2021年06月10日

罪の声 邦画DVD

罪の声 邦画DVD 2020年公開

 もうずいぶん前にこのタイトルの小説を読みました。
 話題性があるので、いずれ映像化される作品だろうと思いました。
 予想どおり映画になったので観てみました。
 1984年に実際にあった事件が素材です。

 ほかのかたたちの映画鑑賞後の感想を読んで、高評価が多くて、書きにくいのですが、自分は、観終えて、うーむという心境になりました。
 少数派の感想になるのでしょうが、観ながら感じたことをそのまま落としてみます。
 犯行に使用したこどもの声が録音されているカセットテープは、ふつうは、犯行後、証拠隠滅のために内容を消去するか、破壊して廃棄するのでしょう。(ゆえに、この話は永遠にスタートしないのです)
 現実の事件で、犯行に使用されたこどもの声は、もっと生々しい声だったような記憶です。リアルにその事件が発生した時、自分は二十代でした。
 ヒューマンストーリーに仕上げてあります。人間らしさを描いたドラマです。映画だからなあという気分で映像に寄り添ってみました。
 「いつか必ず迎えにくるし」の関西弁が心に響きました。
 映像は、あまりにも不幸な流れで、観ておれません。まあ映像とセリフは、意図的に加工してあるのですが、顔をそむけました。
 中学生少女の交通事故死は、現実だったら、ただではすみません。ここでもう事件の全体像が発覚してしまいます。
 犯罪グループ内のごたごたの描き方は、陳腐(ちんぷ。古臭い。ありふれていてつまらない)で質が悪い印象を受けました。
 『こどもたちにはなにも責任がありません』法律上も厳しい断罪をうけるような立場ではありません。こども三人は全員無罪です。
 
 何だろう。過去の掘り起こしというのは、「希望」がありません。
 もう「過去」を変えることはできないからです。
 梶芽衣子さん演じるお母さんを責めてはいけません。
 イギリスの映像が不可解でした。なんであんな背景のところを歩かなければならないのだろう。観光ガイドシーンを観ているようでした。
 自殺企図の動機が弱くて、それでは死ねない。
 なんだかちがうんじゃないかなあという気分で観終わりました。
 「レオポン」がなつかしかった。ライオンとヒョウの間に生まれたこどもです。


(2016年9月の読書メモから)

罪の声 塩田武士 講談社

 31年前のグリコ・森永事件をヒントにした物語と広告を見て読み始めました。まだ、19ページ(全体で409ページ)ですが、感想を書き始めます。なお事件は、2000年2月に時効です。
 当時、テレビで、子どもの声で、脅迫めいたメッセージがなんども流されました。その声の主が冒頭で、自分のその声が録音されたカセットテープを父亡き実家で偶然見つけます。いまさら感がありますが、なかなか、スリリング(はらはらどきどき)な始まりです。現実にありえます。

登場人物です。
曽根俊也 30歳 スーツを売る店の店主。妻亜美、2歳詩織あり。京都在住
曽根光雄 俊也の父。すでに亡くなっている。33年前、「テーラー曽根」の店主だった。俊也の母は、胃潰瘍で入院している。

阿久津英士 全国紙大日新聞文化部記者

舞台は、京都、大阪、奈良、滋賀が中心で、あとイギリス国内と東京です。

気に入った表現です。「振り子のリズムで時を刻んだ」、「前時代的な自分に酔うタイプ」、「警察官は、組織内の水のなかでしか生きていけない」、「殺人は後戻りができない犯罪」、「七・八割で手を引いて、次の機会を窺う(うかがう)のが一番賢いやり方だが、一方、ヤクザは骨の髄までしゃぶりつくすのがやり方」

漢字等の勉強です。「安堵:あんど。安心」、「厳めしい:いかめしい。近寄りにくい威厳」、「ソーホーのパブ:ロンドンにあるソーホーという場所、「ユニオンジャック:イギリスの国旗」、「シェフィールド:イギリス中部の工業都市」、「SUSPENDED:地下鉄が電気故障により一時的に動いていない」、「臍を噛むおもい:ほぞをかむ。残念でいらいらする。自分の口で自分のへそをかもうとするがかめない」、「パグのようなしわ:ぶさいくだけれどかわいいブルドック」、「敵わんな:かなわんな。勝てない」、「アングラ:アンダーグラウンド。地下。商業性無視の独自な世界」、「城南宮(京都伏見にある神社)」、「仕手筋、仕手本尊:してすじ。意図的に特定株を買いその株価をつり上げるグループ。短期間に大幅な利益を得る。してほんぞん、複数の仕手筋グループの中心となるグループ」、「敷鑑しきかん:犯罪隠語。住居と関係がある」、「件くだん:前に述べたこと、例の」、「ハブ:つなぎ役。連結の中心位置。企業と総会屋の仲介役」、「拝金主義者:金銭を無上(むじょう。最も優れている)のものとして崇拝する」、「喚きちらす:わめきちらす」

