2018年07月01日

ファーストラブ 島本理生

ファーストラブ 島本理生(しまもと・りお) 文藝春秋

 父親を刺殺した娘の心理を臨床心理士がさぐるという内容で始まりました。加害者娘自身がどうして父親を殺してしまったのかわからない様子です。ふたつのことを重ねてあるようです。加害者の家族関係、臨床心理士の家族関係、男女の関係があるようです。すべては、推定から読書がスタートしました。

 登場人物の名づけが独特です。凝りすぎの感あり。読みにくいです。人間関係も後付け説明でわかりにくい。
 タイトルは「初恋」と受け取って読み始めています。(読み終えてみると、初恋とはつながらない内容だったような気がしました。)
 最初の数行がいい。この本を買おうという購買意欲をそそられました。「育児」という単語がいい。「愛とは手を出すことではなく見守ることです。」とあります。この作品を読み解くヒントかもしれません。その後の設定と展開はありえないことが多すぎるのですが小説です。

 印象に残ったこととして、「赤い月」、「奪われたものを取り戻そうとして失う。(これもなにかのヒントでしょう。)」

 感じの悪い内容展開です。主人公は自意識過剰(気にしすぎ)で、差別的(学歴・権威主義)です。
 偶然なのでしょうが、最近の児童虐待をはじめとした親族間殺しとか無差別殺人事件とかに類似してきました。殺人の加害者を擁護する内容になるのだろうか。

 調べた言葉として、「修習生時代:司法試験合格後の人」、「驕らない:おごらない。才能、家柄、地位を理由にわがままな態度をとらない。」、「虚言壁:きょげんへき。どうしても嘘をついてしまう。」、「お焚き上げ:神棚、仏壇、人形などを心をこめて焼く。」

 加害者のキャラクター設定がとても女子アナ志望者にはみえない。

(つづく)

 読み終えました。途中から、内容に共感できなくなり、早く読み終えたい気持ちが強くなり、流し読みに入りました。わたしには合わない内容でした。

 臨床心理士という職に過剰な重みをのせて表現してあります。こどもさんの障害の判定をする人という知識しかありません。世間では、精神科医ほどの評価と知名度・信頼感はないような気がします。(本書88ページに記事あり。)
 読んでいると、カウンセリングという行為の名のもとに、臨床心理士に見下されているような印象があります。読み手に誤解を与えないといいのですが。

 登場人物がたくさんでてきて整理することがたいへんでした。

 父親は、奇人・変人、虐待者の類か。母も同類。娘も変。周りの男たちも普通ではありません。異常で異様な世界です。現実にはありそうで、実はない世界です。端的に言うと主人公女子大生のセリフ「ここにいると(拘置所)ぐちゃぐちゃの怪物を刺す夢をみる。」

  100ページまで読んできて、3ページの記述を思い出します。「育児」の本なのかなあ。

 殺人犯の過去を本にして出版する。うーむ。
 
 日本人は「戸籍」にこだわります。「戸籍」は、国が国民を管理するための国の所有物であって、本人の所有物ではありませんから、本人は戸籍に縛られる義務はないと思うのです。(そのみかえりとして権利の主張ができるわけですが、ほとんどの国々にはない制度です。)

 母親と娘の衝突と葛藤(互いに譲らず対立していがみ合う。)があります。加害者娘、そして、臨床心理士双方を同様に並べてあります。

 夢も希望もない。過去を掘り起こしても未来が見えない。人間の化けの皮をはぎとる作品でした。娘のリストカットの傷を見て、それはリストカットの傷ではないと思おうとする母親がいるのだろうか。

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