2021年07月24日
相棒 シーズン13
相棒 シーズン13 2014年(平成26年)10月から2015年(平成27年)3月
「第一話 ファントム・アサシン<スペシャル>」
ロシアの情報収集機関に属するスパイと日本人協力者に関する連続殺人事件です。
雨が降り続くシーンが印象的で、全体の重苦しい雰囲気に合っていました。
密室殺人、撲殺、刺殺、絞殺、突き落とし、人殺しの連続でおぞましい。背を向けたくなります。
「法律が裁かなければ自分が裁く(さばく)」と主張する治安維持関係機関職員がいます。今後のことを考えると杉下右京の相棒である甲斐享にもさきざきこの言葉が重ねられていくのでしょう。
犯人個人の欲望を国の安全を維持するためと言い換える。
教訓として、不正をすると失うものがある。
最後のほうはすごい終わり方でした。軽かったことがらがどんどん重くなっていきました。ロシア人スパイと日本人女性警察職員幹部との間に生まれたらしきハーフの女児が登場しました。融通(ゆうずう)がきかない杉下右京は情報漏洩の不正を許さないでしょう。
「第二話 14歳」
名探偵コナンのような少年が登場します。容疑者となった文科省官僚の息子中学二年生です。
いじめが発端ですが、真相はいじめではなく、行政の不祥事に関する隠蔽です。
BGM(バックグランドミュージック)で視聴者の感情を誘導する映像づくりです。あまり過度になると話の筋がだいなしになります。
杉下右京のセリフが良かった。「地位も名誉も人生も、すべてを失うことになります」
天下り先の確保のほうが大切な官僚の世界を描いた作品でした。
「第三話 許されざる者」
マンション建物全体を対象とした密室殺人事件が起こったという設定で始まります。
冤罪(えんざい)がらみのお話ですが、なんと弁護士と裁判所は、殺人の真犯人を無罪にしてしまいました。ひどい話です。
だれが無罪になろうが、有罪になろうが、自分が安定した収入を得られればどっちでもいいとなったらこの世の秩序は終わりです。
証拠が大事です。
劇中の言葉にありましたが、この世にはモンスターがいます。
「第四話 第三の女」
内部告発を使用とした女性社員が自殺のように見えるビルからの転落で殺害されます。警察と業者との官製談合です。
何度も繰り返される杉下右京の決めゼリフ「もうひとつうがかいたいことがあるのですが……」はもう聞き飽きたのですが、聞くと落ち着きます。
「第五話 最後の告白」
冤罪事件です。殺人事件の真犯人が告白しますが、裁判で死刑囚になった男は、わけあって、殺していないのに、自分が殺したと主張します。
いっぽう杉下右京の相棒である甲斐享は、自分がお世話になった先輩の不正を責めなければならない立場に置かれて悩みます。正義感の固まりである杉下右京には、温情とか融通は通じません。杉下右京は冤罪を許しません。厳しい姿勢があります。甲斐享が杉下右京に「正しければそれでいいんですか!」と抗議しますが、杉下右京はその言葉を受け付けません。「まあ生きていればいいんだ。生きていければいいんだ。(警察勤務以外の別の仕事もたくさんあります)」というところへ落ち着きます。
杉下右京がめざすのは、法治国家です。
観ていて、ドラマだなあという感想をもちました。
「第六話 ママ友」
23分たっても事件の内容は皆目わかりません。
ママ友が五人出てきて、殺人がからみますが、なんだかはっきりしない部分があります。
31分を過ぎて、ようやく謎が解けそうです。45分番組です。
小説・ドラマ・映画「朝が来る」パターンがあります。養子ですが、秘密にしている母親がいます。されど、「朝が来る」とは異なる展開があります。
トリックはと気持ちの整理のしかたは、さすがでした。
うわべだけの仲良しとか、ひとりだけを見下してのいじめ、差別、人間のイヤな面も表現されます。
「第七話 死命(しめい)」
結婚詐欺のようなようすを見ていたら、さらに配偶者に保険をかける保険金殺人にまで至りました。さらに集団で組織的に行っているのです。若い世代の男女が、年配の男性や女性と結婚して凶行に及びます。毒物もからんでいて、どこかのドンファン事件をさらに拡大したような構図だと、観ていて感じました。
