カーテンコール 加納朋子 新潮社

 好きな作家さんです。
 カーテンコールとは、アンコールみたいなものかと思っています。幕が下りた後に拍手喝采で出演者の再登場を催促する。

 6本の短編です。
「砂糖壺は空っぽ」
 読み始めてしばらく、意味がとれません。最後のほうになって、そうかとうなずきます。作家の挑戦です。意気を感じます。
調べた単語などです。「ブレザーのボトム:ブレザーの下にはく衣類。スカート、ズボン」、「コミュ障:対人関係対応苦手(書中では、初対面の人、一度だけ会う人とは話せるが、毎日会う人と話すのは苦痛」
 ありのままに生きることのつらさがあります。人の悲しみがあります。

「萌木の山の眠り姫」
 いい出だしです。一年中で一番嫌いな月、一日でいちばん嫌な朝。
 カーテンコールというのは、私立聖萌木女学園の閉校を指すのかもしれません。
 いやなことがあると眠りの世界へ逃げこむ女性のお話です。

「永遠のピエタ」
 ピエタとは、確か、キリスト教、聖母マリア像だった。死んだキリストを抱いているマリア像。慈悲。
 勘違いをしていました。美少女大学生有村夕美は車いすの障害者だと思っていましたがそうではないようです。具合が悪くなったとき、一時的に車いすにのせられたが正解です。
 消えていた過去の記憶が呼び起こされました。貧血で具合が悪くなって歩行中に頻繁に突然倒れる人って現実にいました。
 「二次創作:原作者とは別人が原作に基づき作品を創作する行為」、「ドリーム小説:登場人物の名前を読者が設定できる。」、「ボーイズラブ:男性同士の同性愛」、「尾籠な話:びろうなはなし。不潔、わいせつ、ばかげている。」
 同性愛の話は苦手です。

「鏡のジェミニ」
 ローマ神話でふたごの兄弟がジェミニ。
 読み終えて、人間の体形って何だろうかと考えました。心の状態を表に出したものが体型という内容の1本です。調べた単語として、「双眸:そうぼう。両目」

「プリマドンナの休日」
 3月末に女子大学が経営困難で閉校したのに、最後の卒業生となるべき数人が卒業のための単位が取得できず卒業扱いできないから、各種温情で、4月以降も半年間、単位取得のための宿泊を伴う合宿補講を受講しています。
 そのうちのひとりのどうして卒業できなかったかの理由は、なんとなく、途中で気づけました。なにかしら時代の変化と価値観の変化、世代の差を感じる内容でした。これまでは否定されていた生き方が肯定されるようになりました。それが、いいことなのか、そうでないのかは、当事者とその影響を受ける人たちでないと判断できません。
 「意趣返し:しかえし」
 「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや:えんじゃくいずくんぞこうこくのこころざしをしらんや:小さな人物には大きな人物の志はわからない。ツバメやスズメは大きな鳥の志はわからない。」

「ワンダフル・フラワーズ」
 この章は胸にぐっときます。まず、小説とは何かと考えました。次に「教育」を考えます。親が過剰な期待をしたり、甘やかしたりで、子どもの心が壊れていきます。子どもは、死にたいと言い出します。事例としては、現実によくある話です。ここは、読むのにけっこうつらいパートになります。ぎくしゃくとしたものはありますが、強い気持ちが伝わってきます。
 父も母もまじめな教師だが、普通ではない。
 これまでをとおして、やせていることで細井茉莉子と清水玲奈、小説家志望らしい金剛真実とフリーライター希望の矢島夏鈴(やじま・かりん)のキャラクター(個性)がかぶるような気がして、作者の分身があちこちに散りばめられている印象をもちながら読んできました。眠ることで、有村夕美と梨木朝子も似ている。

 一人称での凄味がきいた語りが続いていきます。理事長の人生を描くためにこれまでの短編5本がありました。
 
心に留まった表現として、 「そもそも生まれてこないこと」、「唾棄:だき。けがらわしいと軽蔑する。」、「私という失敗作」、「自ら死ぬ能力に欠ける。」、「死ぬことと眠ることは似ているという表現」、「竜胆:りんどう」、「家族のだれかが癌のような存在で家族に病巣が広がっていくというような表現」、「早く大人にならなければならない人間がいるというような表現」

 ひとりの人間がすべての人間を救うことはできない。
 生きるための本、自殺しないための本でした。
 最後の行付近では涙がにじみました。贖罪(過去の罪を悔いて未来のために償う。)

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