2020年03月27日
ライオンのおやつ 小川糸
ライオンのおやつ 小川糸 ポプラ社
人が死ぬ話はもういいかと思いながら敬遠していましたが評判がいいので読んでみることにしました。36ページあたりまで読んだところです。おそらく癌で、ステージ4の宣告を受けた30代始めの女性海野雫(うみのしずく)さんが、最期を瀬戸内海に浮かぶ島にあるホスピスで迎えるという舞台設定で始まりました。迎えてくれるのは、マドンナという通称名の初老らしき白髪の多いお下げ髪の女性でした。
海野雫さんは、身寄りがないようですが、両親と暮らしたことはないけれど、父親代わりの男性とふたり暮らしだった。本人は、結婚はしていないし、子どももいないという情報提供があります。おそらく叔父さんぐらいの関係の人に育てられたのでしょう。友人関係にも別れを告げて、ひとりで、この瀬戸内の島にあるホスピスで寿命を終えるところです。
以前瀬戸内海を船で移動する旅をしたことがあるので、物語のなかにある風景を容易に想像することができてよかった。読みながら、角田光代さんの「八日目の蝉(せみ)」も思い出しました。
ホスピスでは、「おやつの時間」というのがあるそうです。患者さんたちからリクエストをもらって、そのうちのひとつだけのおやつをつくって、日曜日のお昼三時にみなで集まってお茶会をするそうです。
なぜ、ライオン?
レモンが登場するのは、瀬戸内海の名物だからかも。
登場人物たちとして、かの姉妹(姉がシマさんおだんごあたま、妹が舞さんわかめちゃんカット)六花(ロッカ。ワンちゃん。亡くなった人のペットだった。セラピー犬の立場)、
読んでいると切なくなってきました。
小豆粥(あずきがゆ)→コーヒー→豆花(トウファ。台湾の豆乳を使ったデザート)→カヌレ(フランス菓子。卵黄でつくる。溝のついた円柱形のケーキみたいなもの。外側はカリッとしていて中身は柔らかい)→モルヒネワイン→炒り玄米茶→アップルパイ→チョココロネ(円錐形で中にチョコが入ったパン)→バナナ(バナナがしゃべる)→牡丹餅(ぼたもち)→イイダコのおでん→アイスクリーム→ミルクレープ(ケーキ。クレープでクリームや果実を挟んで何枚も重ねる)→鶏鍋→雑炊
知らないおやつが多いので、読んでいて身近に感じられませんでした。
近いうちに「死」を迎えることが決定している人の日常生活のサイクルはどんなだろう。寝る→食べる→寝るが基本サイクルとあります。
おやつタイムのメンバーとして、医師、ケアマネジャー、ヘルパー、薬剤師
ロッカ(わんちゃん、女子、小さな体格の犬)の役割が大きい。
本当にこれから死ぬのだろうかという感想をもちながら69ページ付近を読んでいます。
恋が生まれます。
次々と人が亡くなっていきます。
主人公は嘆きます。抗がん剤の痛みに耐えて治療に取り組んだのに、抗がん剤の効果はなかった抗がん剤治療に、一縷(いちる。一本の糸。少しの)の望みをかけたけれど報われなかった。彼女は残された道「まもなく死ぬ」を選択するしかない。
セラピー犬、音楽療法士、モルヒネ、睡眠薬、蘇(そ。牛の乳。ヨーグルト→生クリーム→バター→醍醐)
「スジャータ」が人の名前だとは知りませんでした。
体を壊して、読書の最後にたどり着くのは、「絵本」を読むこと。
記述にあった別れた奥さんは会いには来ないと思う。
完治する新薬ができた夢をみる。
死が近いこどもさんのお話には胸が詰まりました。こどもさんが書いた習字の文字として「生きる」
読んでいて思ったこととして、自分のことを人に話せていないことがたくさんある人はメンタルの病気にかかりやすいのではなかろうか。
主人公はついに自力歩行ができない車いす生活になりました。
ラストに向かっての記述内容はわたしには合わないものでした。美しすぎます。命が巡ります。夢が続きます。おやつのリクエストに応えるということはリクエストした人が亡くなったということを意味します。