そこに甲斐享の事情がからんできます。
甲斐享に追いかけられている男性が、なぜ、逃げるのだろうとか、しかも、行き止まりになる屋上へ逃げるのだろうかという疑問を最初あたりのシーンでもちました。屋上からの転落自死です。これからどうなるのだろうがスタートにありました。
男社会の映像です。
犯罪者リーダーには、表向きの善行と裏の顔があります。
「洗脳」強制的に思想を脳に植えつけて人間を自由自在にコントロールする。狙われた人間は狙った人間の「道具」としての存在です。
伏線として「ベスト(衣類)」がありました。
悪人の汚れた心をきれいな水で洗い落とす手法でした。
「第八話 幸運の行方」
杉下右京と甲斐享のふたりが、商店街で防犯パトロールをしているシーンからスタートしました。
質屋のおやじさんとお金のない大学生と呉服屋の旦那さんとであれこれあり、金庫を狙った泥棒と殺人事件が発生しました。
殺人事件の推理ゲームですが、コメディのように明るい。そういうことかとうなずきます。おもしろい。矢崎滋(やざき・しげる)さんの演技が上手で引き込まれました。
「第九話 サイドストーリー」
美人介護士・夜はキャバ嬢殺人事件の発生です。高齢者虐待と元夫のストーカー行為もからんできます。
殺人事件の犯人が逮捕されたけれど、自供がはっきりしない。加害行為を認めない元夫です。共犯行為があって、さらにかばう行為があります。
ネグレクト(育児放棄)というのは、こどもだけではなく、高齢者の介護でも使用されるということを知りました。ひどい人がいます。介護が必要な親に食事を与えない息子が出てきます。
「第十話 ストレイシープ <スペシャル>」
クリスマスの時期のスペシャル二時間版でした。
ストレイシープ:新約聖書に出てくる羊が迷ったお話だそうです。100匹のうち1匹いなくなって探しますかというおたずねで、なにを言いたいかというと、人間にもいなくなっても探してもらえない不幸な存在としての人物がいるということのようです。ときに、宗教的な雰囲気包まれるのが相棒の特色です。いなくなっても気づかれない存在です。人として、それは、とても寂しい。犯人が杉下右京に投げかけた言葉です。『あなたには、探してくれる人がいるのですね』杉下右京さんには相棒の甲斐享くんがいます。
スナイパー(狙撃手)の寺島進さんが痛快でした。かっこいいー 異次元のスーパーマンです。
以前、寺島進さんが活躍したシーズン5-11話「バベルの塔~史上最悪のカウント・ダウン」を思い出しました。
ダージリンとアールグレイという紅茶の種類が伏線です。
完全犯罪を企画できる能力をもった人間による犯罪です。
濡れ衣を(悪人扱いされる)かぶせられる杉下右京です。
投資によるお金の損失のこと、異性関係・愛人関係のこと。犯罪に金と女は付き物です。
キャッシュレスの時代に身代金が現金だったことが不思議でしたが、2014年の作品です。今だと電子マネーとか仮想通貨で身代金払いなのでしょう。
警察庁幹部職員である石坂浩二さんは、いいお父さんでした。
治療が困難な難病にかかった患者さんに関する安楽死問題を扱うという思いテーマがありました。恐ろしいお話です。
「第十一話 米沢守、最後の挨拶」
鑑識六角精児さん演じる米沢守がハメられて、依願退職に追い込まれます。最後は逆転しますが、いつになるかわかりませんが、本当にいなくなるということは前知識で知っています。ほんのちょっとの出演ロケ撮影で長時間をとられることが苦痛だったとインタビューで答えておられました。まあ仕事ですから裏ではいろいろあるのでしょう。
さて、連続殺人事件の容疑者候補に米沢守さんが挙がります。どこの現場にも米沢守さんのDNAが残っています。
ふたつのことが重ねてありました。
トラブルというものは、ひとつだけの単体で起きるものではなく、複数のトラブルが重なって起こります。重々しい。現実社会があります。
ドラマでは、真実が明らかになって正義が守られて救われますが、現実ではそうはいかないことがあります。
咎(とが):人から責められる行為。しくじり
