2021年04月07日

おじさんのかさ 佐野洋子

おじさんのかさ 佐野洋子 講談社

 傘をもっているけれど、雨がふっても使用しない傘のお話です。
 愉快です。見せ傘というのでしょうか。お財布の中の「見せ札、見せ金(みせさつ。みせがね。見せるだけで使わない紙幣)」みたいです。
 人に見せて自慢するだけの傘だろうかという先入観をもちながら読み始めました。
 大きな傘です。
 外歩きをするおじさんです。イギリスはロンドンのような光景です。おじさんは傘を濡らしたくありません。
 服は雨に濡れてもかまいませんが、傘が雨に濡れるのはいやなのです。おじさんは変わった人です。
 おじさんは、もっと強く雨が降ると、自分の傘を胸に抱いたまま他人の傘に入れてもらいたがります。おかしい。笑えます。
 大雨の日は、傘をさしたくないので、出かけません。
「あめが ふったら ポンポロロン あめが ふったら ピッチャンチャン。」というリズム言葉があたりに広がります。そのおまじないに影響されたのか、おじさんは傘を開いてしまいました。
 雨つぶに傘が打たれて音が出て、おじさんが初めて聴く音があります。音楽が始まりました。「孤独」から「にぎやか」への変化があります。
 ユーモアに満ちているいい作品でした。今年読んで良かった一冊です。

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