2019年07月04日

はれときどきぶた 矢玉四郎

はれときどきぶた 矢玉四郎(やだま・しろう) 岩崎書店

 はれときどきくもりとかあめとか、天気予報ではそうなるのですが、「ぶた」が空からふってくることはないので、なんとなく、ふざけているのかなという悪い印象をもって読み始めました。
 小学校3年生の畠山則安くん、あだなが「十円やす」というのは、「則安」という名前から着ているのでしょうが意味はわかりません。
 彼が、日記を書くのです。絵日記です。四コママンガみたいな絵日記ですが、最初の日記はふたコマでした。
 ネットで調べたら、10円はげがあるから十円やすというあだなだそうです。1980年が初版です。いまではあまり使われなくなった言葉が出てきます。
 畠山則安くんが、小学2年生の時の担任、和子先生に言われて絵日記を書き始めます。きちょうめんです。すごい。千里の道は一歩からとか、継続は力なりという格言が思い浮かびました。
 和子先生の言葉は、「日記は人に見せるものではない」ですが、畠山則安の母親は、則安の絵日記を見ます。最初の日記は、おできはるこ(尾関晴子)という女の子にかさでランドセルをたたかれたという話でした。

(つづく)

 読み終わりました。今年読んで良かった1冊になりました。こういう世界があったんだ。
 畠山則安くんは、『明日の日記』を書き始めます。日記に書いたことが、明日、事実の出来事として起こるのです。ありえないことが、ありえるのです。
 ほら話です。純文学の作品で何本か読んだことがありますが、児童文学では初めてです。漫才とかコントの台本を読むようでもあります。おもしろくて楽しい。
 文学です。こういう内容で、読んだ人が、ストレスなんかを消化するのです。笑いがともないます。はったり、ほら話などのうそが許されるのが文学作品です。
 こどもらしい絵がいい。絵日記です。
 トイレにヘビが出ます。それから、えんぴつのてんぷらを食べます。
 特効薬が、「消しゴム」です。うまくできている。想像力が豊かです。
 おおらかで、素直。うそでも受け入れてしまいます。うそとわかっているからいいのかも。
 笑ったのは、「ぶた、ぶた、ふれ、ふれ、かあさんが~」の歌。雨がえるは、ぶたがえる。
 68ページの夕映えの絵がきれい。昔、カラーテレビを総天然色と表現していたのを思い出しました。
 最後のオチもおもしろい。消しゴムで消しそこねたことが起ります。
 畠山則安くんの一人称ひとり語りで話は進行して終わります。最初はいいかげんなことが、やがて本気になります。

 作者のあとがきの内容がいい。勇気と励ましをもらいました。
 ばかなことを考えることは、すばらしいことにつながる。優れた発明は、最初は人に笑われるものだ。
 多数決は絶対じゃない。多数が間違えて、たったひとりが正解のときもある。
 自分の感じたこと、考えたことは、笑われても、おこられても、ちゃんと言えるようになろう。
 おとなになったら、自分の教科書を自分でつくろう。だから、いまのうちから、いろんなことを考える練習をしておこうとあります。

(その後)
 5歳男児に読んであげたらばかうけでした。空からぶたがふってくるという、ありえないことに興味が強く湧いたようです。日本文学における「ほら話」の地位を再確認できました。こどもは、「ぶた」の部分をほかのものに言い換えて大笑いをします。ストレス解消になるようです。

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