2019年02月26日

男はつらいよ(第40作~第48作、特別編)

男はつらいよ(第40作~第48作、特別編 昭和63年~平成9年 1988年~1997年)


「第40作 寅次郎サラダ記念日」 1988年 昭和63年12月 三田佳子 三田寛子
 俵万智さんのサラダ記念日という短歌の本がはやった頃の作品でしょう。
 ダイヤル式の黒電話、コンビニが全国に広まり始めた頃です。わずか30年ぐらい前のことなのに、生活様式はずいぶん変化しました。映像を観ながらそう思います。
 病院に入院した長野県内のひとり暮らし高齢者女性の最期の迎え方を考えます。人生の最期はできるだけ自宅で迎えたい。
 全体が哀愁に満ちています。風景も音楽もしんみりするものが多くなってきました。だけど、挿入歌、サザンオールスターズの歌は明るかった。

「第41作 寅次郎心の旅路」 1989年 平成元年8月
 ゲストは、竹下景子、淡路恵子、柄本明、ロケ地のメインは、オーストリアのウィーンです。ウィーンと寅さんの風情が合わない気がしました。
 仕事に行き詰まって自殺企図するどこかのいい会社の課長職が柄本明さんです。彼とふたりでウィーンに行きますが、柄本さん自身が寅さんを連れてきたことに後悔する始末です。
 寅さんのいくつかの言葉が良かった。「(柄本さんが年休を取得できないと言い)きみがいないと会社がつぶれるのか」、ウィーンでひとこと「ダンケ(ありがとうらしい)」、「原っぱじゃないんだ。ヨーロッパなんだ」
 
 30年ぐらい前の田舎の風景が映像にあります。田舎は今も田舎であってほしい。人情は今も変わりないと思いたい。
 クレジットカード払いがまだ一般的ではなかった頃の映像です。先日自宅で押し入れから小学1年生向けの「さんすうセット」が出てきて、中にプラスチックの硬貨とか小さな1000円札が入っていました。それを見ながら、これからは、現金を見ない子どもがふえるかもしれないと不安を抱きました。

「第42作 ぼくの伯父さん」 1989年 平成元年12月
 満男がバイクで家出をして、途中、笹野高史さんがホモのバイク野郎で登場して笑いました。きのう観た「空飛ぶタイヤ」では、笹野さんは運送会社の社長補佐みたいな役でした。いろんなところに顔をだされていて、寅さん的存在です。満男と寅さんの性格も似通っており、満男は寅さん二世です。
 佐賀県の高校教師尾藤イサオさんと寅さんの対立は、人情路線を歩む寅さんの真骨頂ですが、若い時の無謀な行為を否定すると、人間は何のために生きているのかとか、生きるとはどう生きるのかまえ届く思考に至ります。まじめな映画です。
 緑の公衆電話は少なくなりました。30年前の映像です。なつかしい。もう忘れてしまいそうです。

「第43作 寅次郎の休日」 1990年 平成2年12月 後藤久美子 夏木マリ 宮崎美子 寺尾聰
 大学生となった満男(吉岡秀隆)がひとり暮らしを希望し、母親のさくらさんと対立するところから始まります。
 全体的に出演者が老齢化していくなかで、満男と後藤久美子のからみが全面に出ています。
 渥美さんのひとり語り、恋話は、あいかわらずおもしろい。
 ロケ地大分県日田市は、宿泊したこともあるので身近に感じます。そのほか、いまはもうなくなったブルートレインとか、ようやく東京から博多まで開業した新幹線とか、なつかしい。
 離婚とか、三角関係とか、初期の喜劇だったつくりが、少しずつ変化してきています。

「第44作 寅次郎の告白」 1991年 平成3年12月
 後藤久美子さんの役どころはなかなかむずかしい。彼女はお金持ちのお嬢さん役でこの映画に出ていたものと誤解していました。全然違っていて、お金のない暗い家庭環境にいる設定です。観ていると、親はこどもをひとりぼっちにさせてはいけないと思います。
 観ている人は、彼女が偶然、寅さんに会えると、会えて良かったとほっとします。
 湿っぽい。人生の生きにくさを表現する映画になっていますが、最後の満男が家を出かけないシーンには笑いました。おもしろかった。