「第十二話 学び舎」
ホームレスの襲撃かというところから始まりますが、大学の金銭管理の話でした。
2018年問題というのがあるそうです。少子化で大学に入るこどもが少なくて、大学で経営に行き詰まるところが出てくるそうです。
お金のためなら人をも殺すのか。
頭が良くなると心を失う人もいる。
「第十三話 人生最良の日」
理屈を積み重ねていく、ていねいにつくられたドラマでした。
結婚してもなにもいいことがなかったというのはつらい。「そんな人生、あんまりじゃない」というセリフに実感がこもっていました。せつなくなりました。(そんな結婚はしちゃいけない)
女子高生の時の思い出とか、未来への夢とかが下地にあります。
ガソリンスタンド店主の妻になった女性が苦労します。
若い頃からのファンである流行歌のバンドマンとか、覚せい剤がらみの事件とか、まるで、ブラックコメディパフォーマンスを見ているようでした。気の毒な女性もなかなかしたたかです。
東北弁のように聞こえる茨城弁もあります。犯人グループを含めたメンバーはおもしろい逆グループに見えました。
「第十四話 アザミ」
バイオリンをつくっている工房のお話です。
『無伴奏バイオリンのためのソナタ』という曲が奏でられます。そして、ふたごの少女たちがいます。
ウサギの仮面をかぶったおそろしげな殺人犯人です。
杉下右京の生き方はとても苦しい。天才の生きざまがあります。得るものがあれば、失うものもあります。
あの人たちは、アザミのような人たちよ。
たくさんの人を傷つけるトゲのあるアザミです。
からくりは途中でピンときました。
血縁関係のある一族間の殺し合いです。むごい。
古代から戦国時代まで続く日本史の中の権力争いようです。
悪人のセリフとして「これは、ビジネスなの」
「第十五話 鮎川教授最後の授業」
杉下右京と広報課の社美彌子(やしろ・みやこ)、そのほか4人の東大卒業メンバーが、恩師の鮎川教授に命を狙われるという新鮮な発想の設定です。同教授が、狂人化したように見えます。
教授からの設問は「人はなぜ人を殺してはいけないのか」です。メンバーは解答をつくらなければなりません。
ドラマの途中で自分が考えたことです。設問の答はありません。たとえば、戦争における殺人は犯罪ではありません。原子爆弾を投下したパイロットは逮捕されていません。
自分も殺される立場にあるから殺してはいけない。殺せば、殺された関係者が復讐心をもつ。殺した者は、復讐心をもつ者に狙われて、仕返しとして殺される運命になる。殺人の連鎖が起こる。どちらかの集団のメンバーが絶滅するまで殺し殺されるという殺人の連鎖は続く。だから、人は人を殺してはいけないということが、自分の考えた解答です。おおむねドラマもそのように進行していきます。
甲斐享の同棲相手笛吹悦子について、ふたりのこどもの妊娠とか、笛吹悦子の骨髄性白血病発病とかの話が出てきます。こどもの妊娠にかんするふたつのラインはいずれつながります。
みなさん演技がとてもお上手です。
人を殺したくてたまらない人というのは実際にいます。過去に、犯人となった女子大生とか、小学生女児が、殺人事件の加害者として逮捕された事件がありました。怖いことですが、そういう頭脳をもって生まれてくる人がいます。人の姿はしているけれど、人とは違う生き物がいます。だからすべての人を素直に信用してはいけません。
鮎川教授のことを「眠っていた悪魔が目を覚ました」と表現します。
「第十六話 鮎川教授最後の授業・解決編」
ソーシャルネットワークサービスを利用して、出会って、犯罪に巻き込まれて、命を落とす。警戒しましょう。
学校の先生(鮎川教授)というものは、指示をしたがるのね。
「肩書き」ほど、信用できないものはないということか。
理由があるとはいえ、鮎川教授がしていることは「犯罪」です。
話は、心の深いところへと刺さっていきます。
妊娠して、ベイビーが無事に産まれてくることというのは、けっこうむずかしい。
なかなかむずかしい。
交通事故といっしょで、今日の被害者は、これから先の加害者になりえます。
「殺意」があって、「自殺」の手助けにつなげる。殺してもらいたかった。
