2020年07月07日
相棒 シーズン9 2010年10月-2011年3月 DVD
相棒 シーズン9 2010年10月(平成22年)-2011年3月(平成23年) DVD
「第一話 顔のない男」「第二話 顔のない男 贖罪」
二話連続もので、内容は、連続殺人事件です。
組織の不正、不祥事を問うもので、むずかしい口語表現が多く、内容は固くて深刻なものとなっていました。争いは壮絶です。
正義のためといいながら悪事を働く。理屈で正常な意識をおおいかくす。
現実にはできそうもない犯行ですが、後半に向けてきちっと仕上げてある作品でした。
「第三話 最後のアトリエ」
絵画とか画家がからんだ殺人事件でした。ただ、破れた絵に、いくら本人の作品だからといっても価値があるとは思えない設定でした。
米倉斉加年(よねくら・まさかねさん 2014年80歳没の姿がなつかしかった)が売れない画家で登場しました。
若い頃に病気で亡くなった優秀な画家との友情物語でした。
夭折:ようせつ。若くして亡くなること。
関係が悪いと思われていた男子二人は、実は、お互いを支え合って励まし合う親友だった。
「第四話 過渡期」
時効撤廃の話です。この年(2010年)の4月から殺人の時効が撤廃されて、逃げ得(にげとく)がなくなりました。それによって、発生した事案となっていますが、内容は、警察内部の不祥事(証拠品現金の横領)がからんでいます。
ここまで観てきて、なにかしら、これまでのシリーズとは違って、内容の水準が低下しているような感じがします。長い期間放映されている番組なので、波があるのでしょう。
「第五話 運命の女性」
すりの服役後出所した女性が更生したいのですがうまくいかない苦労話です。彼女が警察職員の運命の人(恋愛の相手)となる設定はちょっと苦しい。
話はややこしい。ややこしいから犯罪が成立しやすいということはあると考えました。
「第六話 暴発」
相棒にしては珍しく、杉下右京が正義を貫けませんでした。残念です。周囲が邪魔をします。その点が、このシリーズにおける脚本の力の弱さを表しています。ドラマなのですから、視聴者に夢をみさせてほしい。
杉下右京は薬物取締り犯人逮捕の現場で軽やかな体の動きを見せます。警察職員は、基本的に、格闘技に強くなければならない。
厚生労働省のマトリ(麻薬取締部)との対立があります。どちらが手柄をあげるか。警視庁刑事部内でも殺人担当の捜査一課と薬物取り締まり担当課での担当争いがあります。お互いに競い合うのはいいのですが、全体で見るとほころびがあります。
「事業仕分け」という言葉がなつかしかった。
杉下右京の姿勢にあるように、まずは、公務員が率先してルールを守ってほしい。
杉下右京はすごい人です。良かったセリフとして、「マトリを説得します」「本心でそうおっしゃってますか」「胸を張って、おっしゃってますか」
仕事上の不祥事を隠蔽(いんぺい。隠す)するために、自分の命を犠牲にするのは、働く人間が選択することではありません。
「第七話 9時から10時まで」
詐欺の話です。
中国製の古いお皿が、2000万円です。興味のない人にとっては、目の玉が飛び出る金額です。「骨董道楽」という言葉に説得力がありました。
ふたつのシーンが、並行して、進行していきます。杉下右京が、銃殺現場にいて、神戸尊(かんべたける)が、骨董品の商談場所である静かな酒場にいます。
チョコレートの銀紙でつくったナイフのトリックが見事でした。
「第8話 ボーダーライン」
力が入った社会制度や家族のありかたをうらむ作品でした。ゆえに、後味の悪さが残りました。極端にいっぽうにぎゅっと押し込むようにつくられています。どちらかといえば、犠牲者の反対側にいる人間の数のほうが多い。死んだ本人には、責任がないというような描き方でした。不運な環境にあっても忍耐と努力をしている人はいくらでもいます。「時代」のせいにしないでほしい。
刃物で切られて、追い詰められて、ビルから転落した36歳の男性が発見されます。彼は、社会や家族や恋人をうらんでいました。
うらみや復讐が前面に強く押し出されている作品で、観る方は、引く思いでした。作品としてのバランスが崩れています。
「第9話 予兆」
最初に特典映像を観ました。
〇2010年10月16日 俳優の集まるレストラン
番組や映画の宣伝目的なのでしょう。話題の材料は、パスタのイタリアンとニョキ(だんご状のパスタ)でした。
