2021年02月13日

きりのなかで 木村裕一・作 あべ弘士・絵

きりのなかで 木村裕一・作 あべ弘士・絵 講談社

 第一巻「あらしのよるに」、第二巻「あるはれたひに」、第三巻「くものきれまに」ときて、今回が第四巻です。少しずつ読み足していきます。

(1回目の本読み)
 善良オオカミ「ガブ」のそばには、巨体のオオカミ「バリー」と自分の片耳を獲物のヤギに抵抗されてくいちぎられた「ギロ」がいます。
 「ガブ」以外の二頭のオオカミは、もちろんヤギが大好物です。
 「ガブ」にとっては、親友のような、あるいは恋人のような、つれあいであるヤギの「メイ」が、凶暴なオオカミであるバリーとギロに襲われて食べられそうになります。大変だ!

 いまいる場所は、「ポロポロがおか」で、近くにオオカミの巣がある「バクバク谷」があります。

 オオカミたちがヤギ肉を食べたときの味の感想はリアルです。
 メイはだいじょうぶだろうか。
 ガブはメイを二頭の凶暴なオオカミから守れるだろうか。

 お話は無事に終了へと向かって行くのですが、どうして、みんな、月を見ることが好きなのだろう。月にはなにか祈りがかかっているのでしょう。
 月は、みんなが仲良く暮らせるところ。天国のような位置づけです。

 仲良しのオオカミのガブとヤギのメイはこれからどうなるのだろうか。
 もう二十年以上前の本ですが、このシリーズの存在を知りませんでした。

(2回目の本読み)
 絵が独特です。
 絵が文章の内容ときっちりマッチ(合致)しているかというとそんなふうでもなく、構図も含めて、絵がうまいとは思いませんが、絵には力強さがあります。
 色づかいが強い。オオカミの表情はまるで生きているように見えます。
 絵に、スリル(はらはらどきどき)とサスペンス(ぞっとする怖さ)、生きるか死ぬか、殺されるかの緊張感があります。
 絵本を見ていて臨場感があります。(実際にその場に自分がいるような感じ)
 
 強いオオカミの世界にも階級があります。
 階級を決める基準は力の強さです。
 体の大きさも関係します。
 ヤギのメイのともだちであるオオカミのガブの階級はオオカミの群れの中では最下位のようです。ほかの二頭のオオカミのほうがいばっています。ボスがバリーで、子分がギロです。
 オオカミを責めることはできません。ヤギをつかまえて食べるという二頭のオオカミがやっていることは、オオカミにとってはあたりまえのことです。
 生きるためにヤギを食べます。
 ガブは、ヤギのメイを守るため、他の二頭に、頭脳で対抗していかねばなりません。

 自然現象がふたりを助けてくれます。
 霧がふたりを隠してくれます。
 だからタイトルが「きりのなかで」なのでしょう。
 
 お話の下地は「ロミオとジュリエット」とか「ウェストサイド物語」なのかも。

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