2019年09月13日

白狐魔記(しらこまき) 蒙古の波(もうこのなみ) 斉藤洋

白狐魔記(しらこまき) 蒙古の波(もうこのなみ) 斉藤洋 偕成社

 同作者による「源平の嵐」の続編です。源平がおもしろかったので、シリーズを続けて読むことにしました。得るものがある本です。
 青少年向けの歴史ものですが、地理の情報もあります。前回は、奈良県吉野が関係していました。今回は、鎌倉時代の蒙古襲来でしょうから、本は、鎌倉鶴岡八幡宮から始まりました。日蓮上人が登場します。それから、京都が舞台です。
 「気」の話が出ます。「念力」も出ます。心で話しかける。指示した動きを相手がする。祈りが神仏に通じる。
 神や仏はいるのでしょうかという問いに、いるといえばいるし、いないといえばいないは、いい答えです。
 白いキツネは、白い狼と出会います。動物園にいるさびしそうな表情をするシンリンオオカミを思い出しました。

(つづく)

 正妻の子が鎌倉の北条時宗、側室(そくしつ。一夫多妻制のもとの妾)の子が京都の北条時輔で、鎌倉の北条時宗は京都の北条時輔を世継ぎのために暗殺したい。その件に関して、キツネは、それぞれが、別のなわばりをもって、両方が生きて行けばいいのではないかと考えます。

 キツネは、京都で世話になった市谷小平太の遺志で、絵が上手な竹崎季長(たけざき・すえなが)を探し求める旅に出ます。きつねは、武士が嫌いです。舞台は、福岡県太宰府へ移ります。
 
 前巻に引き続き奈良県「吉野」の地名が登場します。妖怪が増えました。

 元国(皇帝フビライ・ハン)のちょうりょうひつという元の使者である人物の名が出てきます。元寇は(げんこう)は、いきなり起こったわけではなく、事前交渉があったことははじめて知りました。グループで日本を訪れています。元にも妖怪がいます。ブルテ・チョノ、白い狼です。
 127ページの絵がリアルです。

(つづく)

 1274年秋、最初の元寇です。元が台風で撤退。2度目が、1281年梅雨時、台風来襲で日本軍勝利。物語では台風はキツネの「気」の力とされています。
 印象的な武士のセリフの趣旨として、「あきんどにとっては、(商人にとっては)金が命。武士にとっては、土地が命、領地が心の命。領地がない武士は武士ではない。人でもない。土地は武士の魂」、「死んだ後も絵で名を残す」

 子どもさん向けタイムトラベル歴史小説です。キツネになって、歴史の事実を見ます。物語なので虚構もあります。
 奈良県吉野、福岡県太宰府、行ったことがあるので、物語を身近に感じます。

 書中にあるさし絵は、文章と合致していて迫力があります。
 文章はときにドラマチックです。戦いの描写はグロテスクな面もあります。こどもさん向けにどうかとは思いますが、おとなにとってはどうということもありません。
 
 知らなかったことのいくつかです。元寇とは、元が直接全員で攻めて来たのではなく、元が、高麗人を使って攻めさせた部分がある。
 元の肯定フビライ・ハンとチンギス・ハンは、同じ人だと思っていました。フビライ・ハンは、チンギス・ハンの孫でした。
 源義経がチンギス・ハンだという説は、子どもの頃に本で読んだことがありますが、真偽のほどはわかりません。
 
 滝に打たれる修行シーンがあります。昔子どもの頃、祖母とどこかにお参りに行って、滝に打たれたことを思い出しました。

 物語のなかでは、とても長い歳月が流れています。

 吉野山の仙人であるキツネ(主人公の師匠)は、天竺に行って何をしたのだろう。

 調べた言葉として、「徒:かち。おおぜいの人」、「龍の口の刑場:神奈川県藤沢市1271年文永8年日蓮がとらえられる」、「執権:しっけん。将軍の補佐役だが、鎌倉時代は北条氏が執権として実権を握った」、「探題:たんだい。政治、軍事、裁判担当ポスト」、「如意ヶ岳:にょいがたけ。京都東山にある山472m」、「博多の浜の防塁:ぼうるい。高さ2m、20km。2度目の元寇の時に敵を止めた」、「肥後の海東郷:ひごのかいとうのこおり。熊本県宇城市うきし」

 印象的だった表現として、「(キツネの主人公からみて)武士は、人にたかるしらみよりもいやしい」

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