2019年07月24日

相棒DVD シーズン5 2006年(平成18年)

相棒DVD シーズン5 2006年(平成18年)10月~翌年3月

第1話
 人間の恥部を根幹において、犯罪を成立させて、覆いで包み隠す。それを杉田右京氏が執拗に暴いていきます。ブラック対ホワイトの戦いで、ときに、内部幹部たちと対立する杉下右京です。杉下右京はすごい人間です。
 なぜ、父親は、幼い娘に絵本の読み聞かせをしなかったのか。途中から疑問をひきずりながら観ていました。最後にその理由が明らかになります。
 役所の人間によるホームレス襲撃事件から始まって、国会議員ファミリーの遠くて暗い過去が明るみに出てきます。見事に物語として完成しています。
 「時効」が話題となっています。凶悪犯罪の時効が廃止されたのが2010年なので、いまこれをみると、時効をからめた推理小説は、これからはつくりにくいのでしょう。
 スペシャルコンテンツとして、2006年11月4日放送のふたりのインタビュー番組が付いていました。受け答えもまたふたりの演技なのでしょうが、楽しい会話のキャッチボールでよかった。

第2話
 亀井薫夫妻が、殺人という事故物件のあった豪邸を安価で購入して住み始めます。幽霊屋敷です。幽霊は存在しない。お金が欲しいという欲は存在する。

第3話
 町内会の白坂さんが殺されます。ゆうべ、白坂さんは鈴木さんとケンカをしていた。
 幻想的な推理物語でした。

第4話
 宝石店強盗があり、被害額が12億円です。
 別件で、別荘への住居侵入・窃盗未遂で、せんみつと呼ばれる容疑者が逮捕されます。1000に3つしか本当のことを言わないので、大ウソつきということで「せんみつ」という別称です。
 うそつき大会が始まりました。

第5話
 以前あったドラマの続き物となっています。精神障害者による殺人事件でした。今回はその復讐殺人です。罪人をかばうような内容で、犯人探しが進みます。

第6話
 一級建築士が殺されます。直木賞受賞作家が容疑者に浮かびますが、彼は犯人ではありません。犯人ではありませんが自首します。そこを突き止めるのが杉下右京です。

第7話
 剣道で、クラッシク音楽をバックにしながら、真剣による師範の殺害状況を浮かび上がらせます。親子関係のもつれがあります。

第8話
 時効まぢかになっている女子大生絞殺事件の犯人を追います。
 ラジオのリクエストから始まります。
 杉下右京の熱っぽい独り芝居がいい。
 15年間犯人を追いかけている刑事の家族関係は壊れてしまいました。そして、彼自身も病気で死にそうです。
 推理よりも人間ドラマ重視の内容です。娘は刑事の女房にはしないという父親刑事の言葉がききました。仕事ばかです。
 上手にできた脚本で力作です。

第9話
 ワインの話です。わたしにはわからない世界でした。
 ワイン好き、味わう舌の話と、人前で侮辱された人間の恨みのことが素材です。
 ばかにした人間は忘れても、ばかにされた人間は忘れない。されど、ひとりの人間にその両面性が宿っています。

第10話
 美大生男子が殺害されます。彼は、落書きをしているときに別の殺人事件を目撃してしまいました。
 ゲストの男優さんが私立探偵になって杉下、亀山コンビニ協力します。軽妙な雰囲気のいつもとは違った中身でした。

第11話
 2時間半スペシャルです。設定には無理があるのですが、今年観て良かったドラマでした。
 国会議員の婚約者(離婚歴あり。ろうあの娘あり)が、連れ子の娘を誘拐されて、犯人から娘を開放する代わりにこれから再婚して夫になる国会議員の射殺を求められます。
 2006年大みそかの出来事です。もう、ずいぶん前のことになりました。
 警備が厳しい国会議員主催のカウントダウンパーティです。観ていて思ったのですが、どんなに厳しいシステムをしいても、内部犯行であれば、防げません。ことは、そのとおりになりました。
 いくつかの疑問点、ツッコミどころがありますが、ドラマです。なぜ、おとなの世界に女児がいるのか。現実ではありえません。また、女児の実父が会場に近づくこともできません。手話はなんの意味があるのか(あとで大きな意味があることがわかります)。ボディガードがモデル体型の女性というのも体格・体力的にどうか。
 誘拐→爆弾の流れは予測できました。
 右京の言葉「きっと裏がある」がよかった。
 (つくり手は、視聴者をだまそうとしている気配がありました。そのとおりになりました)
 やっぱり、「手話」のしかけがありました。
 観ていて幾度か、杉下右京はすごい男だと感嘆のため息がもれました。
 六角さんもかっこいい。
 欲にまみれた人間心理の描写がうまい。
 女児の子役さんの表情がいい。
 動機は復讐。その説明は、長い。
 もう、宗教かとまで思わせてくれる。
 クラシック曲で緊張は高まる。
 ていねいになんどもくりかえして手を入れた脚本です。こどもを死なせちゃだめだ!と切に願いながら観ていました。ありがとうの手話がよかった。
 あの拳銃にはいったい、何発の銃弾が入っているのだろう。けっこうの玉数が発射されたと思います。
 すごいスナイパーでした。かっこいい。楽しめました。ありがとう。

