2021年05月31日

サンドイッチクラブ 長江優子

サンドイッチクラブ 長江優子 岩波書店

 本の表紙のカバーにサンドイッチの絵が描いてあります。サンドイッチのまわりにちいさな人の姿が見えます。男子が三人、女子がひとりです。(あとでわかりましたが、女子はふたりでした。水色の帽子が羽村ヒカルで、ツインテールの髪型で白い服を着ているのが桃沢珠子。左奥でiPad端末を構えているのが勝田三兄弟のうちのふたごの弟たち。そのそばにいるのが兄の勝田葉真(かつた・ようま)右奥離れたところにいるのが砂像彫刻家のシラベさんに見えます)手に道具をもっています。シャベルとスコップとナイフに見えます。

 タイトル「サンドイッチクラブ」だけだと、ともだちみんなでいろいろなサンドイッチを毎日つくるクラブ活動のように思えますが、どうもそうではなさそうです。

 目次を見たら「砂かけババア」という文字が目に飛び込んできました。わたしが知っている幼稚園児向けのお話で「おしいれのぼうけん」というのがあります。「ねずみばあさん」というのが出てくるのを思い出しました。この本の11ページには「妖怪砂かけババア」と書いてあります。どんな妖怪だろう。興味が湧いてきました。(妖怪はでできませんでした)
 目次に「マルタ島」というのも目につきました。マルタ島:ヨーロッパ地中海、イタリアのシチリア島の南にあるマルタ共和国に属する島。
 とりあえず25ページまで読んだところで感想を書き始めます。

 主人公であろう神山小学校の桃沢珠子(ももざわ・たまこ。ひとめ見て、ちょっといまどきのこどもさんの名前ではないと思いました。「子」は付けなくなりました。なお、珠子さんの成績はかんばしくないそうです)小学6年生の夏休みですが、午前中も午後も塾通いです。(その後、桃沢珠子は、「ペッシュ」というパン屋さんの娘であることがわかりました)
 どうして別々の塾に一日二回も通うのだろう。中学受験準備なのでしょうが、お金がかかります。
 午前中は、進秀学舎(しんしゅうがくしゃ)<集団塾>、午後からは、マドック個別指導塾です。

 森田ちず:神山小学校6年生。桃沢珠子の同級生。トノサマバッタのような触覚眉毛(まゆげ)。アマゾンツノガエルにも似ている。
 羽村ヒカル:この物語の鍵を握るらしき小学6年生。学力優秀です(マドック個別指導塾での特待生。授業料無料の生徒。国立中学という私立中学をめざしている。将来はアメリカ合衆国大統領になりたい)。ショートカット。切れ長の目(目尻が細長く切れ込んでいる。美しく見える)ショートパンツからのびた小麦色の足。オレンジ色のビーチサンダル。ちょっと言動が不審な感じの女子。美竹小学校(みたけしょうがっこう)の児童から「黄金のシャベルを奪還(だっかん。うばいかえす)することが今の彼女の目標。
 橋本杏(はしもと・あん。女子):隠田小学校(おんでんしょうがっこう)6年生。羽村ヒカルの同級生。夏休みはハワイの別荘ですごすので、家は裕福なのでしょう。お金でものごとを解決しようとする面があります。
 聖葉女学院(せいようじょがくいん):彼女たちが目指しているらしき私立中学校
 雪原学園(せつはらがくえん):同じく私立中学

 ツインテールの結び目(むすびめ):髪型。長い髪の毛を頭の高い位置で左右にまとめてたらす。ツインはふたつ。テールは、しっぽ。桃沢珠子の髪型。
 カチューシャ:髪飾り。C字型のヘアバンド。
 
 「砂」の話が出てきます。この本のタイトルで「サンド」は英語のサンド:砂のことだろうか。SANDです。

 ポンデケージョ:ブラジル生まれのチーズパン。ネットで写真を見ました。じゃがいもか、さといもの皮をむいたあとのような姿をしていました。食べやすそうで、おいしそうなパンです。
 ブラジルでは「パン・ジ・ケージョ」意味はチーズパン。

 神山小学校6年生の桃沢珠子と隠田小学校6年生の羽村ヒカルは、美竹小学校の児童と何かの勝負をしに行きます。場所は、美竹公園というところで、そこには児童館があるそうです。美竹公園の隣に美竹小学校があります。
 ちょっと整理します。
 神山小学校:桃沢珠子、森田ちず。学校は静かな住宅地にあります。
 隠田小学校:橋本杏、羽村ヒカル。学校は商業地と住宅地の中にあります。
 美竹小学校:学校は商業地と住宅地の中にあります。
 隠田小学校と美竹小学校の間は歩いて20分間ぐらい。神山小学校はほかのそれぞれの小学校に対して歩いて40分ぐらい離れているそうです。
 
