2021年02月06日

友だちのうちはどこ? イラン映画DVD

友だちのうちはどこ? イラン映画DVD 1987年製作

 映像を観ていて、60年ぐらい前の日本のいなかの風景を見るようでした。
 ニワトリがコケコッコーと鳴き、ネコがニャーニャー、イヌがワンワン、ヤギがメーェ、役牛(えきぎゅう)がいます。日本のへんぴな田舎(いなか)も、当時は、水道はなく、手押しポンプ式の井戸水を集落で共用していました。なつかしい。洗濯は、たらいと洗濯板をもって近所の奥さんたちが連れだって川で洗濯をしに行っていました。桃太郎とか一寸法師とかの民話を信じていたまだ小さかった自分のこども時代がありました。
 この映画の映像では、こどもがおとなたちに痛めつけられているように見えます。思い起こせば、昔のこどもは親に叩かれ、兄弟姉妹に叩かれ、学校へ行けば先生に叩かれ、先輩や級友に叩かれていました。努力と根性と忍耐が合言葉でした。踏まれても踏まれても、雑草のように立ち上がれと教えられました。そういう点では、今は、人が打たれ弱くなっているのかもしれません。叩かれて嫌な思いをしたから自分は叩きたくないという意思が働いて、親は子に優しくなりました。
 映画では、精神面でゆとりのない環境のなかでも「優しい心」が存在します。友だちを思う心であり、人生を渡っていって、静かに老いる心もちがあります。貧困生活があり、怠惰な労働があります。いまある環境のなかで生きる人間を描くという点で秀作です。
 主人公の男子は8歳だそうですが、学校の教室には女子児童の姿がありません。今はどうかわかりませんが、1987年の映画製作当時は、イランでは宗教的な理由で女子への教育は許されていなかったのでしょう。
 若いころに、むかしこどもには人権がなく、こどもは労働力としか見られていなかったと学びました。学校での勉強は、たてまえは本人の自立のためですが、本音(ほんね)は、国家や組織のために貢献する労働者の育成だと思ったこともあります。
 いろいろあったとしても、主人公のアハマッドのような優しい気持ちをもち続けましょうというメッセージが、ラストシーンの本にはさまれた押し花を友愛の象徴として表現されています。

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