2019年10月03日

白狐魔記(しらこまき) 洛中の火 斉藤洋

白狐魔記(しらこまき) 洛中の火 斉藤洋 偕成社

 洛中:平安京の京域
 前回読んだ鎌倉時代蒙古襲来の「蒙古の波」から51年が経過しています。今回の話題は、楠木正成とか、新田義貞、足利尊氏の鎌倉幕府討幕の頃です。
 これまでのようにキツネが人を化かすのではなく、人にとりつく(人間がキツネのようになる)お話のようです。

(つづく)

 憑依(ひょうい)の話が出ます。人間の心に入り、その人間を支配する。憑依には、3種類がある。体憑依(体の全部まは一部)、感憑依(感じ方。暑い寒い、喜怒哀楽など)、魂憑依(こんひょうい。すべて)
 
 奈良県吉野の蔵王堂が出てきます。何度か訪れたことがある寺なので、読んでいて現実感があります。

 村上義光 むらかみ・よしてる:鎌倉時代末期の武将。大塔宮護良親王(だいとうのみやもりよししんのう(後醍醐天皇の子))に仕えた。

 印象に残った表現として、「戦は縄張り争い」、「(対立は)兄弟げんかばかり」、「だれの家来でもないし、だれの家来にもなりたくない」、「武士は人を殺す。殺すだけではなく、殺したことを誇る。だから武士を嫌う」、「早く戦をやめるためには、ひとりでも多くの敵を殺さなければならない」、「昨日の敵は今日の友、きょうの友はあすの敵」、いつまでたっても平和が訪れることのない言葉ばかりです。

 キツネの白狐魔丸(しらこままる)は、人間に化けることに加えて、憑依(ひょうい)の技を身に着けました。

 調べたこととして、「隠岐の島に流された帝は大覚寺統で、若い帝は持明院統:血筋。鎌倉時代に両統は対立していた」、「令旨:りょうじ。皇太子や皇后の命令を出した文書」、「薬師:くすし。医師」、「直垂:ひたたれ。布製の武士の衣服」

 気に入った表現として、「(キツネが)右のほうに走っていってしまった」、「思うことは楽だ。だが、思い続けることは楽ではない」

 今回はとくだん大きな山場があったようには感じませんでした。

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