いろいろと「命」を考えることがテーマでした。
鮎川教授は、登場人物の言葉を借りると、大がかりな仕掛けで、強引に目的を達成した。
最後付近、水谷豊さんが演じる「杉下右京」と仲間由紀恵さんが演じる「社美彌子(やしろ・みやこ)」が化け物に見えました。
「第十七話 妹よ」
陣川公平さんの妹で、ヘッドハンターという仕事をしている陣川美奈子さんが拉致されるという事件でした。ヘッドハンターという職業や会社があることは知りませんでした。
よくできた作品でした。杉下右京の推理が冴えます(さえます)。右京さんは「(兄の病気看病のためにつくっていた)おかゆをこがした」という点に着眼して事件のなかみへとつながっていきます。
なるほどと感心しました。最後は喜劇的な部分もありました。
「第十八話 苦い水(にがいみず)」
将来総理大臣の席を狙っているらしい国会議員の片山雛子さんを中心において、痴情のもつれのような殺人事件が起きます。
彼女の権力志向と男女の恋愛とが表現されていました。
政治家のありようとしてマイナスもさかてにとって、大きくなっていくという片山雛子氏の姿がありました。幸も不幸も材料にして、目標に向けて駆け上がっていくという彼女の決心があります。
「最終話 ダークナイト<スペシャル>」
相棒である甲斐享(カイト)が消えるのか。(消えました)
ダークナイト:悪党を法令等に基づかずに成敗する。(成敗:せいばい。やっつける。こらしめる)
杉下右京は、甲斐享がダークナイトであることに感づいています。
このシリーズでは、甲斐享の父子関係(石坂浩二さんが演じる警察庁幹部職員の父)に焦点を当てている部分があります。親子の関係が悪いのです。
甲斐享の婚約者のために親子は偽りの和解をします。芝居のなかで芝居をしています。
されど、甲斐享の婚約者女性も甲斐享がダークナイトであることに気づきます。
いろんな不幸が押し寄せてきます。
出世欲の塊(かたまり)である石坂浩二さんが演じる父親の言葉の趣旨として『宿命:本人の力ではどうすることもできないもの。宿命によって、勝負は決する。』
ダークナイトはなぜ同じ服装で犯行をするのだろうという疑問が生まれました。(自己顕示欲。自分がかっこよくみえるため。父親に対するあてこすりもあるのでしょう。わざと反対のことをしていじわるをする)
シンパ:賛同者、共鳴者
なぜ留置所内に置かれた布団の間に逃走お助けメモをはさめたのかが疑問でした。
今回のこの話の部分は、話が暗い。暗いトンネルの中をいつもとは違う杉下右京が単調に歩いて前に進んでいるようです。あってはならないことが起きているからでしょう。
『勝ち目のない相手とは、最初から事(こと)を構えるな』
杉下右京の個性設定として『ぼくは、純粋に正義を信じている』
失望とがっかりが、心の中いっぱいに広がりました。(初代相棒の亀山薫さんがなつかしい)
甲斐享は、いてはいけない場所にいた人だった。
杉下右京は、容赦(ようしゃ。手加減しない)なく真実を暴きます(あばきます)。
甲斐享の頭の中を変えることはできません。病気です。
いいところに生まれてきてもいかれている人がいる。甲斐享の存在は、父と子のことを追求する相棒シリーズでした。
これまでのことは奇跡だった。これからは現実があります。
杉下右京は人材の墓場:部下が犠牲となって職を失う。
そして、杉下右京はまたひとりになりました。
2000年から始まったこのシリーズを知ったのは、2018年秋ごろのことでした。同じく、自分は、2000年ぐらいから仕事が忙しくてテレビをほとんど観ませんでした。いまは、リタイアして、時間に余裕ができたので、過去の映像記録を見ながら、知らずに過ぎた20年間をふりかえる時間の旅を楽しんでいます。
ドラマでこの先がどうなるのかはまだ知りません。杉下右京は、甲斐享の上司としての責任を問われて、無期限の停職処分になって、外国(たぶん英国)に旅立ったようです。しかし、停職に「永久」みたいな期間設定があるとは思えないのですが、これはドラマです。おもしろい。シーズン14が楽しみです。(2015年秋スタート作品)