 美竹公園の砂場で野球帽をかぶった男の子が待っていました。どうもこの物語には「砂」が関係あるらしい。
 男の子も羽村ヒカルも日焼けしています。
 砂場には跳び箱7段ぐらいありそうな大きな砂山がふたつあります。
 羽村ヒカルは「ハム」と呼ぶらしい。「ヨーマ」というのは野球帽の男の子の仲間らしい。(その後、名前が、勝田葉真(かつた・ようま)であることがわかりました。それから、勝田葉真の弟が勝田羽衣音(かつた・はいね)と勝田愛衣音(かつた・あいね)です。ふたごですなあ。4年生だそうです)
 シラベさん:だれ? まだわかりません。
 なにやらシャベルをどちらが使うかでもめていそうです。
 ケンペー(憲兵のことだと思います。軍隊の組織で、警察的役割を果たす。交通整理も担当する)
 シンパン:砂の彫刻の審査員役。桃沢珠子が羽村ヒカルに押し付けられた役割。勝田羽衣音(かつた・はいね)も審判をするそうです。
 砂の彫刻づくり勝負が始まりました。制限時間60分です。
 勝田葉真はライオンをつくる。羽村ヒカルは、チーターをつくる。その後、どったんばったんがあって、騒ぎはおさまります。

 サンドアート:砂像彫刻
 シラベ・モトヤ:サンドアートのアーティスト(砂像彫刻家)口癖が「これ、常識」
 
 桃沢珠子と羽村ヒカルは友だちになることにしました。

 国立中学:くにたちちゅうがくと読むのだと思います。私立中学校でしょう。

 物語の内容から考えて、登場するこどもたちは、いまは三十代ぐらいになっているのでしょう。
 第二次世界大戦のことがからんできます。
 羽村ヒカルの祖母は68歳で亡くなっています。戦争を体験していない世代だったそうです。
 羽村ヒカルは将来に向けて、大きな夢をもっています。壮大です。
 羽村ヒカルの将来の夢を聞いた桃沢珠子も自分の夢をかなえるために自分を変えようと思い立ちます。

 ジョゼフィーヌの娘:この物語の中だけの架空のお話なのでしょうか。1789年のフランス革命、ナポレオンのいたころを思い浮かべます。物語では、ジョゼフィーヌの恋人役が月組の笹風流斗(ささかぜ・りゅうと)という人で、宝塚歌劇団でいうところの女優が演じる男役だとうけとりました。

 アデリーペンギン:中型のペンギン。南極大陸にいるのは、このペンギンと大型のコウテイペンギンの二種類。
 
 桃沢珠子(ももざわ・たまこ。勝田くんに付けられたニックネームが「タマゴ」)、羽村ヒカル(勝田くんに付けられたニックネームが「ハム」)、橋本杏(はしもと・あん)の三人は、勝田葉真(かつた・ようま。YouTubeでは「ヨーマX(エックス)」)、ふたごの弟で4年生勝田羽衣音(かつた・はいね)、勝田愛衣音(かつた・あいね)、勝田三兄弟と「砂像(砂の彫刻)製作」でバトル(勝負)を始めます。
 女子三人は、いったん負けますが、勝田三兄弟に対する対抗意識は燃え上がります。仕返しのための強いエネルギーが生まれます。

 青いシャベルは「筋トレシャベル」
 黒いシャベルは「黄金のシャベル」

 ライオンじゃなくて、「キメラ:伝説の猛獣。勝田葉真が創造したオリジナルキャラクター。頭がライオン、胴体がヤギ、しっぽがヘビ」

 今どきの「SNS(ソーシャル・ネットワーク・システム)」を素材にした児童文学作品です。ようやくこういう作品が出てきました。こどもたちを取り巻く時代背景となる環境は、未来に向けて、昔とは違ってきています。

 ラップ:音楽のスタイル。ビートに合わせた語り歌。主張をもりこんである。

 砂像のつくり方の講習会を聴いているようです。
 スケッパー:おもにパンづくり、お菓子づくりで使用される。まぜる、切る、すくう、こねる。四角で薄いカード型の道具

 桃沢珠子と羽村ヒカルは意気投合して(気が合って盛りあがって)、「砂像」を中心においたグループ活動をすることにしました。桃沢珠子の発案で、チームの名前を決めて、クラブ活動をすることにしました。クラブの名称が「サンドイッチクラブ」です。ハム(羽村ヒカル)とタマゴ(桃沢珠子)のサンドアートクラブが最初の発想です。
 約束事として、①仲良くすること ②約束を守ること ③悲しい時やイライラしたときは…… 両手をぱちんと合わせて「ポンデケージョ(ブラジル生まれのチーズパン)」

 羽村ヒカルがアメリカ合衆国初代大統領の「ジョージ・ワシントン」をかっこいいと言います。渋い(ほめ言葉として、味わいがある)

