2020年01月24日

チョコレート戦争 大石真

チョコレート戦争 大石真・作 北田卓史・絵 理論社

 1965年(昭和40年)の作品です。名作の復刻版という位置づけの本です。
 作者は、1990年に亡くなっています。画家も1992年に亡くなっています。
 この本は人気の作品ですが、読むのは初めてです。

 作者が15年ぶりに会った小学校の先生からもらった長い手紙をもとにして、この物語をつくりましたという「はじめに」から始まります。

 子ども同士のケンカがあって、小原君と藤本明君、星野光一くんが登場します。
 古い文体です。大横綱大鵬の名前も出てきます。当時の現役力士で英雄でした。
 そんななかで、『金泉堂』というフランス風洋菓子店の話がでます。ショートケーキ、シュークリーム、エクレールがおいしい。こどもが病気の時に食事がのどを通らないと、親がお店で買って来て食べさせてくれる。

 絵がきれいです。紙芝居風でもあります。絵本の延長とか、マンガのイメージもあります。

(つづく)

 星野光一と藤本明の小学3年生コンビが洋風菓子店金泉堂にシュークリームを買いに行きますが、シュークリームが値上がりしていて買えません。しかたなくあきらめて、ショーウィンドウの外から店内をながめていたら、どういうわけか、ショーウィンドウのガラスが割れてしまいます。お店の人たちは、ふたりがガラスを割ったとしてふたりを犯人扱いします。冤罪(えんざい。ぬれぎぬ。犯人違い)の発生です。
 ふたりは、お店に仕返しをしようと企てるところまで読みました。
 こども向けの物語にしては、人間のいやな部分を題材にしておりめずらしい。やはり、きれいごとだけでは、物語は成立しません。おとなの汚さへの挑戦であり抗議です。
 金泉堂のご主人である谷川金兵衛さんは、正直者のたとえとして、さくらの木を間違って切ったワシントンのことをフランクリンと言います。おもしろい。りんごの実が落ちるのを見て万有引力を発見したことに関連づけてあります。
 おもしろい設定です。洋菓子店VS小学6年生+先生(先生はこどもの味方です)
 ショーウィンドウが割れた原因がわかりません。証拠がありません。
 74ページ、75ページの絵は、百貨店の屋上遊園地です。昔はよく見ましたが、今は見なくなりました。
 
(つづく)

 読み終えました。
 人と人との距離が近かった昭和40年代のころを思い出しました。
 10円玉を使う公衆電話の数も減りました。間違い電話の部分はおもしろかった。
 少年たちは、盗みという行為をしようとします。最後はまるくおさまりますが、いまの時代だったらいろいろとクレームがきそうです。
 しかえしのための盗み行為に参加できない藤本明です。星野光一から、弱虫は仲間に入れることはできないと突き放されます。
 味の判断をするお菓子屋さんの経営者がたばこを吸うのはクエスチョンです。
 トラックを停めてのヒッチハイクは、今は怖くてしにくい。
 こどもの世界に親や先生、店主などのおとながからんでくるのはいいことです。
 最初は、金泉堂の主人谷川金兵衛を悪人としますが、実は善良な苦労人とするとことは、平衡感覚があっていいことです。経営のために少年たちを宣伝で使うところもおとなの考えることらしくていい。お金や物の損得ではなく、「信用」を失うことの損失を最大の被害と考えるのがおとなです。
 たくさんの人物が登場します。人物が生き生きとしています。
 最後はどうなるのか予想がつきませんでした。

 調べた単語などとして、「スナブノーズ:短銃身の回転式拳銃。仲裁役をかって出た星野光一が空気銃としてもっている」、「名誉棄損:社会的評価をおとしめる。害する」、「身びいき:身内を引きたてる」、「エクレール:いなづま。シュークリームを細長くして、上にチョコレートをぬったお菓子」、「ババロア:プリンみたい」、「こけんにかかわる:家屋売買の証書。信用をなくす。プライドをつぶされる」

 印象に残った文節などとして、「どんなことばよりもききめがあった(最近、ききめという言葉を聞かなくなったことに気づきました)」


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