2020年06月28日

ヒロシマ消えたかぞく 指田和 2020課題図書

ヒロシマ消えたかぞく 指田和(さしだ・かず 女性) ポプラ社 2020課題図書

 中学生向けの夏の読書感想文課題図書『平和のバトン』を読み終えたあとに、こちらの小学生高学年向けの課題図書を読みました。課題図書で、1945年8月6日に原子爆弾が投下された広島のお話を続けて読みました。

 こちらの本は、写真絵本で反戦を訴えます。

(1回目の本読み)
 文章は読まずに、写真だけを目で追いながら、いろいろ考えました。
 白黒写真です。どのおうちにも、とくに、おじいさんおばあさんがいるお宅なら、白黒写真がたくさんおさめられた昔のアルバムがどこかに保管してあるでしょう。
 昔は家族を構成するメンバーの数が多かった。こどもの数が多かった。きょうだいが全員そろうと、7人とか、8人とかがざらにいました。また、三世代家族が多かった。祖父母、父母、こどもたちです。ひ孫がいると四世代で、ひいおじいさんやひいおばあさんがいますが、当時は寿命がそれほど長くなかったので珍しかった。むしろ、日本人が長生きになった今のほうが、ひいおじいさんやひいおばあさんの数が多いような気がします。
 白黒写真に写っているこどもは、無邪気です。勉強はあまりしていなかったみたいな感じがします。
 あかちゃんをたらいおけの中で産湯につけて洗っています。60年ぐらい前までは、あかちゃんは、自宅でお産婆さんにとりあげられていました。病院で生れるあかちゃんは少なかった。だから、長男とか長女で生れたこどもは、次男とか次女として次に生まれてきたきょうだいが自宅で生れた時のようすを覚えている人もいます。
 ページをめくる途中に、原子爆弾が投下された絵があります。真っ暗に近い絵です。
 むごい。さきほどまで、明るく楽しそうに写真に写っていたこどもたちが、いったいなにをしたというのか。

(2回目の本読み)
 こんどは、文章も読みながら、写真を追っていきます。
 おとうさんは、鈴木六郎さんで、床屋さんです。
 おかあさんが、フジエさん。
 英昭おにいちゃんがいて、本のなかにいる『わたし』が、公子(きみこ)さん、いっしょに写真に写っているのが、和子ちゃんです。その全員が、爆弾で亡くなります。つらいです。原爆のバカヤローです。

 ペットのネコのクロとイヌのニイも写真の中にはいます。でもきっと、原子爆弾が爆発したあと、二匹とも、この世には、もういなかったと思います。
 からだが少し大きくなったこどもの公子(きみこ)さんが、ネコのクロを背中におんぶしています。公子(きみこ)さんは、のんびりした雰囲気をただよわせながら、笑顔で写真に写っています。
 扇風機の前で、前足を出して足を振っているネコのクロはまるで、人間みたいな動きをしています。
 
 公子(きみこ)さんの後ろに写っている花は、白梅に見えます。原爆さえなければ、これからも公子(きみこ)さんは、すくすくと大きくなって成長していく予定でした。

 公子さんに、年下の新しいきょうだいが生まれました。弟の護(まもる)くんと、妹の昭子さんです。全員で、四人きょうだいになりました。
 家族の数がだんだん増えてきました。でも、もうすぐ、みんなこの世からいなくなります。
 
 瀬戸内海に浮かぶ厳島神社(いつくしまじんじゃ)の鳥居(とりい)が、写真の背景に写っています。いまも、現地には、赤い鳥居が建っていますが、本の中にある写真に写っている英昭さんはこどものままで、この世を去られています。

 公子さんのお父さんである床屋の六郎さんは、原子爆弾の放射線を浴びて亡くなりました。
 公子さんのお母さんである六郎さんの奥さんのフジエさんは、家族がだれも生きていないことを知って井戸に飛び込んで自殺しました。フジエさんは、大きなショックを受けたのです。生きていく希望を失ったのです。

 作家野坂昭如(のさか・あきゆき)さんの作品で、『火垂るの墓(ほたるのはか)』があります。戦争の犠牲になった兄と妹の物語でした。英昭ちゃんと公子(きみこ)ちゃんも同様の体験をしました。
 まだちいさかった護(まもる)くんと昭子ちゃんも小さな骨になってしまいました。生まれて来たばかりなのに、もう亡くなってしまった命があります。

 本の中には、そしてだれもいなくなって、影だけになってしまった六人家族の絵があります。

 無関心でいて、放置しておくと、人間は、最後には、自分で自分の首を絞めて、絶滅してしまいます。
 ヒロシマからは、ひとつの家族が消えました。
 これから先、この地球から、すべての人間が消えることがあってはならないのです。
 
(あとがきの部分を読みました)
 作者は2016年の夏に鈴木六郎さんたちの写真と出会っておられます。
 以前、わたしは、第二次世界大戦というものがなくて、世界中の戦死者の人たちが今もなお生きておられたら、どんな世界になっていただろうかと考えたことがありました。
 あわせて、どうして、戦争になってしまったのだろうかとも考えました。
 人間の限度を超えた欲望は抑制しなければなりません。お金よりも命のほうが大事です。

 本の内容は、胸に鋭く突き刺さってきました。
 人間って、なんなのだろう。人間には、いいところもあるし、そうでないところもある。悪いほうにいかないように、コントロールしていくことが大事です。

 家族愛を強調する内容の本でした。
 最近の日本社会は、夫婦や、親子、きょうだい同志の関係のなかで殺人事件が起こったりします。家族とはなに? ということを問う本でもありました。

この記事へのトラックバックURL

http://kumataro.mediacat-blog.jp/t139529
※このエントリーではブログ管理者の設定により、ブログ管理者に承認されるまでコメントは反映されません
上の画像に書かれている文字を入力して下さい