2020年06月03日

学校に行きたくない君へ 全国不登校新聞社編 ポプラ社

学校に行きたくない君へ 全国不登校新聞社編 ポプラ社

 西原理恵子さんの絵が、優しい色調で可愛い。
 優れた結果を出している有名な人たち20人のインタビュー集です。みなさん、学校嫌いだったのだろうか。

「樹木希林さん 女優」
 ご自身は不登校ではなかったけれど、いつも友だちがいなかった。人とはほとんどしゃべらなかった。テレビに出るまで、近所の人たちは、希林さんの声を聞いたことがなかった。読んでいると勇気づけられます。

「荒木飛呂彦さん 漫画家」
 今年になって、有名だけれどこれまでに自分は読んだことがない漫画を、あちこちかじるように読んでいます。荒木飛呂彦さんが描いた『ジョジョの奇妙な冒険』は、テレビ番組アメトークで紹介されていたので少しですが読みました。
 こどもの時から絵を描くと心が落ち着いた。マンガが心を育んでくれた(はぐくんでくれた)経過がわかるインタビュー内容です。好きであることへの努力の積み重ねが自信につながると説いておられます。

「柴田元幸さん 翻訳家」
 ご本人は学校嫌いだったそうです。ただ、不登校ではなかった。学校に行かない度胸がなかったそうです。小さいころから世界は筋が通らないところだと思っていた。それが、デフォルト(初期設定)だったとあります。

「リリー・フランキーさん 多彩な才能をもつタレント」
 本人が書かれた小説、名作「東京タワー」を読んだ時には、序章部にあった少年期の産炭地(炭鉱のある地域)での体験が、自分と類似していて共感をもちました。荒れた貧困生活でしたが、そこから、文化が生まれてきます。よって、ご本人は、この本でも、学校へ行くことがいやだったと語り始めます。大学を出てから就職しないで、ひきこもりになったそうです。人に会いたくない。自分をわかってくれる人がいない。
 子育てをされたことがない方なので、この話題で、インタビューに答えることが、なかなかむずかしかったのではないだろうか。

「雨宮処凛(あまみや・かりん)さん 作家、政治活動家」
 依存の話です。調べた言葉として、オーバードーズ:薬物の過剰摂取 
 リストカットも出てきます。
 「生きてるだけでオッケー」という言葉に救われます。
 
〇有名人の方ではありませんが、途中にはさんである一般人27歳女性不登校経験者の方のお話が胸にぐっときました。趣旨として、「(行かなくちゃいけないと思っているのに)体が勝手に行かなくなった」親から「なんでふつうにできないの」と言われて深く傷ついた。自分でもなんでふつうにできないのかが、わからなかった。
 かなり苦しい。どうしたらいいのかわかりません。むずかしい。いずれ、親の立場になったときに、今度は親の気持ちがわかるようになります。こどもはいつまでもこどもではいられません。

「西原理恵子さん 漫画家」
 西原さんの自伝的漫画を読んだことがあります。悲惨な貧困と暴力に満ちた子ども時代を送っておられます。よって、その体験に基づいたアドバイスです。
 『病気』としてとらえられていました。『学校に行かせようとする親VS行きたくても行けない子ども』の構図です。斬新な受け止め方です。第三者(わたし、あなた以外の人)は、子どもを導く前に、親を教育しなければならない。子どもも病気ですが、親も病気です。
 読みながら思ったことです。学校に行かなくなると最初はまわりにいる人が相手にしてくれるけれど、それでも学校に来ないと、人はそのうち学校に来ないこどもを、いてもいない者として扱うようになります。こどもが卒業扱いになったあとは、だれもその子に関心をもちません。学校に行かない子どもの家族は疲弊してあきらめます。形式上の卒業後、学校に行かなかった子どもには、相当厳しい孤独があります。どこか子どもに合う居場所をさがさなければなりません。
 もうひとつ考えたことは、働かなくても食べていける環境にある人たちだと。そういう環境にいると、人は働かなくなって、自活による自立もできなくなります。だから、『貧乏』は悪ではありません。働く動機にはなります。

「田口トモロヲさん 俳優 ナレーター」
 不登校だったそうです。引越しをしてからいじめられた。チビだった。映画に助けられた。チビの名優ダスティン・ホフマン、アル・パチーノに救われた。
 希望のないストーリーにも救われた。「負けてもいい」「人生はなんでもありだ」

「横尾忠則さん 美術家」
 ご自身のこどもさんは、ふたりとも学校に行かなかった。長男は高校から行かなくなった。そのことを知らなかった。長女は中学から行かなくなった。
 意外ですが、親の社会的地位が高くてもその人のこどもが不登校だったりもします。長い目で見るしかありません。

「玄侑宗久(げんゆう・そうきゅう)さん 小説家 僧侶」
 いろいろアドバイスがあります。
 親の対応のしかたとして、「(不登校の子どもに)あなたが学校に行こうと行くまいと、わたしの人生に何の関係があるの」という気持ちをもつ。
 すごく悩んでいるときは、「ここは考えないでおこう」と決断する。

