2021年12月02日
あなたの人生の物語 テッド・チャン
あなたの人生の物語 テッド・チャン ハヤカワ文庫
短編8本です。
テッド・チャン:米国のSF(サイエンスフィクション。科学空想)作家。1967年生まれ。中国系アメリカ人
SFと聞くと星新一さんを思い浮かべます。星新一賞を受賞した作品群を読んだことがあります。科学的な小説ですので、ものによって、おもしろかったり、自分の脳の理解力が足りず理解できなかったりでした。
「バビロンの塔」1990年発表
バビロン:古代都市。メソポタミア文明。ユーフラテス川付近。イラクバクダッドの南。紀元前18世紀から紀元前6世紀にあった王国。以前、You Tubeで楽しんだムンディ山崎先生の世界史講義を思い出しました。
バベルの塔(バビロンにあったとされる旧約聖書に登場する伝説の塔。ノアの大洪水のあとに人類が建て始めたが、神の怒りにあって、人類は、多数の言語をもつようになり、意思疎通をはばまれるようになったとされる。
先日読んだのは、バビロンの大富豪の漫画でした。たしか、収入の一割を貯蓄するのが蓄財の秘訣と書いてありました。
バビロンの塔づくりをする登場人物として、
ヒラルム:鉱夫。エラム人で、バビロンに呼ばれた。なにやら、バビロンの塔に登ると、天空に穴があって、そこを掘るらしい。(空の丸天井)
ナンニ:ヒラルムの友人。鉱夫。
ルガトゥム:車夫(人力で主にレンガを運ぶ)
バビロンの塔の大きさ。塔を寝かせて横にすると端から端まで二日かかる旅になる。縦にするとてんぺんに行くまでひと月半かかるそうです。
キュービット:長さの単位。1キュービットが、50cm。バロンの塔の最下部にある壇の高さが20m。壇の一辺の長さが、100m。
ヤハウェ:この世をとりしきる神の名前
文章には、すごい想像力と表現力がこめられています。アニメ映画の大作を鑑賞するようです。
風景や光景の表現がきめ細やかで、ていねいで、わかりやすい。
「バビロンの塔」の存在趣旨として、大きいものを見せて、権力を誇示して、人民を権力者の意のままに従わせる。この場合の権力者は、神ではなく、人間界の一部の人間なのでしょう。
加えて、「建設」という産業をつくって、経済を回す。ムダはムダではなく、雇用の場であったりもします。世間でお金が流れて回っていく構図をつくる。
トンネル掘削作業の部分の文章を読んでいて、先日起きたリニモのトンネル内事故のニュースを思い出しました。
芥川龍之介作品「蜘蛛の糸(くものいと)」のような雰囲気をもった作品です。
『水面の上に空気があるぞ!』『おれはまた大地の上にもどってきた。』
てっぺんだと思っていた場所は、足元にある砂漠の下にあった。
バビロンの塔は、地球そのものの形なのか。
いまひとつピンとこないのですが、脳内で思考体操をしているような気分でした。
「理解」
ぞっとするような発想の始まりです。
氷の層の下で、氷の上にいる人々を見上げています。
人体実験のようでもあります。脳をAI化するようなイメージがあります。(人工知能)
認知症のテストみたいなシーンがあります。以前自分も脳に血が溜まって長谷川式というテストを受けたことがあります。ふらふらでした。
フーバー医師
レオン・グレコ(主人公男性)
頭はいいけれど、人間性が壊れています。
コンピューターに侵入してシステムをめちゃくちゃにするハッカーの頭脳です。
シナプス:脳神経細胞をつなぐ接合部
イデイオサヴァン:白痴の天才
パターンで判断する。
職業的無関心さ。
ホルモンK
精神障害者と断じられて、保護房に閉じ込められてしまう。
コンピューターウィルスは、新型コロナウィルスにも似ている。
軍事目的の使用説もあります。
CIAとかテロのからみも考えられます。
本当に見せかけたウソをつくる世界です。
アドレナリン:興奮するホルモン
驚異のジャガーノート:怪物
結末は予想の範疇でした。(はんちゅう:枠内)
「ゼロで割る」
数学の話です。
ずばぬけた能力をもつ数学者が、半強制的に精神病院へ入院させられているようなところから始まります。
医師たちが、脅迫的行動と呼ぶらしい。
繊細(せんさい)で緻密(ちみつ)です。正方形のお話です。もろく壊れそうな思考があります。
ロボットの目で見た人間というものです。観察視点が機械的です。特殊な文章です。