水谷豊さんは神経質な感じがしました。ポットを高く持ち上げて紅茶をカップに入れるときに位置を間違えて手をやけどしたという話が興味深かった。ポットの中身は水だと思っていました。演技ですから。それから、水谷豊さんはごはんを食べるときに、皿から目線をはずので、おかずを皿からぼろぼろこぼすのが意外でした。
及川光博さんは、人間の大きな人に見えました。水谷さんが、「(人と人との)壁なし人間」と話をされています。
〇2010年12月23日 徹子の部屋
及川光博さんが、ドラマの中とは違って別の人に見えます。顔が濃くてシャープです。歌舞伎役者みたい。メイクの関係でしょう。
楽しいひとときでした。
水谷豊さんのおかげで、おおぜいの人たちが食べていける状況がわかるロケ地でのびっくり誕生会の様子でした。この世界でやっていくためには、「運」が必要というふたりのお話に重要性を感じました。
さて、第九話「予兆」の感想です。一話完結ではなく、ひとつ事件を解決したあと、次の回で話が大きく発展していくようです。(翌日から公開された映画「警視庁占拠! 特命係の一番長い夜」につながったのかどうか。いまはわかりません)
前振りには、警察組織のスキャンダル、不祥事、隠蔽、警察庁(国)と警視庁(都)のトップ同士が対立する権力闘争など、大きな事柄が出てきますが、今回の話の事件は、軽微な扱いで決着が着きます。拍子抜けしました。前半、あんなに濃厚だったのに、浮気と嫉妬扱いで片付きました。
隠蔽(いんぺい)のための公文書の違法な処分はなんだか現実と重なります。ドラマが、10年後ぐらいの未来を予想しています。権力者というのは、ふたつの顔をもつ悪人に見えます。
良かった言葉として、「(今は)コップの中の嵐」、調べた言葉として、「無辜な人間:むこ。罪のない人間」
「第十話 聖戦 元旦スペシャル」
交通事故の被害者として事故死した息子の復讐をするために加害者男性を爆死させた母親の話です。復讐劇です。『母親の愛情』を扱った作品として仕上げてあります。この母親以外にも『母親』はいます。
交通事故の加害者男性は服役して罪を償いましたが、被害者の母親は許してくれません。杉下右京が、『復讐の連鎖は断ち切る』と主張します。
学校に行けないこともあったうまくいかない子育てのなかで、ようやくおとなに育てた息子が、一瞬の交通事故で被害者として死んでしまいます。「(就職が決まって)今まで、ごめんね。かあさん」「ありがとう」のやりとりが事前にありました。
何年前に何があったというパターンで、映像が変わっていきます。
息子がいなくなった夫婦ふたりの家庭は荒れていて暗い。そして、家を出て行った夫も病死します。こうなったのはだれのせいか。そして、母親は、偶然、働いていたファミレスで、子連れで幸せそうな交通事故の加害者家族に出くわしたのです。母親の憎悪と復讐心が燃え上がります。
杉下右京・神戸尊VS犯罪モンスターと化した母親の図式になってきました。おとなの化かしあいが続きます。
交通死亡事故の深刻さが浮き彫りにされています。
犯行後、母親は自分が犯した犯行を他人となる男がしでかしたという工作をします。その男にも母親がいます。被害者の妻は妻で、母親が犯人と確信して刃物で母親を刺殺しようとします。緊張感が高まります。
南果歩さんが熱演でした。復讐するための執念がすごい。家族に危害を与えるぞというような脅迫をして協力者に自分のいうことをきかせます。相手の弱みを握っておどします。
ここまできて、『犯罪のモンスター』をつくるのが、ストーリーづくりのひとつの手法だと気づきました。
地震のシーンがあります。この番組の放映後の3月11日に東日本大震災が起きています。まるで、地震を予知したみたいで不気味です。
「ずいぶん卑怯ですね」に、交通事故死した息子の母親役をしている南果歩さんが、「戦争ですから」
あとでわかるのですが、南果歩さんが泣いているシーンに見えていたのは、実は笑っていた。(すごいなあ)
余韻が良かった。杉下右京さんがきれいにまとめてくれました。
「第十一話 死にすぎた男」
特典映像をさきに観ました。
〇2011年1月9日 徹子の部屋
前半が役の立場として会話して、後半が、俳優の立場として会話するという二段方式でした。
ゲストは、伊丹憲一(川原和久)さん、三浦信輔(大谷亮介)さん、芹沢慶二(山中崇)さん、米沢守(六角精児)さんというふうに、前半は役名、後半は、俳優名で紹介がありました。
途中で、杉下右京(水谷豊)さんと神戸尊(及川光博)さんも飛び入りしたので驚きました。そして、笑いました。