 8月31日(夏休み最後の日)にサンドイッチクラブと勝田三兄弟との「砂像制作対決」が開催されることになりました。審判が、砂像制作作家のシラベさんです。

 イワトビペンギン:小型のペンギン。インド洋から南太平洋にいる。南極にはいない。
 モリニーニョ:ホットチョコレートをかきまぜる棒。先端がギザギザの形をしたドリルのようになっている。
 
 砂が簡単にくずれていくお話が出ます。その部分を読んでいて、日本映画の名作「砂の器(すなのうつわ)」小説は松本清張作品を思い出しました。悲しいドラマがありました。つくりあげた栄光に輝く人生が、ちょっとしたほころびで、深刻なまでの悲劇に結びつき、砂の器のようにくずれていくのです。

 いろいろな項目が細切れ(こまぎれ)に出てくる不思議な雰囲気をもつ小説です。いろいろなことが混在しています。友情、対立、協力。
 場面が急に変わるときがあり、とまどうことがありました。(自宅で母親とミサイルの話をしていたら二行あとで砂場のシーンに転換)

 私立中学受験:未来の幹部候補生を育てるための学校ととれます。「世界で通用するトップリーダー」「グローバルリーダー」(雪原学園説明会)私立中学受験の話題も今どきの素材です。文芸小説の本を読むのも私立中学受験生が多いのでしょう。
 登場人物である裕福な家の娘である橋本杏の言動で、私立中学受験競争の中で、学力で人間を評価する差別が生まれていますが、社会に出ても学力だけでは食べていけません。人間力が必要です。そのことを知らないと挫折(ざせつ。うまくいかなくてへこむ)を味わうことになります。
 私立中学受験の是非(ぜひ。いいわるい)を考える部分があります。自分の意思を抑えて、親の意思に従って、塾に通っているとしたらやがてゆきづまるときがきます。親の顔色をうかがいながら自分の未来を決めることはやめたほうがいい。いずれ破たんします。自分の人生は自分のものであって親のものではありません。イヤなことはイヤですと言えるようになりたい。

 砂像制作に関して:エローラ石窟寺院(インド国ムンバイの東)5世紀から10世紀の遺跡。岩山をくりぬいた寺院。この本では、製作に100年以上かけたとあります。

 反戦に関して:サンパチ銃(三八式歩兵銃)1905年(明治38年。三十八年だからサンパチなのでしょう)日本陸軍採用の銃。
 ミサイルの話(イメージとしては、北朝鮮発射。文中に飛行時間が40分とあって、?(クエスチョン)でした。ミサイルで40分あるとかなり遠くまで飛んでいってしまいます)
 
 難民に関して:戦火から逃げる庶民。本では、地中海を中東や北アフリカから船でヨーロッパ方面へ逃げます。

 印象に残った言葉、文節などです。
 「『歴史』に素手でさわる……」
 「おしゃぶり」(難民船が難破して海に投げ出されて溺死(できし。おぼれて亡くなった)した乳児が使っていたものではないだろうか……)
 「お金がないって不幸だ、と思った」(今はないだけで、さきざきもないわけではありません)
 「すがすがしいほど自己中心的」
 「あたし、心が弱いから」(羽村ヒカルの言葉)

 物語は、ライオン(キメラ)対ペンギン(コウテイペンギンの親子)の構図になっていきます。
 ペンギンが翼を広げた形を砂像で表現するためにはどうしたらいいのか。工夫と知恵が必要です。
 ペンギンの親子の部分を読んでいたら、以前読んだことのある絵本「タンタンタンゴはパパふたり」を思い出しました。アメリカ合衆国ニューヨークの動物園で実際にあったことで、温めることを放棄したペンギン夫婦の卵を、男同士の夫婦に与えたところ、上手に温めてくれて、ヒナが生まれて、仲良し三人家族になれましたというお話でした。
 日本の水族館や動物園で多いフンボルトペンギンの数は、世界的には少ないとか、生息地は、南米のチリとかペルーということは、今回この本がきっかけで調べて初めて知りました。長い間生きていても知らないことがたくさんあります。
 
 ユニバーサルランドは、ディズニーランドなのでしょう。

 松崎サラサ:資産家の娘である橋本杏(はしもと・あん)の学校の友だち。大柄。
 まあいろいろと女子の世界が展開されます。

 自由業:フリーランス。自分が得意な技術を使って好きなときに仕事をする。組織に属さない。社員ではない。個人事業主。

 テレビ番組「テレビチャンピオン」みたいになってきました。
 舞台は神奈川県江の島の砂浜海岸です。
 大船駅でモノレールに乗車します。自分も乗ったことがあるのでなつかしい。
 最後は、海で決着をつけるのです。

 雪原学園の前川さんがいい話をしてくれます。本を読んでください。『種屋』がヒントです。

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