『1イコール2はけっして証明できない』
フラストレーション:欲求不満
誤謬(ごびゅう):間違い。謝り。
脳内で、思考が縛られているような文脈です。
自死の話になります。
物の表と裏を見るような構成(方向)です。
内容が高度過ぎて、自分の脳ではついていけません。
「あなたの人生の物語」
ルイーズ・ハンクス博士(女性)とゲーリー・ドネリー博士(物理学者)がエイリアン(宇宙人。書中では、「ヘプタポッド」という名称を付けられています)と会って文字(書中では「表義文字」)を使った言語のやりとりをする話で、話の合間に、ルイーズさんの夫婦・親子の事情がはさみこまれていました。
ルイーズ・ハンクス博士の娘は25歳で事故死します。
ルイーズ博士は、エイリアンとの言語やりとりの過程において、娘の未来を知ることができたのですが、娘の不幸な未来を変えることはできませんでした。
科学的な説明は読み手には難解です。
自分には書かれているシーン(場面)を脳内に思い浮かべるだけの想像力がありません。
エイリアンの形状、形態は、人間の姿とはかなり異なります。
エイリアンとの会話を試みる。信号のやりとりのようです。
あなたの人生とは、ルイーズ博士の娘シャロンの人生でした。
神秘的です。『ヘプタポッドの惑星には二個の月があり……』『双方満足の解決(ウィン・ウィン・シチュエーション)』『人類の見方で世界を見ている。ヘプタポッドの見方で世界を見ている』
奇妙なお話でした。
そして、出産に関するお話でした。
「七十二文字」
七十二文字:ヘブル文字。六文字ずつ十二列。ヘブライ語。
名辞(めいじ):概念。本書の場合の霊として「動け」「止まれ」という玩具に対する命令
チェルトナム学校は、魔法学校だろうか。ハリーポッターのようです。主人公は、ロバート・ストラットンという男子生徒です。(その後大学を出て成人して研究者になります)
人工授精の実験のようです。
ホムンクルスというのは、人間とか生物の種のようです。種は、特定の個性をもつ固体で、その数値も決まっていて、順繰りに、受精によって、生命体として産まれるという印象をもちました。
命名師(ナーメンマイスター):ものを動かす名辞、護符として機能する名辞を扱う。
家庭用オートマトン:機器。焼き石膏で成形された自動人形(ロボットとかAI人工知能で動く機械のイメージで読みました)四本脚のオートマトンもある。
精子を操作して、生物化学で「人間」をつくる。『生きてはいるが意識はない』
人為的に機械を使って人間を産みだすという怖い研究です。性が関与しないことから『単為生殖』と呼ぶそうです。
雰囲気はまるっきり違いますが、今読んでいる漫画「ドラえもん」のような未来の世界です。『われわれの目的は種の存続である……』
奴隷製造機のようでもあります。貴族がいて、労働者階級があります。
陸軍省向けのオートマトンもあります。(未来は、ロボット同士が戦うのが戦争の形態になりそうです)そして、殺し屋もロボットです。
「人類化学の進化(ヒューマン・サイエンスの進化)」
4ページほどの短い話なのですが、むずかしくて、わたしには理解できません。
DNT:デジタル・ニュートラル・トランスファー
科学雑誌のことが書いてあります。
閲する:けみする。目を通して調べる。
論文を読む。超人類という人種のようなものがいる。普通の人類がいる。普通の人類が下に見られている。超人類は、DNTを使うことができる。
表現されていることは、現実社会の出来事の比喩(ひゆ。たとえ)なのだろうか。一部の傲慢(ごうまん。おごり高ぶって、人を見下す人)な指導者を批判するものなのか。
『人類が、超人類がつくった製品の複製をつくる「解析複製(リバース・エンジニア)」』『ナノウェア装置の結晶分析(なんのこっちゃいな?)』『遠隔探査(リモートセンシング)」』『高エネルギー粒子加速器(もうついていけません)』
メインテーマは、『人類の脳を超人類の脳へと機能強化させる方法』を発見することのようです。
『スギモト遺伝子療法』というのがからんできます。
人類の両親に超人類の子供が誕生する。
最後は気にすることはないという教訓話で終わっています。
「地獄とは神の不在なり」
不思議な雰囲気がただよう作品です。
宗教的です。
左足に先天性の異常があるニール・フィスクが登場します。だれのせいでそのような体で生まれてきたのか。
