2021年09月24日

動物農場(新訳版) ジョージ・オーウェル

動物農場 [新訳版] ジョージ・オーウェル 山形浩生(やまがた・ひろお)・訳 早川書房

 ジョージ・オーウェル:1903年(日本だと明治36年)-1950年(昭和25年)46歳病死 イギリス人作家 1945年「動物農場」を発表した。1949年に「1984」を書いた。

 33ページまで読みました。いつものように、読みながら感想を継ぎ足していきます。
 イギリスにある農場で飼育されていたウシ、ウマ、メンドリ、アヒル、ヤギ、ロバ、犬、ネコたちなど多数頭数の動物たちが反乱を起こして、人間たちを農場から追い出しました。
 「メイナー農場」は、「動物農場」に名前を変えました。ちなみに、「メイナー農場」の経営者はジョーンズさんです。メイナー農場の両側にあるのが、「フォックスウッド農場」経営者は、ピルキントン(のんきな農夫で、農場は荒廃している)と「ピンチフィールド農場」経営者は、フレデリック(がっしり体形、強気、すぐ訴訟提起、農場はよく管理されている)です。

 いわゆる擬人法を用いた寓話(寓話。仮定の話。たとえ話)だとしながら途中から読みました。
 今のところ、人間が貴族で、動物が庶民、フランス革命のようなイメージです。資本家と資本家に搾取される労働者という面もあります。
 読んでいると、カエルを登場人物に使用した百田尚樹作品『カエルの楽園』を思い出します。現代世界における戦争と平和をテーマにした人間界をカエルの世界に置き換えた比喩小説でした。

 こちらの作品では、たくさんの農場の動物たちが出てきますが、中心になるのはブタです。教祖さまのような老いたブタが死ぬ数日前に農場の動物たちを集めて自分の考えを伝えます。12歳のオスブタ「メイジャー」でした。(あとでわかることですが、メイジャーのモデルは、ソ連のウラジミール・レーニンとあります)
 メイジャーの人間を排除するという意思を継いで、三頭のブタが立ち上がり組織をコントロールしていきます
 三頭の名前は、スノーボール(快活。口が達者。あとでわかりましたが、モデルは、ソ連のレオン・トロツキーだそうです) ナポレオン(大柄。こちらもあとでわかりましたが、モデルは、ヨシフ・スターリンだそうです) スクウィラー(小柄で小太り。ずるがしこい)
 「人こそは、我々が持つ唯一の真の敵だ……」人間は、生産せず(乳も出さず、卵も産まず……)は説得力があります。働きもせずに動物が生産したものを消費するだけだと、老衰で亡くなったブタのメイジャーがメッセージを残しました。

 ほかの動物でよく出てくるのが、イヌのブルーベルとジェシー(二頭で九頭の子犬を産みました)、ウマ二頭として、ボクサー(180cmの体高で巨大)、クローバー(メスウマで、四頭の子どもがいる)、白ヤギのミュリエル、ロバのベンジャミン(高齢、かんしゃくもち、けして笑わない)です。メスウマのモーリー(牧場主ジョーンズの軽二輪馬車を引いていた)、カラスのモーゼルなど。

 馬勒(ばろく):馬具。馬の頭部につける器具。耳から口にかけてつける。「くつわ」

 組織管理のスタートは、ブタによるルール設定と周知です。[七戒(しちかい? いましめ]
 1 二本足で立つ者はすべて敵
 2 四本足で立つか、翼がある者は友
 3 動物は服を着てはいけない。
 4 動物はベッドで寝てはいけない。
 5 動物は酒を飲んではいけない。
 6 動物は動物を殺してはいけない。
 7 動物は平等である。

 飛鳥時代の聖徳太子が出した十七条の憲法のようでもあります。(西暦604年)

(つづく)

 53ページまで読みました。
 牧場から人間たちを追い出したあと、今度は、ブタが支配者(権力者)のポジションに立ちます。
 なんだか、今のアフガニスタン情勢のようです。アメリカを追い出して、タリバンの国をつくる。
 「人間」がアメリカ合衆国軍隊で、ブタが「タリバン」です。
 
