2021年08月18日

どうしても頑張れない人たち ケーキの切れない非行少年たち2

どうしても頑張れない人たち ケーキの切れない非行少年たち2 宮口幸治 新潮新書

 『ケーキの切れない非行少年たち』は読みました。かなり衝撃を受けましたが納得できました。できない脳をもって生まれた人間もいるのです。その本を読んだときの感想は、最後に付け足しておきます。

 第一章で項目を並べて、あとは、項目ごとに対応を解説する章に飛べるそうです。
 第二章:頑張るということ
 第三章:欲求のこと
 第四章:やる気を奪う言葉や振る舞いの例
 第五章:頑張る動機付けの素材
 第六章:支援者の葛藤とスイッチの入れ方
 第七章:保護者のみなさまに対してのメッセージ
 第八章:支援者同士のいさかい

 著者は積極的ですが、読み手はそこまで前向きな気持ちには至りにくい。どうすることもできないことを考える作業に思えるのです。

 脳の働きを変化させることは他者にはむずかしい。本人自身が気づかないと本人の脳を変えることはできそうにありません。脳の管理は自己管理です。
 まわりにいる他人は、基本的には、ギャラが発生しないと動かないとか動けない、現実的な対応があります。

 世代の差による意識の持ち方の差があります。自分の世代は、頑張る世代でした。だから最近の頑張らない風潮には違和感があります。不可解です。これまで「努力・忍耐・根性」で生き抜いてきました。間違ってはいなかったと思います。
 近頃は、自らの意志で転落していくことを適切なことだとする考え方があります。歯がゆさを感じることもあります。
 されど、もう終わったことです。リタイアした身としては、傍観者の立場でながめるだけです。新しい時代は新しい人たちでつくるものです。

 満員電車に耐えて通勤するお話が出てきます。
 読んでいて思い出したことがあります。スポーツ選手が引退する時にそれまでの功績を讃えることがあります。
 亡くなったプロ野球の監督さんがおっしゃっていました。『自分たちプロ野球選手よりもサラリーマンのほうが大変な生活を送られていると思います。』というものでした。
 たしかに、満員電車で毎日のように通勤して、体力を使って、精神力も使って、40年間ぐらいは働き続けます。一日の拘束時間もとても長い。本書にある言葉を借りると『困難に耐えながら我慢してやりぬく』のが全国のサラリーマンの姿です。
 
 頑張りつくした人に『(もう)頑張らないで』とは言えるけれど、これまで頑張ったことがない人に『頑張らないで』とは言えないとあります。同感です。
 『通常、人は何をするにしても、努力して頑張らないと生きていけないのです……』これもまた同感です。

 思うに、仕事場で一番嫌われる人は、仕事をしない人です。その人がしない仕事は、ほかの人がしなければならなくなるからです。
 仕事をしない人の仕事を請け負って仕事が増えても給料は同じです。相手の給料が減るわけでもありません。仕事をしない人はかなり嫌われます。仕事をしているふりをする人も同様に嫌われます。仕事場でのいじめの原因にもなります。だから、自分に割り当てられた仕事はしなければならないのです。

 昔は、『石の上にも三年と教わりました』なにかを始めたら最後まで辞めない。自分から辞めるとはけして言わない。辞めるときは、相手から辞めてくれと言われたときに考える。ただ、それでも辞めない。辞めさせられるまで辞めない。そんな意識をもって仕事や学業に取り組むことが基本でした。それでも、無理を続けて、体を壊して、やむなく辞めるということはありました。
 本書では、いまどきの大卒新卒は、三年以内に三割が会社を退職するとあります。なんともコメントのしようがありません。昔は、辞めると食べていけなくなるから辞めることを我慢しました。今は、仕事を辞めても食べていける環境があるのでしょう。

 新しい形態の仕事であれば周囲から認められるということがあります。要はお金をゲットできれば承認されるのです。本書では、eSports(eスポーツ)が紹介されています。YouTuber(ユーチューバー)も該当するのでしょう。
 一時的に大金を手にすることだけでは人生は成り立っていきません。病気や老後に備えて公的保険に加入して保険料を納めておかなければなりません。いつまでも若いままの心身を保つことはできないのです。