ニール・フィクスの妻が事故死します。天使登場の際に、割れた窓ガラスの破片が彼女を直撃したのです。
天使ナタナエルが出てきます。天使とはいえ、天使が降臨すると事故が起きて、事故死する人間が出ます。死神のようです。一部の人間には祝福をもたらし、ほかの一部の人間には災厄をもたらすそうです。
これもまた自分には理解できない作品でした。
依拠:いきょ。よりどころ。
次々と人が登場します。男女の三角関係があります。
病気と病人の話が多い。
ライトシーカー:追光者。天国の光を求める人か。?ちょっとわかりません。
烏滸の沙汰:おこのさた。ばかげていること。とても愚かな様子
「顔の美醜(びしゅう)について-ドキュメンタリー」
人間の顔、とくに女性について、顔の良しあしで評価されてしまう「見た目の差別(容貌差別)」があります。
「見た目の差別」を解消するために、脳に、顔の良しあしを判別できなくなる機器『カリー』をとりつける処置をするらしい。
スタンダール『美は幸福の約束である』から始まります。美しく、かわいらしく生まれてきた女性は生まれながらに得をするのです。
目の付け所がいい。一般的なことですが、顔のよしあしを素材にした創作作品はあまりみかけません。邦画で「Bの戦場(ガンバレルーヤのよしこさん主演)」とか「ハンサムスーツ(塚地武雅つかじむがさんと谷原章介さん主演)」とか、本では、「顔にも負けず(水野敬也みずのけいやさん製作)」などが思い浮かびます。
『カリー』を付けることを義務付ける法律の賛否を問う内容です。
何人かの登場人物による語りで交代していきます。
タメラ・ライアンズ:女子大一年生もうすぐ18歳。『カリー』を付けて生活してきた。本人としては、大学入学後18歳になったら、『カリー』をはずすつもりでいた。別れた恋人が、ギャレット。
レイチェル・ライアンズ:タメラ・ライアンズの母親。娘を顔で判断することがないような学校に入れた。
マーティン・ライアンズ:タメラ・ライアンズの父親。
マリア・ディスーザ:大学三年生。平等を求める会議の議長。
ジョセフ・ワクィンガートナー:神経学者。カリー処置は、連想的失認に近い。特定部位の脳損傷を真似た処置。
リチャード・ハミル:学校創設者。病気や先天性の影響で、顔に奇形がある生徒の数が多い学校をつくった。
企業から報酬をもらって、議会で発言した学生として、
ジェフ・ウィンスロップ:三年生。
アデシュ・シン:三年生。
ウォールター・ランバート:全米美醜失認協会会長
アニカ・リンドストローム:二年生女子。『わたしは男に見つめられるのが好き。それがないとはりあいがなくなる』
ジョリーン・カーター:三年生女子。ルックスがいい女性だが、自分では男は現実のわたしを見ていないと悩んでいる。つらい。
アレックス・ビベスキュ:宗教学教授。
作者がいろんな人になりかわりながら、見た目に関する考察を続けます。
美醜失認処置:びしゅうしつにんしょち。カリーアグノシア
『恵まれない顔立ちの人々に対する偏見は…… 人間はだれに教えられるともなくそんな差別をします。』
人間には、美しくなることで得られる満足があります。
「整形手術」のお話が出ます。
『人びとが外見でおたがいを判断しないような環境に住むことができたら……』
自分が思うのは、人によって好みが違う。だから、たくさんのカップルが生まれる。最初は見た目で入っても、途中で、なかみをみての相性判断に移る。いいところもあれば、そうでないところもある。なにかひとつ尊敬できるところがあれば、ほかのいやなところは我慢できる。
物語のほうは、機器に頼らず、たがいによく話し合ってやっていきましょうというような流れで落ち着きます。
カリーという機器の目的は、『平等』ではなくて『商売』だったのです。
全部の作品を読んでみて思ったのは、『人間から人間以外の違うものになろうとする小説群に思えた』というものでした。
(作品群を読みながら思いついたこととして)
時代が変化して今思うこととして、自分が知っている地球とは異なる地球の人たちが「次世代の人たち」と感じられる。
自分の知っている「秩序(ものごとの順番とか考え方)」が、次世代の人たちの「秩序」とは異なる。
違和感をもちながら、これから最期(死期)を迎えるときまで、日常生活を送っていく。
