2021年03月28日
水中都市・デンドロカカリヤ 安部公房
水中都市・デンドロカカリヤ 安部公房 新潮文庫
作者安部公房氏について:1924年-1993年 68歳没 1951年芥川賞受賞
作品「砂の女」は二十代の頃に読んだことがありますが、内容はもう覚えていません。
文庫の最初にある「デンドロカカリヤ」を読み終えたところで感想を書き始めてみます。人間が、植物や動物に化身するところが作品群の特徴のようです。読む人によって、好みが分かれるだろうと感じます。独特な文章表現手法です。
短編集です。
「デンドロカカリヤ」
コモン君が、デンドロカカリヤという植物に随時、瞬間的になります。読んでいると、うつ病の人の症状が悪くなったときに植物のように動かなくなるようなイメージをもちました。
奇妙な空想の世界です。短文なので、ショートショートのような雰囲気があります。
ローマ神話やギリシャ神話がベースにあるような。「ダンテ 神曲 イタリアの詩人・政治家」「ゼウス 神」「以下、神:イアペタス プロメテウス アポロ など」
第二次世界大戦のことも背景にあるような(作品の発表は、昭和20年の終戦後、昭和24年です)
先日再読したカフカ「変身」を思い出しました。外交販売員男子が、朝、目が覚めたら昆虫になっていというお話です。
印象に残った文節として「幸福だの不幸だのなんて、一体なんの役に立つんです」「ただの雑草だと思われ、ちょんぎられるのが関の山じゃないですか」
自分だけが特別な存在だと考えるのは誤解である。万人に共通する心の病があるというメッセージを感じました。
人間が植物になって標本になる。戦争の戦死者をイメージしてあるのだろうか。
アナロジー:類推
「手」
銅像が語り手となって話す物語です。
銅像は、第二次世界大戦中に軍事用として活用された伝書鳩です。「平和の鳩の像」です。銅像ですが、物語の中では生命をもっています。
「手」とは、その伝書鳩の世話をしていた人の手です。
戦争用だった鳩が、平和の鳩と言われることに、鳩自身がすっきりした気持ちになれないようです。
鋭い感性をもつ作品でした。
第二次世界大戦において、国の支配者から武器扱いをされた国民の怒りがこめられています。
昭和26年7月の作品でした。1951年、作者は27歳でした。
「飢えた皮膚」
皮膚とは「洋服」をさします。
語り手である「おれ」は、犬かと思いましたが人間でした。おれは、ナイフをもっています。
迫力があります。力強い文章です。この男は凶暴ですから注意してくださいみたいな文脈です。
自尊心を傷つけた相手に対して復讐を企てています。(くわだてています)
ただ、復讐計画は妄想であり、実行はしないようです。
おれの復讐の相手は、木矛夫人(キムふじん)の夫のようですが、夫人も巻き込んでふたりに仕返しをするようです。みせかけだけの不倫計画にみえます。
服装には社会的な役目がある。
洋服の汚れを防止する薬品を発見した。
薬物使用とか性的な行為とか、よくわからない内容になってきました。人をモノ扱いしています。
事件は起こっていないのでしょう。ただ、妄想していている男性本人の脳の中は、復讐心による計画で自己破滅しています。
流謫の身(るたくのみ):罪によって遠方へ流されること。追放
シュス:織物
カタストローフ:突然の破滅、破局
「詩人の生涯」
三十九歳の老婆というところから始まるのですが、三十九歳は老婆の年齢ではありませんので、読んでいるとどうも、老婆=機織機(はたおりき)のような器械をさしているように読み取れます。器械の導入で人間である労働者の五十人が解雇されたというふうに読めます。
雪の話になるのですが雪は、夢や魂や願望でできています。貧しい人がいて、産業の振興があって、戦争の話になります。鼠(ねずみ)が出てきます。内容を理解することはなかなかむずかしい。
「空中楼閣」
楼閣(ろうかく):重層の立派な建物
「求む工員 空中楼閣建設事務所」から始まります。
失業保険受給中で仕事を探しているKが主人公の若者です。建設事務所で働きたい。されど、求職の申し込み先がわかりません。
選挙の投票用紙は一票が千円の世界です。本作品は昭和26年のものです。
どうも「空中楼閣」というのは、国民の思想を誘導する策らしい。国民の意志をひとつに集中させるための為政者のたくらみ。反戦思想が背景にあるような気配があります。
奇想天外で文章の勢いに理解がついていけません。他の作品も含めて、精神病を患っている(わずらっている)人の脳内にある世界を文章化してあるような感じがあります。
ランデヴー:待ち合わせ
バベルの塔:旧約聖書にある伝説の塔。人間が高い塔を建てようとしたことに神が怒り、それまでひとつであった人間の言語を複数にして混乱させて、お互いに意思疎通ができないようにした。
ファシスト:独裁的な権力の支持者
「闖入者(ちんにゅうしゃ)」 -手記とエピローグ-
昔の二階建てまんなか通路、両側に部屋ありのアパートらしき一室にひとり暮らしの若い男性がいるのですが、その部屋へ、男と老婆とこどもたち合計9人が押しかけてきて、この部屋は自分たちの部屋だと主張するのです。主人公の「ぼく」の頭の中は、狂っています。
