2020年12月22日

ボッコちゃん 星新一

ボッコちゃん 星新一 新潮文庫

 50本のショートショートです。
 作者によるあとがきの日付は、昭和46年3月となっています。1971年です。
 1本が6ページほどの短文です。

01「悪魔」
 人間のもつ悪意と底なしの物欲を上手に表現してあります。

02「ボッコちゃん」
 美人のホステスロボットが、「ボッコちゃん」です。それほど精巧にはできていません。
 どうも、この作品集の作品には人間の優しさはないようです。冷徹なまでに人間の悪い心をみつめている作品群が始まった予感があります。

03「おーい でてこーい」
 穴ができたのですが、穴の底があるのかないのかわからないぐらい深いのです。
 人間はその穴にありとあらゆるものを捨てます。原子力発電の核廃棄物、伝染病実験後の動物の死体、犯罪者による証拠物件の投棄、人間にとって不都合なものばかりです。
 オチは、ちょっと理解できませんでした。

04「殺し屋ですのよ」
 うらみの相手を病死させる殺し屋が登場します。殺し屋は力の無さそうな女性です。とても殺し屋には見えません。
 話のつくりがうまい。
 詐欺です。

05「来訪者」
 宇宙人が地球を訪れました。地球人はとまどいます。
 ラストで、すごいなあ。
 多視眼的なものの見え方でした。

06「変な薬」
 こちらは同作者の「きまぐれロボット」で読みました。仮病を使って仕事をずる休みするときなどに使用する薬のことです。

07「月の光」
 15歳の混血少女をペット扱いする作品で少々気味が悪い。飼い主の男性が自動車事故で亡くなってしまいました。残された召使い70歳ぐらいの男性が困ります。怪談話のようでした。

08「包囲」
 駅のプラットホームで何者かが背中を押して殺されそうになります。被害者は押した相手を捕まえて問い詰めますが、依頼殺人であることがわかります。殺人を依頼した人間を探してたどっていくのですが……。ねずみ算方式です。ユーモラスです。そうとう人からうらまれている主人公男性でした。

09「ツキ計画」
 人間に動物がとりつく。憑依する(ひょういする)ことを利用した宇宙計画です。ひとりの男性記者が研究所で取材をしています。ネコ、ヒツジ、ゾウ、いろいろな動物が人間にとりついています。オチはあまりおもしろくなかった。ちょっと汚い話で終わりました。

10「暑さ」
 暑い夏の日のことです。もしかしたら自分はもうすぐなにかをやらかすかもしれないというおとなしそうな若い男が交番にやってきます。
 この本は昭和46年ころのものですが、その当時は交番勤務の警察官が襲われるということは聞いたことがなかったように思います。それが、平成、令和の時代になったら現実のものとなりました。
 物語では警察官は標的ではありませんでしたが、とてもおそろしい話でした。

11「約束」
 宇宙人とこどもたちが出会います。両者が約束を交わします。
 ありがちな話です。歳月が流れて、純粋だったこどもは、汚れた心をもつ中年男になっていました。

12「猫と鼠(ねずみ)」
 借金の取り立て人登場かと思ったら、ゆすりたかりの類(たぐい)でした。
 ある男が殺人をおかして、事件の目撃者にゆすられ、たかられます。
 話が二重らせん構造になっています。
 この本は、発想の宝庫です。

13「不眠症」
 交通事故に遭って、眠れなくなった男性がいます。
 ゆえに、昼は会社で働いて、夜は同じ会社で夜間警備員を始めました。ダブルワークで収入増です。
 オチはおもしろかった。

14「生活維持者」
 役所勤めの男性二人の仕事です。車で外回りです。
 どうもこの時代は世の中が平和らしい。もめごとなく快適に暮らせる環境ができあがっているそうです。
 平和を維持していくために「必要悪」がひとつあるそうです。それは、もはや「悪」ではないそうです。
 かなりシビアです。(非常に厳しく過酷)
 超管理社会で「死」の時期までものが決められています。物語は、最後の一歩手前のところまでがよかった。

15「悲しむべきこと」
 サンタクロースが困っています。いろいろ配りすぎて、物はなくなり、自分の財産も尽きてしまいました。だから、泥棒を始めることにしたそうです。
 人間のもつ悪意がふたつあって、ひとつは一般大衆がもつもの、そしてもうひとつは個人がもつものということがふくめられている作品でした。