〇2011年1月9日 「はい! テレビ朝日です」 早川洋社長と水谷豊氏の対談
テレビ局の社長と俳優の対談は珍しいと思いながら観ました。
杉下右京が体を震わせながら、容疑者に、正論でぶつかっていくときのシーンが好きだとおっしゃられたところに共感します。
番組が長続きしている要因をゼネラルプロデューサーの松本基弘さんが分析してくださいました。振れ幅が広い。杉下右京がどんなことでも飲み込む。水谷豊(俳優)さん、輿水泰弘(脚本こしみずやすひろ)さん、泉聖治(監督)さんの三人の天才によるトライアングルという表現がわかりやすかった。アイデアは、思いついたらすぐ出す。及川光博さんが言われたという「命がけの行き当たりばったり」も的を射ていました。出し渋らず、すぐ使うのがコツと受け止めました。
「死にすぎた男」
失踪宣告を受けて死んだと思っていた男が生きていたという話でしたが、なにかしらさえませんでした。
千葉県房総半島に海釣りに行った市役所職員2名が海に転落して行方不明になります。そのうちのひとりが6年後ぐらいに姿を現します。市役所での不祥事とか、隠蔽工作がからんできます。
良かったセリフは、神戸尊の「あなたにとってもメリットがあった」
指紋を調べる前に、「指紋を調べれば(あなたの指紋だと)わかります」というくだりには納得しにくかった。相棒なら指紋を調べてから容疑者に当たるはずです。
「第十二話 招かれざる客」
なぞとき話でした。
最後のオチが良かった。笑いました。(逮捕令状が実は神戸尊の健康診断の検査結果一覧表だった)
品川運河で、男性の死体が発見されます。事故死かと思われましたが他殺だと判明しました。
遺産相続とか、雇われ人とか、裏金とか、脱税とか、資産家も大変です。
この年の特徴らしく、時効の話がまた出ました。
「第十三話 通報者」
生活保護を受給している母子家庭の中学三年生が主役です。彼が、殺人事件の目撃者であり、警察への通報者です。
なかなかよくできた話でした。後半、そういうからくりかと感心しました。すっかり中学生の彼にだまされてしまいました。
おとなというのは、お金と人から良く見られるためならなんでもするのかと、おとなへの嫌悪感がつのる作品に仕上がりました。
「第十四話 右京のスーツ」
予想ができない展開でした。融資するかしないかの金がらみの話があって、刑務所の服役歴があって、出所者の社会復帰のむずかしさがありました。それから、男性側に職業における男女差別意識があることの確認話が付け足されます。
脅迫したり、恐喝したりする悪人は殺されてもしかたがないのか。殺される原因をつくったのは、被害者自身でした。
「第十五話 もがり笛」
タイトルにある「もがり笛」は俳句の季語だそうで、寒い冬に強風でたとえば、電線が震えて揺れて、笛が鳴るような音がすることをいいますというような映像が流れました。ドラマの内容は、けっこう重い。気持ちが沈みます。第十四話に続いて、服役囚のお話です。かつ、復讐劇でした。被害者遺族が、医療刑務所内で、加害者の服役囚に復讐しようとしますが、話はそう単純ではなく、困難を伴います。この世は地獄です。
「第十六話 監察対象・杉下右京」
いつもとは違う雰囲気ですが、ラストはいつもの決着パターンでした。
女性の監察官がストーリーを引っ張っていきますが、最初から、彼女の様子が変です。演技としてどうかとも途中思ったのですが、これはこれでいいのでしょう。ロボット的で、シーンから浮いた感じの言動です。ドラマの傍観者の視点から描いてありました。ちょっと重苦しくて見づらかった。
本来、逮捕する立場の人間が悪事を働いて容疑者の対象になる。ドラマの世界を飛び出して、いまは、現実の日本の社会でそういうことが起きています。このシリーズは、10年前のものですが、10年後の日本を予言していたのかも。なにも信じられないし、信じてはいけない。
「第十七話 陣川警部補の活躍」
お人よしの陣川さんの存在なくしては、成立しないストーリーでした。役者さんご本人の実生活でのドジも重なって、ちょっと変な雰囲気で鑑賞しました。万引き青年や女性にいいように利用された陣川さんでした。
「最終話 亡霊 <スペシャル>」
東京拘置所から死刑囚が国外逃亡するという流れで、まるで、10年ぐらいさきの未来に起きるカルロス・ゴーン氏の国外逃亡劇を予期するかのような内容でした。
死刑囚で東京拘置所に収監されていたテロリスト赤いカナリアグループの幹部本田篤人(ほんだ・あつんど)が超法規的措置により死刑を執行したとみせかけて、秘密裏に釈放されてしまいます。テログループと政府との取引により、炭そ菌(3gで3000万人の致死量らしい)と引き換えの釈放です。釈放後は外交官と国外に逃亡するという計画です。
