2019年04月29日

ルドルフとイッパイアッテナ 斉藤洋

ルドルフとイッパイアッテナ 斉藤洋(さいとう・ひろし) 講談社

 黒猫ルドルフのロードムービーです。(旅をしながら成長していく)
 ルドルフのふるさとにはロープウェイがあります。トラックで運ばれた地は東京江戸川区内です。
 57ページまで読みました。ロープウェイがあるところがルドルフのふるさとでしょう。わたしは三重県の御在所ロープウェイを想像しました。(結果は、岐阜県岐阜公園にある岐阜城に至る金華山ロープウェイでした)ルドルフの飼い主はリエちゃんという名前の小学5年生です。
 飼い猫のルドルフはずいぶん遠くまで来てしまいました。家に帰ることができるのでしょうか。心配です。それとももうずっと帰ることができないのかも。
 江戸川区内で出会った猫の名前が「イッパイアッテナ」ですが、それは名前がいっぱいあるという意味でしょう。行く先々で、トラと呼ばれたり、ボスと呼ばれたりする野良猫です。与えられる食べ物が、「にぼし」それから「クリームシチュー」と変化します。とにかく食べなければ死んでしまいます。
 ルドルフの一人称語りでお話は進んでいきます。
 ひとり暮らし高齢者の間をめぐる社会福祉の猫のような予感があります。
 黒猫に対する「黒色」への差別が出てきました。縁起が悪いというのは事実ではなく、迷信です。不合理な色に基づく差別です。
 この本は、作者によると、猫のルドルフが書いたことになっています。

(つづく)

 良書です。教えがあります。人間社会、集団生活の中で、世の中の渡り方を説き、どのように生きていけばよいか。協調性、調整力、知恵、食べていくための忍耐を猫同士のやりとりから問います。互いを理解して許容して、敵対しない。共存する。
 善意にすがってもいいが、善意を悪用してはいけない。
 本が書かれたころとは時代が変わりました。単体の魚屋や八百屋は減りました。スーパーマーケットばかりです。時代の変化で、本の中身と現実の実態が離れるのは仕方がありません。
 漢和辞典や国語辞典、百科事典は、現代では、スマートフォンや端末機に置き換えられました。
 1989年発行の書中では新幹線はまだ「ひかり号」です。「のぞみ号」が登場するのは、1992年からです

 良かった表現などの趣旨として、「生きていくためには殺生(せっしょう。生き物を食用として殺して食べる)もする」、「言葉がきたなくなると、心も乱暴になる」、「これからはひとりで生きてゆく」、「字は役に立つ。字を覚えることは役に立つ」、「地図を勉強する」、「優しい人間ばかりじゃない」、「かならず帰るんだ」、「どんな方法も見つからなかったら、歩いて帰る」、「絶望は愚か者の答だ(希望を失わない。あきらめない)」

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