をコントロールし、現在をコントロールするものは過去をコントロールする』
『現実は外部に存在しているのではなくて、現実は人間の精神のなかに存在している』
犯罪取り調べにおける冤罪(えんざい。無実の罪)のつくり方を見ているようです。
『彼らは人間の抜け殻になっていた』
カリスマなる人物をトップにおいて崇拝するという錯覚状態をつくって、人心をコントロールして、組織の維持をしていく手法です。
ウェストン・スミスの人格を修復するためには、「学習→理解→受容」の経過が必要とされますが、それは、「洗脳(権力者にとって都合のいい思想を植えつける)」の経過を意味します。
プロレタリアート:賃金労働者階級。労働力を売ることでしか収入の道がない。対する言葉が「ブルジョアジー」で資本家階級。
『われわれは権力の司祭だ』神と人間の仲介者。神は権力と考える。
ウェストン・スミスの予知として、(全体主義は)失敗する。
対する相手の言葉として『君は朽ちかけている(くちかけている)』
ウェストン・スミスの意識が『受容』のために変容していきます。(変化する)
『自由は隷従なり(れいじゅう。支配されて言いなりになる)』
『二足す二は五である』
『過去は改変可能である』
ウェストン・スミスは、権力者との共存のために意識が変容していきます。
謬見(びゅうけん):間違った考えや見解
ウェストン・スミスの意識の最後に残っていたのは、恋愛の相手である異性に対する強い愛情と依存でした。
ウェストン・スミスは、いつの日か射殺されることになるとありますが、その前に狂い死にしそうです。
最終地が『101号室』
101号室は地下深くにある。
飢えた巨大なネズミが人を食おうと待っている。
ホラー映画のようになってきました。
恐怖があります。
古代の中国で行われていた懲罰だと書かれています。
ただ事実かどうかは、自分は知りません。
ウェストン・スミスは、戦争について考えるのをやめました。
ようやく読み終えました。
ぼうだいな文字の量です。なかば流し読みの読書でした。
哀しいお話でした。
ディストピア小説です。(ユートピア小説の反対)
暗黒世界へと導かれます。
ウェストン・スミスは死にません。
違う人間に変化するのです。
てんびん座生まれの特性をもつ自分としては、全体主義者にも言い分があると思いたい。いつの時代にあっても、平行感覚は失いたくない。
人は生まれて自分のまわりにある環境に順応して生きていこうとします。標準化の波にうまくのれないと苦しみを味わうことになります。
それぞれの国には、長い歴史を経ての事情や特殊性があります。
お互いの立場が違うということを理解し、認め合って、それはそれ、これはこれで、区別してやっていかないと戦争が始まってしまいます。
『共存』をめざさないと共倒れになって、地球は荒廃し、人間の世界は滅びてしまいます。
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