「第一話 ファントム・アサシン<スペシャル>」
ロシアの情報収集機関に属するスパイと日本人協力者に関する連続殺人事件です。
雨が降り続くシーンが印象的で、全体の重苦しい雰囲気に合っていました。
密室殺人、撲殺、刺殺、絞殺、突き落とし、人殺しの連続でおぞましい。背を向けたくなります。
「法律が裁かなければ自分が裁く(さばく)」と主張する治安維持関係機関職員がいます。今後のことを考えると杉下右京の相棒である甲斐享にもさきざきこの言葉が重ねられていくのでしょう。
犯人個人の欲望を国の安全を維持するためと言い換える。
教訓として、不正をすると失うものがある。
最後のほうはすごい終わり方でした。軽かったことがらがどんどん重くなっていきました。ロシア人スパイと日本人女性警察職員幹部との間に生まれたらしきハーフの女児が登場しました。融通(ゆうずう)がきかない杉下右京は情報漏洩の不正を許さないでしょう。
「第二話 14歳」
名探偵コナンのような少年が登場します。容疑者となった文科省官僚の息子中学二年生です。
いじめが発端ですが、真相はいじめではなく、行政の不祥事に関する隠蔽です。
BGM(バックグランドミュージック)で視聴者の感情を誘導する映像づくりです。あまり過度になると話の筋がだいなしになります。
杉下右京のセリフが良かった。「地位も名誉も人生も、すべてを失うことになります」
天下り先の確保のほうが大切な官僚の世界を描いた作品でした。
「第三話 許されざる者」
マンション建物全体を対象とした密室殺人事件が起こったという設定で始まります。
冤罪(えんざい)がらみのお話ですが、なんと弁護士と裁判所は、殺人の真犯人を無罪にしてしまいました。ひどい話です。
だれが無罪になろうが、有罪になろうが、自分が安定した収入を得られればどっちでもいいとなったらこの世の秩序は終わりです。
証拠が大事です。
劇中の言葉にありましたが、この世にはモンスターがいます。
「第四話 第三の女」
内部告発を使用とした女性社員が自殺のように見えるビルからの転落で殺害されます。警察と業者との官製談合です。
何度も繰り返される杉下右京の決めゼリフ「もうひとつうがかいたいことがあるのですが……」はもう聞き飽きたのですが、聞くと落ち着きます。
「第五話 最後の告白」
冤罪事件です。殺人事件の真犯人が告白しますが、裁判で死刑囚になった男は、わけあって、殺していないのに、自分が殺したと主張します。
いっぽう杉下右京の相棒である甲斐享は、自分がお世話になった先輩の不正を責めなければならない立場に置かれて悩みます。正義感の固まりである杉下右京には、温情とか融通は通じません。杉下右京は冤罪を許しません。厳しい姿勢があります。甲斐享が杉下右京に「正しければそれでいいんですか!」と抗議しますが、杉下右京はその言葉を受け付けません。「まあ生きていればいいんだ。生きていければいいんだ。(警察勤務以外の別の仕事もたくさんあります)」というところへ落ち着きます。
杉下右京がめざすのは、法治国家です。
観ていて、ドラマだなあという感想をもちました。
「第六話 ママ友」
23分たっても事件の内容は皆目わかりません。
ママ友が五人出てきて、殺人がからみますが、なんだかはっきりしない部分があります。
31分を過ぎて、ようやく謎が解けそうです。45分番組です。
小説・ドラマ・映画「朝が来る」パターンがあります。養子ですが、秘密にしている母親がいます。されど、「朝が来る」とは異なる展開があります。
トリックはと気持ちの整理のしかたは、さすがでした。
うわべだけの仲良しとか、ひとりだけを見下してのいじめ、差別、人間のイヤな面も表現されます。
「第七話 死命(しめい)」
結婚詐欺のようなようすを見ていたら、さらに配偶者に保険をかける保険金殺人にまで至りました。さらに集団で組織的に行っているのです。若い世代の男女が、年配の男性や女性と結婚して凶行に及びます。毒物もからんでいて、どこかのドンファン事件をさらに拡大したような構図だと、観ていて感じました。
そこに甲斐享の事情がからんできます。