本田篤人(ほんだ・あつんど)が、生まれてから交流もない娘に会いたがるとは思えません。娘のほうも同様です。嘘の死亡届が出されたわけですが、人を間違えて死亡届が出されるということはあると思います。自然災害の犠牲者とか事故の犠牲者とか、戦争とか。生きている証拠がそろえば、戸籍は訂正できる気がします。なにせ、本人は現実に生きているのですから。
そんなわけで、疑問をもったわけですが、内容はおもしろい。緊張感が広がる展開で、しっかり観ました。
総理補佐官(安全保障担当)片山雛子衆議院議員は、嘘を演出する演技ができる人で、いい人ではありません。『国民のため』というのは口先だけです。
小野田警察庁官房長が亡くなったことは知りませんでした。映画のほうで亡くなったのかもしれません。こんど確認します。
殺人現場の第一発見者がいつものふたりなのは、ひとつの定型的パターンです。わかりやすいので気に入っています。
内村莞爾刑事部長(うちむら・かんじ)も悪い人です。憎たらしいのですが、ドラマでは必要な悪役です。
味方の顔をしている人間が実は敵です。親切な人間は疑ったほうがいい。
越えてはいけない一線を超えた状態をつくったドラマです。さすがです。
良かったセリフとして、杉下右京に対して、「なんでもおみとおし(なのですね)」それから、悪役のほうなのですが、公安調査庁の三反園(みたぞの)氏の「テロリストとは交渉しない」アメリカ合衆国元大統領補佐官のボルトンさんみたいでした。
調べたセリフとして、「機を見るに敏:チャンスをみつけたらすばやくつかむ」
もうひとつ良かったセリフとして、角田六郎課長の「(杉下右京が的確で論理的な発言をしたあとに、片山雛子衆議院議員に対して)美人なのにねぇ、残念だねぇ」
〇3月9日に最終話が放映されて、3月11日に東日本大震災が起こっています。あれからもうすぐ10年がたちますが、そろそろ次の大地震がきそうで怖い。
「映画 2010年12月23日公開 警視庁占拠! 特命係の一番長い夜」
小野田官房長官がこの映画の中で亡くなったらしい。第九話「予兆」に続いていた内容のようです。借りてきたので、これから観てみます。
警察庁小野田官房長官(岸部一徳さん)が殺害された理由がわかりました。懲戒免職になった幹部職員の報復ですが、都合のいいときだけ利用して、いらなくなったら斬り捨てるというような人事をする上司はうらまれます。また、学歴差別はかなりうらまれます。
冒頭の船内での拳銃を使った撃ち合いシーンは疑問でした。あのような狭いところで撃ち合いはしません。
都会の夜景の映像がきれいでした。いつか東京にあるどこかの高層の建物から見てみたい。
警視庁の11階会議室で、警視総監以下部長職幹部が人質になるという現実にはあり得ない設定ですが、ほぼいつものメンバーの範囲内での演技なので、おとなしい雰囲気でした。
映像の写り具合のためか、やはり、映画よりも明瞭に見えるテレビのほうが、真に迫る迫力があります。
警察内部の不祥事隠蔽工作、幹部職員がつるんだ出世競争、派閥間闘争と見苦しいものがあるのですが、大きな組織では秘密裏にあることなのでしょう。このドラマではいつも公安部が悪者にされます。公安部の存続と予算の獲得が今回の動機にありました。
悪魔の取引が見えます。
されど、もみ消しを許さないのが、杉下右京です。このままでは終わらせません。杉下右京は、小野田官房長官の友だちではありません。そこが、このドラマ設定のいいところでした。小野田官房長官はいつも立場でものをいう人でした。心の内では、杉下右京のようになりたいと願っていたのが本心だったと思いたい。ご冥福を祈りつつ、小野田官房長官という後ろ盾を失くした杉下右京という設定で、このドラマは、シーズン10からどうころがしていくのかが楽しみです。
良かったセリフなどとして、
「見損ないました」
「くやしいというより、あやしい」
逆の手法。女性警察職員は、被害者ではなく、共犯者だった。そして、最後は、主犯になろうとした。
「(杉下右京が刃物で刺された小野田官房長官を抱えながら)かんぼうちょうー(と叫ぶ)」
劇中で、警察庁が警察省に格上げになって、トップが大臣(政治家)になるほうがよろしいというような提案があるのですが、現実には、政治家の法令違反という不祥事が続いている昨今であり、やめたほうがいいのでしょう。