 蹄:ひづめ。読めませんでした。
 貶める:おとしめる。これもまたすぐには読めませんでした。

 ブタが最初にやったことは、「読み書き教室」でした。動物たちに読み書きを教えました。『教育』です。もしかしたら『洗脳』かもしれません。
 
 追い出された人間たちはおとなしく黙ってはいません。牧場主のジョーンズ始め労働者たちは、牧場を取り返そうと武器を持って動物たちを攻撃してきました。(人間の負けでした。動物たちは兵士としての訓練を受け、防衛作戦がすでにできあがっていた)

 ブタによる独裁のトップダウン方式による統治が始まりました。
 ブタ集団内部の権力闘争により、抗争が勃発して、業務の改革・改善を提案し続けた快活なスノーボールが、大柄なナポレオンの策略にはまり、力づくで牧場を追い出されました。なるほど、まずは、武力をもつ者が勝利するのです。(でも、体制がいつまでも続くとは限らない)
 ところが、ナポレオンは、スノーボールの提案を、もとも自分が発案したものだとして、事実を嘘で変えてしまいます。
 改革は、「産業革命」のようです。機械化で、人間の労働時間を減らして、収入は増やすのです。
 「機械」として「風車」が提示されます。
 宗教的になってきます。伝説のブタ「老メイジャー」の遺体が掘り起こされ白骨化した頭蓋骨が飾られました。
 ウソで民(たみ)をたぶらかして、権力者に従わせる手法です。
 ブタ以外の動物たちは、ブタの奴隷です。

(つづく)

 動物農場の運営は徐々にゆきづまっていきます。動物だけでの運営は無理なのです。人間の協力がいります。
 国政に似て、外交とか貿易が必要です。
 人間と動物との共存がいります。アフガニスタンの新政権と国際社会との共存に似ています。ミヤンマーも同じでしょう。
 
 ウィリンドン町:ニワトリの卵を売る場所

 法務弁護士ウィンパー:ほおひげを生やしたずるがしこい様子の小男。高額の手数料をとる。ブタのナポレオンと人間との仲介役をつとめる。

 もともとのメイナー牧場の所有者であるジョーンズは、牧場の返還要求をあきらめて転居します。
 
 ブタから奴隷のように扱われている動物たちは自分たちが奴隷として扱われていることに気づいていません。ブタ以外の動物たちには、理解と自覚をする知力がありません。
 動物たちの労働時間はとても長い。
 動物たちは、牧場運営者の人間がブタに置き換わっただけの境遇です。
 民(たみ)を上手にだました者が権力者になることができます。
 けっこう怖い小説です。

 冬が来て、動物農場に「飢餓」が近づいてきます。
 その部分を読んでいると、まるで、たまに報道される自然災害による北朝鮮の飢餓状態のようです。食べ物不足です。
 底上げして食糧不足の事実を隠します。箱に砂を入れて、その上に食料を飾るようにのせるのです。

 ミヤンマーやアフガニスタン情勢のようでもあります。組織への反逆者は処刑されます。
 民衆に流す情報は、嘘情報です。
 暴力で制圧する恐怖政治が始まります。(どこかの国を思い浮かべます)
 本書では、ブタがイヌを警備・軍事・威圧で用います。
 なんだか、香港まで頭に浮かんできました。
 この小説は1945年に発表されていますが、現代でもぴったりあてはまる内容です。76年経っても、人間界は、なにも変わっていません。

 『(メスウマの)クローバーが丘を見下ろすと、その目には涙があふれていました。もし思ったことを口にできたなら……』
 
 革命当初に示された七つの戒律は、ブタの都合のいいように書き換えられています。
 日本への非難、攻撃を続ける少し前の韓国のようでもあります。
 ブタのナポレオンたちは、そこに、存在しない動物農場からナポレオンに追い出されたブタのスノーボールを憎しみの対象にして、他の動物たちの統制をします。

 そして、人間たちが立ち上がりました。
 されど、人間たちは、動物たちに負けました。

 これからどうなるのだろう。

 (つづく)