短編8本です。
テッド・チャン:米国のSF(サイエンスフィクション。科学空想)作家。1967年生まれ。中国系アメリカ人
SFと聞くと星新一さんを思い浮かべます。星新一賞を受賞した作品群を読んだことがあります。科学的な小説ですので、ものによって、おもしろかったり、自分の脳の理解力が足りず理解できなかったりでした。
「バビロンの塔」1990年発表
バビロン:古代都市。メソポタミア文明。ユーフラテス川付近。イラクバクダッドの南。紀元前18世紀から紀元前6世紀にあった王国。以前、You Tubeで楽しんだムンディ山崎先生の世界史講義を思い出しました。
バベルの塔(バビロンにあったとされる旧約聖書に登場する伝説の塔。ノアの大洪水のあとに人類が建て始めたが、神の怒りにあって、人類は、多数の言語をもつようになり、意思疎通をはばまれるようになったとされる。
先日読んだのは、バビロンの大富豪の漫画でした。たしか、収入の一割を貯蓄するのが蓄財の秘訣と書いてありました。
バビロンの塔づくりをする登場人物として、
ヒラルム:鉱夫。エラム人で、バビロンに呼ばれた。なにやら、バビロンの塔に登ると、天空に穴があって、そこを掘るらしい。(空の丸天井)
ナンニ:ヒラルムの友人。鉱夫。
ルガトゥム:車夫(人力で主にレンガを運ぶ)
バビロンの塔の大きさ。塔を寝かせて横にすると端から端まで二日かかる旅になる。縦にするとてんぺんに行くまでひと月半かかるそうです。
キュービット:長さの単位。1キュービットが、50cm。バロンの塔の最下部にある壇の高さが20m。壇の一辺の長さが、100m。
ヤハウェ:この世をとりしきる神の名前
文章には、すごい想像力と表現力がこめられています。アニメ映画の大作を鑑賞するようです。
風景や光景の表現がきめ細やかで、ていねいで、わかりやすい。
「バビロンの塔」の存在趣旨として、大きいものを見せて、権力を誇示して、人民を権力者の意のままに従わせる。この場合の権力者は、神ではなく、人間界の一部の人間なのでしょう。
加えて、「建設」という産業をつくって、経済を回す。ムダはムダではなく、雇用の場であったりもします。世間でお金が流れて回っていく構図をつくる。
トンネル掘削作業の部分の文章を読んでいて、先日起きたリニモのトンネル内事故のニュースを思い出しました。
芥川龍之介作品「蜘蛛の糸(くものいと)」のような雰囲気をもった作品です。
『水面の上に空気があるぞ!』『おれはまた大地の上にもどってきた。』
てっぺんだと思っていた場所は、足元にある砂漠の下にあった。
バビロンの塔は、地球そのものの形なのか。
いまひとつピンとこないのですが、脳内で思考体操をしているような気分でした。
「理解」
ぞっとするような発想の始まりです。
氷の層の下で、氷の上にいる人々を見上げています。
人体実験のようでもあります。脳をAI化するようなイメージがあります。(人工知能)
認知症のテストみたいなシーンがあります。以前自分も脳に血が溜まって長谷川式というテストを受けたことがあります。ふらふらでした。
フーバー医師
レオン・グレコ(主人公男性)
頭はいいけれど、人間性が壊れています。
コンピューターに侵入してシステムをめちゃくちゃにするハッカーの頭脳です。
シナプス:脳神経細胞をつなぐ接合部
イデイオサヴァン:白痴の天才
パターンで判断する。
職業的無関心さ。
ホルモンK
精神障害者と断じられて、保護房に閉じ込められてしまう。
コンピューターウィルスは、新型コロナウィルスにも似ている。
軍事目的の使用説もあります。
CIAとかテロのからみも考えられます。
本当に見せかけたウソをつくる世界です。
アドレナリン:興奮するホルモン
驚異のジャガーノート:怪物
結末は予想の範疇でした。(はんちゅう:枠内)
「ゼロで割る」
数学の話です。
ずばぬけた能力をもつ数学者が、半強制的に精神病院へ入院させられているようなところから始まります。
医師たちが、脅迫的行動と呼ぶらしい。
繊細(せんさい)で緻密(ちみつ)です。正方形のお話です。もろく壊れそうな思考があります。
ロボットの目で見た人間というものです。観察視点が機械的です。特殊な文章です。
『1イコール2はけっして証明できない』
フラストレーション:欲求不満
誤謬(ごびゅう):間違い。謝り。