(つづく)

 185ページまできましたが、ここで、自分自身が理解するために整理をします。
 ネタバレになってしまいますので、読みたくない方は、これ以降は読まないでください。

 なにしろ昔のことで、今の時点に立って、当時を思い出しながら読むことに苦痛が伴います。いまさら感が強い。

 犯人は7人。7人だが、2グループの合体ではなかろうかというところまできました。
 犯行動機は、株価の操作を目的とした金儲け。そして、親族がらみの仇討とか警察組織への仕返しです。

 犯人の一部はイギリスへ逃亡した。
 犯人の一部は外国籍。本拠地は関西。滋賀県を含む。
1人目:曽根達夫。弟の息子が曽根俊也、彼がこどもの声が自分の声だと気づく。イギリスソーホーの中華街にいた中国人かも。父親が製菓会社の社員だったが、誤認による不名誉な事故死をして会社に捨てられた。製菓会社を怨んでいた。左翼の過激派に属していた。
2人目:生島秀樹。事件当時、中3の娘と小2の息子がいた。滋賀県警を退職させられた。滋賀県警に怨みあり。84年11月14日一家消息不明となる。当日は、現金奪取未遂の日だった。
3人目:?
4人目:金田哲司(在日、金光哲キムグァンチョル)すでに死去しているだろう。小柄で猫背、髪が薄い。大阪堺「し乃」のおかみさんとできていた。トラック運転手。兵庫県川西市。昭和15年6月9日生。無線知識あり。自動車盗
5人目:金田貴志(金貴成キムクイソン偽名の疑いあり)。キツネ目の男。金田哲司の仕事仲間
6人目:?
7人目:?

堀田信二 アンティーク店主(古美術・骨董品)、曽根光雄の親友

曽根俊也にキツネ目の肩幅の広い男をつけた記憶あり。彼は、小さな建物に入っていった。
キツネ目は35歳~45歳。身長175cm~178cm。目つき鋭く、がっちりとした体格で威圧感あり。

1983年11月(昭和58年) オランダアムステルダムで、ハイネケン経営者誘拐解放事件発生。身代金20億円の支払いあり。翌年犯人全員逮捕された。日本の事件の犯人はこれをまねた。

記述内容に、平成時代から見た昭和時代への回顧あり。(なつかしむ)

1984年3月18日(昭和59年)夜9時頃、製菓会社社長誘拐事件発生、現金10億、金塊100kgを要求。同月21日午後2時過、誘拐されていた社長が監禁場所を脱出し、国鉄大阪駅貨物ターミナル駅で発見された。
 85年8月12日犯人グループが終結宣言。脅迫された食品会社等は6社。店頭に毒入り食品を置くという強迫内容で金銭を要求

84年(昭和59年)11月4日 交信記録
 牛若丸<標準語>20代から30代の声 株関係
 テン丸<関西弁>金田哲司 40歳以上の声 自動車盗

同月14日 現金受け渡し日

85年(昭和60年)1月10日 キツネ目の男の似顔絵公開

(つづく)

 読み終えました。
 暗い内容の経過が続き、気持ちがふさぎました。
 以前の記事は、中途半端なまま残して置きますが、以降、だいぶ変化します。

 県警同士のうまくいかないコミュニケーションがあります。警察に限らず、法人組織にはありがちなことです。過去、現在も変わりありません。人が入れ替わるだけです。改善はされるでしょうが、完ぺきには至れません。
 昭和の昔と違うのは、一匹狼サムライタイプの豪傑がいなくなりました。上の指令に従わないが、とある一部分での実績はあげていくタイプです。(その後の追記:水谷豊さんの「相棒」がありました)
 
 卑劣な犯行でした。逮捕されなかったとしても、実行者に天罰はくだったでしょう。
 小説と現実は別物という前提で読みたい。
 犯人グループにツキがあった。捜査グループに協力関係・信頼関係がなかった。そういう印象を受けました。

 他の書評を読みました。大半の人は好感をもって迎えていましたが、少数派の人は否定していました。わたしも否定派です。風景描写がわずらわしかった。後半の種明かしは、ふたりの人物の連続した会話で進行でしたが単調でした。小説を多読してきた人にとっては物足りなかったのでしょう。「永遠の0(ゼロ)」とか「砂の器(うつわ)」パターンで展開していますが、熟成された成功度が不十分に感じました。

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