2020年02月23日

星新一賞受賞作品集

星新一賞受賞作品集 電子書籍 日本経済新聞社編

 ピックアップしながら感想を記してみます。

〇第一回
「ピロウ」 相川啓太
 タイトルは、英語で枕という意味です。未来のお話です。
 3Dプリンターで、ピロウを作製して、自殺に用いるのです。「最適化型安楽自殺装置」をつくるのです。
 いろいろと出来事がありますが、なかなか自殺できません。
 おもしろかった。発想が豊かです。ラストがいい。

〇第二回
「墓石」 岩田レスキオ
 「私は墓石である。岩田好男という。」から始まります。おもしろそう。
 並んでいるお墓自体に、個々の意思があります。
 「詩」のようです。
 岩田好男さんの娘さんは、恋人について悩みをもっています。結婚、DV、アル中、離婚、そして、時は流れ、岩田好男さんの妻は亡くなります。
 幸福感という読後感がほしかった。

〇第三回
「その空白を複製で」 人鳥暖炉
 事故で失った左腕の複製から始まる未来の病院における複製科医師のお話です。
 医師の妹がいて、ベッドで眠っています。妹は、自殺未遂をして、脳機能が失われています。
 複製科医師は、妹の脳に残っている記憶を呼び起こしたい。
 後半部に至って、読み終わって、自分の口から、「うまいなあ」のつぶやきがもれました。
 脳科学の物語かと思って読んでいましたが、終わってみれば、本体が、オリジナルか、複製かの物語でした。

〇第四回 
「百二十キログラムの命」 金本心菜(かねもと・ここな)
 不老不死が実現した未来の話としてスタートします。宇宙では、太陽が寿命を迎えつつある時期です。
 人間は、体重が重いほど、長生きできるという条件があります。
 太陽の延命を図るために方策が実行されます。
 発想がいい。そういう思いつきかと感心しました。

〇第五回
「終末のハスラー」 弓永端子(ゆみなが・たんし)
 奇想天外、壮大なほら話です。おもしろかった。さいごのオチもいい。
 未来のお話です。小惑星群が地球に衝突して地球が最後の日を迎えようとしています。
 地球を守るために玉突きビリヤードのプレイヤーが呼ばれました。なんと、彼が、月を球にして、小惑星群を破壊するのです。
 内容はけっこう緻密で、本当に計算されたもののようですがたぶん違うのでしょう。気楽に読めるいい作品でした。

〇第六回
「コンティニュアス・インテグレイション」 安野貴博(あんの・たかひろ)
 コンティニュアス・インテグレイション:プログラマーの習慣。品質改善、納期短縮
 レンダリング:画像、音声などを生成する。
 ホログラフィー:空間に三次元像で再生する技術
 ルッツジャンプ:うしろ向きの助走から飛び上がるジャンプ
 ふたつの時間と空間が存在する世界で、2038年冬季オリンピックをめざす女子フィギュアスケート選手リンユーのお話です。途中で、仮想世界であることに気づけるのですが、現実の時代は、もっと先なのです。


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