2020年02月01日

だれも知らない小さな国 佐藤さとる

だれも知らない小さな国 佐藤さとる・作 村上勉・絵 講談社文庫

 1959年自費出版から始まった本です。
 物語の中のこととして、20年前、ぼくは小学3年生8才ですから、主人公のぼくは、今は28才です。思い出の記です。
 昭和20年代から30年代らしき、自然に包まれて育つこどもたちの生活があります。いなかの各家庭には、まだ、テレビも加入電話も普及していませんでした。ものがない代わりに、たっぷりの自然の恵みがありました。遊び道具は与えられるものではなく、つくるものでした。
 村に住むぼくは、峠の向こうにある町へ続く切り通しという人しか通れない細い道を左に登って、杉林の中に入って、見上げれば空が高い洞窟のような三角平地という新しい世界へたどり着きます。そして念願のもちの木を2本発見しました。ぼくのもちの木として所有権を主張することにしました。
 トマトの行商をしているおばあさんとの出会いがあります。おばあさんから、こびとたちが住む小さな国のお話がありました。ここは、「鬼門山(きもんやま)」鬼門山には、魔物が住んでいて、「こぼしさま(小法師。悪い神さまから守る人。一寸法師だから3cmぐらい)」という小さい小さい人がおられました。

 調べた単語などとして、「もちの木:常緑高木。秋に赤い実。表皮からとりもちをつくれる」、「いのこずちの実:草」

 文章は、「ぼく」の一人称、ひとり語りで続いていきます。夏休みが終わり、秋がすぎて冬になりました。

 ぼくは、小学1年生ぐらいの女の子に出会います。女の子のなくした片方の靴入っている三人のこぼしさまにも出会います。
 この本は、小学生向けの本だろうか。だとすれば、低学年向けだろうか。主人公の「ぼく」は、小学2年生か、3年生ぐらいのかんじです。
 ことし読んで良かった1冊になりそうです
 主人公のぼくは小学5年生のときに、引っ越しをして、こぼしさまがいる小山から電車で40分のところへ移りました。そして、彼は、中学生になりました。小山がある町とは反対方向へ電車で通学します

 優しい筆致の文章がつづきます。

(ふと思ったのは、「ニルスの不思議な旅」セルマ=ラーゲルレーフ作です。こびとにされたニルスです。こどものお話で、「こびと」は本命素材なのかも)

 ページがすすんで、「ぼく」は成長して18才ぐらい、夜間専門学校生、時代背景は戦後まもなくのようです。父親は戦死しています。ぼくは、電気工事屋で働いています。
 ぼくは、こびとと出会った小山を将来買いたい。山の所有者(屋号として峯の家:同じ名字が多い地区で、各家が称号を設定する)をみつけて、交渉して、小山を借りることになって、小屋を建てます。小山の所有者のご主人からは、「お山の大将」と呼ばれます。本人は、こびとの国の番人になりたい。ぼくは、三人のこびとたちと再会します。そして、ふといふちのメガネをかけた黄色いセーターを着た人間の女の人の出会いがあります。伏線として、トマトのおばさんが隠されています。もうひとつは、青いガラス玉(ぼくがこどものころに小山に埋めたもの)、それから、「おちびちゃん」と名づけた女の子。

 クリケット:こおろぎのこと
 
 こびとの研究書を読んでいるようでもありました。コロボックル:アイヌの伝えるこびと物語

 こびとは、ズボンのようなものをはいている。上着は長くて、ひざの下まである。糸のような帯を締めている。(奈良の大和時代みたい)こびとは、何百人もいるそうな。

 気に入ったところとして、こびと三人が同時に、「ソウトモ!」

 読んでいるうちに、小学生のころに、山で遊んでいた記憶がよみがえりました。

 下地のストーリーとして、「古事記」。先祖は、ががいものさやでつくった舟にのってやってくる。(竹の笹舟みたいなもの)

 「ぼく」は、こびとたちから、「セイタカさん」と呼ばれます。
 こびとの名前は、モチノキノヒコ老人(世話役)、ヒイラギノヒコ(若者)、ツバキノヒコ(気むずかしや少年というよりも少女のような顔立ちが美しい)、エノキノヒコ(太っちょ)です。女子は、「ヒメ」がつく。
 彼らのいる場所である小山をを彼らは、「ヤジルシノ サキッポノ クニ」とよびます。
 こびとにとっての一番の天敵は、ネズミでもモズでもなく、「人間」。見世物にされる。人間が好きなことは、「お金もうけ」。戦わないと小山が人間に侵略されて支配されてしまう。
 セイタカさんは、コロボックルの学校をつくると言い出します。セイタカさんの未開地を開拓していく行動をみていると、ドラマ「北の国から」の黒板五郎役をしていた田中邦衛さんを思い出します。

 結末はどうなるのだろう。今、169ページ付近を読んでいます。あと108ページ、書物の中を旅している気分です。
 あとがきには、昭和34年7月の記事とあります。作者は2017年に亡くなっていますが、その意志は本の中でいまも生き続けています。

 新設道路建設工事に対する反対運動の流れになってきました。目標はルート変更です。棲家を(すみか)失って追い出されるであろうコロボックルたちが、野生の生き物、タヌキ、キツネ、イノシシ、シカなどに思えてきました。昭和30年代の現実の社会になっていきます。高速道路網の整備です。
 
 191ページのおちびさん(幼稚園のせんせい)がつくったお話がおもしろい。セイタカさん(おちびさんに言わせると制多迦童子)がかみなりさま(雷)になった設定です。「おにが、おしりをなでなで立ち上がる」

 秘密とか、役所の話とか。

 理由があるから道路をつくります。お金のためだけではありません。便利さを求めてのことです。便利になることでいくつかの悲しみを薄らげることもあります。政治的な内容と童話がミックスしているのですが、読んでいて、対立は感じられない不思議な感覚があります。

 「恋」があります。

 物語は、優しい。

 後半にきて、前半の伏線の回収があります。(セイタカさんとおちびちゃんの遠い昔の出会いのこと)

 じっさい、こんなふうに、山を買った人っていたと思う。
 昭和34年、小さな山が20万円で買えた時代です。

 気に入った文節の要旨などとして、「雨がまたはげしくなって、まどをたたいた」、「ぼくとコロボックルの領土」、「ぼくは(コロボックルに)ぼくの心をあけわたしたようなものだ。ちいさなことにくよくよしなくなった」、「前ぶれ」、「赤いつばきや、白いやまゆりがさきました」

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