2020年03月15日

あたまをつかった小さなおばあさん ホープ・ニューウェル

あたまをつかった小さなおばあさん ホープ・ニューウェル・作 松岡亨子(まつおかきょうこ)・訳 山脇百合子・画 福音館書店

 小学校低学年向けの童話です。作者は、アメリカ人女性で、1965年にすでに亡くなっています。この本は、1970年(昭和45年)に初版で発行されています。おばあさんのお話が10本おさめられています。どうも、おばあさんとがちょうのおはなしです。

「小さなおばあさんのこと」
 むかしむかしで始まるむかし話です。黄色い家、空色のドア、空色の窓ふたつ、黄色いチューリップが咲いている家で、畑をつくりながら、ひとり暮らしをしているたいへんびんぼうなおばあさんがいました。でも、おばあさんは、とてもあたまが良かったそうです。やりくり上手です。

「おばあさんが、はねぶとんを手に入れた話」
 穴だらけの赤い毛布は寒い。おばあさんは、がちょうを手に入れて、羽根布団をつくることにしました。がちょうは、卵も産んでくれます。

「おばあさんが、いたずらねずみどもから、とうもろこしをまもった話」
 ねずみが、がちょうのえさのとうもろこしを食べてしまうので、おばあさんは、ねずみをねずみとりでつかまえて殺してしまおうとしますが殺せません。逆に、つかまえたねずみにえさをあげてかわいがります。
 こどものころ、じっさいにねずみとりにかかったねずみを水攻めにして処分するようすを見たことがあるのを読みながら思い出しました。
 この部分は、人間のけっこう深い心理を描いています。おばあさんには、心やさしい面があります。ものごとには両面があって、おばあさんからみればねずみは害獣ですが、ねずみからみれば、おばあさんは、自分たちに害を与える者です。おばあさんは、自分に被害を与える者との共存の道を選んだのです

「おばあさんが、がちょうを、あたたかくしてやった話」
 寒い冬の夜、おばあさんは、がちょうが寒かろうと家の中に入れてあげますが、大騒動になります。  自分が小学生だった頃、お祭りの縁日で、あひるを一羽、たしか500円ぐらいで買ったことを思い出しました。両手であひるをもって、暗い中を家まで歩いて帰って、寒かろうとこたつのなかに入れました。父からも母からもなにも文句を言われませんでした。今思うと、驚きです。
 さて、けっきょくおばあさんが、あひる小屋で寝ることになるのですが、おばあさんは、がちょうの羽根でつくった羽根布団で寝ているので暖かいのです。

「おばあさんが、たった一本のこったマッチをだいじにした話」
 マッチを見かけなくなりました。物語の中身は、もう100年ぐらい前のアメリカ合衆国での暮らしです。電気も来ていません。マッチでランプの火をつけます。
 おばあさんの考えるときの決めポーズは、一休さんのようです。おばあさんは、濡れたタオルを頭に巻いて座り、人差し指を鼻のわきにあてて、目を閉じて考えます。おばあさんの考え方の手法として、おばあさんの失敗にみえるようことでも、自分の失敗だとは考えません。ものは、考え方しだいです。おばあさんは、自分の都合の良いように物事を考えて、自身の心が壊れないように防御しています。

「おばあさんが、はたけに なにをうえたかとう話」
 ポジティブ思考の脳みそです。ポジティブ:楽観的、積極的、肯定的
 おばあさんは、チューリップとたまねぎの球根の見分けがつかず間違えて植えてしまいますが、間違えたことを間違えたとはせず、いいほうに考えます。

「おばあさんが、エプロンをながくしたはなし」
 キャラコのきれ:インド産の綿布
 ラストにある強調の言葉の趣旨として、「あたまをつかえば、人間は毎日新しいことを覚えることができる」

「おばあさんが、どうやって あかいマフラーをあみあげたかという話」
 買うのではなく、自分でつくる話が続きます。そういう時代背景です。
 自画自賛が続きます。読んでいて、人間の愚かな部分を表現しているのではないかと深読みするときもあります。おばあさんの行動には、隠された意味があるような気がするのです。

「おばあさんが、買い物をした話」
 おばあさんが、行商人から拡大鏡を買ったことから始まるお話でした。

「おばあさんが、あたまをやすめた話」
 1年が過ぎるのは早い。おばあさんの暖炉の炎をながめているだけで、きもちがいいというセリフにうなずきます。

 *さし絵がかわいらしかった。


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