16「年賀の客」
 生まれ変わりのお話です。昔お金の無心をしてきた男にお金を貸さなかったら、その男から生まれ変わってあなたに迷惑をかけてやると言われたお金持ちのご老人がいます。
 おもしろい。
 その彼の生まれ変わりは身内だったというお話です。

17「ねらわれた星」
 地球人が宇宙人の先進技術で攻撃されました。でも地球人は死にません。ほぅ。なるほど。

18「冬の蝶」
 調べた言葉として、「九曜星:インド天文学9個の天体。日・月・火・水・木・金・土+らご、けいと」
 未来の快適な家です。外は冬景色でも室内は春のようです。花が咲き、蝶がいます。ペットの猿も出てきます。
 ちょっと趣旨がわかりませんでした。

19「デラックスな金庫」
 全財産をつぎ込んで豪華な大金庫がつくられました。あるひ金庫目当ての泥棒が入ってきました。
 予想できたオチでした。
 調べた言葉として「ためつすがめつ(眺め):いろいろな方向からじっとよく見る」

20「鏡」
 13日の金曜日、鏡を使って「小さな悪魔」を捕まえた夫婦です。夫婦は悪魔をいじめぬきます。どういうわけか気弱な悪魔くんです。
 悲しい結末が待ち受けています。いじめでストレス解消をして自滅していく人のお話です。

21「誘拐」
 博士のこども、まだ1歳ぐらいのあかちゃんが誘拐されてしまいました。
 予想していたオチよりももっとすごいオチでした。びっくりしました。

22「親善キッス」
 地球からの親善使節団がチル惑星を親善訪問です。下心のある地球人メンバーは、チル惑星人の女性たちとキッスをしようと図り事をします。そのとおりになるのですが、思いがけない結果が待ち受けています。おもしろい。こういう発想があるのか。常識にとらわれているとこの発想にはたどり着けません。
 
23「マネー・エイジ」
 昭和46年(1971年)当時からみた未来社会です。
 なんでもお金でけりをつける社会です。(物事に結末をつける)
 賄賂社会でもあります。(権限がある者に金を渡して自分に有利に話をまとめる)

24「雄大な計画」
 ライバル企業から情報を得るための産業スパイとしての就職試験合格者がいます。彼がライバル企業で出世するのを待って、こちらの会社に呼び戻すプランです。
 そうはうまくはいかないわけで、作品としての出来はよくなかった。

25「人類愛」
 宇宙救助隊の隊員が遭難した人物を救助に向かいます。
 そのうち、その相手が、自分の妻の浮気相手であることが判明します。助けるのか?
 そりゃそうかもという結論でした。

26「ゆきとどいた生活」
 未来の家です。マジックハンドで次々と便利に事が運びます。
 薬品セットが完備されています。(現代のサプリメントを思い浮かべて、半世紀前の予想があたっていると思いました)
 人間の生活がマシーンに管理されています。通勤は、繭型のカプセルのような乗り物で、パイプ道路を通って会社まで行けます。(この点はリモートワークになりました)
 ラストは冷えています。すでに亡くなっているのに会社に届けられたT氏でした。

27「闇の眼(やみのめ)」
 最後はぞっとします。
 夫婦とこどもがいます。坊やがどうも変です。闇のなかでも物体を認識できる能力をもっています。だけど、坊やを外の出すことができません。フクロウのようなものかと思いながら読んでいました。
 鍵を握る文節として、「すぐれていることが不幸なのだよ。世の中ではひとと同じであることが幸福なんだ」

28「気前のいい家」
 強盗が入りました。
 ユーモアたっぷりの防犯装置でした。

29「追い越し」
 ドンファン:プレイボーイ、好色漢、女たらし
 彼女は新しい女性をと次々と変える男がいます。
 そういうことかと納得しました。
 ふられた女性が自殺したのですが、その彼女の彼への復讐でした。彼はおだぶつしました。

30「妖精」
 19歳の少女が家にいます。外は春です。
 ちいさな女の子の妖精が現れました。
 少女はあれこれと妖精におねだりします。
 ちょっとからぶりのような作品でした。

