2020年10月22日

となりのせきのますだくん・ますだくんのランドセル武田美穂

「となりのせきのますだくん」「ますだくんのランドセル」 武田美穂 作・絵 ポプラ社

 「となりのせきのますだくん」だけ読むと気持ちが沈みます。「ますだくんのランドセル」と合わせて読むと心が晴れやかになります。二冊ワンセットで読んだ方がよいマンガ絵本です。

「となりのせきのますだくん」
 見る人によっては、「ますだくん」が気持ち悪い。もともと赤色と緑色を対比させる派手な絵です。にぎやかであるというメリットの反面、強烈すぎるというデメリットがあります。そこに、カエルのような、恐竜のような、ますだくんの姿があります。絵を見て、こわがるこどもさんもいることでしょう。
 緑色のますだくんは見るからに、「いじめっこ」です。女の子を困らせている表紙の絵です。机に線をひいて、「こっちからでたら、ぶつからな。」と女の子をおどしています。
 ページをめくると、「あたしきょう がっこうへいけない きがする。」から始まります。登校拒否かと思わせてくれます。でも、女の子は小学校へ行きます。
 学校にいきたくない気持ちが女の子の表情にありありと表れています。
 女の子の名前は、「みほちゃん」です。
 教室で、みほちゃんのとなりのせきのますだくんは、気に入らないことがあるとイスをけります。暴力です。
 どうも、みほちゃんは勉強も体育もにがてなようすです。
 給食を食べるのもにがてです。
 みほちゃんは、いいとこなしです。
 なんだかかわいそうなみほちゃんです。
 みほちゃんはともだちがいなくてひとりぼっちのようです。
 けっきょく、みほちゃんの相手をしてくれるのは、ますだくんしかいないし、ますだくんは、みほちゃんが好きなのです。好きだからちょっかいを出すのです。たまには、みほちゃんが、ますだくんをこうげきしたほうがいい。
 読む前の期待は裏切られました。消化不良な読後感でした。

「ますだくんのランドセル」
 1年1組のますだけんいちくんです。ますだくんが、今度は、人間の姿で登場しました。ますだくんのうしろには、前作で出ていた緑色のカエル恐竜みたいなものが立っています。
 ますだくんが、ふつうの男の子の姿かたちをしているので、ほっとしました。
 前作とセットで読まないと判断が不公平になってしまいます。
 タイトルは、「ますだくんの赤いランドセル」のほうが意味が通って良かった。
 「ぼくのなまえは ますだけんいちです。5さいです。」から始まります。6年生の姉ひとり、4年生と3年生の兄ふたり、さらに1さい半ぐらいの妹えりこちゃんがいる5人きょうだいです。
 ますだくんが小学1年生にあがります。ランドセルは中学生になるおねえちゃんのおさがりです。だから赤いランドセルです。でも、ますだくんが、赤色がいい、おねえちゃんが使っていたランドセルがいいと主張したのです。
 内容はちょっと古いかな。最近は広場で野球をしている小学生は見かけなくなりました。絵の中の世界は、昭和時代の出来事です。
 赤いランドセルをしょって小学校に行く、ますだけんいちくんです。そして、前作のみほちゃんは、青いランドセルをしょっているのです。(青色は、ママの好みだそうです。みほちゃん本人は青色ランドセルをいやがっています)みほちゃんは、小学生になったのに、「ようちえんにいきたいよー」と言って泣いています。きょうだいがいないのでしょうか。みほちゃんは、人にもまれていないので、弱虫です。
 ますだくんは、泣き虫のみほちゃんを強くリードします。「泣くな!」と叱りながら励まします。
 二冊合わせて読み終えて、救われる気持ちになりました。よかった。

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