 スポーツが苦手なこどもさんのお話が出ます。人にはそれぞれ得意・不得意があります。
 その部分を読んでいて思いついたことがあります。飲酒や飲酒を伴う会が苦手な人もいます。新型コロナウィルス感染拡大防止の対応のなかで、仕事場での飲酒の機会が減ったり、なくなったりしたことで、ほっとしている人もいます。それなのにテレビでは、アルコール提供制限のことを、何度もけしからんという趣旨で報道していました。アルコールを飲めない人からすると不可解です。

 思うだけで、自分にはできるとする。でも努力はしないからできない。なのに、できない自分をイメージできない。堂々巡りがあります。

 支援者がブレーキになることもあるそうです。いろいろあります。
 支援者は『ああそうだな』とあいづちを打つだけでいい。否定してはいけない。
 この世に人類がいる限り、解決できない課題に感じます。支援者は疲れて、相手に距離を置いて、最後には相手から離れていきそうです。本人がその気にならなければ本人は変わらない。
 
 引きこもりでも自分が好きなことにはエネルギーを注ぐことはできる。引きこもりでも音楽コンサートには行ける。
 自分に負担がこない仕事相手ならそれも許せるでしょう。負担がくる場合は、都合の悪い時だけひきこもりになる仕事相手を許せないでしょう。許すことができない人間は、音楽コンサートに行く仕事相手に、自分勝手な人間だとレッテルを張るでしょう。(人格の格付けをする)

 現実と夢の区別ができない。マンガやドラマや映画や小説の中の成功話が自分にもあてはまると勘違いする。

 名言が記してあります。『子どもの心の扉の取っ手は内側にしかついていない』
 
 頑張れない人は:嘘をつく人。約束を破る人。問題行動を頻繁にする人。謝らない人。支援者に暴言を吐く人とあります。いいところがありません。
 ふつう、完ぺきな人はいないわけで、夫婦とか友人関係においても相手のイヤな面は見るわけで、それでもいっしょにいるのは、相手になにかひとつでも尊敬できる部分があるからです。ほかのイヤな面は目をつぶることができるのです。(容認できる。許せる)
 それぞれがもつ人間の脳の性質によって、どうしても変われない行動パターンがあります。変われない行動を変われない行動としてあきらめるしかないこともあります。

 好感をもたれる方法として:親切な人であること。

 人間関係が苦手だという人は:挨拶をしない人。お礼を言わない人。自己中心的な言動をする人。マナーが悪い人。いつも悪口を言っている人。ブスッとしている人。
 そういう人って、実際にいます。だから、人が離れていきます。努力をしないのに、自分は人間関係が苦手だと言っている。

 書かれていることを実際にやるのは『修行』のように感じました。

 的を射ている言葉として、『偉そうにしている人は人望が薄い』

 本の後半部分を読んでいて思ったことです。
 自分も小学校低学年の頃は、頑張れないこどもだったのではなかろうか。もう半世紀以上昔のことなので、忘れかけていました。たしか、小学校三年生ぐらいまでの学校の通信簿は、五段階評価で『2』と『3』が半分ずつぐらいでした。通信簿をもって頭の上で振り回しながら、自分で、2-3-2-3-2-3-3と歌いながら家の台所でぐるぐる回って、母親に向かって、あっはっはーと笑っていた覚えがあります。小学4年生ぐらいから勉強すると知識が増えて、テストでいい点数がとれることが嬉しくて、自然と頑張れるようになりました。

 うつに苛まれる(さいなまれる)教師や医師の方のお話があります。
 たしかに、どちらが患者なのかわからない精神科ドクターとか、ケースワーカーさんなどがいそうです。ミイラ取りがミイラになってしまうことがある過酷な仕事です。(自分も病気になってしまう)


(2019年2月のときの感想メモ 「ケーキの切れない非行少年たち」)
ケーキの切れない非行少年たち 宮口幸治(みやぐち・こうじ) 新潮新書

 売れている本です。児童精神科医、医療少年院勤務歴ありの著者です。
 これから読み始めます。非行の原因に迫る内容です。意外な理由があるというメッセージがあるようです。
 読み始める前に、タイトルから、ケーキをだいたい同じ分量の三等分に切って分ける能力がないこどもたちと理解します。学力がないのかあるのかわかりませんが、ものの分量の感覚がない脳の病気のような状態だろうと推測します。
 「認知機能:記憶、思考、理解、計算、学習、言語、判断」に問題があるそうです。
 病院では、根本的には治せない。投薬治療だけしかできないとのこと。