すごい内容でした。
「第一話 顔のない男」「第二話 顔のない男 贖罪」
二話連続もので、内容は、連続殺人事件です。
組織の不正、不祥事を問うもので、むずかしい口語表現が多く、内容は固くて深刻なものとなっていました。争いは壮絶です。
正義のためといいながら悪事を働く。理屈で正常な意識をおおいかくす。
現実にはできそうもない犯行ですが、後半に向けてきちっと仕上げてある作品でした。
「第三話 最後のアトリエ」
絵画とか画家がからんだ殺人事件でした。ただ、破れた絵に、いくら本人の作品だからといっても価値があるとは思えない設定でした。
米倉斉加年(よねくら・まさかねさん 2014年80歳没の姿がなつかしかった)が売れない画家で登場しました。
若い頃に病気で亡くなった優秀な画家との友情物語でした。
夭折:ようせつ。若くして亡くなること。
関係が悪いと思われていた男子二人は、実は、お互いを支え合って励まし合う親友だった。
「第四話 過渡期」
時効撤廃の話です。この年(2010年)の4月から殺人の時効が撤廃されて、逃げ得(にげとく)がなくなりました。それによって、発生した事案となっていますが、内容は、警察内部の不祥事(証拠品現金の横領)がからんでいます。
ここまで観てきて、なにかしら、これまでのシリーズとは違って、内容の水準が低下しているような感じがします。長い期間放映されている番組なので、波があるのでしょう。
「第五話 運命の女性」
すりの服役後出所した女性が更生したいのですがうまくいかない苦労話です。彼女が警察職員の運命の人(恋愛の相手)となる設定はちょっと苦しい。
話はややこしい。ややこしいから犯罪が成立しやすいということはあると考えました。
「第六話 暴発」
相棒にしては珍しく、杉下右京が正義を貫けませんでした。残念です。周囲が邪魔をします。その点が、このシリーズにおける脚本の力の弱さを表しています。ドラマなのですから、視聴者に夢をみさせてほしい。
杉下右京は薬物取締り犯人逮捕の現場で軽やかな体の動きを見せます。警察職員は、基本的に、格闘技に強くなければならない。
厚生労働省のマトリ(麻薬取締部)との対立があります。どちらが手柄をあげるか。警視庁刑事部内でも殺人担当の捜査一課と薬物取り締まり担当課での担当争いがあります。お互いに競い合うのはいいのですが、全体で見るとほころびがあります。
「事業仕分け」という言葉がなつかしかった。
杉下右京の姿勢にあるように、まずは、公務員が率先してルールを守ってほしい。
杉下右京はすごい人です。良かったセリフとして、「マトリを説得します」「本心でそうおっしゃってますか」「胸を張って、おっしゃってますか」
仕事上の不祥事を隠蔽(いんぺい。隠す)するために、自分の命を犠牲にするのは、働く人間が選択することではありません。
「第七話 9時から10時まで」
詐欺の話です。
中国製の古いお皿が、2000万円です。興味のない人にとっては、目の玉が飛び出る金額です。「骨董道楽」という言葉に説得力がありました。
ふたつのシーンが、並行して、進行していきます。杉下右京が、銃殺現場にいて、神戸尊(かんべたける)が、骨董品の商談場所である静かな酒場にいます。
チョコレートの銀紙でつくったナイフのトリックが見事でした。
「第8話 ボーダーライン」
力が入った社会制度や家族のありかたをうらむ作品でした。ゆえに、後味の悪さが残りました。極端にいっぽうにぎゅっと押し込むようにつくられています。どちらかといえば、犠牲者の反対側にいる人間の数のほうが多い。死んだ本人には、責任がないというような描き方でした。不運な環境にあっても忍耐と努力をしている人はいくらでもいます。「時代」のせいにしないでほしい。
刃物で切られて、追い詰められて、ビルから転落した36歳の男性が発見されます。彼は、社会や家族や恋人をうらんでいました。
うらみや復讐が前面に強く押し出されている作品で、観る方は、引く思いでした。作品としてのバランスが崩れています。
「第9話 予兆」
最初に特典映像を観ました。
〇2010年10月16日 俳優の集まるレストラン
番組や映画の宣伝目的なのでしょう。話題の材料は、パスタのイタリアンとニョキ(だんご状のパスタ)でした。
水谷豊さんは神経質な感じがしました。ポットを高く持ち上げて紅茶をカップに入れるときに位置を間違えて手をやけどしたという話が興味深かった。ポットの中身は水だと思っていました。演技ですから。それから、水谷豊さんはごはんを食べるときに、皿から目線をはずので、おかずを皿からぼろぼろこぼすのが意外でした。
