2021年11月02日
九十八歳。戦いやまず日は暮れず 佐藤愛子
九十八歳。戦いやまず日は暮れず 佐藤愛子 小学館
同作者の「戦いすんで日が暮れて」を読んだのは、自分が二十代の頃でした。1969年の直木賞作品です。たしか、実体験をもとにして書かれた借金の返済に追いまくられるお話だったという記憶です。
もうずいぶん永い時が流れました。
健康で長生きされている人は、人生の勝利者です。
エッセイ集です。
人が亡くなるときのひとつのパターンがあります。
ものが見えづらくなる。音や声が聞こえづらくなる。歯がぐらぐらになる。
歩行が不自由になって、ペンギンみたいにしか歩けなくなります。スポーツマンだった人もゆっくりとしか歩けなくなります。歩く距離は伸びません。とても時間がかかります。腰が曲がって、つえが必要になったりもします。
自力で食べられなくなります。体に管(くだ)が付けられて、人工的に栄養を補給します。
呼吸が困難になってきて、自力で呼吸ができなくなります。呼吸を機器に頼ります。
意識がなくなります。
本能で、体力がある限り生き続けます。
施設や病院にはなるべく入らずに、ぴんしゃんころりが、たいていの人たちの理想です。
最後は、静かな毎日を淡々と送りたい。日常生活を送りながら、フェードアウトしたい。(ゆっくりと消えていく)
長生きしたくて長生きしているわけではない著者です。
「天中殺(てんちゅうさつ)」のお話が当たっています。迷信とは思いますが、ふりかえってみるとついていなかった一年が十年に一回ぐらいあります。
気楽に読める本です。
読みやすい文章です。
文字の大きさが大きくて読みやすい。
明朝体も読みやすい字体です。
前半には、2017年、2018年のころのことが書いてあります。平成時代が終わる頃です。大正、昭和、平成、令和とよっつの元号を生き続けている著者です。1923年生まれです。大正12年です。
令和時代の今、昭和10年当時のご本人の思い出話を読んでいます。すごいなあ。当時の学校の先生の教訓話が、江戸時代中期1703年にあった忠臣蔵(ちゅうしんぐら。赤穂浪士の吉良邸討ち入り)です。
印象的だった文節です。「野人を標榜している私(田舎者、粗野な人)(標榜は、ひょうぼうと読んで、掲げて示す)」「ロボット風の無表情美女(最近多い)」「それにしても、なかなか死なない人だねえ」「男が威張っていた時代」「見切る(見限る。見捨てる)」「味覚がないのに熱意十分な夫へ渡す弁当」「戦争は長かった」「この国は平和がつづき、飽食の国になったのだ」「二十五のときから売れても売れなくても平気で書き続けてきた」
著者が転倒したシーンの記述には臨場感があります。(読者がその場にいる感じ)
助けを呼んで、来てくれる人がいるうち(家)はいい。
ひとり暮らしや複数で暮らしていてもひとりのような生活の人もいます。
病院嫌いな著者です。
本書で紹介されている洋画「小さな恋のメロディ」は、中学生の頃、映画館で放映されていました。人気作品でした。
体罰慣れしている昔のこどものことが書いてあります。体罰は否定しますが、昔はひどかった。先生に叩かれ、親に叩かれ、先輩に叩かれ、兄弟に叩かれ、それでも生き抜いてくることができたのは、立ち向かう気持ちが強かったことと、時代背景だったのでしょう。怒られ慣れの体質になりました。
彼我の攻防戦(ひがのこうぼうせん):あなたとわたしの戦い。
児童虐待をする人間のことを「ヘンタイ」とする。
経験則(経験で得られたもの)として、ヘンタイは直らない。
北海道に別荘を求めてつくったお話がおもしろい。
1975年ころのことですから、昭和50年ころです。
自分が30歳ぐらいだったころに60歳ぐらいだった人たちはもうみなさんお亡くなりになりましたが、みんながいなくなって、あのときのどたばた騒ぎはいったいなんだったのだろうかと思い出すことがあります。けんかしてもしょうがないのです。みんな最後は、あの世いきなのです。
牧羊子(まきようこ):詩人。小説家開高健の妻。2000年没
キャプション:説明文
中盤からコロナ禍のお話が出てきます。おもしろいです。
(首相は)「なぜ、あのように小さなマスクをつけるのか?」
「三密」という言葉も最近は耳にすることが減りました。密集、密接、密閉
(第二次世界大戦が始まる前のこととして)「いい時代だった。みんな暢気(のんき)だった。カラオケなんてものはなかった。みんな勝手に歌っていた」
武運長久(ぶうんちょうきゅう):戦いでの幸運が長く続くこと。
薯のツル(いものつる):こどものころ、よく食べました。
摸糊(もこ):ぼんやりしている。はっきりしない。
カルマ:宿命
寂寥(せきりょう):ものさびしい。ひっそりしている。
励まされます。
さらに長生きしてください。
おもしろかったです。
(追記)
以前、黒柳徹子さんが長生きの秘訣を問われて「反省しないこと」とおっしゃっていたことを思い出しました。賛成です。過去を変えることはできません。あれはあれで良かったと思うしか手段がないのです。