(つづく)

 図の模写ができない。
 ふまじめとかやる気がないとかの性格・資質ではなく、もともと能力がない。
 非行行為をした理由を説明する力が本人にない。
 深刻な雰囲気です。
 外見ではわからない。むしろ弱々しくて、線が細い。ふだんは、おとなしく、無口。人なつこい面あり。あいさつはできる。
 九九ができない。日本地図が理解できない。日本国首相の名前が言えない。日本国首相の名前が、「オバマ」という返答にはあぜんとしました。学校では、いない者として扱われていたのではないかと読みながら思ってしまいます。不登校、暴力、万引きが始まります。

 今年読んで良かった1冊になりそうです。ぜひ、読んでほしい1冊です。

 犯罪被害者はたまりません。やられ損です。補償も期待できません。非行行為が実行される前に、加害者予備群に対して、粘り強い「教育」が必要であると説いておられます。
 
 非行少年たちが見ている風景は、事実とは異なる。彼らに彼らが見えている事象の絵を書いてもらうと事実とは異なっていることがわかる。

 こどものころの本人たちはだんだん周囲から忘れられた存在になっていく。

 人間の能力は、読み書き計算から始まることがわかります。そうすると、乳幼児期の絵本の読み聞かせは重要です。「見る・聞く」が重要とあります。

 以前、殺人行為をしたこどもの親の手記を読んだことがあります。こども本人に理由を何度たずねても、「人を刺してみたかった」という言葉がくりかえし返ってくるだけで、根本的な理由がわからず、とほうにくれたというものでした。この本を読むと、その理由が見えてきます。
 殺人、暴力、盗み、詐欺、契約不履行や未払い、不作為、中毒、そういうことをすると、自分や親族があとさきどうなるのかを考えず、感情のままに不可解な行為をして、周囲に損害を与えてもケロッとしている人がいます。本人には、いけないことをしてしまったという自覚も理解もありません。心からの謝罪もありません。同じ事が繰り返されます。この世には、そういう人が、いくらか存在するということを理解して対応をしていかなければならないと気づかせてくれる本です。

 高学歴だからといって、認知度も高いわけではないようです。ペーパーテストを解く力と認知度は比例していないようです。

 読んでいると、人間というのは、むずかしい生き物だと思えてきます。

 刑務所が福祉施設のようになっているそうです。

 「ほめる」、「話を聞いてあげる」は、その場限りの対応でしかない。
 勉強ができない子は、勉強ができるようにしてあげなければならない。

 人間は不完全な生き物で、自分自身と他人の不完全な部分を許せる人間になることが、平和につながると理解しました。

 読んでいて気づいたことがあります。それは、「鏡」です。神社に行くと鏡がまつられています。自分の姿を見なさいということだと思います。本では、とある駅のホームの壁に鏡が設置された。それまで続いていた飛び込み自殺が減ったとあります。鏡で、自分の姿を見て、自分が今なにをしようとしているのかを脳で理解できたとき、人間は自分の行動にブレーキをかけることができる。自分で自分をなんとかしようと思う気持ちの芽生えが期待できます。たとえば、殺人行為をしようとしている人の目の前に鏡があって、鏡に自分の姿が大きく映し出されているのを見たとき、行為を思いとどまることができる気がします。

 犯罪心理学とか、犯罪者行動学の本でした。犯罪防止のために、また犯罪者の矯正のためにどうしたらいいのかを考える本です。

 犯罪が起こる原因が脳の損傷にあるようです。考えてみれば、同じような恵まれない悲惨な家庭環境で育ったとしても全員が犯罪者になるわけではありません。たいていの人はがんばっています。

 印象的だった言葉の趣旨などとして、「少年院版特別支援学校」、「苦手なことをそれ以上させないという行為は危険」、「更生しての社会復帰は不可能ではない」、「非行少年たちは、学ぶこと、認められることに飢えている」、「気持ちにブレーキをかけるトレーニング」、「わかったふりをしている」

 調べた言葉などとして、「騙し取る:だましとる」、「自尊感情:自分を適切に評価して受け入れて自分を好きになる感情。自信」、「(少年)鑑別(所):かんべつ。よく調べて、種類、性質を見分ける」

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