「第45作 寅次郎の青春」 1992年 平成4年12月
 満男の性格・行動設定がおもしろい。映画の中の役とはいえ、赤ちゃんのときからの映像を見ているので親しみが湧きます。
 寅次郎と満男の口喧嘩は、似た者同士のケンカであり、血はつながっていると実感します。
 寅次郎の答を出さないいいかげんな部分が魅力です。
 出演者のみなさんを見ながら、いい時代といい人生を送ってこられたと観客ともども幸福感にひたれます。
 自分の悪いところは悪いところとして認める平衡感覚がすばらしい。

「第46作 寅次郎の縁談」 1993年 平成5年12月 松坂慶子
 満男の就職がうまくいかなくて親子喧嘩となり子は家出をします。行き先は四国の離島で、寅さんが満男の様子を見に行きます。
 いつものパターンで、寅さんは松坂慶子さんについていきます。
 「雪印牛乳」、「赤い公衆電話」、あのころあったものが、今はもうありません。あの頃いた人たちが、今はもういません。

「第47作 拝啓 車寅次郎様」 1994年 平成6年12月
 ロケ地滋賀県長浜の映像を観ながら、<このお寺さん、行ったことある>と、もう忘れていた記憶が蘇りました。職場のバス旅行で連れて行ってもらったので忘れてしまっていました。
 平成8年8月4日に渥美清さんは68歳で亡くなるので、もうすぐ、寅さん、いなくなるんだなあという気持ちで観ています。
 心なしか画面は哀愁を帯びています。旅先で出会った主婦かたせ梨乃さんは、一緒に暮らしていても会話のない夫婦と愚痴をこぼします。
 江ノ電「鎌倉高校前駅」で、満男役の吉岡秀隆さんと寅さんのシーン、寅さんが、「燃えるような恋をしてみろ」は名ゼリフです。
 当時の風景、光景をみながら、小林幸子さんの「おもいで酒」が流れてくる。雨降りの風情が身にしみます。

「第48作 寅次郎紅の花」 1995年 平成7年12月
 渥美清さんが生きて出演する映画はこれが最後の作品です。26年間48作お疲れさまでした。昨年の9月からこのシリーズを観始めて6か月が経過しました。早いものです。
 今回は、浅丘ルリ子さんと吉岡秀隆さん、後藤久美子さんが渥美清さんを支えた1本です。渥美清さんは平成8年8月4日に68歳で病死されます。2019年年末公開予定の作品では出演予定の後藤久美子さんをどういう展開に巻き込んでいくのかが楽しみです。
 数日前から「北の国から」を観始めました。吉岡秀隆さんと今回の映画で船長役をしていた田中邦衛さんが出ています。男はつらいよシリーズのあとは、北の国からシリーズを楽しみます。

「第49作 寅次郎ハイビスカスの花」 1997年 平成9年11月
 渥美清さんは、前年に亡くなっています。浅丘ルリ子さんとのからみを中心にした概要版のようなつくりですが、以前の撮影で、本番で使わなかった映像を使っているのだろうと観ながら感心しました。保管してあったのでしょう。ということは、けっこう大量の映像が未公開のまま残っている気がします。
 飛行機は怖いから乗らないと言っていたのに、きれいなスチュワーデスさんに声をかけられてついていってしまう。人間の弱みをもった善人の寅さんでした。
 これで全部の作品を観ました。達成感があります。

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再鑑賞として、いちばん気にいった作品を観ました。
第26作 寅次郎かもめ歌 1980年 昭和55年12月
 人情味あふれる会話のキャッチボールが続く良作です。
 伊藤蘭さん1978年キャンディーズ解散後の演技は、北海道なまりがきつく、元アイドル歌手とは思えないほどの力が入った演技です。定時制高校に合格できて良かった。仕事もセブンイレブンのコンビニ店員です。なつかしい暮らしがあります。家族の幸せなひとときがあります。気持ちをぶつけて、離れて、くっついてという部分が絶妙のタイミングで繰り返されます。そして、学校は、楽しいところでした。映像は、濃密な人間関係で充実しています。


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