主人公に関して思ったのは、三十三才とは思えない「死」でした。母親も短命。娘も短命。長く生き続けることがむずかしい人たちがいます。
どんな人生を歩んだとしても死んだら終わりです。思い出話をいくらしても過去は返ってきません。
偶然ですが、以前読んだ「線は、僕を描く」砥上裕將作品と設定が重なります。若い人の両親が事故死して若い人がひとりになります。
事件や事故、自然災害で突然近しい人を亡くすと遺された者の気持ちは沈みます。
自分は孤独だと思う人は孤独だし、孤独だと思わない人は孤独ではない気がします。
人は死んで花になる。
意味深い言葉がたくさんでてきて、味わいのある文章です。趣旨などとして、「視界のどこかに必ず海が見える」、「繭の中(まゆ)」、「生まれることと亡くなることは背中合わせ」、「みんなが平等なんてしょせんありえない」、「私には私しかいない」、「癌になる根本的な原因はストレス」、「眠ることは重要です」、「男性から可愛いと思われたい」、「死んだ後のお楽しみ」、「あって当たり前だと思っていたものがとても貴重なものだった」、「私はまだ死んではいない」、「ライオンにはなりたくない」、「(お金だけの人間だから)あなたが死んでも悲しむ人はいない。あなたがもっていたのはお金だけ」、「チェロの音色が感情をなだめてくれる」、「血管の中を無数の針が流れている(若い頃病気をして入院した時に似た体験をしたことがあります。血管の内側を無数の針でつつかれるような痛みでした)」、「まだ、死にたくない」、「人間は笑うことも大事だけど泣くことも大事」、「自分で自分を好きになる」、「わたしの人生には、『今』しか存在しなくなる」、「生きてて、よかった」、「もう元気なころの体には戻れない」、「人は死んだら光になる」、「お父さんはわたしのなにを知っているの?」、「おやつは心の栄養、人生へのご褒美」、「(人生という)ろうそくは自分で火をつけることはできないし火を消すこともできない」、「おいしいワインになろうね」
調べたこととして、「ラプンツェルの童話:グリム童話。ラプンツェルという女性が出てくる」、「カーゴバイク:物語では乗客や荷物をのせるための三輪自転車と思われます」、「ホスピス:終末医療、緩和ケアを受ける場所。物語の中では教会のようです」、「ソ:乳加工食品」、「粥有十利しゅうゆうじり:おかゆは心身の健康に良い」、「ジノリ:イタリアの陶磁器メーカー」、「ロゼワイン:ピンク色のワイン」、「夜間セデーション:夜間、睡眠薬で深く眠る」、「エンドルフィン:脳内にある神経伝達物質。喜び、幸せを感じたときに出る」、「QOL:クオリティオブライフ。幸福を感じる生活の質」、「QOD:クオリティオブデス。良い死」、「トルコブルー:トルコ石の色。緑がかった青」
人が死ぬ話はもういいかと思いながら敬遠していましたが評判がいいので読んでみることにしました。36ページあたりまで読んだところです。おそらく癌で、ステージ4の宣告を受けた30代始めの女性海野雫(うみのしずく)さんが、最期を瀬戸内海に浮かぶ島にあるホスピスで迎えるという舞台設定で始まりました。迎えてくれるのは、マドンナという通称名の初老らしき白髪の多いお下げ髪の女性でした。
海野雫さんは、身寄りがないようですが、両親と暮らしたことはないけれど、父親代わりの男性とふたり暮らしだった。本人は、結婚はしていないし、子どももいないという情報提供があります。おそらく叔父さんぐらいの関係の人に育てられたのでしょう。友人関係にも別れを告げて、ひとりで、この瀬戸内の島にあるホスピスで寿命を終えるところです。
以前瀬戸内海を船で移動する旅をしたことがあるので、物語のなかにある風景を容易に想像することができてよかった。読みながら、角田光代さんの「八日目の蝉(せみ)」も思い出しました。
ホスピスでは、「おやつの時間」というのがあるそうです。患者さんたちからリクエストをもらって、そのうちのひとつだけのおやつをつくって、日曜日のお昼三時にみなで集まってお茶会をするそうです。
なぜ、ライオン?