「宮本亜門(みやもと・あもん)さん 演出家」
 集団生活が苦手で、高校2年生から不登校、以降、ひきこもりの時期があったそうです。心の支えが音楽と写真集だった。
 彼の不登校を怒った父親が日本刀をふりまわして彼を追いかけて来たそうです。怖い。トイレに逃げこんだけれど、トイレのドアをブスブスと日本刀で突かれて、日本刀の刃が折れたそうです。とても怖い。お父さんに殺されなくて良かった。そういえば去年そんな事件があった。
 レオ・レオニの絵本「フレデリック」を思い出しました。のねずみの話なのですが、生きていくために必要なのは食糧だけではないのです。

「山田玲司さん 漫画家」
 両親が優しかった。ほめ上手。アドバイスでは、実の親を頼りにしないことを勧めておられます。実の親の前で優等生にならない。本当の親ではない自分とは血縁関係がない人でも、相手が、実際に会ったことがない人でも、この人が自分の親だと思えたらその人が自分の親だと思う。かなり、独特なのですが、これまで読んできたインタビューのうちで、自立に向けての説得力が一番あります。
 「えらい人」ほど、ろくでもない人というコメントも当たっています。
 みんながみんな勝てるわけがない。
 いい質問がありました。「社会の仕組みがおかしいと感じても、そのなかで生きていかなくてはいけませんよね」これに対して、犠牲のうえに立った生活という内容で解説があります。人間はそんなもの。人間は神じゃない。メッセージが一番心に響きました。

「高山みなみさん 声優」
 声優の仕事をやりたいと思ったら、まず声を出して本を読む。(ここが一番気に入りました)
 経験を積んで、人の気持ちをわかるようになる。
 不登校をしていても生きていける。
 いいものをつくって喜んでもらう。そうすると仕事は続く。
 ひきこもっている人は不安をもっているだろうが、不安はだれでももっている。不安があるのは当然のことで、不安に負けてはいけない。

「辻村深月さん 小説家」
 不登校を扱った作品『鏡の孤城』を書いたのは、十代の世界を書くことが自分の小説だから。自分は学校にいいイメージはない。しんどかった。
 いやなことをしてきたり、からかってきたりした人のことは許さなくていい。
 (わたしが思うに、生活を送っていくうえで、自分は被害者のときもあったし、加害者のときもあったと考えるのが、自然です)

「羽生善治さん 将棋の棋士」
 中学生でプロ棋士になった。高校は月に10日ぐらい休んだ。通信制の高校にも通った。「いい学校を出て、いい会社へ進む」は、一部の人がたどるルート。未来の自分への選択肢はたくさんある。学びたいことが目的だったら、年齢は関係ない。学びは、何歳からでもスタートできるとアドバイスを送られています。

「押井守さん 映画監督」
 高校の時に不登校だった。中学までは勉強もできて生徒会もやっていたが、高校ではそれが通用しなかった。挫折を味わっておられます。1年半ぐらいずっと部屋に居た。その後6年間ぐらい映画館にいた。(ひきこもっている人が読んだら、ほっとできる内容です)

「萩尾望都(はぎお・もと)さん 漫画家」
 両親とは合わなかった。こどもを『イグアナ』として、漫画『イグアナの娘』を描いた。自分は、宇宙人かイグアナだから、両親とコミュニケーションがとれないと考えたそうです。

「内田樹(うちだ・たつる)さん 哲学研究者 」
 高校を途中で辞めたそうです。理由はいまでもよくわからない。とにかく辞めたかった。
 皮膚感覚を大事にされています。
 オルタナティブスクール:代替え手段。学校という仕組みに合わない人に、ほかの場所で学んでもらう。道場を開いておられます。

「安冨歩(やすとみ・あゆみ)さん 男性だけれど女装している京都大学卒の東京大学教授」
 かなり鋭い観察と指摘の文章です。「多くの人は、想像力で、『自分じゃないもの』になりすましている」というご指摘は当たっています。
 なんのためにそういうことをするのかということがあるのですが、それはおいといて、学校教育でそうなったと理由付けがあります。
 人間をポケモンマスターにトレーニングされる「ポケモン」にたとえておられます。
 このおかしい世界の中で生き抜いていくために必要なものは、「最低限のお金」と「ともだち」ですというアドバイスがあります。

「小熊英二(おぐま・えいじ)さん 慶応大学教授」
 読んでいて、選択肢として、「不登校」を選べる時代になったと感じました。それから、「不幸」をつくっているのは、そのことを「不幸」だと思う人間の意識だとひらめきました。
 資本主義社会には、「お金を儲けなければならない」という強迫観念がある。
 アジテーション:扇動(せんどう)する。強い気持ちで人々をあおりたてて目的とする行為につなげる。
 シンクロ:タイミングが合う。
 面白かった記述は、落語では、ご隠居は人生訓をたれるだけで労働力にならないという部分でした。そのまわりにいる長屋の人たちもあまり役に立っていないのですが、地域社会では必要な人たちなのですと記述されていました。

「茂木健一郎さん 脳科学者」
 わかりやすい内容です。脳にはいろんな脳がある。それは、「個性」で、脳に上中下の格差はない。
 トレードオフ:なにかがあって、なにかがない。すべてを満たす脳はない。
 トム・クルーズさんが、アルファベットの読み書きで、識字障害があるのは知りませんでした。それでも、会話を大事にして、優れた俳優になれる。
 良かったアドバイスとして、『苦しくてつらかった思いが、将来、情熱的に生きる貯蓄になる』

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