第12話
 団地で小学生男児ふたりがいなくなりますが、こどもふたりの嘘です。そこにストーカー事件がからんできて、ふたつの事例が合体します。
 途中で、脚本家のめざすところは? となりますが、合体で趣旨が判明します。
 犯人の心理として、『ひとのせいにする』

第13話
 太った妻が、夫の海外出張中のひと月の間に、洋式トイレにおしりがはまって、身動きができなくなり、餓死してしまいました。実は、それが、夫が仕組んだ殺人なのです。奇想天外です。
 死因の判断がむずかしい。最初は、病死を想像します。
 夫役の俳優さんのひとり芝居に近い舞台劇を見ているようでした。

第14話
 バイクでひったくり事件が起こりますが、被害者が交番からいなくなります。会社の金庫から6700万円が消えて、さきほどの被害者がからんでいます。内部犯行は計画を実行しやすい。

第15話
 警察内の不祥事、不正に杉下右京が立ち向かいます。すごいなあ。でも、さらに強烈に正義を貫いたのは、亀井薫刑事でした。

第16話
 くどいぐらいていねいにつくりこまれた脚本です。うまい。どんでんがえしがすごい。
 月曜日の夜に眠った。目が覚めたら水曜日だった。火曜日の記憶がまったくない狭間肇さんです。彼は、現金3020万円強盗事件の犯人たちと関係をもっているのですが、その記憶がありません。
 あまりにもショッキングな出来事があったので、そのこと自体をなかったことにするという心因性とかいう記憶喪失です。
 会社の人間を洗う。
 VHSテープがまだ生きています。わたしはわたしをあの男から取り戻す。
 ぼくのなかで、なにかが音を立てて切れた。ぼくのなかにいたぼくの知らない殺人鬼が現れた。
 意外性の一作でした。
 犯人はひだりきき。

第17話
 一条モナミという大金持ちのデザイナーさんを女王として、演劇仕立ての一作です。
 女王の宮殿でパーティがあります。
 お金や財産を狙う人ばかりが集まっています。お金の無心と頼みごとばかりです。
 ところが、実は、女王は困窮しています。
 お金持ちを続けるのもたいへんです。

第18話
 復讐劇です。途中、パンチ力が不足していたような。途中で犯人はわかりました。交換殺人ものです。

第19話
 60年代、なつかしの名画上映中の映画館内で、その名画の映画監督が刺殺されます。動機がなかなかわかりません。物悲しい内容でした。過去にいつまでもしばられると未来がふさがれます。重厚な内容でした。死して、作品を未来に残す。

最終話
 (対談 山西惇やまにし・あつしさんと六角精児さん)
 同い年、現場ではとても緊張するということが共通点です。よその現場はそこまで緊張はしないそうです。
 ドラマのなかの話として、杉下右京と鑑識米沢守はお互いに×1だから仲が良いのではないか。
 右京さんと薫ちゃん、コンビふたりの演技能力がずばぬけて高いそうです。
 自分なりには、脚本がいい。杉下右京のキャラがいい。不正をうやむやにしない。あるべきところにラストでは着地する。その2点が光っていると思います。今回の最終話もその線をたどっていました。

 プログラマーのふたごのかたほうが、ビルの屋上から突き落とされて殺されます。犯人は放映の途中で気づけます。
 警察内部の人間が犯人に関与しているであろうから始まります。
 盗聴、盗難、病気に見せかけた毒殺、昔懐かしい記憶媒体の「フロッピーディスク」が出てきました。
 話はどんどん国家の上層部、陰部へと広がっていきます。あまりにも大きな話に発展しすぎて、見ている庶民の感覚からかけ離れてつまらなくなっていきますが、それを杉下右京が止めます。「テロリストはあなたがただ」
 地方公務員法と国家公務員法の違いに気づけませんでした。
 木の花「さざんか」が伏線です。途中からラストまで線でつなぎます。花言葉は、「困難に打ち勝つひたむきさ」、もうひとつの花ことばが、「理性と謙虚」、物語の味わいに効果的でした。
 「引導を渡す:あきらめさせるための最終宣告」
 犯人メンバーたちは、洗脳によりマヒしていた。思想・主義を強制的に変える。
 うやむやにはしないどっしりとして尊い雰囲気がただよう相棒らしい作品でした。上出来です。

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