どの作品を読んでいても気持ちが落ち着きません。不安定な気分になります。
「部屋に帰ってもだれかがぼくを見張っていました」明らかに主人公は心の病気です。精神病をわずらった人の物語になっています。
ファッショ的:強制的な集団の結束、団結
「ノアの方舟(はこぶね)」
ノアの方舟:旧約聖書に登場する。神が洪水を起こす。神がノアに方舟づくりを命じる。ノアは方舟に親族と動物のつがいを乗せた。
ノア先生は、偉い人だった。ノア先生は、村長で、校長で、税務署長で、警察署長で、裁判長で……と続きます。
エホバ:神
サタン:神の敵、人間の敵
古代のことや宗教のことですが、その方面の知識がないので、内容を理解できませんでした。
弁証法(べんしょうほう):否定からよりよいものを引き出す過程
「プルートのわな」
倉の二階に、オルフォイスとオイディケというねずみの夫婦がいたから始まります。
どうも、猫の首にだれが鈴を付けるかというお話のようです。
老いぼれ猫プルートの登場です。(なんとなく、アメリカ合衆国に思えます)
人を信じゃいけないというたとえ話でしたが、第二次世界大戦にひっかけてあるのかもしれません。
「水中都市」
作者の作品は精神病を扱っているものが多そうです。
この作品も「おれを精神病院に入れようとする意見には絶対反対」という記述ぐらいから始まります。
水の中に生活圏があるのです。
「人間を魚に変える注射をするんだろう」という文章があります。
「やつはすでにぼくのシステムの中に入りこんできている」
読んでいても何が書いてあるのかわかりません。目で文字を追うだけのです。夏目漱石氏の「吾輩は猫である」を読んだ時と同じ感覚です。
ギブアップです。自分には理解できない作品でした。
「鉄砲屋」
こちらも難解です。
カラバス丸という船があって、カラバス人とか、馬国人がいて、ヘリコプターの名称が「くまん蜂号」で、船長がいて、島長がいます。
馬の目島というところがあります。灰色人種が住んでいます。
タイトルが鉄砲屋ですから鉄砲を売るカラバス人のセールスマンがいます。
戦争をからめて政治的なことが書いてあると思うのですが、自分には理解するだけの能力がなくて意味をとらえることができません。
「イソップの裁判」
世界史の学習のようです。紀元前600年ごろ。ギリシャです。
こちらもさきほどの「鉄砲屋」同様に内容を理解できませんでした。
作者安部公房氏について:1924年-1993年 68歳没 1951年芥川賞受賞
作品「砂の女」は二十代の頃に読んだことがありますが、内容はもう覚えていません。
文庫の最初にある「デンドロカカリヤ」を読み終えたところで感想を書き始めてみます。人間が、植物や動物に化身するところが作品群の特徴のようです。読む人によって、好みが分かれるだろうと感じます。独特な文章表現手法です。
短編集です。
「デンドロカカリヤ」
コモン君が、デンドロカカリヤという植物に随時、瞬間的になります。読んでいると、うつ病の人の症状が悪くなったときに植物のように動かなくなるようなイメージをもちました。
奇妙な空想の世界です。短文なので、ショートショートのような雰囲気があります。
ローマ神話やギリシャ神話がベースにあるような。「ダンテ 神曲 イタリアの詩人・政治家」「ゼウス 神」「以下、神:イアペタス プロメテウス アポロ など」
第二次世界大戦のことも背景にあるような(作品の発表は、昭和20年の終戦後、昭和24年です)
先日再読したカフカ「変身」を思い出しました。外交販売員男子が、朝、目が覚めたら昆虫になっていというお話です。
印象に残った文節として「幸福だの不幸だのなんて、一体なんの役に立つんです」「ただの雑草だと思われ、ちょんぎられるのが関の山じゃないですか」
自分だけが特別な存在だと考えるのは誤解である。万人に共通する心の病があるというメッセージを感じました。
人間が植物になって標本になる。戦争の戦死者をイメージしてあるのだろうか。
アナロジー:類推
「手」
銅像が語り手となって話す物語です。
銅像は、第二次世界大戦中に軍事用として活用された伝書鳩です。「平和の鳩の像」です。銅像ですが、物語の中では生命をもっています。
「手」とは、その伝書鳩の世話をしていた人の手です。
戦争用だった鳩が、平和の鳩と言われることに、鳩自身がすっきりした気持ちになれないようです。
鋭い感性をもつ作品でした。
第二次世界大戦において、国の支配者から武器扱いをされた国民の怒りがこめられています。
昭和26年7月の作品でした。1951年、作者は27歳でした。
「飢えた皮膚」
皮膚とは「洋服」をさします。
語り手である「おれ」は、犬かと思いましたが人間でした。おれは、ナイフをもっています。
迫力があります。力強い文章です。この男は凶暴ですから注意してくださいみたいな文脈です。
自尊心を傷つけた相手に対して復讐を企てています。(くわだてています)
