2021年08月15日

てんこうせいはおはなしやさん

てんこうせいはおはなしやさん 北川チハル・作 武田美穂・絵 金の星社

 「てんこうせい」ということばにひかれて読みました。自分は小学校も中学校も転校体験たくさんありです。いろいろありました。いまは平和です。

 絵は、以前読んで楽しんだ「となりのせきのますだくん」「ますだくんのランドセル」が思い出されます。優しい作品です。
 こちらの「てんこうせいのおはなしや」さんも心優しい作品となっています。
 
 主人公のいいだゆうやくんは、小学一年生か二年生ぐらいに思えます。二学期によそから転校してきました。
 いいだゆうやくんにからんむのが、みおさんです。ひっこみじあんでおくびょうなところがあります。
 いいだゆうやくんは、小説家の卵なのでしょう。お話づくりが好きな男の子です。
 転校生というものは孤独です。お互いを知りあっている集団の中に入っていくのには、たいへんさがつきまといます。
 
 いいだゆうやくんはがんばります。だけど、からまわりします。
 まわりの人がついてきてくれません。

 いいだゆうやくんは、うそつきとよばれます。されど、そもそもお話づくりは、うそづくりです。ほら話は人類の文化です。世の中にある人間関係というものは、誤解と錯覚で成り立っているのです。
 そんなゆうやくんに近づくみおさんは、ゆうやくんが好きなのでしょう。自分と同じ孤独の影を肌で感じるのでしょう。
 いいだゆうやくんも内心、みおさんの気持ちがわかるのでしょう。年齢は小さくても恋愛感情は芽生えます。
 この物語は、ラブストーリーなのです。

 星や川や太陽の夕映えや水や、いろいろな自然の風景を愛する作品でもあります。
 
 お話を聴いたことへの代金が「感想」です。ほんもののお金でなくていいのです。
 お話は、聞いてくれる人がいるからつくるということもあります。

 お話づくりのコツ(秘訣。要点。やり方)を教えてくれるいいだゆうやくんです。

 いいだゆうやくんがお話づくりをはじめたきっかけ話があります。
 『おかあさんの 目、空より 遠いんだ』
 その部分を読んで、以前読んだ年配女性が書かれた読書感想文を思い出しました。
 まだ幼かった娘さんが、毎晩同じ話ばかりの本を読んでくれとせがんだそうです。こどもがたいして興味をもつような内容ではなかったのに、どうしてその本ばかりを読んでくれと言うのか不思議だったそうです。それから長い時が流れて、おとなになった娘さんにふとそのことを話されたそうです。娘さんは、一番文章が長い本だった。できるだけ長く親の声を聞いていたかったと答えられたそうです。

  夕日の風景絵がとてもきれいです。

この記事へのトラックバックURL

http://kumataro.mediacat-blog.jp/t144654
※このエントリーではブログ管理者の設定により、ブログ管理者に承認されるまでコメントは反映されません
上の画像に書かれている文字を入力して下さい