31「波状攻撃」
 火災保険サギです。保険金を偽装の火事で手に入れようという勧誘がありました。
 昭和46年(1971年)ころの発想です。現代にありがちな特殊詐欺です。

32「ある研究」
 読み終えて、「そうか、原始時代の設定だったのか」とはたと気づきました。

33「プレゼント」
 おそらく地球で核戦争が起こっています。そんな地球へ宇宙人がプレゼントを送りました。
 すごい発想でした。
 ガリバー旅行記を思い出しました。

34「肩の上の秘書」
 未来人は自分では相手にしゃべりません。未来人の全員の方の上にロボットのインコがのっていて、インコがしゃべるのです。人間のいやらしい本音をインコがあたりさわりのない言葉に変換して相手に話します。
 人間の心の裏表を表現してある作品です。

35「被害」
 調べた言葉として、「おめおめ引きかえす:恥ずべきことと知りながらそのまま」「言を左右にする(げんをさゆうにする):はっきりしたことを言わずにその場をごまかす」
 強盗が入りました。結論は、おもしろい。愉快でした。

36「なぞめいた女」
 警察に保護された記憶喪失の女性です。
 しっかりした女性でした。

37「キツツキ計画」
 これは別の本で読んだことがあります。「きまぐれロボット」でした。
 悪人は自分がした悪事を公表して救済を求めることができません。

38「診断」
 入院中の若い男が院長との面談を望んでいますが、これまでにも何度も面談を重ねています。本人の主張は叔父さんと院長が組んで、自分を強制的に精神病として入院させているというものです。叔父らの目的は、若い男が相続で得た多額の財産です。
 最後まで読みましたが半分ぐらいしか内容を理解できませんでした。

39「意気投合」
 探検隊が未知の星に到着します。その星の住人たちは歓迎してくれているようです。みな喜んでいます。
 そうはいかないのがショートショートです。盗みの話がけっこう多い題材のこの本です。

40「程度の問題」
 スパイとしてある国の首都に到着したエヌ氏です。
 彼は神経質すぎてスパイに向かないスパイでした。
 最後は笑いで終わりました。

41「愛用の時計」
 いいお話でした。時計の恩返しです。

42「特許の品」
 誤って地球に届いたなにかの設計図です。
 宇宙人が特許権を主張するのですが、ピンとこない作品でした。

43「おみやげ」
 まだ人類が誕生する前の時代に地球にやってきた宇宙人が、高度な人類になったときに発見して活用できるものを金属カプセルに入れて砂漠に置きます。
 永い歳月の後に、人類が進化して、宇宙人が置いていったカプセルを開くことができるようになるのですが、宇宙人の思いはかないません。
 反戦のメッセージがあるショートショートでした。

44「欲望の城」
 楽しい夢をみる男性がいます。自分の部屋に望むものがすべてそろっていく夢です。
 話の趣旨がよくわからないのですが、たぶん、登場する彼は、心の病気なのでしょう。

45「盗んだ書類」
 泥棒登場。薬の研究所です。
 平和な社会をもたらしてくれる薬でした。

46「よごれている本」
 「眼(め)」が空中に浮いています。
 魔法が関係しているようです。
 ふーむ。神秘的でした。

47「白い記憶」
 病院に急患のふたりが運び込まれました。お互いにぶつかったらしい。
 おざなり:いいかげん
 コメディでした。おもしろかった。

48「冬きたりなば」
 きたりなば:来たならば
 広告だらけの宇宙船が飛び続けています。
 発明や研究のためには多額のお金が必要です。
 なにか、江戸時代末期の黒船来訪を思い出します。貿易交渉です。
 うーむ。宇宙は規模が大きすぎる。

49「なぞの青年」
 都会にこどもたちが遊ぶ小公園がほしい。あわせて、経済的に困っている老人を助けてほしい。
 篤志家のような青年が現れます。(社会奉仕を実行する人)
 そういう結末か。妙に納得できました。

50「最後の地球人」
 世界人口が急増しているそうです。(作品がつくられた1970年頃、少子高齢化という言葉はまだ誕生していなかったようです)移住先は地球以外の星です。
 読み続けていくと、作品内では、高齢化は予想されています。
 少子化は、出産数の制限で実現されています。夫婦一組につきこどもひとりです。
 この一本はページ数の長い作品でした。映画を観たあとのような雰囲気です。「光あれ」古事記のような。

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