及川光博さんは、人間の大きな人に見えました。水谷さんが、「(人と人との)壁なし人間」と話をされています。
〇2010年12月23日 徹子の部屋
及川光博さんが、ドラマの中とは違って別の人に見えます。顔が濃くてシャープです。歌舞伎役者みたい。メイクの関係でしょう。
楽しいひとときでした。
水谷豊さんのおかげで、おおぜいの人たちが食べていける状況がわかるロケ地でのびっくり誕生会の様子でした。この世界でやっていくためには、「運」が必要というふたりのお話に重要性を感じました。
さて、第九話「予兆」の感想です。一話完結ではなく、ひとつ事件を解決したあと、次の回で話が大きく発展していくようです。(翌日から公開された映画「警視庁占拠! 特命係の一番長い夜」につながったのかどうか。いまはわかりません)
前振りには、警察組織のスキャンダル、不祥事、隠蔽、警察庁(国)と警視庁(都)のトップ同士が対立する権力闘争など、大きな事柄が出てきますが、今回の話の事件は、軽微な扱いで決着が着きます。拍子抜けしました。前半、あんなに濃厚だったのに、浮気と嫉妬扱いで片付きました。
隠蔽(いんぺい)のための公文書の違法な処分はなんだか現実と重なります。ドラマが、10年後ぐらいの未来を予想しています。権力者というのは、ふたつの顔をもつ悪人に見えます。
良かった言葉として、「(今は)コップの中の嵐」、調べた言葉として、「無辜な人間:むこ。罪のない人間」
「第十話 聖戦 元旦スペシャル」
交通事故の被害者として事故死した息子の復讐をするために加害者男性を爆死させた母親の話です。復讐劇です。『母親の愛情』を扱った作品として仕上げてあります。この母親以外にも『母親』はいます。
交通事故の加害者男性は服役して罪を償いましたが、被害者の母親は許してくれません。杉下右京が、『復讐の連鎖は断ち切る』と主張します。
学校に行けないこともあったうまくいかない子育てのなかで、ようやくおとなに育てた息子が、一瞬の交通事故で被害者として死んでしまいます。「(就職が決まって)今まで、ごめんね。かあさん」「ありがとう」のやりとりが事前にありました。
何年前に何があったというパターンで、映像が変わっていきます。
息子がいなくなった夫婦ふたりの家庭は荒れていて暗い。そして、家を出て行った夫も病死します。こうなったのはだれのせいか。そして、母親は、偶然、働いていたファミレスで、子連れで幸せそうな交通事故の加害者家族に出くわしたのです。母親の憎悪と復讐心が燃え上がります。
杉下右京・神戸尊VS犯罪モンスターと化した母親の図式になってきました。おとなの化かしあいが続きます。
交通死亡事故の深刻さが浮き彫りにされています。
犯行後、母親は自分が犯した犯行を他人となる男がしでかしたという工作をします。その男にも母親がいます。被害者の妻は妻で、母親が犯人と確信して刃物で母親を刺殺しようとします。緊張感が高まります。
南果歩さんが熱演でした。復讐するための執念がすごい。家族に危害を与えるぞというような脅迫をして協力者に自分のいうことをきかせます。相手の弱みを握っておどします。
ここまできて、『犯罪のモンスター』をつくるのが、ストーリーづくりのひとつの手法だと気づきました。
地震のシーンがあります。この番組の放映後の3月11日に東日本大震災が起きています。まるで、地震を予知したみたいで不気味です。
「ずいぶん卑怯ですね」に、交通事故死した息子の母親役をしている南果歩さんが、「戦争ですから」
あとでわかるのですが、南果歩さんが泣いているシーンに見えていたのは、実は笑っていた。(すごいなあ)
余韻が良かった。杉下右京さんがきれいにまとめてくれました。
「第十一話 死にすぎた男」
特典映像をさきに観ました。
〇2011年1月9日 徹子の部屋
前半が役の立場として会話して、後半が、俳優の立場として会話するという二段方式でした。
ゲストは、伊丹憲一(川原和久)さん、三浦信輔(大谷亮介)さん、芹沢慶二(山中崇)さん、米沢守(六角精児)さんというふうに、前半は役名、後半は、俳優名で紹介がありました。
途中で、杉下右京(水谷豊)さんと神戸尊(及川光博)さんも飛び入りしたので驚きました。そして、笑いました。
〇2011年1月9日 「はい! テレビ朝日です」 早川洋社長と水谷豊氏の対談
テレビ局の社長と俳優の対談は珍しいと思いながら観ました。