脳内で、思考が縛られているような文脈です。
自死の話になります。
物の表と裏を見るような構成(方向)です。
内容が高度過ぎて、自分の脳ではついていけません。
「あなたの人生の物語」
ルイーズ・ハンクス博士(女性)とゲーリー・ドネリー博士(物理学者)がエイリアン(宇宙人。書中では、「ヘプタポッド」という名称を付けられています)と会って文字(書中では「表義文字」)を使った言語のやりとりをする話で、話の合間に、ルイーズさんの夫婦・親子の事情がはさみこまれていました。
ルイーズ・ハンクス博士の娘は25歳で事故死します。
ルイーズ博士は、エイリアンとの言語やりとりの過程において、娘の未来を知ることができたのですが、娘の不幸な未来を変えることはできませんでした。
科学的な説明は読み手には難解です。
自分には書かれているシーン(場面)を脳内に思い浮かべるだけの想像力がありません。
エイリアンの形状、形態は、人間の姿とはかなり異なります。
エイリアンとの会話を試みる。信号のやりとりのようです。
あなたの人生とは、ルイーズ博士の娘シャロンの人生でした。
神秘的です。『ヘプタポッドの惑星には二個の月があり……』『双方満足の解決(ウィン・ウィン・シチュエーション)』『人類の見方で世界を見ている。ヘプタポッドの見方で世界を見ている』
奇妙なお話でした。
そして、出産に関するお話でした。
「七十二文字」
七十二文字:ヘブル文字。六文字ずつ十二列。ヘブライ語。
名辞(めいじ):概念。本書の場合の霊として「動け」「止まれ」という玩具に対する命令
チェルトナム学校は、魔法学校だろうか。ハリーポッターのようです。主人公は、ロバート・ストラットンという男子生徒です。(その後大学を出て成人して研究者になります)
人工授精の実験のようです。
ホムンクルスというのは、人間とか生物の種のようです。種は、特定の個性をもつ固体で、その数値も決まっていて、順繰りに、受精によって、生命体として産まれるという印象をもちました。
命名師(ナーメンマイスター):ものを動かす名辞、護符として機能する名辞を扱う。
家庭用オートマトン:機器。焼き石膏で成形された自動人形(ロボットとかAI人工知能で動く機械のイメージで読みました)四本脚のオートマトンもある。
精子を操作して、生物化学で「人間」をつくる。『生きてはいるが意識はない』
人為的に機械を使って人間を産みだすという怖い研究です。性が関与しないことから『単為生殖』と呼ぶそうです。
雰囲気はまるっきり違いますが、今読んでいる漫画「ドラえもん」のような未来の世界です。『われわれの目的は種の存続である……』
奴隷製造機のようでもあります。貴族がいて、労働者階級があります。
陸軍省向けのオートマトンもあります。(未来は、ロボット同士が戦うのが戦争の形態になりそうです)そして、殺し屋もロボットです。
「人類化学の進化(ヒューマン・サイエンスの進化)」
4ページほどの短い話なのですが、むずかしくて、わたしには理解できません。
DNT:デジタル・ニュートラル・トランスファー
科学雑誌のことが書いてあります。
閲する:けみする。目を通して調べる。
論文を読む。超人類という人種のようなものがいる。普通の人類がいる。普通の人類が下に見られている。超人類は、DNTを使うことができる。
表現されていることは、現実社会の出来事の比喩(ひゆ。たとえ)なのだろうか。一部の傲慢(ごうまん。おごり高ぶって、人を見下す人)な指導者を批判するものなのか。
『人類が、超人類がつくった製品の複製をつくる「解析複製(リバース・エンジニア)」』『ナノウェア装置の結晶分析(なんのこっちゃいな?)』『遠隔探査(リモートセンシング)」』『高エネルギー粒子加速器(もうついていけません)』
メインテーマは、『人類の脳を超人類の脳へと機能強化させる方法』を発見することのようです。
『スギモト遺伝子療法』というのがからんできます。
人類の両親に超人類の子供が誕生する。
最後は気にすることはないという教訓話で終わっています。
「地獄とは神の不在なり」
不思議な雰囲気がただよう作品です。
宗教的です。
左足に先天性の異常があるニール・フィスクが登場します。だれのせいでそのような体で生まれてきたのか。
ニール・フィクスの妻が事故死します。天使登場の際に、割れた窓ガラスの破片が彼女を直撃したのです。