レモンが登場するのは、瀬戸内海の名物だからかも。
登場人物たちとして、かの姉妹(姉がシマさんおだんごあたま、妹が舞さんわかめちゃんカット)六花(ロッカ。ワンちゃん。亡くなった人のペットだった。セラピー犬の立場)、
読んでいると切なくなってきました。
小豆粥(あずきがゆ)→コーヒー→豆花(トウファ。台湾の豆乳を使ったデザート)→カヌレ(フランス菓子。卵黄でつくる。溝のついた円柱形のケーキみたいなもの。外側はカリッとしていて中身は柔らかい)→モルヒネワイン→炒り玄米茶→アップルパイ→チョココロネ(円錐形で中にチョコが入ったパン)→バナナ(バナナがしゃべる)→牡丹餅(ぼたもち)→イイダコのおでん→アイスクリーム→ミルクレープ(ケーキ。クレープでクリームや果実を挟んで何枚も重ねる)→鶏鍋→雑炊
知らないおやつが多いので、読んでいて身近に感じられませんでした。
近いうちに「死」を迎えることが決定している人の日常生活のサイクルはどんなだろう。寝る→食べる→寝るが基本サイクルとあります。
おやつタイムのメンバーとして、医師、ケアマネジャー、ヘルパー、薬剤師
ロッカ(わんちゃん、女子、小さな体格の犬)の役割が大きい。
本当にこれから死ぬのだろうかという感想をもちながら69ページ付近を読んでいます。
恋が生まれます。
次々と人が亡くなっていきます。
主人公は嘆きます。抗がん剤の痛みに耐えて治療に取り組んだのに、抗がん剤の効果はなかった抗がん剤治療に、一縷(いちる。一本の糸。少しの)の望みをかけたけれど報われなかった。彼女は残された道「まもなく死ぬ」を選択するしかない。
セラピー犬、音楽療法士、モルヒネ、睡眠薬、蘇(そ。牛の乳。ヨーグルト→生クリーム→バター→醍醐)
「スジャータ」が人の名前だとは知りませんでした。
体を壊して、読書の最後にたどり着くのは、「絵本」を読むこと。
記述にあった別れた奥さんは会いには来ないと思う。
完治する新薬ができた夢をみる。
死が近いこどもさんのお話には胸が詰まりました。こどもさんが書いた習字の文字として「生きる」
読んでいて思ったこととして、自分のことを人に話せていないことがたくさんある人はメンタルの病気にかかりやすいのではなかろうか。
主人公はついに自力歩行ができない車いす生活になりました。
ラストに向かっての記述内容はわたしには合わないものでした。美しすぎます。命が巡ります。夢が続きます。おやつのリクエストに応えるということはリクエストした人が亡くなったということを意味します。
主人公に関して思ったのは、三十三才とは思えない「死」でした。母親も短命。娘も短命。長く生き続けることがむずかしい人たちがいます。
どんな人生を歩んだとしても死んだら終わりです。思い出話をいくらしても過去は返ってきません。
偶然ですが、以前読んだ「線は、僕を描く」砥上裕將作品と設定が重なります。若い人の両親が事故死して若い人がひとりになります。
事件や事故、自然災害で突然近しい人を亡くすと遺された者の気持ちは沈みます。
自分は孤独だと思う人は孤独だし、孤独だと思わない人は孤独ではない気がします。
人は死んで花になる。
意味深い言葉がたくさんでてきて、味わいのある文章です。趣旨などとして、「視界のどこかに必ず海が見える」、「繭の中(まゆ)」、「生まれることと亡くなることは背中合わせ」、「みんなが平等なんてしょせんありえない」、「私には私しかいない」、「癌になる根本的な原因はストレス」、「眠ることは重要です」、「男性から可愛いと思われたい」、「死んだ後のお楽しみ」、「あって当たり前だと思っていたものがとても貴重なものだった」、「私はまだ死んではいない」、「ライオンにはなりたくない」、「(お金だけの人間だから)あなたが死んでも悲しむ人はいない。あなたがもっていたのはお金だけ」、「チェロの音色が感情をなだめてくれる」、「血管の中を無数の針が流れている(若い頃病気をして入院した時に似た体験をしたことがあります。血管の内側を無数の針でつつかれるような痛みでした)」、「まだ、死にたくない」、「人間は笑うことも大事だけど泣くことも大事」、「自分で自分を好きになる」、「わたしの人生には、『今』しか存在しなくなる」、「生きてて、よかった」、「もう元気なころの体には戻れない」、「人は死んだら光になる」、「お父さんはわたしのなにを知っているの?」、「おやつは心の栄養、人生へのご褒美」、「(人生という)ろうそくは自分で火をつけることはできないし火を消すこともできない」、「おいしいワインになろうね」
調べたこととして、「ラプンツェルの童話:グリム童話。ラプンツェルという女性が出てくる」、「カーゴバイク:物語では乗客や荷物をのせるための三輪自転車と思われます」、「ホスピス:終末医療、緩和ケアを受ける場所。物語の中では教会のようです」、「ソ:乳加工食品」、「粥有十利しゅうゆうじり:おかゆは心身の健康に良い」、「ジノリ:イタリアの陶磁器メーカー」、「ロゼワイン:ピンク色のワイン」、「夜間セデーション:夜間、睡眠薬で深く眠る」、「エンドルフィン:脳内にある神経伝達物質。喜び、幸せを感じたときに出る」、「QOL:クオリティオブライフ。幸福を感じる生活の質」、「QOD:クオリティオブデス。良い死」、「トルコブルー:トルコ石の色。緑がかった青」
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