2020年12月21日

相棒 シーズン11 DVD

相棒 シーズン11 2012年10月(平成24年)-2013年3月(平成25年) DVD

「第一話 聖域」
 聖域とは、大使館です。治外法権なので、今回の場合、香港警察は手が出せません。
 杉下右京の新しい相棒が登場します。甲斐亨(かいとおる。成宮寛貴(なりみやひろき))さんという方ですが、放映当時はテレビをあまり見ていなかったので今回DVDで初めて見ました。知らない方です。なにかしらごたごたがあってすでに芸能界は引退されているようです。
 
 大使館内で起きた殺人事件を杉下右京が解決します。
 劇だから、音楽で支えます。
 「隠蔽(いんぺい。不都合を悪意ももって隠す)」の話ばかりで、犯行の動機がなかなか明らかにされませんでした。少々バランスを欠いた感がありました。
 
 権力者はなんでもできてしまうのかという疑問と反発が生まれる内容です。
 ワンマン君主は、最後は、つぶされるか、自滅します。

 捜査一課の三名、伊丹憲一(川原和久)さん、三浦信輔(大谷亮介)さん、芹沢慶二(山中崇史)さん、角田六郎(山西惇)さん、米沢守(六角精児)さんの五人はあいかわらずおもしろい。

 よかったセリフとして、
「嘘をつくということは、不都合な真実が隠されているということです」

 いろいろ話や演技をつくってあるのですが、つくりすぎの感じがしました。

 犯行の動機が、ありがちな男女の不倫ですが、それはちょっとつまらない動機で、そこが弱かった。あまり表には出てきませんが、権力者も権力者の夫人も同等のものをもちあわせているのでしょう。

「第二話 オークション」
 奇跡のジャズピアニストであるエド・クレメンスという人の両腕をかたどった作品を巡るお話でしたがあまりおもしろくありませんでした。
 ①石膏どりをした腕の模型みたいなものに何千万円もの価値があるとは思えませんでした。
 ②話の展開に深みがありませんでした。

 せりの部分はおもしろかった。スリルがあり、展開が読めませんでした。

「第三話 ゴールデンボーイ」
 プロボクシングの躍進する若手ボクサーをゴールデンボーイと呼び、殺人事件がからむ内容です。
 いちずにまっすぐ進もうとするものがあって、それを妨害するものがある。そこにドラマが生まれます。
 ボクシングトレーナーの良かったセリフとして、「だましてわるかったな」「ありがとう」
 八百長がらみのギャンブルがあります。スポーツ賭博(とばく)です。

 密室殺人事件のからくりを暴く杉下右京の推理が冴(さ)えています。

「第四話 バーター」
 大きな組織にしがみついて生活費を得るためのどろどろとした制度づくりです。
 天下り先のバーター(人の交換)とか、抜け道づくりの話です。警察組織の上層部にいる父親と杉下右京の相棒としている息子の対立が象徴です。
 杉下右京も甲斐亨もツッパリのふたりです。
 デジカメにGPS機能が付いたものがあるということは初めて知りました。
 会社が好きだった組織人は人殺しをしてまでも会社が好きでした。
 CA(キャビンアテンダント)との合コン話で笑いをとります。
 詭弁(きべん):弁論。道理に合わないことを無理やりこじつける。

「第五話 ID」
 「自分」という個性をお金で犯罪者に売ってしまう。別の名前の人間になって生きる。
 事件は、宝石店強盗事件。真相は、泥棒から泥棒する犯罪です。
 なりすましが話題です。
 昔、「国民総背番号制」に対する反発が強かったのに、現代はデジタル化推進のために、「マイナンバー」の利用が推進される時代に変わりました。なにもかもが正反対への価値観の変化にとまどうばかりです。

「第六話 交番巡査・甲斐亨」
 六年前のストーカー事件の被害者が殺されます。
 出所したストーカーが犯人ではドラマが成立しないので、はじめのあたりから夫が犯人だろうと思って観ます。
 杉下右京が、小さな気になることをつきとめると犯人が浮かび上がってきます。
 「生物学的に親子ではない」
 だからといって殺してはいけない。不倫とセットです。人間の泥臭い「悪」を杉下右京が暴きます(あばきます)。
 カイト君は、情に流されて、犯人を見誤るところでした。
 なにかつまらない。(今回の相方の個性設定)亀山薫がなつかしい。