甲斐享に追いかけられている男性が、なぜ、逃げるのだろうとか、しかも、行き止まりになる屋上へ逃げるのだろうかという疑問を最初あたりのシーンでもちました。屋上からの転落自死です。これからどうなるのだろうがスタートにありました。
男社会の映像です。
犯罪者リーダーには、表向きの善行と裏の顔があります。
「洗脳」強制的に思想を脳に植えつけて人間を自由自在にコントロールする。狙われた人間は狙った人間の「道具」としての存在です。
伏線として「ベスト(衣類)」がありました。
悪人の汚れた心をきれいな水で洗い落とす手法でした。
「第八話 幸運の行方」
杉下右京と甲斐享のふたりが、商店街で防犯パトロールをしているシーンからスタートしました。
質屋のおやじさんとお金のない大学生と呉服屋の旦那さんとであれこれあり、金庫を狙った泥棒と殺人事件が発生しました。
殺人事件の推理ゲームですが、コメディのように明るい。そういうことかとうなずきます。おもしろい。矢崎滋(やざき・しげる)さんの演技が上手で引き込まれました。
「第九話 サイドストーリー」
美人介護士・夜はキャバ嬢殺人事件の発生です。高齢者虐待と元夫のストーカー行為もからんできます。
殺人事件の犯人が逮捕されたけれど、自供がはっきりしない。加害行為を認めない元夫です。共犯行為があって、さらにかばう行為があります。
ネグレクト(育児放棄)というのは、こどもだけではなく、高齢者の介護でも使用されるということを知りました。ひどい人がいます。介護が必要な親に食事を与えない息子が出てきます。
「第十話 ストレイシープ <スペシャル>」
クリスマスの時期のスペシャル二時間版でした。
ストレイシープ:新約聖書に出てくる羊が迷ったお話だそうです。100匹のうち1匹いなくなって探しますかというおたずねで、なにを言いたいかというと、人間にもいなくなっても探してもらえない不幸な存在としての人物がいるということのようです。ときに、宗教的な雰囲気包まれるのが相棒の特色です。いなくなっても気づかれない存在です。人として、それは、とても寂しい。犯人が杉下右京に投げかけた言葉です。『あなたには、探してくれる人がいるのですね』杉下右京さんには相棒の甲斐享くんがいます。
スナイパー(狙撃手)の寺島進さんが痛快でした。かっこいいー 異次元のスーパーマンです。
以前、寺島進さんが活躍したシーズン5-11話「バベルの塔~史上最悪のカウント・ダウン」を思い出しました。
ダージリンとアールグレイという紅茶の種類が伏線です。
完全犯罪を企画できる能力をもった人間による犯罪です。
濡れ衣を(悪人扱いされる)かぶせられる杉下右京です。
投資によるお金の損失のこと、異性関係・愛人関係のこと。犯罪に金と女は付き物です。
キャッシュレスの時代に身代金が現金だったことが不思議でしたが、2014年の作品です。今だと電子マネーとか仮想通貨で身代金払いなのでしょう。
警察庁幹部職員である石坂浩二さんは、いいお父さんでした。
治療が困難な難病にかかった患者さんに関する安楽死問題を扱うという思いテーマがありました。恐ろしいお話です。
「第十一話 米沢守、最後の挨拶」
鑑識六角精児さん演じる米沢守がハメられて、依願退職に追い込まれます。最後は逆転しますが、いつになるかわかりませんが、本当にいなくなるということは前知識で知っています。ほんのちょっとの出演ロケ撮影で長時間をとられることが苦痛だったとインタビューで答えておられました。まあ仕事ですから裏ではいろいろあるのでしょう。
さて、連続殺人事件の容疑者候補に米沢守さんが挙がります。どこの現場にも米沢守さんのDNAが残っています。
ふたつのことが重ねてありました。
トラブルというものは、ひとつだけの単体で起きるものではなく、複数のトラブルが重なって起こります。重々しい。現実社会があります。
ドラマでは、真実が明らかになって正義が守られて救われますが、現実ではそうはいかないことがあります。
咎(とが):人から責められる行為。しくじり
「第十二話 学び舎」
ホームレスの襲撃かというところから始まりますが、大学の金銭管理の話でした。