杉下右京が体を震わせながら、容疑者に、正論でぶつかっていくときのシーンが好きだとおっしゃられたところに共感します。
番組が長続きしている要因をゼネラルプロデューサーの松本基弘さんが分析してくださいました。振れ幅が広い。杉下右京がどんなことでも飲み込む。水谷豊(俳優)さん、輿水泰弘(脚本こしみずやすひろ)さん、泉聖治(監督)さんの三人の天才によるトライアングルという表現がわかりやすかった。アイデアは、思いついたらすぐ出す。及川光博さんが言われたという「命がけの行き当たりばったり」も的を射ていました。出し渋らず、すぐ使うのがコツと受け止めました。
「死にすぎた男」
失踪宣告を受けて死んだと思っていた男が生きていたという話でしたが、なにかしらさえませんでした。
千葉県房総半島に海釣りに行った市役所職員2名が海に転落して行方不明になります。そのうちのひとりが6年後ぐらいに姿を現します。市役所での不祥事とか、隠蔽工作がからんできます。
良かったセリフは、神戸尊の「あなたにとってもメリットがあった」
指紋を調べる前に、「指紋を調べれば(あなたの指紋だと)わかります」というくだりには納得しにくかった。相棒なら指紋を調べてから容疑者に当たるはずです。
「第十二話 招かれざる客」
なぞとき話でした。
最後のオチが良かった。笑いました。(逮捕令状が実は神戸尊の健康診断の検査結果一覧表だった)
品川運河で、男性の死体が発見されます。事故死かと思われましたが他殺だと判明しました。
遺産相続とか、雇われ人とか、裏金とか、脱税とか、資産家も大変です。
この年の特徴らしく、時効の話がまた出ました。
「第十三話 通報者」
生活保護を受給している母子家庭の中学三年生が主役です。彼が、殺人事件の目撃者であり、警察への通報者です。
なかなかよくできた話でした。後半、そういうからくりかと感心しました。すっかり中学生の彼にだまされてしまいました。
おとなというのは、お金と人から良く見られるためならなんでもするのかと、おとなへの嫌悪感がつのる作品に仕上がりました。
「第十四話 右京のスーツ」
予想ができない展開でした。融資するかしないかの金がらみの話があって、刑務所の服役歴があって、出所者の社会復帰のむずかしさがありました。それから、男性側に職業における男女差別意識があることの確認話が付け足されます。
脅迫したり、恐喝したりする悪人は殺されてもしかたがないのか。殺される原因をつくったのは、被害者自身でした。
「第十五話 もがり笛」
タイトルにある「もがり笛」は俳句の季語だそうで、寒い冬に強風でたとえば、電線が震えて揺れて、笛が鳴るような音がすることをいいますというような映像が流れました。ドラマの内容は、けっこう重い。気持ちが沈みます。第十四話に続いて、服役囚のお話です。かつ、復讐劇でした。被害者遺族が、医療刑務所内で、加害者の服役囚に復讐しようとしますが、話はそう単純ではなく、困難を伴います。この世は地獄です。
「第十六話 監察対象・杉下右京」
いつもとは違う雰囲気ですが、ラストはいつもの決着パターンでした。
女性の監察官がストーリーを引っ張っていきますが、最初から、彼女の様子が変です。演技としてどうかとも途中思ったのですが、これはこれでいいのでしょう。ロボット的で、シーンから浮いた感じの言動です。ドラマの傍観者の視点から描いてありました。ちょっと重苦しくて見づらかった。
本来、逮捕する立場の人間が悪事を働いて容疑者の対象になる。ドラマの世界を飛び出して、いまは、現実の日本の社会でそういうことが起きています。このシリーズは、10年前のものですが、10年後の日本を予言していたのかも。なにも信じられないし、信じてはいけない。
「第十七話 陣川警部補の活躍」
お人よしの陣川さんの存在なくしては、成立しないストーリーでした。役者さんご本人の実生活でのドジも重なって、ちょっと変な雰囲気で鑑賞しました。万引き青年や女性にいいように利用された陣川さんでした。
「最終話 亡霊 <スペシャル>」
東京拘置所から死刑囚が国外逃亡するという流れで、まるで、10年ぐらいさきの未来に起きるカルロス・ゴーン氏の国外逃亡劇を予期するかのような内容でした。
死刑囚で東京拘置所に収監されていたテロリスト赤いカナリアグループの幹部本田篤人(ほんだ・あつんど)が超法規的措置により死刑を執行したとみせかけて、秘密裏に釈放されてしまいます。テログループと政府との取引により、炭そ菌(3gで3000万人の致死量らしい)と引き換えの釈放です。釈放後は外交官と国外に逃亡するという計画です。