同作者の「戦いすんで日が暮れて」を読んだのは、自分が二十代の頃でした。1969年の直木賞作品です。たしか、実体験をもとにして書かれた借金の返済に追いまくられるお話だったという記憶です。
もうずいぶん永い時が流れました。
健康で長生きされている人は、人生の勝利者です。
エッセイ集です。
人が亡くなるときのひとつのパターンがあります。
ものが見えづらくなる。音や声が聞こえづらくなる。歯がぐらぐらになる。
歩行が不自由になって、ペンギンみたいにしか歩けなくなります。スポーツマンだった人もゆっくりとしか歩けなくなります。歩く距離は伸びません。とても時間がかかります。腰が曲がって、つえが必要になったりもします。
自力で食べられなくなります。体に管(くだ)が付けられて、人工的に栄養を補給します。
呼吸が困難になってきて、自力で呼吸ができなくなります。呼吸を機器に頼ります。
意識がなくなります。
本能で、体力がある限り生き続けます。
施設や病院にはなるべく入らずに、ぴんしゃんころりが、たいていの人たちの理想です。
最後は、静かな毎日を淡々と送りたい。日常生活を送りながら、フェードアウトしたい。(ゆっくりと消えていく)
長生きしたくて長生きしているわけではない著者です。
「天中殺(てんちゅうさつ)」のお話が当たっています。迷信とは思いますが、ふりかえってみるとついていなかった一年が十年に一回ぐらいあります。
気楽に読める本です。
読みやすい文章です。
文字の大きさが大きくて読みやすい。
明朝体も読みやすい字体です。
前半には、2017年、2018年のころのことが書いてあります。平成時代が終わる頃です。大正、昭和、平成、令和とよっつの元号を生き続けている著者です。1923年生まれです。大正12年です。
令和時代の今、昭和10年当時のご本人の思い出話を読んでいます。すごいなあ。当時の学校の先生の教訓話が、江戸時代中期1703年にあった忠臣蔵(ちゅうしんぐら。赤穂浪士の吉良邸討ち入り)です。
印象的だった文節です。「野人を標榜している私(田舎者、粗野な人)(標榜は、ひょうぼうと読んで、掲げて示す)」「ロボット風の無表情美女(最近多い)」「それにしても、なかなか死なない人だねえ」「男が威張っていた時代」「見切る(見限る。見捨てる)」「味覚がないのに熱意十分な夫へ渡す弁当」「戦争は長かった」「この国は平和がつづき、飽食の国になったのだ」「二十五のときから売れても売れなくても平気で書き続けてきた」
著者が転倒したシーンの記述には臨場感があります。(読者がその場にいる感じ)
助けを呼んで、来てくれる人がいるうち(家)はいい。
ひとり暮らしや複数で暮らしていてもひとりのような生活の人もいます。
病院嫌いな著者です。
本書で紹介されている洋画「小さな恋のメロディ」は、中学生の頃、映画館で放映されていました。人気作品でした。
体罰慣れしている昔のこどものことが書いてあります。体罰は否定しますが、昔はひどかった。先生に叩かれ、親に叩かれ、先輩に叩かれ、兄弟に叩かれ、それでも生き抜いてくることができたのは、立ち向かう気持ちが強かったことと、時代背景だったのでしょう。怒られ慣れの体質になりました。
彼我の攻防戦(ひがのこうぼうせん):あなたとわたしの戦い。
児童虐待をする人間のことを「ヘンタイ」とする。
経験則(経験で得られたもの)として、ヘンタイは直らない。
北海道に別荘を求めてつくったお話がおもしろい。
1975年ころのことですから、昭和50年ころです。
自分が30歳ぐらいだったころに60歳ぐらいだった人たちはもうみなさんお亡くなりになりましたが、みんながいなくなって、あのときのどたばた騒ぎはいったいなんだったのだろうかと思い出すことがあります。けんかしてもしょうがないのです。みんな最後は、あの世いきなのです。
牧羊子(まきようこ):詩人。小説家開高健の妻。2000年没
キャプション:説明文
中盤からコロナ禍のお話が出てきます。おもしろいです。
(首相は)「なぜ、あのように小さなマスクをつけるのか?」
「三密」という言葉も最近は耳にすることが減りました。密集、密接、密閉
(第二次世界大戦が始まる前のこととして)「いい時代だった。みんな暢気(のんき)だった。カラオケなんてものはなかった。みんな勝手に歌っていた」
武運長久(ぶうんちょうきゅう):戦いでの幸運が長く続くこと。
薯のツル(いものつる):こどものころ、よく食べました。
摸糊(もこ):ぼんやりしている。はっきりしない。
カルマ:宿命
寂寥(せきりょう):ものさびしい。ひっそりしている。
励まされます。
さらに長生きしてください。
おもしろかったです。
(追記)
以前、黒柳徹子さんが長生きの秘訣を問われて「反省しないこと」とおっしゃっていたことを思い出しました。賛成です。過去を変えることはできません。あれはあれで良かったと思うしか手段がないのです。
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