 動物農場にいる動物たちの暮らし向きはどんどん悪化していきます。
 なぜかしら、つくっても壊れる「風車」建設へのこだわりがあります。
 年金制度に関する記述が始まります。
 ウマとブタの引退年齢が12歳、ウシ14歳、イヌ9歳、ヒツジが7歳、ニワトリやガチョウが5歳です。引退後に年金を受給した動物はまだいません。一生懸命働けば、高額な高齢年金が出るそうです。
 180cmの体高をもつ巨大なウマのボクサーが、年金を楽しみにして働いてきました。長時間労働も積極的にやってきました。その結果、体調をくずして倒れてしまいましたが、もうすぐ年金を受給できる年齢だったので安心していました。(結局、病院に運ぶというブタのウソにだまされて馬肉用として売られて行きました)

 ブタは物資の不足を『削減』とは言わずに『再調整』と言うそうです。

 読んでいると、江戸時代の飢饉や改革、それから「鎖国」を思い出します。江戸幕府の「享保の改革(きょうほのかいかく。1716年八代将軍徳川吉宗)」「寛政の改革(1787年老中松平定信)」「天保の改革(1841年老中水野忠邦)」
 
 最近のニュースで聞いた「ベラルーシ―(欧州最後の独裁国家)」も思い浮かびます。

 この小説を読んでいると、日本のように言論の自由が保障されている国に生まれて良かったと実感がわいてくる時があります。

 「動物農場」の動物たちは、農場から逃げ出すことを思いつきます。
 されど、ブタたちに農場の外に楽園などないと、さとされて、うやむやになります。

 トロット:馬が走る。歩く。

(つづく)

 長い歳月が経過します。
 動物ですから、命尽きる者も出てきます。
 生き残っているのは、ブタのナポレオン、スクウィラー、メスウマのクローバー、ロバのベンジャミン、カラスのモーゼスです。
 元牧場主のジョーンズさんは、アル中の施設で亡くなりました。

 組織というものは、人が入れ替わるだけで、やっていることは同じと思ったことがあります。だから戦争が繰り返し何度も起きます。

 読んでいると、牧場がイギリスにあるというイメージが湧きません。
 ちらりと巻末の説明(作者の寄せ書きと訳者のあとがき)を見たら、もうこの世から組織としての存在がなくなりましたが、ソビエト連邦共和国とか、ほかに、ロシア、ウクライナの記述がありました。

 146ページには、劇的なシーンがあります。
 作者は、すさまじい熱量を、この作品に注ぎ込みました。
 詩を読むようでもあります。

 『絶望』があります。

 最後の締めが可愛い。「おしまい」で終わっています。

(その後 あとがきなどを読んで)
 そういえば、番組「旅猿」で、東野&岡村コンビがロシアのモスクワを訪れたときに、東野幸治さんが怒っていたのですが、ロシアという国は、やらせ(虚構のつくり話)をする傾向があると指摘していました。
 番組では、地元のロシア人グループと偶然に出会い楽しい時間帯を過ごしたシーンがあったのですが、ロシア人参加者たちは、撮影が終わると、報酬をもらって解散したような雰囲気がありました。どうも現地の旅行案内コーディネーターが間に入ったようです。
 そのことに加えて、東野幸治さんが自分たちの行動を監視されているような空気感があるとも言葉を漏らされていました。

 『主流の正当な考え方に歯向かう人間はすべて、驚くほど効果的に黙らされてしまうことになる』とあります。その部分が書かれたのは1945年ですが、まさに、最近の国際社会を表しています。
 ソ連のスターリンに対する攻撃は書いても印刷してくれる人がいないが、チャーチルイギリス首相への攻撃は安全だとあります。

 なかなか複雑です。
 あとがきなどの部分を読むとわかるのですが、作者は、独裁者を糾弾しているのではなく、権力の横暴を許した民衆の意識をとがめているのです。人民の弱腰、抗議せずの無力な態度が、独裁者を手助けする結果につながったという考察です。それは、資本主義でも社会主義でも同じということです。そして作者自身は、社会主義者であったそうです。作者は、正しい社会主義をやりたかった。

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