2021年05月27日

カラスのいいぶん 人と生きることをえらんだ鳥 嶋田泰子

カラスのいいぶん 人と生きることをえらんだ鳥 嶋田泰子(しまだやすこ)・著 岡本順・絵 童心社

 いいぶん:(反論めいた)主張

 カラスといえば、燃えるゴミ(生ごみ)収拾の日に、ごみ袋をつついて、ひっぱって、やぶいて、道路を散らかす迷惑行為を思い浮かべます。
 こどものころには、夕空をながめながら学校帰りにか~ら~す、なぜなくのと「ななつの子」という童謡を歌ったり、コメディアンのギャクを思い出したりします。最近だとチコちゃんに叱られるに出てくるキョエちゃんを数日前にテレビで見ました。
 むかしは愛されていたらしきカラスはどうしていまは嫌われものになってしまったのだろう。
 カラス対策で、生ごみを出すときには、緑色の大きな網をごみにかぶせています。

 カラスは頭がいい。小学校の中学年から高学年の学力はありそうです。生き残るために生活の知恵を身につけたのでしょう。チームワークとか、仲間意識も感じられます。カラスは孤独ではありません。(読み進めたところ、44ページに8歳ぐらいの知能ではないかと書いてありました)

 さて、本を読み始めます。
 左開きの横書きです。英語の作品みたいです。めずらしい。
 カラスの絵があります。日常的にカラスは見かけます。電信柱の上で鳴いているときは、仲間とゴミあさりの打ち合わせをしているに違いないと思います。
 散歩のときに公園で見かけることもよくあります。きっと、里山のどこかに巣があるのでしょう。

 本にカラスが人を襲うと書いてあります。そういえば、北海道にある摩周湖を見に行ったときに、手に持っていた食べ物を狙われたことがありました。おそろしいです。
 それから、飼い猫がカラスに襲われたという話も聞いたことがあります。
 まあ、カラスにとっては、生きていくためにはしかたがないことなのでしょう。
 この本では、カラスのつごうも聞いてみましょうという提案があります。
 ハシブトガラスとハシボソガラスという種類があって、この本では、ハシブトガラスを主人公にするそうです。

 絵を見ていたら鎖につながれた飼い犬も出てきました。鎖でつながれた飼い犬よりも食べ物の保証はないけれど、自由に空を飛び回って移動ができるカラスのほうが幸せそうです。

 カラスは「害鳥」なのか。
 人間の立場で見たらそんな気もするけれど、違う気もします。

 カラスは生ごみをあさるために人間の行動を調べているけれど、人間はカラスのことを調べようとはしていいないという指摘はあたっています。

 本書では、カラスが共同購入しているニワトリの卵を盗んでいるそうです。わたしは、卵を足でつかんで盗んでいくと思っていましたが、くちばしで卵をくわえていくやりかただったので驚きました。
 カラスはどうやって、ニワトリの卵を食べるのだろうか。穴を開けて中身をすするのだろうか。不思議です。まさか、ニワトリの卵を温めてヒナをかえして食べるなんてことはしないでしょうに。
 
 先日散歩中に、カラスを見かけました。くちばしが細いハシボソガラスでした。体は小さくて、にごった声で鳴いていました。地上に降りてよく歩くそうです。くちばしが太くて、体も大きくて、にごらない鳴き声で鳴くのが、ハシブトカラスだそうです。地上を歩くのはにがてだそうです。さらに動物の死骸を食べてくれるいいところもあるそうです。天敵がタカやフクロウですが、街中ではタカもフクロウも見かけません。

 二羽で行動するカラスはたぶんご夫婦なのでしょう。

 本を読んでいておどろいたのは、カラスが民家の庭にある木に巣をつくっていたことでした。人を怖がらないというか、人をばかにしているというか。ちょこざいなカラスです。(なまいきな)

 カラスの巣は使い捨てだそうで。もったいない。何度も使えばいいのに。ごみ減量のために再利用することが人間界の努めです。
 
 クルミを車にひかせて、割れたクルミの中身の果肉を食べるカラスがいるそうです。カラスの知恵があります。種類に関係なく、ハシブトガラスもハシボソカラスもそうするそうです。
 以前、テレビ番組の「探偵ナイトスクープ」で、中身が不明の物体が空から降ってきたという不思議さを追いかけた取材を見たことがあります。確実ではありませんが、カラスがくちばしでくわえていた物が落ちたのでしょうという推理でした。ちなみに中身は粘土だったと思います。
 ロシアの作曲家であるチャイコフスキー作曲の「くるみわり人形」も思い出しました。

 クルミ:落葉高木。

 カラスでさえ学習する(カラスに失礼ですが)のですから人間もがんばらないと。

 ニューカレドニア:フランス領。オーストラリアの東のほうにある島々。海が美しいリゾーチ地(心身ともにリラックスできる観光地)
 そんな広い太平洋に浮かぶ島にもカラスがいるのかと驚きました。カレドニアガラスという名前で枝をくわえて虫の幼虫を捕まえる狩りをするそうです。
 