2018年問題というのがあるそうです。少子化で大学に入るこどもが少なくて、大学で経営に行き詰まるところが出てくるそうです。
お金のためなら人をも殺すのか。
頭が良くなると心を失う人もいる。
「第十三話 人生最良の日」
理屈を積み重ねていく、ていねいにつくられたドラマでした。
結婚してもなにもいいことがなかったというのはつらい。「そんな人生、あんまりじゃない」というセリフに実感がこもっていました。せつなくなりました。(そんな結婚はしちゃいけない)
女子高生の時の思い出とか、未来への夢とかが下地にあります。
ガソリンスタンド店主の妻になった女性が苦労します。
若い頃からのファンである流行歌のバンドマンとか、覚せい剤がらみの事件とか、まるで、ブラックコメディパフォーマンスを見ているようでした。気の毒な女性もなかなかしたたかです。
東北弁のように聞こえる茨城弁もあります。犯人グループを含めたメンバーはおもしろい逆グループに見えました。
「第十四話 アザミ」
バイオリンをつくっている工房のお話です。
『無伴奏バイオリンのためのソナタ』という曲が奏でられます。そして、ふたごの少女たちがいます。
ウサギの仮面をかぶったおそろしげな殺人犯人です。
杉下右京の生き方はとても苦しい。天才の生きざまがあります。得るものがあれば、失うものもあります。
あの人たちは、アザミのような人たちよ。
たくさんの人を傷つけるトゲのあるアザミです。
からくりは途中でピンときました。
血縁関係のある一族間の殺し合いです。むごい。
古代から戦国時代まで続く日本史の中の権力争いようです。
悪人のセリフとして「これは、ビジネスなの」
「第十五話 鮎川教授最後の授業」
杉下右京と広報課の社美彌子(やしろ・みやこ)、そのほか4人の東大卒業メンバーが、恩師の鮎川教授に命を狙われるという新鮮な発想の設定です。同教授が、狂人化したように見えます。
教授からの設問は「人はなぜ人を殺してはいけないのか」です。メンバーは解答をつくらなければなりません。
ドラマの途中で自分が考えたことです。設問の答はありません。たとえば、戦争における殺人は犯罪ではありません。原子爆弾を投下したパイロットは逮捕されていません。
自分も殺される立場にあるから殺してはいけない。殺せば、殺された関係者が復讐心をもつ。殺した者は、復讐心をもつ者に狙われて、仕返しとして殺される運命になる。殺人の連鎖が起こる。どちらかの集団のメンバーが絶滅するまで殺し殺されるという殺人の連鎖は続く。だから、人は人を殺してはいけないということが、自分の考えた解答です。おおむねドラマもそのように進行していきます。
甲斐享の同棲相手笛吹悦子について、ふたりのこどもの妊娠とか、笛吹悦子の骨髄性白血病発病とかの話が出てきます。こどもの妊娠にかんするふたつのラインはいずれつながります。
みなさん演技がとてもお上手です。
人を殺したくてたまらない人というのは実際にいます。過去に、犯人となった女子大生とか、小学生女児が、殺人事件の加害者として逮捕された事件がありました。怖いことですが、そういう頭脳をもって生まれてくる人がいます。人の姿はしているけれど、人とは違う生き物がいます。だからすべての人を素直に信用してはいけません。
鮎川教授のことを「眠っていた悪魔が目を覚ました」と表現します。
「第十六話 鮎川教授最後の授業・解決編」
ソーシャルネットワークサービスを利用して、出会って、犯罪に巻き込まれて、命を落とす。警戒しましょう。
学校の先生(鮎川教授)というものは、指示をしたがるのね。
「肩書き」ほど、信用できないものはないということか。
理由があるとはいえ、鮎川教授がしていることは「犯罪」です。
話は、心の深いところへと刺さっていきます。
妊娠して、ベイビーが無事に産まれてくることというのは、けっこうむずかしい。
なかなかむずかしい。
交通事故といっしょで、今日の被害者は、これから先の加害者になりえます。
「殺意」があって、「自殺」の手助けにつなげる。殺してもらいたかった。
いろいろと「命」を考えることがテーマでした。