「第七話 幽霊屋敷」
 不動産売買がらみの幽霊話と人が死んでいる事件でした。父親と娘の対立があります。心霊現象話は迷信なので、科学的に解明しつつも信じるかたよりもあります。
 扉を開けるときに、杉下右京がなかなか開けられなくて、甲斐亨が、「引くんですよ」と言う部分がなかなかおかしくて良かった。

「第八話 棋風」
 将棋名人とコンピューターとの戦いが素材です。
 研究者が事故死のようにして亡くなります。
 卑劣な盤外戦:対戦相手に私生活で心理的な混乱を与えて勝つ。
 からくりは、途中で気づけました。
 八百長、裏取引。
 お金のためにわざと負けるなんてできません。
 澄んだ気持ちでいること。最後の締めが良かった。

「第九話 森の中(前編)」「第十話 猛き祈り(たけきいのり)(後編)」
 集団による計画的な行為です。
 自殺したいという人を手助けすることは犯罪です。
 どうしてそんなに命をないがしろにしたいのか理解できません。命は重い。

 相方の甲斐亨が事件に巻き込まれて暴行を受けたらしく、意識が回復したあと、記憶喪失状態です。

 杉下右京の手法として、不自然なものを見つける。観察力。相手に嘘をつかせて、そこを突く。過去からの知識と体験をからませる。

 いろいろと疑問はあります。
 (土の中で竹筒1本で生きる)あんな竹ひとつで呼吸できるのだろうか。
 強姦未遂に遭ったという狂言に対しては、通報して警察を呼ぶだろと。

 自分を守ろうとする刑事部長のセリフの言い回しがおもしろい。

 調べた言葉として、
 猛き祈り:荒々しい。
 そしり:悪口、非難
 入定(にゅうじょう):永遠の瞑想に入っている。
 験を担ぐ(げんをかつぐ):以前に良い結果が出た時の行為を繰り返す。
 かろうと:お墓の納骨室

「第十一話 アリス お正月スペシャル」
 ずいぶんと芝居がかった構成でした。
 昔なにかで聞いたことがあるのですが、ヨーロッパの王族とか貴族とかは、権力を失ったあとは、庶民として生きることはできない。施す者(ものを与える者)として生まれて来たのに、施される側の人間(ものを与えられる者)にはなりたくない。プライドが許さない。だから命を絶つしかない。落ちぶれるわけにはいかない。今回のドラマはそういう内容でした。

 1955年(昭和30年)12月24日に女学生が山の中でいなくなりました。
 複数のことがからんで発生した事件と火災でした。真相は判明しません。
 57年が経過して、杉下右京が真相を突き止めます。

 警察庁誕生の裏話が出てきて、知られたくない秘密を隠蔽しようと公安部が動きます。犯罪を取り締まる警察庁組織が犯罪の上に成立しています。いつものように闘う杉下右京の姿があります。からんでいく警察用幹部職員の息子である相棒のカイトの姿もあります。

 調べた言葉として、
 あたら:残念なことに

「第十二話 オフレコ」
 杉下右京を除くいつものメンバーとCAさんがらみとの合コンのあと、伊丹刑事にひっついた女性記者が情報漏洩行為をしたのではないかという疑惑が生まれることと議員秘書の女性の死がからみあいます。
 嘘があって、嘘を必死で隠そうとする。

「第十三話 幸せの王子」
 童話がもとになった彫刻を扱った作品です。
 相続税とか贈与税の複雑さ扱いのむずかしさがあります。
 BGMでの気持ちの誘導がきつすぎたような。
 脳挫傷が死因の殺人事件でした。

「第十四話 バレンタイン計画」
 14話と15話は話をつくりすぎのような。
 後半10分で焦点をずらします。それまでの主要人物から離れたところの真犯人がいます。
 証拠がぽつりぽつりと出てくるのですが、観ていてもなかなかつながらないので、全容をこれまたなかなかつかめません。

