2019年07月29日

そこどけあほが通るさかい 群像新人文学賞

そこどけあほが通るさかい 石倉真帆 群像新人文学賞 6月号

 まだ読んでいる途中ですが感想は書き始めます。
 関西弁ひとり語りの家族歴史小説という様相です。
 19歳大学1年生の女性木田光里(きだ・ひかり)が、親族のことを語り続けます。とくに亡くなった祖母にトラブルメーカーとしての問題があるらしく、彼女はよくあるやさしいおばあさんではありません。
 祖母に関して、公務員攻撃、学校比較による人間の高低評価、老害、いいかげんな日常生活が表現されています。
 今後の展開において、成績優秀な4歳年上の兄の未来がどうなるのかに関心がいきます。
 祖母は、なにかに強烈なうらみでもあるのかと思いながら読んでいたら、三人姉妹の次女で生まれてきて、「損こいた」みたいな話が出てきます。長姉と妹である自分との親からの待遇の比較です。
 19歳の主人公が、11歳当時のころからの出来事を回想します。兄はしっかり者です。主人公は祖母が嫌いです。祖母は迷惑者です。その祖母が小説の冒頭に亡くなり、あのあと、主人公の母親は「死ぬ」と言って家出同然の状況です。夢も希望もない家族像ですが、現実にありがちな家族像でもあります。

(つづく)

 ものすごいエネルギーに満ちています。読むのにもエネルギーがいります。たまたまきょうDVDの映画で観た「生きているだけで、愛」に出てくるうつ病の主人公女性寧子(やすこ)のキャラクターと木田光里(きだ・ひかり)のキャラクターが重なりました。死にたい症候群です。そこに、モンスター老人である木田光里の祖母がからんできます。老害をからめたのは作品としての視点の新しさを感じます。手が付けにくい素材です。たしかに、ひどいお年寄りは現実にいます。何を言っても言うことをきいてくれないお年寄りっています。作品は、戦国時代の親類同士の戦(いくさ、応仁の乱とか、織田家内部のいざこざとか)のようです。
 祖母が光里(ひかり)を攻撃してきます。おまえなんか産まれてこなければよかった。あのとき中絶しておけばよかったと光里の母親を責めます。激しい。
 迫力があっていい。反面、文学賞の審査員の方が書いておられますが、一本調子が続きます。

(つづく)

 兄弟姉妹のなかの、2番目に生まれてきた人間の嘆き話です。待遇面において、長男長女との比較で劣る部分があります。祖母は三姉妹の2番目として生まれました。主人公高校2年生女子には学業優秀な兄がいます。対して、主人公女子の学力は低い。

 乱暴な内容で、読んでいるとなんだか悲しい気持ちになってきます。

 「祖母は、団体行動ができない」

 主人公女子木田光里(ひかり)の読書感想の内容がおもしろい。物語の主体が、80才過ぎの凶暴な祖母から心の病気らしい孫娘に移ります。

 大学4年生の兄は、一流企業に就職が決まりました。兄はこれからどうなるのだろう(その後、作中に記述はありませんでした)

 卒業した学校名に価値があった時代は過去のこと。世の中は実力主義に変化しました。

 暴れん坊の祖母の世話でみんなが疲れました。祖母が亡くなって、とくに母はほっとしたようすです。

 生活していく悲しみが、にじみ出ていた作品でした。日本人が、心の奥底、深い部分にもっている他者への「差別意識」を浮き彫りにした作品だと思います。人をばかにしたいという「悪」をみました。そんななかでも、母と娘は協力していっしょに生きていくのです。


 以下は、審査員評を読んでいて調べた単語などです。「断章形式:文章の一節をとりだして引用する」、「アイロニー:表面とは逆の意味が裏にある」、「イザナミ:日本神話の女神」

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