 日本では、カラスが公園の蛇口をひねって開けて水を飲むそうです。生きるために食べるし飲むし、だから、カラスも必死で考えるのでしょう。精神的に人間よりも強いかもしれません。

 本を書いている人の自宅の庭のようすです。犬を二頭飼育されています。
 「ななこ」は14歳ですから人間にたとえるともうお年寄りでしょう。
 「ぬふ」は3歳です。ぬふはなんとなく発音として呼びにくい。
 毎日カラスがお庭にやってきます。カラスにも名前を付けます。
 「カー」体が大きくて、ずうずうしい。人や犬を怖がらない。
 「ヒトミ」カーにいつもくっついている。
 「ジミー」存在感が薄い。
 「クロスケ」おでこの羽が美しい。なれなれしい。そばにくる。
 「おつれ」クロスケの彼女。いつも、おどおどびくびくしている。羽につやがなくみすぼらしい。神経質。
 もう一羽いて、「クルミ」と名付けようとしていたけれど来なくなってしまったそうです。
 5羽のカラスが自宅に来る目的は何でしょうというような疑問があるのですが、それは、やはり、「食べる」ためでしょう。

 犬とカラスたちのドッグフードをめぐる争いがあります。犬の食べ物をカラスがねらっています。
 食べ物のおいしい、おいしくないの話があります。犬は、ドッグフードよりも手づくりごはんのほうがおいしく食べたそうです。カラスもたぶん同じでしょう。
 だけど、犬の飼い主である著者はカラスが犬の食べものを横取りしていることに時間がかかりました。
 カーとクロスケがななこの食べ残しをねらいます。ななこはおばあさんなので、カラスに負けています。
 カラスたちの行動は五歳児ぐらいのいたずらっこに見えます。
 カラスたちの犬に対する行動は、母親に餌をねだるようなものであったり、飼い主に食べ物を要求するような態度に見えたりします。

 カラスの「貯食(ちょしょく)行動」について書いてあります。食べきれなかった食べ物は、あとで食べるときのために土の中をはじめとしていろいろなところに隠しておくのです。

 ふだん生活していて不思議に思っていたことについて本に書いてあります。カラスというのは、「曜日」がわかるのではないかということです。カラスは、地域ごとの生ごみ収集の日を知っているようなのです。収集日の前になると、高いところにとまっている司令塔の役割を果たすカラスがカー、カーと声を出して、仲間に合図を送り、お互いに打合せをしているようの見えるのです。「あしたは、生ごみの日だからがんばるぞー」って言っているようです。
 カラスの頭の中には、カレンダーがあるのです。

 カラスの「遊ぶ(という行動)」について書いてあります。
 空中トイレットペーパーちぎり遊びには感心しました。カラスは人間に似ています。「貯食(ちょしょく)」で食べものを確保してあるから気持ちに遊ぶ余裕があるのでしょうと分析されています。人間も貯金があると遊べる余裕があるのでしょう。

 カラスの目には「しゅんまく」という目を守るための薄い膜があって、まぶたは、上から下ではなく、下から上へ動く。この本を読んで初めて知りました。
 それからカラスはヒキガエルを食べる。まだまだ知らないことがたくさんあります。

 ジャーキー:干した肉。保存食。

 カラスの子育てが書いてあります。人間もカラスも子育ては大変です。それでも卵の全部が無事に生まれて育つわけではないそうです。カラスの親は、自分を犠牲にして子育てに専念しなければなりません。カラスの年間計画をみると初夏を迎えつつあるちょうどいまごろが子育ての最中です。一生懸命ヒナを育てるのは、愛情と本能があるからと思いたい。
 そして、カラスの敵はカラスです。なわばりあらそいでは、カラスがカラスを襲い、カラスはカラスから身を守ります。
 以前テレビで「ライオンの敵はライオン」という映像を見たことがあります。そしてやはり「人間の敵は人間」なのでしょう。

 カラスの夫婦は死ぬまでいっしょにいるそうです。人間も見習いたい。

 しぶといカラスくんも最近はその数が減少しているそうです。やはり「カラスの敵は人間」なのでしょう。
 「駆除」から「共存」へ。そうしないと、人間同士の争いで人間が減少することにつながっていくのでしょう。戦争は反対です。
 
 さいごに、著者自作のカラスに関する記録として「あゆみ」の紹介があります。カラスは、においにどんかんというところが意外でした。

 読んでいる途中の区切りで「まめちしき」が出てくるのですが、ストーリーが頭の中で途切れるので、最後にまとめて読むことにしました。
 「神の使い」というところで、以前読んだ玉依姫(たまよりひめ) 阿部智里(あべ・ちさと)作品、
バベル九朔(ばべるきゅうさく) 万城目学(まきめ・まなぶ)作品、気がつけばカラス きむらゆういち作品、からすのパンやさん かこさとし 偕成社、そういえば、鬼滅の刃(きめつのやいば)にもしゃべるカラスがいたと、自分の読書メモが残っています。

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