2020年12月06日

きまぐれロボット 星新一

きまぐれロボット 星新一・作 和田誠・絵

 31本のショートショートです。
 本の帯に小学校3年生、4年生向けとあります。
 本の帯には「大人になっても忘れない一生の宝物になる1冊」とキャッチコピーが書いてあります。親から子、子から孫へと読み継がれていく本です。

「新発明のマクラ」
 寝ている間に英語学習ができるマクラをエフ博士が発明しました。
 ふむ。おとなしい結末でした。

「試作品」
 おもしろい。
 強盗に入られたエム博士が何日も地下室に閉じ込められますが死にません。
 強盗に勝ったエム博士の知恵と発明でした。

「薬のききめ」
 忘れたことを思い出す薬の発明です。
 おもしろいオチです。ちょっとここには書けません。
 ただ、「いじめ」というものは、いじめられたほうはいつまでも忘れません。いじめたほうは忘れます。だから、このオチは、成立しにくい。

「悪魔」
 エス氏は、氷のはった湖で「悪魔」を釣り上げてしまいました。
 なるほど、金もうけに目がくらんで、もともこもなくした男の話です。人生を表現してあります。愉快です。

「災難」
 飼っているねずみたちが、お守り代わりになってくれる物語です。
 なーるほど。たいしたものです。自分のことばかりではなく、ねずみくんたちのことも考えてやらねばなりません。

「九官鳥作戦」
 ぽつんと一軒家のお話です。
 ひねってある結論でした。

「きまぐれロボット」
 お金持ちのエヌ氏が購入したロボットは優秀です。でも二日目で動かなくなりました。そのあと動くようになりましたが、動きがおかしくなることもあります。気まぐれです。
 それなりの理由がありました。

「博士とロボット」
 博士とロボットが旅に出て人の役に立つことをします。
 そういうことってあるのでしょう。
 人々は、樹木の幹や根っこを見ないで、枝葉の部分を見てありがたがることもあります。

「便利な草花」
 虫をつかまえる草花のお話です。
 生きている物を飼うのはたいへんです。それなりの世話が必要です。

「夜の事件」
 若い女の人の形をしたロボットと宇宙人とのやりとりです。
 漫才のようでした。よくできているお話です。
 読みながら、1960年代(昭和35年から昭和44年)の時代は、まだわからないことがたくさんあって、きっと今より夢があって、夢は大きかった。そう思いました。

「地球のみなさん」
 4月1日のエイプリルフールに本物の宇宙人が地球人の姿をして地球上に存在していたお話です。

「ラッパの音」
 落語のオチのようでした。
 いやなものや人を追い払うために使用するラッパのお話でした。

「おみやげ」
 人類が誕生する前に地球に来た宇宙人が置いていった銀色の卵のお話です。
 反戦のメッセージがこめられていた作品でした。

「夢のお告げ」
 キャンプのお話です。
 テントのなかで眠っていた時に武士の夢をみます。
 武士軍団の軍用金の隠し場所を書いた紙が埋められている夢で、キャンプをしていたふたりは、ついに紙を発見します。
 なるほど。過去と現在がつながりました。

「失敗」
 機械いじりで閉じこもりの生活をしているエス氏です。
 音を消す装置を開発、製作しています。
 そうか。悪いことはできないものです。

「目薬」
 ケイ氏は、悪い人間を見分けることができる目薬を発明しました。
 悪いことをする人は紫色に見えます。ただ、紫色の濃い、薄いがあります。
 教訓に効果ありでした。

「リオン」
 リスとライオンの間にできた子が「リオン」です。
 ブドウとメロンの新種づくりには失敗します。
 そういえば、人間の遺伝も、夫婦の性質のいいところどうしがくっつけばいいのに、たいていは、よくないところどうしがくっついたりもします。

「ボウシ」
 奇術師のもつ帽子からはいろいろなものが出てきます。
 それを見た宇宙人が驚いて帽子を欲しがります。
 宇宙人も勘違いをすることがあります。

「金色の海草」
 話を大きくふくらませていく手法です。
 よかった単語として「海のミツバチ」

「盗んだ書類」
 ここまで読んできて、登場人物として、博士、博士の友人、宇宙人、ロボット、どろぼうという、いつものメンバーがいます。題材として、発明、宇宙人、ロボット、薬です。それらを組み合わせていくつもの知恵と工夫をこらしたストーリーが創作されています。
 そして、悪人に悪事をさせない結末がひとつのパターンです。

「薬と夢」
 薬を飲むと夢に動物が登場します。
 発明がうまくいかずに停滞する結末もありでした。

「なぞのロボット」
 いつもエヌ博士といっしょにいるロボットです。なんのためのロボットなのかがわかりません。
 ロボットは、耳は聞こえるけれど、話すことはできません。
 種明かしをすると、日記をつけてくれるロボットでした。そういう発想があったのかと驚かされました。

「へんな薬」
 かぜを治す薬ではなくて、かぜをひいたように人から見える薬です。仮病で仕事などを休むときに使用します。
 ふと、さし絵のページをながめました。喜怒哀楽の感情のなさそうな人物絵が特徴です。人間のロボットのようです。
 オオカミ少年の話といっしょで、本当の病気の時に仮病だと判断されて命が危ないことになります。

「サーカスの秘密」
 動物に電波を使って催眠術をかける装置です。
 人間にもききます。

「鳥の歌」
 鳥のロボットを本物の鳥の先生にしたてて、ハトにハトポッポの歌を教えさせます。
 同じようなゴールをめざすのだけれど、方法は複数あるというお話でした。

「火の用心」
 ロボットの鳥は、火事を発見することができますが、誤作動も多い。家事ではない熱源に反応してしまいます。
 改良を重ねた結果、ロボットの鳥はいなくなってしまいました。
 そうか。いろんな発明があります。

「スピード時代」
 粉を溶かした水を与えると植物の成長が急速に始まるのです。
 最初は良かったのですが、いいことばかりではありませんでした。

「キツツキ計画」
 悪人のアジト(棲家すみか)があります。
 悪人たちはキツツキを使った悪事を計画します。
 この本にある物語全体に「勧善懲悪(よいことをする。わるいことをこらしめる)」の精神があります。

「ユキコちゃんのしかえし」
 いじめの話です。ユキコちゃんがいじめる子にしかえしをします。
 「いじめ」を嫌う愛情ある一作でした。

「ふしぎな放送」
 意外性のある終わり方でした。

「ネコ」
 トランプカードの模様をした宇宙人の訪問がありました。カード星人です。
 ペットであるネコの本音が出ていておもしろかった。案外飼われているのは人間のほうなのかもというお話でした。

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