ただ、復讐計画は妄想であり、実行はしないようです。
おれの復讐の相手は、木矛夫人(キムふじん)の夫のようですが、夫人も巻き込んでふたりに仕返しをするようです。みせかけだけの不倫計画にみえます。
服装には社会的な役目がある。
洋服の汚れを防止する薬品を発見した。
薬物使用とか性的な行為とか、よくわからない内容になってきました。人をモノ扱いしています。
事件は起こっていないのでしょう。ただ、妄想していている男性本人の脳の中は、復讐心による計画で自己破滅しています。
流謫の身(るたくのみ):罪によって遠方へ流されること。追放
シュス:織物
カタストローフ:突然の破滅、破局
「詩人の生涯」
三十九歳の老婆というところから始まるのですが、三十九歳は老婆の年齢ではありませんので、読んでいるとどうも、老婆=機織機(はたおりき)のような器械をさしているように読み取れます。器械の導入で人間である労働者の五十人が解雇されたというふうに読めます。
雪の話になるのですが雪は、夢や魂や願望でできています。貧しい人がいて、産業の振興があって、戦争の話になります。鼠(ねずみ)が出てきます。内容を理解することはなかなかむずかしい。
「空中楼閣」
楼閣(ろうかく):重層の立派な建物
「求む工員 空中楼閣建設事務所」から始まります。
失業保険受給中で仕事を探しているKが主人公の若者です。建設事務所で働きたい。されど、求職の申し込み先がわかりません。
選挙の投票用紙は一票が千円の世界です。本作品は昭和26年のものです。
どうも「空中楼閣」というのは、国民の思想を誘導する策らしい。国民の意志をひとつに集中させるための為政者のたくらみ。反戦思想が背景にあるような気配があります。
奇想天外で文章の勢いに理解がついていけません。他の作品も含めて、精神病を患っている(わずらっている)人の脳内にある世界を文章化してあるような感じがあります。
ランデヴー:待ち合わせ
バベルの塔:旧約聖書にある伝説の塔。人間が高い塔を建てようとしたことに神が怒り、それまでひとつであった人間の言語を複数にして混乱させて、お互いに意思疎通ができないようにした。
ファシスト:独裁的な権力の支持者
「闖入者(ちんにゅうしゃ)」 -手記とエピローグ-
昔の二階建てまんなか通路、両側に部屋ありのアパートらしき一室にひとり暮らしの若い男性がいるのですが、その部屋へ、男と老婆とこどもたち合計9人が押しかけてきて、この部屋は自分たちの部屋だと主張するのです。主人公の「ぼく」の頭の中は、狂っています。
どの作品を読んでいても気持ちが落ち着きません。不安定な気分になります。
「部屋に帰ってもだれかがぼくを見張っていました」明らかに主人公は心の病気です。精神病をわずらった人の物語になっています。
ファッショ的:強制的な集団の結束、団結
「ノアの方舟(はこぶね)」
ノアの方舟:旧約聖書に登場する。神が洪水を起こす。神がノアに方舟づくりを命じる。ノアは方舟に親族と動物のつがいを乗せた。
ノア先生は、偉い人だった。ノア先生は、村長で、校長で、税務署長で、警察署長で、裁判長で……と続きます。
エホバ:神
サタン:神の敵、人間の敵
古代のことや宗教のことですが、その方面の知識がないので、内容を理解できませんでした。
弁証法(べんしょうほう):否定からよりよいものを引き出す過程
「プルートのわな」
倉の二階に、オルフォイスとオイディケというねずみの夫婦がいたから始まります。
どうも、猫の首にだれが鈴を付けるかというお話のようです。
老いぼれ猫プルートの登場です。(なんとなく、アメリカ合衆国に思えます)
人を信じゃいけないというたとえ話でしたが、第二次世界大戦にひっかけてあるのかもしれません。
「水中都市」
作者の作品は精神病を扱っているものが多そうです。
この作品も「おれを精神病院に入れようとする意見には絶対反対」という記述ぐらいから始まります。
水の中に生活圏があるのです。
「人間を魚に変える注射をするんだろう」という文章があります。
「やつはすでにぼくのシステムの中に入りこんできている」
読んでいても何が書いてあるのかわかりません。目で文字を追うだけのです。夏目漱石氏の「吾輩は猫である」を読んだ時と同じ感覚です。
ギブアップです。自分には理解できない作品でした。
「鉄砲屋」
こちらも難解です。
カラバス丸という船があって、カラバス人とか、馬国人がいて、ヘリコプターの名称が「くまん蜂号」で、船長がいて、島長がいます。
馬の目島というところがあります。灰色人種が住んでいます。
タイトルが鉄砲屋ですから鉄砲を売るカラバス人のセールスマンがいます。
戦争をからめて政治的なことが書いてあると思うのですが、自分には理解するだけの能力がなくて意味をとらえることができません。
「イソップの裁判」
世界史の学習のようです。紀元前600年ごろ。ギリシャです。
こちらもさきほどの「鉄砲屋」同様に内容を理解できませんでした。
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