本田篤人(ほんだ・あつんど)が、生まれてから交流もない娘に会いたがるとは思えません。娘のほうも同様です。嘘の死亡届が出されたわけですが、人を間違えて死亡届が出されるということはあると思います。自然災害の犠牲者とか事故の犠牲者とか、戦争とか。生きている証拠がそろえば、戸籍は訂正できる気がします。なにせ、本人は現実に生きているのですから。
そんなわけで、疑問をもったわけですが、内容はおもしろい。緊張感が広がる展開で、しっかり観ました。
総理補佐官(安全保障担当)片山雛子衆議院議員は、嘘を演出する演技ができる人で、いい人ではありません。『国民のため』というのは口先だけです。
小野田警察庁官房長が亡くなったことは知りませんでした。映画のほうで亡くなったのかもしれません。こんど確認します。
殺人現場の第一発見者がいつものふたりなのは、ひとつの定型的パターンです。わかりやすいので気に入っています。
内村莞爾刑事部長(うちむら・かんじ)も悪い人です。憎たらしいのですが、ドラマでは必要な悪役です。
味方の顔をしている人間が実は敵です。親切な人間は疑ったほうがいい。
越えてはいけない一線を超えた状態をつくったドラマです。さすがです。
良かったセリフとして、杉下右京に対して、「なんでもおみとおし(なのですね)」それから、悪役のほうなのですが、公安調査庁の三反園(みたぞの)氏の「テロリストとは交渉しない」アメリカ合衆国元大統領補佐官のボルトンさんみたいでした。
調べたセリフとして、「機を見るに敏:チャンスをみつけたらすばやくつかむ」
もうひとつ良かったセリフとして、角田六郎課長の「(杉下右京が的確で論理的な発言をしたあとに、片山雛子衆議院議員に対して)美人なのにねぇ、残念だねぇ」
〇3月9日に最終話が放映されて、3月11日に東日本大震災が起こっています。あれからもうすぐ10年がたちますが、そろそろ次の大地震がきそうで怖い。
「映画 2010年12月23日公開 警視庁占拠! 特命係の一番長い夜」
小野田官房長官がこの映画の中で亡くなったらしい。第九話「予兆」に続いていた内容のようです。借りてきたので、これから観てみます。
警察庁小野田官房長官(岸部一徳さん)が殺害された理由がわかりました。懲戒免職になった幹部職員の報復ですが、都合のいいときだけ利用して、いらなくなったら斬り捨てるというような人事をする上司はうらまれます。また、学歴差別はかなりうらまれます。
冒頭の船内での拳銃を使った撃ち合いシーンは疑問でした。あのような狭いところで撃ち合いはしません。
都会の夜景の映像がきれいでした。いつか東京にあるどこかの高層の建物から見てみたい。
警視庁の11階会議室で、警視総監以下部長職幹部が人質になるという現実にはあり得ない設定ですが、ほぼいつものメンバーの範囲内での演技なので、おとなしい雰囲気でした。
映像の写り具合のためか、やはり、映画よりも明瞭に見えるテレビのほうが、真に迫る迫力があります。
警察内部の不祥事隠蔽工作、幹部職員がつるんだ出世競争、派閥間闘争と見苦しいものがあるのですが、大きな組織では秘密裏にあることなのでしょう。このドラマではいつも公安部が悪者にされます。公安部の存続と予算の獲得が今回の動機にありました。
悪魔の取引が見えます。
されど、もみ消しを許さないのが、杉下右京です。このままでは終わらせません。杉下右京は、小野田官房長官の友だちではありません。そこが、このドラマ設定のいいところでした。小野田官房長官はいつも立場でものをいう人でした。心の内では、杉下右京のようになりたいと願っていたのが本心だったと思いたい。ご冥福を祈りつつ、小野田官房長官という後ろ盾を失くした杉下右京という設定で、このドラマは、シーズン10からどうころがしていくのかが楽しみです。
良かったセリフなどとして、
「見損ないました」
「くやしいというより、あやしい」
逆の手法。女性警察職員は、被害者ではなく、共犯者だった。そして、最後は、主犯になろうとした。
「(杉下右京が刃物で刺された小野田官房長官を抱えながら)かんぼうちょうー(と叫ぶ)」
劇中で、警察庁が警察省に格上げになって、トップが大臣(政治家)になるほうがよろしいというような提案があるのですが、現実には、政治家の法令違反という不祥事が続いている昨今であり、やめたほうがいいのでしょう。
すごい内容でした。
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