 CD、レコードショップの店主が殺害されました。
 怨みとか(うらみ)憎しみとかは、一生消えない。復讐心は心の奥底の沈んでいて、もしチャンスがあれば、あとさきのことを考えずに実行してしまう。
 兄弟、親子での心のぶつかり合いがあります。

「第十五話 同窓会」
 俳優陣がなつかしい。志垣太郎さんとか、近藤正臣さんとか。
 最初は、中学のいじめが犯行の原因かと思わせますが違います。
 犯人に対して言った伊丹憲一巡査部長のセリフがよかった。「壊れているのかあんた」男女関係のもつれが犯行動機で、常軌を逸している犯人です。関係ない人まで巻き添えで殺そうとする爆弾犯でした。

「第十六話 シンデレラの靴」
 女優さんがマラソンランナーには見えませんでした。とかく、女優さんの体格で、一流スポーツ選手役はむずかしいかと。
 犯人ではないかと疑われるような言動をされるので、しかも殺人犯の疑いなので、不可解だったのですが、真犯人をかばってのことでした。
 男性監督が殺されてしまうのですが、殺されるのには殺されるだけの理由がありました。
 人事に口を出すとあとがこわい。
 偶然の数が多すぎたような。角田課長の発言とか(見たことがある。この男はやくざだ)選手の捻挫とか。

「第十七話 ビリー」
 意外な結末でお見事でした。質の高いドラマでした。
 田中圭さんの演技も良かった。
 フェイスグッド(フェイスブックの変化形)のお話です。結婚詐欺の犯罪に利用されます。
 なりすましがあります。
 杉下右京を活用する(道具のように)
 映像づくりを楽しむ。映像を楽しむ。

「第十八話 BIRTHDAY」
 12歳の誕生日に小学6年生の男児が事件に巻き込まれます。
 内容はけっこう深刻で、壮絶なシーンもあるのでこどもさんには見せにくい。
 女の子がひとり出てきます。かなり個性をつくってあります。観終えて、それはそれでいいという感想をもちました。

 びしょぬれでバイクにひかれて死んだ犯人です。されど、巻き添えにされた少年ともうひとりが見つかりません。

 違う出来事同士を対比させながら、また、発生時刻を変えながら同時進行させていく進行形式です。緊張感が高まります。救命のための祈りとBGMの讃美歌風の曲が流れます。

 杉下右京の「戻ってきなさい!」がよかった。命が尊い。

「最終話 酒壺のヘビ」
 力作でした。
 タイトルの昔話と悪役の石坂浩二さんとの関係の意味はよくわかりませんでしたが、石坂親子の対立構図はこのあとのシリーズで変な雰囲気にすすんでいくであろうことがただよっていました。
 外国大使館員がらみの国家的犯罪行為です。戦争の武器に使用する素材の情報をスパイが日本国の会社から外国へ運び出します。そこに殺人も絡んできます。そしてなんと、警察庁の幹部が犯人を国外逃亡させる手助けをするのですが、なんのおとがめも受けず、むしろ、ごほうびが出るそうです。あきれました。
 どこかの会社の元外国人社長の国外逃亡劇を思い出しました。似たような回が以前ありました。もしかしたら彼も観たのかも。ああ、日本語がわからないか。

 杉下右京さんのよかったセリフとして、
「ええ少しずつつながってきました」
「ぼくの中ではすでに事件になっているんですよ」
 大河内監察官とのやりとりで、
「非常に困難なこと」に対して、大河内さんが「非常に困難というよりも前代未聞です」
 ふたりの淡々とした会話のやりとりに緊張感があり正義感という熱意を感じました。
 
 人の弱みにつけこんで、カネで魂を買い取ろうとする悪魔がいます。不正がうまくいかなかった人間が精神的に追い詰められて本人の意思による自殺という形であと処理される事件がこれまでにも何度もありました。食い止めなければならないことです。

 終わり近くに最初のシーンに戻る。ドラマづくりのひとつの手法です。

 ラスト近く、犯人からの手紙あり。犯人は結婚詐欺師のような行為をしましたが、反対の理屈として、彼には本当の愛がありました。深いなあ。

 今年は、シーズン11まできて終わりです。また続きを少しずつゆっくりと観ていくことがこれからの楽しみです。

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