2018年07月02日

傍流の記者 本城雅人

傍流の記者 本城雅人(ほんじょう・まさと) 新潮社

 傍流⇔本流でいいのだろうか。新聞社における出世競争です。とりあえずの目標は「社会部長」らしい。傍流とは主流ではないこと。キーワードとしては、プロローグにある「不正を書くのが新聞の使命」でしょう。そして、使命を行使すると新聞社が倒れるのでしょう。読み始めます。
 6本の短編です。

「第一話 敗者の行進」
 敗者の行進とは、スクープを落として他社の記事となったとき、担当記者が本社事務室内を行進して恥をかく行為のようです。酷です。
 主人公植島昌志40歳、新聞社警視庁担当キャップ(管理職。自分が動くのではなく部下を動かす立場)

 支流にいる人間の負け犬の遠吠えにも思える内容展開です。ことに「仕返し」の心理が強い。

 管理職の役割と平社員の役割は異なります。植島昌志は平社員であれば優秀だが、管理職となるとその器(うつわ)ではない。

 良かった表現の主旨として、「部下への信頼の糸が切れる。」

「掠る:かする。漢字が珍しかった。」、「業腹:ごうはら。非常に腹が立つこと。」、「確執:かくしつ。対立して譲らない。」、「めっさ怒る:めっさというのは初めて見ました。とてもという意味。方言かと思いましたがいまでは大阪起源の一般用語になっているようです。」、「権謀術数:けんぼうじゅっすう。あざむくためのはかりごと。」、「ファンデーション:化粧の下地クリーム」、「お手つき:かるたで別の札に手をつける。本作品の場合、別の人を容疑者と思ってしまう。」

警察組織として
生活安全課:防犯、ストーカー、DV、少年、家出、風営法、闇金
公安(警備課):国家に対する反社会的活動、テロ対策、災害救助
刑事課:殺人、強盗、傷害、放火
交通課:交通違反の取り締まり、
地域課:交番、巡回、パトロール、自転車泥、車上狙い、空き巣、わいせつ、落し物、迷子

「第二話 逆転の仮説」
 現実に起こった事件が物語の中で光が反射するように挿入されている作品群です。
 希少なものに価値を見つける。それが、「逆転の仮説」です。
 実感がこもった表現の主旨として、「他人の人事はわかるが自分自身がどうなるかの人事はわからない。」
 「遊軍:臨時の出来事に対して集まる集団」本のなかでは30人。
 「宥める:なだめる。漢字をはじめてみました。」
 「エキセントリック:ふつうじゃない。」
 後半は、すさまじい追い込みでした。これでは女性記者の島有子さんはもたない。

「第三話 疲弊部隊」
 「出禁:できん。出入り禁止」、「司法クラブ:官公庁の建物の中にある記者クラブのひとつ。裁判所内」、「おためごかし:人のためにするようにみせかけて、じつは自分の利益を得る。」、「峻厳:しゅんげん。非常に厳しい。」、「証券コード:株式銘柄ごとの番号・記号」、「気鬱さ:きうつさ。気分がふさぐ。」、「シンパ:共鳴者」
 自分を見下してきた者たちへの仕返しの記述が続きます。
 新聞の購読率ってどれぐらい低下しているのだろう。調べました。やっぱり下降気味です。物語の中にもありますが発行部数が減れば従業員数も減ります。
 気に入った表現の要旨として、「移っても一生兵隊」、、「コンプレックスを励みにするあなたの生き方がイヤ」、「仲間を思いやる気持ちが必要だった。」
 101ページあたりの雰囲気を気に入りました。会社で輝いている人は、家では孤独です。
 
「第四話 選抜の基準」
 「選抜」とは、人事で、だれがいいかと選ぶことです。はないちもんめ、あのこがほしい、そのこはいらない、あとはプロ野球ドラフト会議のようなものです。
 ドラフトと一緒で、一番がその後必ず出世するわけではありません。最悪なのは辞められて他社に引き抜かれることです。それまでかけた時間と労力、経費がパーになります。いや、それ以上に自社にとってライバル社のレベルアップとなり、マイナスの分量は計り知れません。
 「諍い:あらそい。こういう漢字があることを知りました。」
 選抜はしょせんむなしい。

「第五話 人事の嵐」
 ヒントは「モリカケ疑惑」です。
 新聞社内の「表彰制度」って、ちょくで給与や人事に反映するようで、そこが、そういうものかと発見があります。
 「政治部」は政権寄りで、「社会部」は政権批判で、そのバランスが難しい。ただ、世間はそういうもので、相対するもの同士のバランスづくりをどこもしている。
 人事は憎悪につながる。組織で仕事をすることについての厳しさが書いてあります。個人事業主にはない。

「第六話 記憶の固執(こしつ。あくまでも自分の意見を主張して譲らない。)」
 「昵懇:じっこん。親しく打ち解けて付き合う。」、「幇間:ほうかん。男芸者」、「編集委員:新聞社内の肩書。上がりの職とあります。名誉的な肩書だけで部下なし。そこで打ち止め。」、「弄る:いじる。漢字を見たのが初めてです。」、「マッチポンプ:自分で問題を起こして収拾をもちかけて報酬を得る。」、「目を瞬かせる:またたかせる。」、「ねめつける:にらみつける。」、「頷き奴(うなずきど):頷きまくる人」、「アナグラム:つづり字の位置を変えて別の語句をつくる。」
 印象に残った言葉の主旨として、「(人事で)同期を切るぐらいで悩むな。」、「22週を超えると死産」、「部下は利用するもの、上に利用されるもの。」、「個人としては優秀でも、組織人としてマネジメントができるわけではない。」
 思いがかなわなかった社員は辞めていきます。結局なんのために働いているのかというところにぶつかります。
 エレベーターの中で、重要なやりとりが何度もされるのですが、エレベーターの中というのはどうなのかなあと首をかしげました。
 もらいたくもない辞令を何度ももらうのがたいていのサラリーマンのありようです。
 サルバドール・ダリの絵。「時間」を考える。
 うーむ。そういうことか。うーむ。そういう流れか。

Posted by 熊太郎 at05:29

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