鮎川教授は、登場人物の言葉を借りると、大がかりな仕掛けで、強引に目的を達成した。
最後付近、水谷豊さんが演じる「杉下右京」と仲間由紀恵さんが演じる「社美彌子(やしろ・みやこ)」が化け物に見えました。
「第十七話 妹よ」
陣川公平さんの妹で、ヘッドハンターという仕事をしている陣川美奈子さんが拉致されるという事件でした。ヘッドハンターという職業や会社があることは知りませんでした。
よくできた作品でした。杉下右京の推理が冴えます(さえます)。右京さんは「(兄の病気看病のためにつくっていた)おかゆをこがした」という点に着眼して事件のなかみへとつながっていきます。
なるほどと感心しました。最後は喜劇的な部分もありました。
「第十八話 苦い水(にがいみず)」
将来総理大臣の席を狙っているらしい国会議員の片山雛子さんを中心において、痴情のもつれのような殺人事件が起きます。
彼女の権力志向と男女の恋愛とが表現されていました。
政治家のありようとしてマイナスもさかてにとって、大きくなっていくという片山雛子氏の姿がありました。幸も不幸も材料にして、目標に向けて駆け上がっていくという彼女の決心があります。
「最終話 ダークナイト<スペシャル>」
相棒である甲斐享(カイト)が消えるのか。(消えました)
ダークナイト:悪党を法令等に基づかずに成敗する。(成敗:せいばい。やっつける。こらしめる)
杉下右京は、甲斐享がダークナイトであることに感づいています。
このシリーズでは、甲斐享の父子関係(石坂浩二さんが演じる警察庁幹部職員の父)に焦点を当てている部分があります。親子の関係が悪いのです。
甲斐享の婚約者のために親子は偽りの和解をします。芝居のなかで芝居をしています。
されど、甲斐享の婚約者女性も甲斐享がダークナイトであることに気づきます。
いろんな不幸が押し寄せてきます。
出世欲の塊(かたまり)である石坂浩二さんが演じる父親の言葉の趣旨として『宿命:本人の力ではどうすることもできないもの。宿命によって、勝負は決する。』
ダークナイトはなぜ同じ服装で犯行をするのだろうという疑問が生まれました。(自己顕示欲。自分がかっこよくみえるため。父親に対するあてこすりもあるのでしょう。わざと反対のことをしていじわるをする)
シンパ:賛同者、共鳴者
なぜ留置所内に置かれた布団の間に逃走お助けメモをはさめたのかが疑問でした。
今回のこの話の部分は、話が暗い。暗いトンネルの中をいつもとは違う杉下右京が単調に歩いて前に進んでいるようです。あってはならないことが起きているからでしょう。
『勝ち目のない相手とは、最初から事(こと)を構えるな』
杉下右京の個性設定として『ぼくは、純粋に正義を信じている』
失望とがっかりが、心の中いっぱいに広がりました。(初代相棒の亀山薫さんがなつかしい)
甲斐享は、いてはいけない場所にいた人だった。
杉下右京は、容赦(ようしゃ。手加減しない)なく真実を暴きます(あばきます)。
甲斐享の頭の中を変えることはできません。病気です。
いいところに生まれてきてもいかれている人がいる。甲斐享の存在は、父と子のことを追求する相棒シリーズでした。
これまでのことは奇跡だった。これからは現実があります。
杉下右京は人材の墓場:部下が犠牲となって職を失う。
そして、杉下右京はまたひとりになりました。
2000年から始まったこのシリーズを知ったのは、2018年秋ごろのことでした。同じく、自分は、2000年ぐらいから仕事が忙しくてテレビをほとんど観ませんでした。いまは、リタイアして、時間に余裕ができたので、過去の映像記録を見ながら、知らずに過ぎた20年間をふりかえる時間の旅を楽しんでいます。
ドラマでこの先がどうなるのかはまだ知りません。杉下右京は、甲斐享の上司としての責任を問われて、無期限の停職処分になって、外国(たぶん英国)に旅立ったようです。しかし、停職に「永久」みたいな期間設定があるとは思えないのですが、これはドラマです。おもしろい。シーズン14が楽しみです。(2015年秋スタート作品)
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