天使ナタナエルが出てきます。天使とはいえ、天使が降臨すると事故が起きて、事故死する人間が出ます。死神のようです。一部の人間には祝福をもたらし、ほかの一部の人間には災厄をもたらすそうです。
これもまた自分には理解できない作品でした。
依拠:いきょ。よりどころ。
次々と人が登場します。男女の三角関係があります。
病気と病人の話が多い。
ライトシーカー:追光者。天国の光を求める人か。?ちょっとわかりません。
烏滸の沙汰:おこのさた。ばかげていること。とても愚かな様子
「顔の美醜(びしゅう)について-ドキュメンタリー」
人間の顔、とくに女性について、顔の良しあしで評価されてしまう「見た目の差別(容貌差別)」があります。
「見た目の差別」を解消するために、脳に、顔の良しあしを判別できなくなる機器『カリー』をとりつける処置をするらしい。
スタンダール『美は幸福の約束である』から始まります。美しく、かわいらしく生まれてきた女性は生まれながらに得をするのです。
目の付け所がいい。一般的なことですが、顔のよしあしを素材にした創作作品はあまりみかけません。邦画で「Bの戦場(ガンバレルーヤのよしこさん主演)」とか「ハンサムスーツ(塚地武雅つかじむがさんと谷原章介さん主演)」とか、本では、「顔にも負けず(水野敬也みずのけいやさん製作)」などが思い浮かびます。
『カリー』を付けることを義務付ける法律の賛否を問う内容です。
何人かの登場人物による語りで交代していきます。
タメラ・ライアンズ:女子大一年生もうすぐ18歳。『カリー』を付けて生活してきた。本人としては、大学入学後18歳になったら、『カリー』をはずすつもりでいた。別れた恋人が、ギャレット。
レイチェル・ライアンズ:タメラ・ライアンズの母親。娘を顔で判断することがないような学校に入れた。
マーティン・ライアンズ:タメラ・ライアンズの父親。
マリア・ディスーザ:大学三年生。平等を求める会議の議長。
ジョセフ・ワクィンガートナー:神経学者。カリー処置は、連想的失認に近い。特定部位の脳損傷を真似た処置。
リチャード・ハミル:学校創設者。病気や先天性の影響で、顔に奇形がある生徒の数が多い学校をつくった。
企業から報酬をもらって、議会で発言した学生として、
ジェフ・ウィンスロップ:三年生。
アデシュ・シン:三年生。
ウォールター・ランバート:全米美醜失認協会会長
アニカ・リンドストローム:二年生女子。『わたしは男に見つめられるのが好き。それがないとはりあいがなくなる』
ジョリーン・カーター:三年生女子。ルックスがいい女性だが、自分では男は現実のわたしを見ていないと悩んでいる。つらい。
アレックス・ビベスキュ:宗教学教授。
作者がいろんな人になりかわりながら、見た目に関する考察を続けます。
美醜失認処置:びしゅうしつにんしょち。カリーアグノシア
『恵まれない顔立ちの人々に対する偏見は…… 人間はだれに教えられるともなくそんな差別をします。』
人間には、美しくなることで得られる満足があります。
「整形手術」のお話が出ます。
『人びとが外見でおたがいを判断しないような環境に住むことができたら……』
自分が思うのは、人によって好みが違う。だから、たくさんのカップルが生まれる。最初は見た目で入っても、途中で、なかみをみての相性判断に移る。いいところもあれば、そうでないところもある。なにかひとつ尊敬できるところがあれば、ほかのいやなところは我慢できる。
物語のほうは、機器に頼らず、たがいによく話し合ってやっていきましょうというような流れで落ち着きます。
カリーという機器の目的は、『平等』ではなくて『商売』だったのです。
全部の作品を読んでみて思ったのは、『人間から人間以外の違うものになろうとする小説群に思えた』というものでした。
(作品群を読みながら思いついたこととして)
時代が変化して今思うこととして、自分が知っている地球とは異なる地球の人たちが「次世代の人たち」と感じられる。
自分の知っている「秩序(ものごとの順番とか考え方)」が、次世代の人たちの「秩序」とは異なる。
違和感をもちながら、これから最期(死期)を迎えるときまで、日常生活を送っていく。
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